第4話 強者
平八郎は北門に着いていた。しかし、そこには平八郎以外誰もいなかった。まだ、番乃助と丙吉が来てないと思った平八郎は、門の前で座り込んだ。
座り込んだまま平八郎は思った。この戦いに意味はあるのかと。たとえ、これで日の者が勝利し月の者を支配下に置くことができても、決してどちらもいい思いはしない。平八郎はそう思った。
30分は経ったが、番乃助たちは一向に現れない。もしかすると、敵にやられたのではないか、と考えた。平八郎は立ち上がり、南へと進んでいった。
平八郎はある男と出会った。
男は言った。
「これはこれは、お初にお目にかかります。」
「お前は、月の者か?」
平八郎は目を合わさず言った。
「いかにも、加賀正吉というものだ。」
「ほう、手合わせ願おうか。」
「大丈夫かい?日の者は弱くて弱くて仕方ないんだよねえ。」
「まさか、貴様……!」
「ご名答。先ほど2人の男を殺してきたところさ。あいつら弱くてさあ、話にならなかったぜ。」
「どうやら、貴様を切り裂かねばならんようだな。」
「ふふん、仮に俺が殺さなくても、俺らは殺し合う運命にあるんだぜ兄ちゃん。日と月、生まれたときから俺らは敵同士。死んでも敵なのさ。」
「口だけは達者だな。街で落語会でも開くといい。客は来るだろう。」
「口も達者……なんだぜ。」
正吉は走り出した。
「今度の奴はどうかなあ!俺に傷でも入れられたら盛り上がるぜえ!」
正吉は走りながら刀を抜いた。
平八郎は顔を上げ、正吉と目を合わせた。正吉の動きは止まった。
「傷でも入れられたら盛り上がるらしいな。もっと盛り上げてやる。」
平八郎は正吉の方へと歩いた。やがて平八郎は正吉の手前まで来ると、刀を抜き、正吉の首の横に当てた。正吉の首からは汗が流れていた。平八郎は刀を持つ手に力を込めると、思いっきり首を斬った。正吉の首は宙を舞い、やがて、落ちた。平八郎は正吉の身体を斜めに斬った。正吉の身体は抵抗することなく倒れた。
平八郎は正吉の身体を刀で裂いた。中からは『卯』と書かれた石が出てきた。平八郎は特に躊躇することなく口に入れ、飲み込んだ。平八郎は疑問に思った。なぜ『子』の石が出てこないのかと。番乃助を殺したのならば、持っていてもおかしくはないはずである。もしかして正吉が言っていたことは嘘であり、自分を惑わすためであるならば、2人は生きている可能性がある。そう思い、『卯』の石の力を使い、もっとも近くにある石の方角へと向かった。
やがて目的地に到着した平八郎。しかし、その様子は想像していたものとは違った。内蔵を切り刻まれ、首が切り取られた全裸の死体と、横たわって血を流している丙吉の姿があった。平八郎はここへきて初めて涙を流した。そして、一心不乱に番乃助の死体をかきむしり、『子』の石を取り出すと、即座に飲み込んだ。
『卯』の石はどこを指すのでもなく自らを示し続けた。どうやら『卯』の石は本体以外であればずっと探知し続けるらしい。涙を拭いた平八郎は、次は東へと歩き出した。もしも登廊が生きていれば、残る数は2対3。不利な状況ではあるが、死んだ仲間のためにも、負けるわけにはいかなかった。




