目論見とその真意について話をしよう
「もちろん用意してあるわよ?」
「唐突にそう言われても反応に困るね。ここはせめて何をと聞いた方が良いのかな?」
「分かっているくせに分からない振りをするのは野暮よ。改めなさい」
「でも、時にはその野暮が愛おしいとも思える。違うかい?」
「本当、相思相愛になれなくて残念だわ」
「確かに、でも相思相愛じゃないからこそ進展があるとも考えられる」
「残念で仕方ないわ。鈍足でも良いから前へ進めば良いのに」
「噛み締めて味わうことを吉とするのなら、それもまた一興だとも思えるものさ」
「価値観の相違ね」
「人それぞれはもう語り尽くしたと思ったけど……やれやれ、僕もまだまだ青い」
「なんて不毛な会話なのかしら」
「何度目だろうね。まあ、嫌いとも言い難い何とも不思議な会話だけどね」
「まったく……おきまりのセリフを先に振った私の身にもなって欲しいものだわ」
「その割には言葉の裏を探らせようとしているようにも聞こえたけど?」
「それぐらいは愛嬌だと思いなさいな。貴方だって想像してたでしょう?」
「さて、僕は希望は抱いても期待はしない性分だからね。そういう意味で、マスターの目論見はご破算だ」
「あら、目論見ご破算は貴方の方よ? だって、私のチョコは貴方の想像を絶するものだもの。私の勝ちよ。だって今日はそういう日なんですから。……大人しく観念なさい」




