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趣味嗜好について話をしよう

「ところでマスター。マスターは普段、どんな音楽を聴いているんだい?」

「どうしたの?いきなり」

「いや、最近ふと思ったんだよ。音楽っていうのは万能じゃないけれど、万能に近いんじゃないかってね」

「貴方、普段からあれだけの講釈をしておいて、いまさら万能だなんて言葉を口にするのね」

「勘違いしないで欲しい。万能なんてものは、この世には存在しない。少なくとも、僕はそう思っている」

「ほらご覧なさい。結局はいつもの僕理論じゃない」

「何だい?その僕理論っていうのは」

「どこぞのお客様が嬉々として口にするトンデモ理論の事よ」

「それは酷い風評被害だ。是非とも認識を改めて貰いたいね」

「だって貴方、結局はいつもそれじゃない。ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う。私が何回貴方の口車に踊らされた事か」

「ああ、僕の言葉で踊るマスター。とても甘美な響きだね」

「馬鹿言わないで頂戴。それにしても意外ね。貴方がそこまで音楽に精通しているなんて」

「別に精通しているなんて大げさなものじゃないよ。でも、素人は素人なりに考えを巡らす事もある」

「その終着点が『万能に近い』って表現なのかしら。俄かには信じがたいわね」

「ある人の一日は音楽によって始まり、音楽によって幕を閉じる。その音によって目覚め、その音に酔いしれながら帰路につく。実に贅沢な嗜好だとは思わないかい?」

「一つ付け加えなさい。その音に耳を傾けている間は、世俗からも切り離されたような感覚に浸れる」

「マスターも言うようになったね。まさにその通りだ。だからこそ、音楽は万能に近しいと考えられる。これほど人を魅了して止まない嗜好は、他に類を見ない」

「それが貴方のトンデモ理論よ。こうと決めたら、そうとしか考えられないんですもの」

「少し大げさ過ぎたかな?」

「ええ。それはもう」

「まあ、僕の主観は抜きにしてもだ。音楽は良いね。それに加えて、手の届く範囲に上等な飲み物があれば、なおさら言う事はない」

「随分と安い思考回路ですこと」

「その様子だと、信じてはもらえないかな?」


「馬鹿言いなさいな。そんな顔されたら信じるしかないじゃない。まったく、ほら、早くコップを渡しなさい。新しいのを注いであげるわ。ええ、それで満足なんでしょう?」

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