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1話  王への報告


 カインたち一行は王都に戻り、王への報告をすることになった。

カインは正直なところもう厄介ごとに関わらずに皆と村に帰りたかったが、これも勇者の役目と言われれば従うしかなかった。


 今までの道のりをまた歩いて帰るのかと思われたが、港の一角に今まではなかった移動陣が表れていた。

これを使えば一瞬でお城まで戻れるようだ。

なぜそんなことがわかるのか、それは港町に伝わる伝承にあった。

『魔王が倒されしとき現れたる魔法陣は、勇者を王の待つ城へと移動させる』と。

魔王はアフターサービスも完璧であった。


 カインはかつて魔大陸のあった海を眺め、今ごろ魔王城で宴会をしているであろう魔王に思いをはせる。

そこまで気遣いができるなら、どうしてもっと自分の性癖を人に迷惑のかけないささやかなものにできなかったのか。

知らずに出たため息は、潮風にさらわれて消えていった。




「皆さん、お元気で!」

港町の漁師たちと別れの挨拶をして、村人たちとカインは移動陣の前にたつ。


「あ」

ちゃっかりとカインの横に、筋肉ダルマとマッチョ姫がまるで長年パーティを組んでいた仲間のように立っていた。

カインが筋肉ダルマの顔をのぞきこむと、サッと顔をそらされた。

反対側に立つマッチョ姫の顔を覗きこむと、にっこりと微笑み返された。


(面倒くさいからさっさと済ませてしまおう)

とりあえずカインもにっこりと微笑み返した。



 カインが移動陣に足を踏み込んだ瞬間、一瞬だけめまいのような感覚におそわれて思わず目を閉じた。

瞼を開けると、そこは見覚えのあるお城の「謁見の間」だった。

次々に村人たちが移動陣から出てきては周りを見回して、驚きの声を上げた。


 カインも気持ちはわかる。

なんか魔導士の爺さんの話では、移動陣とは距離や場所の設定や移動できる人数などが複雑にからむためにそうとう高度な技術と緻密な計算を要するらしい。

少しでも狂えばとんでもない所に飛ばされることも珍しいくはないのだと。

だから一応用心をして二人一組で移動陣に入ったが、無事にみんな謁見の間に移動できた。

『神の代理人』もしくは『審判者』の名は伊達ではないようだ。


 



「よくぞご無事で!」

声に顔をあげれば、謁見の間にぞろぞろと王や大臣や兵士が入ってくるところだった。


(こんなに早く帰ってくるとは思わなかったんだろうなぁ…)

慌てて玉座に座る王や整列をする兵士たちを眺めて、カインは頭をかいた。

見たくはない舞台裏であった。



 やがて体裁を整えて威厳のある感じに仕上がった謁見の間であったが、村人はもちろんのことカインももう緊張することはなかった。


「それでは報告を聞こうか」

玉座に腰かけカインたちを見下ろす王の髭の先っちょに、ソースがついているのをカインは見なかったことにして口を開きかけたときだった。


「あぁ! 敬愛する我が父上、わたくしからご報告申し上げますわ!!」

マッチョ姫がカインの前に踊りながら飛び出してきた。

「お、おぉ我が愛しき姫よ。…ずいぶん逞しくなったな……」

王がじゃっかん引きながらうなずいた。


「わたくしからもご報告申し上げますぞ!!」

筋肉ダルマもマッスルポーズをとりながら飛び出してきた。

「……お前、誰?」

王はかなりドン引きだった。



 それから二人による壮大な冒険譚が語られた。

姫は傷つきながらも勇者をかばって勇敢に戦い、戦士はその鋼の肉体で姫や勇者を守りそして敵を切り進んだと熱く熱く語った。


 あまりにも長かったので、途中から大臣の心遣いで飲み物や軽食の差し入れが出てきたほどである。

おかげで村人たちの気が二人の冒険譚からそれ、カインは内心ものすごくほっとしていた。



 やがて外は日も暮れていた。

カインは柑橘系のさわやかな飲み物を飲みつつ、魔王城に突入したのは今朝のことだったのに時間がたつのは早いなぁ…と黄昏ていた。


 二人の話もようやく終わったようで、王が顎をさすりながらうなった。

「う~ん。二人の話はバラバラでよくわからんが、とりあえず勇者が頼りなかったというのは一致しているのかのう…」

その一言に村人たちはザッと殺気立ったが、カインは村人たちに手をあげて制止した。

そしてドヤ顔でカインのほうを見るマッチョ姫と筋肉ダルマの後ろから、カインは玉座の王を見上げた。


「確かに僕は頼りなく、村の皆に助けてもらうことが多かったです。…けれど!」

けれど、旅の中で僕も成長し、最後に魔王と対峙するときには勇者として恥ずかしくない姿であったと自信をもって言えます!


 そう言おうとした。

そう言おうとして息を吸い込んだ瞬間だった。

謁見の間が眩いほどの光に包まれ、人々は目を閉じて何が起きたのかとざわめいた。

やがて光のなか、厳かで神々しい声が玉座の間に響き渡る。


『人間たちよ、我は神の代行者である…』


 カインだけがハッと顔を上げた。

王も村人たちも、謁見の間にいたカインをのぞくすべての人々が頭をたれて恭しくひれ伏していた。

驚く人々をよそに、声は語り続ける。


『人間たちよ、見るがよい。これが勇者の旅の記録である…』


「ああっ、あれを!」

誰かが叫び指さしたほうを見ると、白い壁の一面に歩くカインの姿が大きく映し出されていた。

風景からすると、城を出てすぐのようだ。

「ああっ!」

壁に映されているカインが顔をかばい縮こまり、村人たちが地に伏せていく映像になる。

「…あ…」

輿から投げ出されて泥に顔を突っ込んでいる姫と、……岩男は映ってすらいなかった。

その間にも映像は進んでいく。


 ドガースの拳を受け吹き飛ばされるカイン。

倒れて起き上がることのできないカインに歩み寄るドガース。

ドガースの足が振り上げられた瞬間、兵士たちは固唾を呑み映像を見守った。

「ええっ!?」

次の瞬間、ドガースの頭がいきなりトゲだらけのイガグリ状になりドッと地響きを立てて倒れた。



 微妙に編集されているようだ。



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