夢と現実の考え方について話をしよう
「マスターは空を飛ぶっていう表現から何を思い浮かべる?」
「自由への憧れね。私達は結局、翼を持たない生き物ですもの」
「なら、想像して欲しい。その景色は何色に彩られてる?」
「空を飛ぶなら青以外はないわ。いえ、ちょっと待って、星が散らばる夜空も悪くないわね」
「この際、マスターの所々見え隠れする童心は脇に置いておくとしようか……」
「あら、ごめんなさい。手元が狂ったわ」
「いやいやいや、そもそもマスターが僕の珈琲に角砂糖を入れること自体、間違った行動だと認識して欲しいな」
「あら、折角サービスしてあげたのにその態度?」
「マスターのサービスは方向性が凄すぎて、僕にも受け入れがたい時があるね」
「何よ、ご奉仕のしがいが無い人ね」
「マスターにはまずご奉仕の定義から勉強する事をお勧めするよ」
「光栄に思いなさいな。ご奉仕はサービスの上位互換よ」
「頭の悪いようで、妙に的を得ている答えだね。かといって享受できるかと言われれば……」
「大人しくご奉仕されていれば良いのよ。だって、貴方はお客様なのだから」
「そういう問題じゃあ無いと思うんだけどね。でも、意外と癖になりそうで怖いよ」
「困ったお客様ね。それで、今日は一体何を言いたかったのかしら?」
「いや、いつも通り大したことじゃ無いんだよ。ただね、良くも悪くもマスターのいう通りなのかもしれない」
「何よ?」
「一つの言葉で思い浮かべるのは一つの事象とは限らない。良くも思えば悪くも思う人もいる。さしずめ、マスターにとっての僕は……」
「くだらない事は言わないで頂戴。私はただ、ご奉仕がサービスの上位互換だと言っただけで、別に貴方がどうこうってわけじゃ……」
「分かってるよ。ただ、それはそれで嬉しい話だと思ってね。青い空も良ければ夜空も悪くは無い。僕もそうありたいと願っただけの話だよ」




