六歳の第六王子が兄の婚約破棄を見て黙っていられなかったこと
総合1位になっていたAI作品が面白かったので、どこまでできるか試行錯誤しながらAIに書かせてみました。……が、なかなか難しいですね。
ストーリーや設定は全部自分で考えたもので、文章は全部AIが出力したものを使う。と思ったけど、結局そのまま使うのは厳しくて、最終的には文章にもかなり手を入れてしまいました。なんとか読めるものにはなったかな……
王太子レイナード殿下の誕生日を祝う祝宴。
国中から集まった賓客たちでにぎわう大広間。
そこでいきなり殿下の口から、発せられた言葉。
「アンジェリカ。お前との婚約を解消したい」
周囲のざわめきが、ぴたりと止まった。
近頃、さまざまなパーティーの会場で度々繰り返されている悪しき風習。
わざわざ公衆の面前で行われる見世物のような婚約破棄。
今夜、その生贄となったのは私だった。
「私はリリアーナを愛している。今後は彼女を新たな婚約者として迎えたい」
殿下の隣には、私の妹リリアーナが立っていた。
殿下の腕にそっと手を添え、恥ずかしそうに俯いている。
けれど、私と目が合った瞬間、その唇に浮かんだ微笑みを、私は見逃さなかった。
「…………理由を、お聞かせいただけますか?」
理由などわかり切っている。
でも、それだけ言うのが精いっぱいだった。
「お前といると息が詰まるのだ」
殿下は苦い顔で答えた。
「お前はいつも王太子妃として完璧であろうとするばかりだ。国のためだの、将来のためだのと、何かにつけて小言ばかり言う。四六時中、お目付け役が隣にいるようで息が詰まる」
殿下は小さく息を吐き、リリアーナへ目を向けた。
「だが、リリアーナは違う。彼女といると心が休まる。私は彼女といるときのほうが、ずっと自然体でいられるのだ」
リリアーナが嬉しそうに殿下を見上げた。
「殿下……」
甘えた響きに、殿下もまた優しく微笑む。
学園に通っていた三年間、二人はいつもそうだった。
私が王太子妃に必要な知識を身につけようと講義に励み、試験のために夜遅くまで机に向かっている間、殿下はリリアーナを連れて学園を抜け出し、二人きりの時間を楽しんでいた。
あるとき、殿下は学園の公式行事で担当するはずだった発表の準備を怠った。直前になって必要な資料が足りないと気づいた殿下に代わり、私は関係者に頭を下げ、資料を整え、発表が滞りなく進むよう手を尽くした。
殿下は何事もなかったように壇上に立ち、発表を終えた。
次の行事では事前に準備を確認していただきたいと私がお願いすると、殿下は面倒そうに顔をしかめた。
『お前は本当に細かいな。そんなことまで口を出さなくてもいいだろう』
そしてその日の午後もまた、殿下はリリアーナと庭園を散策していた。
「お姉様は、いつもそうなのです」
リリアーナの声が、私を苦い追憶から引き戻す。
「何でもきちんとしなければ気が済まなくて、殿下にあれもこれもとおっしゃるでしょう? でも、殿下だってお疲れになるのです」
妹は殿下の腕に、さらに身体を寄せた。
「わたくしは、殿下に無理をしていただきたくありません。殿下が笑っていてくださるのが、一番嬉しいのです」
その言葉を聞いて、殿下は満足げに頷いた。
「そういうところなのだ、アンジェリカ。お前には、リリアーナのような心の優しさがない」
「……わたくしは、殿下のお役に立てるようにと」
「そうだ。お前はいつもそればかりだ。王太子妃としての務めを果たすことしか考えていない。私自身を見ようともせず、ただ理想の王太子妃になろうとしているだけではないか」
殿下は私を責めている。
私が学んできたことを。守ってきた作法を。殿下が将来国を治めるために必要だと思い、共に身につけていただきたかった知識を。
それらすべてを、まるで私の欠点であるかのように。
「お姉様は、もっと殿下のお気持ちを考えるべきだったのです」
リリアーナは、少しも悪びれることなく続けた。
