第8話 終戦
平八郎、丙吉、豪七らは関所へと駆け込んだ。関所の人たちは驚いていたが、平八郎らは事情を説明した。関所の人が調べたところによると、日の國も月の國も、非人道的な行為を行ったという報告は一切受けておらず、葉形覆三郎、そして葉形覆三郎の補佐が単独で行ったことがわかった。日と月、計9人が犠牲となったこの戦いは、こうして幕を下ろした。
関所の前にて、3人は別れの挨拶をしていた。
「日の者よ、そなたらの仲間を斬ったこと、深く詫びる。」
豪七は深々と2人に頭を下げた。
「豪七……と言ったかな。頭を上げてもらいたい。元々、覆三郎の策略によって我らは殺し合ったのだ。どちらにも非はない。こちらこそ、大事な友を斬ってしまった。」
平八郎も頭を下げた。それにならい、丙吉も頭を下げた。数秒経って、3人は同時に顔を上げた。
「先ほど小耳に挟んだが、今回の戦いの原因となった葉形覆三郎……は死亡しているな、及び補佐は、どうやら斬首刑となるそうだ。関所の奴らが話していた。」
「丙吉、いつの間に聞いていたのだ。」
「俺は耳がいいからな。」
「そうであったな。」
平八郎と丙吉の話を聞いていて、豪七は思わず笑ってしまった。
2人は怪訝な顔で豪七の方を向いた。
「いやな。さっきまで首を切り落としていた者たちが、こんな和気藹々とした話をするとは、面白いなと。」
「ふむ、確かにそうだな。」
平八郎もはにかみながら言った。
「そういえば2人とも、腹の傷は大丈夫か?」
豪七が2人の様子を見ながら言った。2人とも、先ほどまで治療を行っていた。
「腹は多少痛むがな。この分だと早くに治りそうだ。」
「全くだな。」
「そうか、それは良かった。」
「ところで平八郎よ。やはり『寅』の効果は持続したままか?」
丙吉が平八郎の顎を見ながら言った。丙吉も、『寅』のことは聞いていた。
「ああ、残念ながらまだ効力は残っている。もしかすると、これは胃から直接取り除く以外、治す方法はないだろうな。」
平八郎は、治療を受けている間にふと関所の人間と目が合ったのだが、彼もまた、固まってしまった。
「國へ戻り、医者に聞いてみる。胃を裂くぐらい、医者ならば簡単だろう。」
豪七は笑いながら、ふと空を見た。太陽が沈みかけていた。
「平八郎、丙吉。時間が迫っている。我らも別れの時よ。」
「ふむ、それもそうだな。」
「丙吉、我らもそろそろ帰るとするか。」
「そうだな。」
「それではな、豪七。」
平八郎は豪七に手を差し出した。豪七は、驚いた顔をしていた。平八郎の顔を見ようとしたが、直前で思い出して目線を手に戻した。豪七は平八郎の手に自分の手を差しだし、固く握手をした。丙吉も握手をした。
「ではな、平八郎、丙吉。次会うときは、茶でも飲もう。」
そう言って豪七は2人に背を向け、歩き出した。
「ああ。」
平八郎と丙吉もまた豪七に背を向け、國へと歩き出した。




