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高梨ひふみの虐殺及び天使らの密談(2)




「ボクはホンマはサリエルって名前なんです。今は偉大なる神の力によって、地上に肉を授かって活動させてもろうてます。あ、天使がみんなこんな訛りあるわけちゃいますよ。ボクのは言うたら、キャラ付けです。会話する時に、キャラ付いてなかったら、見分けづらいでしょう? 高次の次元に存在してるから、こういうメタ的な発言もできるんです」

「——そうか、分かった。今からお医者さんが来るから、少し待っていてね」

「現役の天使が精神病患者みたいな扱いされるのは、ちょい心外です」

「それじゃあ君が天使だと仮定して、話を進めよう」

「『なぜ天使がここに居るのか?』」

「その通り」

「ボクにはある程度の未来を視る能力が備わっとるから、これくらいは簡単です。まあ今のはそんな能力無くても分かりますけどねえ。で、ボクが現世に降臨しとる理由ですよね」

「天使はみんなよく喋るのかい?」

「全然喋りはらん天使もおりますよ。ボクがここにおる理由は、監視です」



 グルーヴィの、細い眉が動く。体に緊張が走る。なんとなく、分かってるんちゃいますか、とサーラ——サリエルがその細い目を三日月状にして、言った。

 


「ボクは佐々木なろみ、及び佐々木なろみの近辺を監視する役目を担っています」


 

 グルーヴィは平静を保っている——ように、取り繕っている。サリエルにはそれが分かっていた。その沈黙の中で、彼が思考を巡らせていることに、気付いていた。数秒の沈黙の後、グルーヴィがその口を開く。



「何故彼女の監視を?」

「お察しの通り、佐々木なろみの能力故です」

「——<概念無視>。天界もその能力の存在を危惧しているのか?」

「え、理事長さんは、天界の存在を感知できはるんですか? ボクたちの存在が分かる<肉>——ちゃう、間違えた。人間は、全然おらへんはずやけど」

「君たちが私たち人間のことを<肉>と呼んでいるのも、<偉大なる神>が存在することも、よく知ってるよ」

「物知りですねえ」

「もう一つ、知識を披露して良いかな」

「欲しがりやなあ、理事長」

「<林檎>のことも知っている」



 サリエルの笑みが消える。グルーヴィは背中に汗が伝うのを感じた。



「——よく知っていますね、理事長さん」

「せっかくのキャラ付けが取れているよ、天使さん」

「ああ、忘れとった。見苦しい所見せてもうたなあ」

「君たちが佐々木なろみを監視するのは、<概念無視>が君たちを殺しうるからかな」

「……まさか。ボクたちの仕事は、皆さんの幸福を守る事ですもん。その能力が、<肉>の世界を乱さないようにするためです。理事長さんみたいな人に彼女の能力を利用されたら危ないですし」


 まあそんな事考えてへんと思いますけどね、とサリエルが笑みを浮かべて言う。が、グルーヴィは、彼の笑みに何か冷徹なものを感じた。掌の汗が、照明で煌めいている。


「……で、君は、何故私の所に来たんだい?」

「あ、そや。忘れとった。理事長さんにお願いがあって」

「聞こう」

「ボクと、佐々木なろみを、同じクラスにして頂きたいんです」

「クラス分けは入学試験の結果を見て均等に割り振られているから、変えるのは無理、と言ったら?」

「今のボクに現世の情報に干渉して変更する権限は与えられてへんから、どうしようもあらへんけど、まあ、『上』に話通して、色々いじくってもらおかなあ」

「『上』ね。断りようがないじゃないか」

「クラス同じにしてくれますかね」

「……条件をつけていいかな」

「言うてみてください」

「この子も同じクラスにしていいかな」



 グルーヴィが『この子』と称した女生徒に、サリエルは視線を向ける。モニタに映っているのは、地獄の瘴気の中で、罵りながら、男子生徒の死体を蹴り続ける、高梨ひふみの姿であった。

 サリエルが苦笑する。それから、肯定。






 

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