「わたくしは難しいことはよくわかりません。でも、殿下が何を望んでいらっしゃるのかはわかります。殿下のお心を癒やし、おそばで支えられるのは、わたくしなのです」
そう言って、殿下を見つめる。
殿下もまた、当然のようにその手を握り返した。
王太子妃にふさわしい教養を身につけるために、私はどれほどの時間を費やしてきただろう。
王族として恥ずかしくない振る舞いをするために、どれほど自分の言葉や表情を律してきただろう。
殿下が王太子として恥をかかないよう、誰にも気づかれないところで、どれほどの手間を引き受けてきただろう。
その努力は、殿下にとって息苦しいものでしかなかった。
そして妹は、殿下の望むままに振る舞うことこそが、王太子妃にふさわしいのだと言う。
私は二人を見つめた。
そこに、私が支えようとしてきた未来はなかった。
ただ、互いに自分の望みを叶えてくれる相手を見つけ、満足している二人がいた。
「……まあ、そういうことなら仕方がない」
沈黙を破ったのは父だった。
ノルランド公爵家当主である父グレゴリーは、突然の婚約解消に困惑しているようだった。
けれど、その表情に怒りや、娘を傷つけられたことへの憤りは見当たらない。
「レイナード殿下がリリアーナを望まれるのなら、当家はそれに従うまで。アンジェリカ……お前も、いつまでも意地を張るものではない」
「……お父様?意地を張るとは、どういう意味でしょうか」
「言葉どおりだ。殿下がリリアーナを選んだのだ。お前が無理に婚約者の座にしがみついたところで、誰も幸せにはならんだろう」
婚約者の座にしがみつく?
私は信じられない思いで父を見つめた。
私がただ自分の立場に執着して駄々をこねていると?
「アンジェリカ。あなたが王太子妃にふさわしくあろうと努力してきたことは知っています。でも、それだけでは殿下のお心をつかめなかったのでしょう?」
今度は母が、たしなめるように口を開いた。
「作法も教養も大切です。けれど、女はそれだけで愛されるものではありません。いつも正しくあろうとするばかりで、殿下のお気持ちに寄り添う努力を怠っていたのではありませんか?」
それから母は、隣に立つリリアーナへと目を向けた。
「少しくらい失敗しても、明るくて愛嬌があるほうが、一緒にいて楽しいものよ。その点、この子は本当に素直で可愛らしいわ」
「お母様ったら……」
リリアーナは恥ずかしそうに頬を染め、母の手を取る。母も妹の手を両手で包み、慈しむように微笑んだ。
「ねえ、リリアーナ。あなたなら殿下を幸せにして差し上げられるわね?」
「はい、お母様。わたくし、殿下のおそばで精いっぱい頑張ります」
そのやり取りを、私は黙って見ていた。
父も母もリリアーナを見る目は優しい。それはいつもの見慣れた光景だった。
学園でいつも上位の成績を守っていた私を、父は一度も褒めたことがなかった。当然なのだ。私は王太子妃になるのだから。少しでも成績を落とせば厳しく叱責された。
『そんなことでは王太子妃の責任が務まらんぞ。お前は自分の立場を理解しているのか!』
一方、リリアーナは私ほど勉強が得意ではなかった。
試験の結果が芳しくなかった日、妹は成績表を持って母のもとへ駆け寄り、しょんぼりと肩を落としてみせた。
『お母様、わたくし、また間違えてしまいました』
『まあ、そうだったの。でも次はもっとできるようになるわ。そんなに落ち込まないで』
母はそう言って妹を抱き寄せた。父もその場にいた。妹の頭を撫でて、優しく笑っていた。
私はその光景を見ながら、自分の成績表を胸に抱えていた。
妹が褒められることに不満があったわけではない。頑張った人が褒められるのは、当然のことだと思っていた。
でも、私も頑張っていた。
誰に言われなくても、期待に応えようとしていた。
それだけだった。
「お姉様?」
リリアーナの声で、私は我に返った。
「そんなに難しい顔をなさらないで。わたくし、お姉様の代わりが務まるか不安なのです」
妹はそう言いながら、殿下の腕にそっと寄り添った。
