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気障と照れ隠しの間について話をしよう

「あら、どうしたの? そんな花束なんて抱えて」

「この後ちょっとした用事があってね。それに必要な代物なんだよ」

「そう。まあこの短時間で枯れやしないでしょうけど……」

「何だい? 何か気になることでも?」

「……気のせいね。自惚れだったみたいだわ。忘れてちょうだい」

「何だか気になる言い方をするね。でもマスターがそう言うなら気にしない事にするよ」

「ええ、そうなさい。っと、お待たせしました、こちら本日のブレンドになります」

「ありがとう、肌寒い季節にはやっぱりこれが一番温まる」

「あら、それじゃあ夏場は用無しって事? つれない事を言うのね」

「そんな顔はしないで欲しい。って、この会話……」

「ふふっ、ええそうね。懐かしいやり取りと思わない? 覚えていてくれて嬉しいわ」

「人の悪い事をする。僕がそれを覚えてなかったら……」

「そんなわけないじゃない。貴方ならきっと覚えてくれていると確信していたわ」

「……客商売の鑑だね。危うくコロッと騙されるところだったよ」

「馬鹿ね。考えすぎよ」

「ありがとう。でも僕にはそれくらいが丁度良いんだ」

「ほんと、変わった人ね。騙されるくらいなら、いっそ騙してみればいいじゃない」

「それも性に合わない。所詮、僕は単純な人間にはなりきれないんだよ」

「損な性分ね。報われないわ」

「その言葉だけで十分だよ。マスターには感謝の念が尽きないね」

「あら、ここにきて褒め殺し?」

「いや、ここだけは冗談抜きで本物の気持ちだよ。ありがとう、マスター」

「……何よ。それじゃあまるで別れの挨拶みたいじゃない」

「さて、今日はこの辺で失礼するよ。勘定はこれで良いかな?」

「待ちなさいな。まだ話は……」


「ああ、それとマスター。マスターは自惚れて正解だ。この花は日頃の感謝を込めて、僕から君に。それじゃあ、また来るよ」

「あっ、ちょっと待ち……。何よ、結局はあれ(・・)のお返しなんじゃない。思わせぶりな発言ばっかりして。ふん、ここまでしといて後悔しても知りませんから」

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