表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

現在①夜の通いごと

刑事と大学生の話を書きたくて始めました。最初は読みきりでほのぼの設定だったのですが、なぜか色々設定が増え、ちょっと暗い方向に。刑事の知識はドラマ程度ですので、ご了承ください。

「圭ちゃん生きてるー?」

日付がそろそろ変わるという頃。『圭ちゃん』と呼ばれた男は、ひょこっと目の前に現れた顔に、手が止まった。にこにこと笑うその人物に、男は顔を引き攣らせた。そして、椅子をくるりと回し体の向きを変え、大きく息を吸った。

「誰だこいつ連れてきたのは!!」

男の怒鳴り声は室内に大きく響いた。しかし、誰も返事をすることなく、それぞれのデスクにいたはずの人間は、いつの間にか室内の端にあるテーブルに集まり、口に食べ物を運んでいた。

「相変わらず美味いっすねー」

「うめえー」

いくつかの重箱に手を伸ばしては口に運び、美味い美味いと繰り返すその集団は一応、男の部下だ。しかし、彼らは男を振り返ることはない。その態度に男はますます顔を引き攣らせた。そして。

「里沙さんありがとうございます!」

「「ありがとうございまーす!!」」

「いえいえ~いっぱい食べてね」

「「はーい!」」

「……はあ」

 隣でにこにこ笑って手を振る少女に頭を抱えた。



 男の名前は中嶋圭、35歳。職業は警察官。犯罪者だけでなく仲間にも厳しい彼は、眉間のシワが特徴的だ。しかし、そんな彼にも特別な人物がいる。それが、先程の少女『里沙』である。しかし少女と言っても、彼女は大学3年生で成人している。ただ、如何せん容姿が幼く、年相応に見えない。彼女本人は昔からそれをコンプレックスとしているので、彼も馬鹿にすることはないが、彼からしてみれば年下であることには相違なかった。

そんな彼女はたまに、ひょこっと刑事課に現れる。突然、何の断りもなく。だから彼は彼女が毎回現れる度に頭を抱えるのだ。

「どうして連絡しない?」

「圭ちゃんも休憩して食べなよ、倒れるよ?」

「おいこら、俺の言葉聞いてたか?」

「ほらーしっかり食べてないからイライラしてる」

 のんびりとした口調の里沙は、尽く彼の言葉を聞き流す。にこにこと圭の険しい顔にも怯むこともない。

「みんな美味しそうに食べてくれてるから作り甲斐があるよねー」

 男の椅子に座ってくるくると回りながら、里沙は笑う。

「あんなやつらに作ってくる必要はない」

 圭がため息と共に言葉を吐けば、里沙はにんまりと笑い圭を見上げた。

「あれー?もしかして、圭ちゃん妬いてる?」

「……」

 喜々として聞いてくる里沙に、圭は眉間にしわをさらに寄せて押し黙る。

「心配しなくても圭ちゃんは特別だよ?」

 ちょこんと首を傾ける里沙に、圭は顔を背ける。

「だから、ほら。これは圭ちゃん専用のお弁当ね」

 椅子から勢いよく立ち上がり、背けた顔の正面に回って、里沙はその包みを圭に差し出した。圭はじっと見つめて手を伸ばさない。

「食べてくれないの?」

「…食べるに決まってるだろ」

 拗ねたような目が演技だと分かっても、圭はすぐさま包みを受け取った。里沙はそれを見て、くすくすと笑う。

「しっかり食べてね」

「笑うな」

「だってかわいいんだもん」

「笑うな」

「ここにいていい?」

「……ここ以外にどこにいるつもりだ」

 言葉は冷たい。でも、それが全てではないと里沙は分かるから。何年もずっとそばにいたのは圭だから。

「うん、ここにいる、ここがいい」


――あの日あなたに会えてよかったと思ってるんだよ。本当に。





 




読んでいただきありがとうございました。読みきりでほのぼの設定。これだけで終わるはずだったのに、なぜか連載方向、暗い方向。どうしてこうなった。そんなわけで時系列バラバラの2話に続きますので今後も良ければよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