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貴方に向けた思考と嗜好の話をしよう
「不思議な話をしましょうか」
「ここにある珈琲豆をこうして細かく砕いていくの」
「そしてこれを苦味を強めにしたチョコアイスの上にまぶす」
「当然、珈琲豆をそのまま口に運べば苦味は強いわよね」
「でも、チョコアイスの方はどうかしら?」
「苦味を振り掛ける事でより苦味を増してしまう?」
「それとも、苦味を加えたおかげで隠れていた甘さが引き出される?」
「その結果については……そうね、誰かさん風に言うなら」
「それは個人の嗜好もあるでしょうから試してみないと分からないってところかしら」
「願わくばそれが不思議を越えて素敵なものになれば最良よ」
「毒をもって毒を制す訳じゃないけれど、こんな形もアリなのよ」
「だって、それを思考する時間と詩作する時間こそが、こんなにも……」
「あら、これ以上は言い過ぎね。少し浮かれすぎたみたい」
「さぁ、それじゃあ開店しましょうか」
「いらっしゃいませ……今日は嗜好を凝らしたメニューがあるの」
「どう? 一度試食してみない?」




