表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/66

言葉にすると野暮、慎ましく過ごす今日の日について話そう

「こんばんは」

「あら、ごめんなさい。もう閉店の時間なの、、、って貴方、どうしたのこんな時間に」

「いやあ、帰りがてら、珈琲でも飲んで帰ろうかなと思ったんだけど。どうやら間に合わなかったようだね」

「ほんと、いつもならこんな時間には来ないでしょうに。よっぽど運の無い人ね」

「それを言われると辛いな。確かに、営業時間を見ていなかった僕にも非がある」

「あら、その言い方だとまるで、私にも落ち度があるみたいな言い方ね」

「ああ、そりゃあ文句の一つも言いたくなるよ、何せ、入口には『OPEN』のプラカードが掛かってたんだから」

「それは、、、まあ確かに裏返すのを忘れていましたけれど」

「そこまで困った顔をしなくても大丈夫だよ。僕は自分の考えを人に押し付けるのは好きじゃないからね。ましてや、こんな日は特にだ」

「ちょっと待ちなさいな。謝罪の言葉も言わせないつもり?それはマスターとしての私の沽券に関わるわ」

「変なところにプロ意識を持ち込むね。でも、それがマスターの良いところだと思う」

「黙りなさい。それよりも、どうしたものかしら。これから珈琲を煎れるとなると時間が掛かりすぎるわね」

「構わないよ。僕としてもマスターのプライベートを削るのは忍びない。早々に退散させてもらうつもりだ」

「・・・仕方がない人。ちょっとそこに座りなさい」

「どうしたんだい?苦虫を噛み潰したような顔をしているけど」

「ええ、ええ。回りくどい言い方で誤魔化そうったって、そうはいかないわよ。まったく、困った人ね」

「流石はマスター。お目が高いね」

「うるさいわよ。とっとと要件を言いなさい。どうせ、さっきから背中に隠してある物が関係しているんでしょう?」

「うん。じゃあ、お言葉に甘えて。これは、僕から日頃お世話になっているマスターへの贈り物だ」

「お世話になってるって、、、それは、私の台詞じゃないかしら」

「それは違うね。僕がこの店の客だからといっても、僕がマスターに世話になっているのは事実だ」

「そう、あいにく私は何も用意してないわよ。前にも言ったけど、私は聖なる夜なんて、、、」

「そこまでにしよう。これは僕からマスターへの日頃の感謝を表したプレゼントだ。今日が何の日かだなんて、そんな些細な事は関係ない」

「・・・まったく、よくそんな事が言えるわね」

「少しは見直してくれたかい?」

「見直すもなにも、鬱陶しいったらないわね。似合わない事はするものじゃないわ」

「それは失礼。それじゃあ僕は帰るとするよ」

「これで満足だって言うの?つくづく愚かな人ね。そんな生き方じゃあ、損をするわよ」


「たまにはこんな日もあっていいと思うよ。それではマスター、素敵な夜を」

「ふんっ。珈琲も頼まずに帰ったお客様なんて貴方が初めて。まあ、悪い気はしませんけれど」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