再来 ハロウィンの過ごし方について話をしよう
「そういう訳で、似合っているかしら?」
「何とも返答し難い言葉だね。新鮮味に欠ける訳でも、似合っていない訳でもない」
「それなら素直に褒めなさいな。これはお客様の為の趣向なんですから」
「魔女の衣装はもう見たよ。せめて違う衣装を用意出来なかったのかい?」
「だから、これはあくまでもサービスの一環なんですから、そこまでの期待はしないで欲しいわね」
「過度なサービスを望んでる訳じゃないんだけどね。この辺りがマスターのマスターたる所以か」
「そこはかとなくその視線が私を苛つかせてくれるんだけど……」
「魔女に喧嘩を売るほど、僕の肝も座ってないさ」
「それなら減らず口は慎むように。……かぼちゃに変えてしまうわよ?」
「……へぇ」
「ちょっと、本気で引くのはお止しなさいな」
「大丈夫、さあ、今日も美味しい珈琲を頂けるかい?」
「……なるほど、あくまでも貴方は私の敵って訳なのね」
「いやいや滅相もない。いくら僕でも魔女に逆らうなんてそんな愚行……」
「ええいいわ、よろしくてよ。じゃあ、魔女らしい調合を見せてあげようじゃない」
「ふぅ……、これはなかなか重症そうだね。どうしてそこまで意固地になるのか」
「少し待ってなさいな」
「はいはい。いつまでもお待ちさせて頂きますよ……って、それは?」
「ブレンド珈琲よ」
「何か特別な仕掛けがあったりは?」
「いいえ、いつも通りの珈琲ですが?」
「ちょっと待ってくれ、それじゃあさっきまでの振りは……」
「あら、あれだけ悪態をついておきながら、まさか貴方、何か特別な仕掛けが欲しかったの?」
「やれやれ、本当に悪い魔女だ。まさか、この僕を担ぎ上げようとするなんて……」
「ええ、いい気分ね。貴方は魔女に誑かされたの。今宵はそういう事にしておきなさいな」




