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訪雲の記  作者: 万々万々
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第2話 分離

日の者たちは北へと進んでいた。

「次はどこへ向かいましょうか。」

「ふむ、とりあえず石を回収しなければならん。石を手分けして探そう。」

「手分けは危険ではありませんか?」

「危険など重々承知。こちらから動かないと話にならんよ。」

「確かにそうですね……、わかりました。」

「二手に別れよう。平八郎と林太郎はこのまま北へと向かってくれ。儂と丙吉は少し東に逸れる。あとで北門で落ち合おう。」


平八郎と林太郎は北へと進んでいた。

「なあ、平八郎。」

林太郎は口を開いた。

「なんだい。」

「お前は、この戦いに参加して良かったと思っているか?」

「どうした、急に。」

「いやだってさ、登廊がすぐに俺らから離脱して、駄衛門も死んじまった。戦力はほぼ4人になったわけだ。このまま、日の國が勝っても、残るのは虚しさだけだと思うんだ。」

「林太郎、お前の言いたいことはわかるが、参加してしまった以上、全力で戦わねばならない。それは自分のためでもあるし、日の國のためでもある。」

「そうだな。」

2人がそう話しながら歩いていた先には、石が乗った台があった。

「林太郎、あれってもしかして……。」

「ああ、どうやらそのようだぜ。」

2人は駆け寄った。石には『(とら)』と書かれていた。

「『寅』……。ずいぶん強そうな名前なこった。」

「これが説明書きか……、なになに、『寅』を持つもの、相手と目を合わせることにより、相手の動きを封じる、だってさ。」

「ほう、先ほどの石を見て、てっきりすべて全裸になる必要があると思ったが、普通の石もあるもんだな。」

「林太郎、この石はお前が持っておくべきだ。」

「え?お前の方が強いんだから、お前が持っておくべきだろ。」

「いや、お前が目を合わせている間に、俺が斬る。」

「ほう、面白いな。なら仕方ねえ、俺が喰っちまうぜ。」

そう言うと、林太郎は石をガシッと掴み、自らの口に放り込み、一気に飲み込んだ。

「本当にこれって効果があるのか?」

「なら俺で試してみるがいい。」

平八郎は林太郎の方へと向いた。林太郎は平八郎の方へと向き、目を合わせてみた。

「どうだ平八郎、動けるか?」

平八郎はこっちを見たまま動かない。

「あれ。」

林太郎は目を逸らしてみた。平八郎はやっと口を開いた。

「すごいな林太郎、俺は今全然動けなかった。」

平八郎は感心しながら言った。

「それは強力な力を持っている。心強いものだ。」

「ほう、それはいいな。そこまでの束縛力を持っているなら、月の者など簡単に切り捨てられるな。」

笑いながら林太郎は言った。

「これは大きな戦力を得た。林太郎、早く敵を見つけだし殲滅しようぞ。」

「おう!」

意気込む2人だったが、自信に満ちていた2人は背後からの驚異に気づけなかった。

平八郎はいきなり前に吹き飛んだ。何者かに蹴られたのだと平八郎は瞬時に判断したが、身体は反応できなかった。

平八郎が吹き飛んだのを見て、林太郎は相手がいるであろう方向に距離を空けながら振り向き、抜刀した。そこには1人の男がいた。紙は眉毛までかかっておらず、揉み上げは長い。男は、平八郎に向かって剣を構え走ってきた。

「平八郎!」

「ああ!」

平八郎は素早く立ち上がったが、男の接近に対して抜刀は時間が足りなかった。平八郎は、縦に振り下ろしてきた剣に対し刀を鞘ごと引っ張り出し構えた。男の刀は鞘によって遮られた。横から林太郎が走ってきて、刀を男に突き刺した。走りの勢いで、林太郎は刀を刺したまま男と倒れ込んだ。しかし、男は刀を順手から逆手に変え、林太郎の腹へと刺した。平八郎は、すぐさま抜刀し、男の首を切り落とした。

「林太郎!」

「大丈夫だ平八郎。予想以上に傷が浅い。」

林太郎はそう言うが、林太郎の腹の出血は止まらない。

「平八郎、急ぐぞ。今の状態、『寅』がある状態では有利だ。」

「お前、その状態ではまだ無理だ!」

「構わん、放っておけ。いずれ止まる。」

強気でいう林太郎に、平八郎は何も言えなかった。

「今だ段八(だんぱち)!片方は怪我をしているぞ!」

「おうよ!肉を切らせて骨を断つとはまさにこのことよ!」

平八郎と林太郎がいた通路の端から、2人の男が叫びながら現れた。

「先ほどの男は囮……。あくまでも戦力を削いでからの奇襲か!」

「逃げろ平八郎!俺が片方の男を『寅』で封じる。その男の横を通って逃げろ!」

2人が話している間にも敵はどんどん距離を詰める。

「そんなことをしたらお前は殺されるに決まっているだろうが!」

「当たり前だ!」

林太郎は叫んだ。平八郎は強い口調で言う林太郎に驚いた。

「俺が死ぬのはわかっている!だからこそ、お前が生きるんだよ!何も言わず従え!」

「……わかった。」

平八郎は静かに返事をした。

「おそらく奴らは俺の能力を知らない。だから、少なくとも一回は効くだろう。」

「ああ。」

敵はすぐそこまで迫っていた。林太郎は立ち上がり、南の男の方へと向いた。

林太郎は男と目を合わせた。男の動きは完全に停止した。

「今だ、行け平八郎!」

「ああ!」

平八郎は走り出した。

「段八ぃ!なにをしてやがる!」

しかし、段八と呼ばれた男は返事をするどころか動かない。

平八郎は段八と呼ばれた男とすれ違う際に抜刀し、首をはね飛ばした。そして、平八郎は足にブレーキをかけ、後ろを向いた。

林太郎の首から上は既になく、そのまま倒れ込んだ。林太郎の向こう側には、刀を抜いた男が立っていた。

「悪いな小僧、これも戦いよ。手負いだろうと関係ねえ。」

「それが仕方ないのはわかっている。仇討ちの為、死んでもらう!」

刀を構えて平八郎は走り出した。

「若き日の者よ、ここは落ち着いて話でもせんか。」

男が提案をしてきたが、平八郎は微塵も興味を持たなかった。

「敵に貸す耳などない!」

「そうか、なら仕方はないな。俺は撤退させてもらうぜ。」

男は刀を剥き出しにしたまま、通路の奥へと引っ込んでいった。

平八郎は、急いで林太郎の側に駆け寄った。

平八郎は涙を堪えながらも刀で林太郎の腹部に穴を開けた。胃を取り出し、石を取り出した。平八郎は無心で口の中に入れ、飲み込んだ。血の味がした。

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