姉妹 後編
「たとえ心を読めなくても、なにか悩みがあるのはわかる。だから・・・」
「うるさいといっているでしょう!人間がわかったような口を聞かないでください!」
どうしたんだ?
「誰にも話せないことです・・・他人の事情に首突っ込まないでください。」
わ・・・悪い。
「話せるようになったら・・・話してくれ、相談に乗るから。」
「・・・」
多分了承してくれただろう、心内で。
ヘンリーが出て行ったあとのさとりの部屋
「こいし・・・大事になるまえに、早く帰ってきて・・・」
誰にも話せないこと・・・か。
大切にしていたものがなくなったのか?
そうだ。お燐なら何か知っているかもしれない。
「ここがお燐の部屋・・・か?」
ノックすればわかるよな。
「お燐?いるか?」
・・・
扉を開け、お燐が出てきた。
「なんか用?」
「さとりが機嫌悪いんだが、何か知らないか?」
「あ・・・それのこと?」
「知ってるのか?できれば教えて欲しいんだが。」
「別にいいよ。中で詳しく話すからさ。」
~少女説明中~
「・・・で、彼女の妹さんが一ヶ月も帰ってこないと?」
「うん。あたいに置き換えても、そりゃ血を分けた姉妹だし、心配するよね。」
「そうだな・・・」
よし。
「探しに行く。」
「え?」
お燐が驚いたような顔をしているが、気に止めない。
「もし妹さんの身に何かあったらとは考えないのか?私は行く。」
「でも・・・まあいっか。あたいも出来る限り協力するよ。一緒にはいけないけど・・・」
「構わんよ。元から一人で行くのは承知の上さ。」
結局、明日にさとりの妹『古明地こいし』の捜索を行うことになった。
翌日
「もうこんな時間か。そろそろ行くか・・・」
お燐の話によると、古明地こいしは幻想郷中を気ままに放浪しているらしい。
大抵は地上にいるとらしいので、私は地上の捜索を行えばいいらしい。
地底の方は、怨霊に任せるとお燐は言っていた。
霊で大丈夫なんだろうか?
「地上に続く穴があるのか・・・どこにあるのやら。」
暗い洞窟まで来たが、その穴が見つからん・・・空から光が差し込んでいる?
「もしかして地上に出られるのか?」
目的達成のための第一歩か・・・
「しかし意外と深いもんだな・・・登れるか?」
無理だろう・・・かなり高い。
「どうしたのお兄さん?空なんか見上げて・・・」
「誰だ?」
後ろを振り向くが、誰もいない。
「アハハ!どこ見てんのさ。上だよ上。」
声のした方を見ると、女の子が逆さまに宙吊りでぶら下がっていた。
「だ・・・大丈夫か?そんな格好で。」
「うん、大丈夫。お兄さんはここで何してるの?」
「あ・・・ああ。この穴から地上に出たいんだが・・・」
「じゃあ手伝ってあげよっか?暇だし。」
「手伝う?」
次の瞬間、私の体は宙に浮いていた。
「うおっ!」
「落ちないように気をつけてね~。あ!言い遅れたけど、私黒谷ヤマメっていうんだ。暫くのあいだよろしくね~。」
「ああ・・・よろしく。」
どうやら彼女は蜘蛛の糸でぶら下がっているようだ。
どういう事だ・・・
「君は妖怪なのか?」
「うん、土蜘蛛のね。お兄さんはなんて名前?」
「へ・・・ヘンリー・カタルトフ。」
「変な名前~。」
今のは少し心にきた・・・
しかし・・・妖怪か。
多分、変なことされないよな?
「ヘンリー。下見てごらん。」
「え?・・・うわあああああ!!!!!わあ!わあああ!!!!」
いつの間にかかなり高いところじゃないか!下を見た瞬間に、一瞬手を離すなよ!
「はあ・・・はあ・・・」
「アハハハハ!!びっくりした?」
「びっくりしすぎて、また三途の川まで戻されるかと思ったよ・・・」
「ごめんごめん。悪気はないんだよ~。」
はあ・・・疲れる。
「さあ。着いたよ!」
「やっとか・・・」
「楽しくなかったの?」
上目遣いで見るな、私がヤマメを泣かしたみたいじゃないか。
「まあ・・・楽しかったよ。」
「ホント!?じゃあ帰ってきた時も、またやってあげるね!」
元気いっぱいにそう言われるが、私にとっては、恐怖でしかない。
いつまでも話してるわけにもいかないし、そろそろお暇するか。
「できればもうしてほしくないが・・・私も用事があるしそろそろ行くよ。」
「うん。気をつけてね~!」
手がちぎれるんじゃないかと思うぐらい手を振っている。
いちいち行動が面白いな。