第7話 脱出
「腹から血を出していたが、死んでいなかったのか。」
平八郎は目を合わせず言った。
「まるで死んでいてほしいという口だな。」
「違う。横たわっているのを見たとき、死んでいるのかと思ったのだ。」
「気を失っていただけよ。問題はない。」
「そうか……。」
平八郎は仲間が生きていたことを嬉しく思った。
「それよりも、なぜ関所の人間がここにいる。」
丙吉は覆三郎の死体を見ながら言った。
「自らも戦いたいと、月の者の枠を殺めてまで参戦してきた異常な男よ。」
「ほう。」
丙吉は続けて言った。
「ところで、日の國と月の國の残存数はわかるか?」
「俺が確認したのは、駄衛門、番乃助さん、林太郎の死亡。敵は、初めの全裸の男、加賀正吉、止吉、段八、そして葉形覆三郎の死亡。」
「俺は登廊の亡骸を東門で見てきた。」
「そうか、登廊は死んでいたか……。」
「もし登廊が誰も殺していなければ、1人だけ死亡していない者がいる。」
「本当だ、まだ1人残っている。」
平八郎と丙吉が談義していると、
「そこにいるのは日の者か。」
平八郎と丙吉は声のする方を見た。そこには男がいた。こちらに向かって歩いてきていた。平八郎と丙吉は刀を構えた。
「おっと、戦うつもりはないから安心してくれ。」
「知らぬな。敵の言うことなど、信用ならぬ。」
丙吉は警戒しながら言う。
「落ち着け、俺は先ほど日の者と会って話をした。日と月、それぞれ大きな誤解があるやもしれん。」
「なに?」
3人は、手を伸ばせば届く距離で話をしていた。
「なるほど。どちらも非を行っていないと。」
平八郎が納得しながら言った。
「この覆三郎とかいう男、人が死ぬことに美を感じると言っておった。もしかすると、そのために我らは殺し合いを強いられたかもしれん。」
「可能性はあると思う。」
「平八郎、月の者よ。我ら3人で、関所に直談判しに行かぬか。もし覆三郎の無理強いによる戦いならば、やめることができるかもしれぬ。そうなれば、我ら日の者と、貴様ら月の者。戦う必要はなくなり、無駄な犠牲は増えなくて済む。」
「ふむ、俺は構わない。月の者、どうだ?」
「俺は元よりそのつもりだ。戦うつもりなど、最初からない。」
「それを聞いて安心した。」
「しかし、どうする。全ての門は閉まっている。管理していた覆三郎が死んだことで、我らはどうすれば出られるのか。」
「うむ、そこは俺に任せろ。」
豪七が言った。
「俺の両手、刀では切れぬ強靱なものとなっておる。あくまで推測だが、とてもつもなく硬い物質へと変化しているのだと思う。これを利用すれば、門を叩き壊せるのではないか。」
「ほう、やらぬ手はない。ここからだと南門が近いな。そちらへ向かおう。」
一同は南門へと向かった。
「さて、ここからが見せ所だぜ。」
豪七が袖をまくりながら言った。そして、右の拳を思いっきり門に叩きつけた。拳に痛みはなく、門はへこんでいた。
「よし、このまま……。」
豪七は何度も拳を叩きつけた。やがて門には穴が開いた。
「あと少しだっ!」
次に拳を叩きつけたとき、門は砕け、人が通れるぐらいの大きさには開いた。
「よくやった月の者よ。これで出られる。」
「ああ、出るぞ。」
3人は門の外へと飛び出した。




