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プロローグ

 血に染まった大地をさらに沈みかけた太陽が、辺りを照らす。

 大地も空も紅く染まり、そこは紅の海のように見える。

 紅の海の中に1人の少女が佇んでいた。

 ほんの数秒前まで、腰まである長い髪を上の方でしっかりと束ねてあった。

 今、ほどかれたその金の髪は風になびいている。光を浴び、金の髪は輝いている。


 少女から少し離れたところでは、男たちが騒ぎ、その喜びを分かち合っている。

 その男の群れの中から少女の方へ駆け足で近付いて行く者がいた。

 他の男たちに比べれば小柄な方だが、現在周りにいる男たちが大抵大柄でがっしりしているので実際小柄という訳ではない。

 少し肩を越す黒い髪を、後ろで一つにしてある。

「姫さまぁ〜!!」

 叫びながら駆けてゆく。


 それに反応した金髪の少女は声の主の方へと振り返った。

「姫様、お怪我はありませんか?」

「え? 私? 大丈夫よ! それより……」

 男はまだ若く、辛うじて20代である。少女はそれよりもさらに若く、未だ18歳という年齢である。


「怪我人と死者はどのくらい出たの?」

「具体的な数字はどちらも出ていません。只今調査中です。ですが、今はっきり言えることは……」

「いつもよりその数が多いってことよね?」


 自分が言う筈だった言葉を取られた男は、肯定の意を示す沈黙に入った。

 そっか、と残念そうに少女はしょげてしまった。

 その後も話は続かず、重苦しい空気が流れた。

「あ、でも姫様! 今回は敵の数も多かった訳ですし、仕方がないかと……」

「そんな簡単に片付けないでよ!」

 重苦しい空気を打破しようとかけた言葉は逆効果になってしまう。

 姫様と呼ばれた少女だけでなく、男もしょげてしまった。


「指揮してるのは、私なのよ! 全て責任は私にあるわ!」

「ひ、姫様。…………」

「今、こんなことを言い争っていても仕方ない。コア、あなたは1人でも多くの怪我人を治療してあげて! いえ、それは無理ね。……治療の手伝いをしてあげて!」

 少女の瞳は何か決心でもしたかのように力強い。

 コアと呼ばれた男もそれに応えるように強く頷く。


 コアは一度少女を見据えると、男の群れへと駆けていった。

「さて、私も報告しなきゃ。今日中には帰れそうにないからね。」


 少女の輝く金の髪は、辺りに光を散らした。

 少女の傍らにはいつの間にか、鳥のような生物がいた。

 まるで、これからやって来る自分の仕事をよく理解しているかのようだ。

 長く美しい碧瑠璃の飾り羽を持つ鳥は首を傾げる仕種をする。

 鶯色の瞳で少女を見つめる。


 少女は鳥に目線を出来る限り、合わせるかのようにしゃがんだ。

 何やら書かれた紙を鳥に見せるようにする。

「これを持って帰って。出来るだけ急いでね。」

 鳥がしっかりと紙を銜えた。

 少女は鳥の頭を2,3度ゆっくり撫でる。


 鳥は暗くなろうとする空へと飛び立った。


 少女は男の集団の方へと歩き出した。

 それに気付いた男たちは皆、少女の方に向き直る。

「みんな! お疲れ様。今日はもう暗くなるから、明日ルブルム……私達の国へ帰りましょう」


 男たちの中で最も大柄な男が集団の中から出てくる。

「姫! それならば、勝利の祝賀会でも開きませんか?」

 その意見に同意した男たちはやたらと騒ぎ始める。

「姫様! 俺も賛成です!」

「是非ともやりましょうよ!」

 男たちは口々に言う。


 大地を照らすものがなくなり、ただ暗闇が存在した。

 暗闇を照らす大きな炎。辺りは炎のお陰で明るい。


 明かりの周りで沢山の男たちが飲み食いしている。

 またある者は歌い、ある者は踊る。

 その騒がしい風景は夜であることを忘れさせる。


 ──やがて、炎は小さくなった。

 しかしもう既に炎が無くとも十分視界がきく。

 いつの間にか眠ってしまった者は少なくない。そのまま騒ぎ続けた者も多々いる。


「ほら。ちょっとみんな? もう帰るわよ! 大事な家族や恋人や友人が待ってるんでしょ〜?」

 半ば呆れた様子で少女は叫んだ。

 どうやら多くの者が二日酔いにうなされている様だ。少女への返答は活力の無いものばかりだ。


「はい! さっさと歩く!」

 男たちに少女の喝が入る。


 *


「お帰りなさいませ、姫様。お疲れ様です」

 少女は沢山の家臣からかけられるこの言葉を軽く頷いて返した。


 少女はこの国“ルブルム”の姫であり、次期王でもある。しかし、現在この国に王はいない。

 数日ほど前に亡くなられたのだ。

 正式に王となる為には世界の中心【レープハフト】に申告しなければならない。

 レープハフトはルブルムの東の方にあり、一番技術が進んでいる国である。

 世界の全ての情報が集まり、大小様々な国の情勢を知ることも可能だ。

 こんな事が出来るのはレープハフトぐらいである。


「姫様……、レープハフトに……」

「分かってる。お父様……」

 少女は碧い目に憂いを浮かべた。


 コアが後ろからためらわずに進み出た。

「姫様、感傷に浸っている暇はありませんよ」

 何の容赦も無く厳しく言い放つ。

「分かっていると思いますが、王がいないと知れたらこの国はお終いです。他国は攻めてくるでしょうし、魔物たちも狙ってくるでしょう」

「うん。十分に理解しているつもりよ」

「でしたら一刻も早く……」

 少女はコアがその続きを言うことを許さなかった。

「ええ。これからレープハフトへ向かう準備をする。但し私1人で行かせてもらうから」


 少女の口から発せられた言葉に、少女以外の者は皆ただ唖然としている。

 ようやくその場にいた家臣の1人が喋りだした。

「何言ってるんですか! そんなことして、もし姫に何かあったらどうするおつもりですか?」

「私の不在時にルブルムが何かあるかもしれないでしょ? 戦力は出来るだけ残しておきたいの。これは私からの命令!」

「…………」

 一同、一言も反論できず俯いた。


 少女は身を翻し扉の奥へと消えていった。




こんにちは!

作者です。



この作品を読んでくださった皆様、鳥って暗いと飛べないのでは?という疑問は無しですよ!!(強引だな)

ファンタジーだからなんでもありなのです!(オイ、コラ!)


はい。あの鳥はただの鳥ではない……ということで許して下さい。(汗)


まだ本当に最初の最初ですが、感想待ってます!

より良い作品にするために悪い所をどんどん指摘しちゃって下さい!是非!

宜しくお願いしますm(_ _)m



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