「でも、殿下が望んでくださるのですもの。わたくし、きっと頑張りますわ。お姉様がこれまでなさってきたことを、わたくしも少しずつ学んでいきたいと思います」
言葉だけを聞けば、姉を気遣う健気な妹だった。けれど、殿下の腕に添えられた手は離れない。
「そうだ。これからはお前が王太子妃となるのだからな」
父は、まるでそれが最初から決まっていたことのように頷いた。
「リリアーナなら、きっとよい王太子妃になるだろう。お前も、姉として妹を支えてやりなさい」
「……わたくしが、リリアーナを支えるのですか?」
「当然だろう。お前は王太子妃になるための教育を受けてきたのだ。それを妹に教えてやれば、学んだことは無駄になるまい」
父は不思議そうな顔をした。
私が何を疑問に思っているのか、本当にわからないという様子だった。
私がこれまで懸命に積み重ねてきたものを、妹のために差し出せと簡単に言う。どんな思いで身を削るように努力してきたか、私の気持ちに目を向けようともせず、ただ簡単に。
「アンジェリカ、あなたも少しは肩の力を抜いたらどうなの?」
母が言った。
「あなたは何でも自分一人で完璧にこなそうとしすぎるのよ。もう少し周りに甘えたり、可愛らしいところを見せたりすれば、殿下だって違うお気持ちになったかもしれないわ」
可愛らしいところ。
他でもない母にそう言われて、私は何と答えればよいのだろう。
私は母の教えを守ってきた。人前で感情をあらわにせず、礼儀を忘れず、どのような相手にも失礼のないように振る舞うこと。それが王太子妃にふさわしい姿なのだと、母自身が繰り返し教えてくれたのではなかったか。
妹が作法を間違えたとき、母は笑って許した。
『リリアーナは愛嬌があるから、それくらい大丈夫よ』
私が同じ間違いをしたときには、何度も繰り返し練習させられた。
『アンジェリカ、あなたはノルランド公爵家の長女なのですよ。そんなことでは困ります』
母の言葉を信じていた。
厳しく教えてくださるのは、私のためなのだと思っていた。立派な王太子妃になれるように、期待してくださっているのだと思っていた。
だから、苦しくても頑張った。
なのに、今になって母は、私が真面目すぎたのだと言う。
私がもっと笑っていれば。もっと愛嬌を振りまいていれば、殿下に愛されたかもしれないと。
では、これまで母から教わってきたことは、何だったのだろう。
「……お父様も、お母様も」
声に出しかけて、私は口を閉じた。
何を言えばいいのか、わからなかった。
父も母も、私の返事を待ってはいなかった。
誰も、私の思いなど気にかけていない。
もういい。私はすべてを諦めてこの場を去ろうと思った。
ここで何を言ったところで、私の声は誰にも届かない。
そう心を閉ざそうとした時だった。
「アンジェリカ!」
幼い声が響いた。
人々の間を縫うように、小さな少年が駆け寄ってくる。いつもは明るいその顔が、今は心配そうに曇っていた。
「アンジェリカ、大丈夫?」
サファイア色の瞳が心配そうに覗き込んでくる。
「すごく…………すごく辛そうだよ?」
そして、周囲の大人たちに視線を移す。
「アンジェリカがこんなに辛そうなのに、みんなどうして心配じゃないの? どうして誰もアンジェリカの気持ちを聞かないで、自分の話ばっかりしてるの?」
「ステファン殿下……」
レイナード殿下の末弟にあたる、六歳になられたばかりの第六王子。
私が王宮を訪ねるたび、殿下はいつも嬉しそうに駆け寄ってきてくださった。
『アンジェリカ! 来てくれたんだね!』
そう言って、小さな手で私にしがみついてくる。
私が王宮を訪れるのはレイナード殿下にお会いするためだったけれど、殿下はいつもリリアーナと出掛けていて不在だった。
そんなとき、ステファン殿下にせがまれてよく一緒に庭園で遊んだ。
『ねえ、今日はあっちを探検しようよ! この前見つけた蝶々が、まだいるかもしれないんだ』
庭園を駆け回り、花壇の陰を覗き込み、見つけた蝶々を追いかける。結局、蝶々に逃げられてしまっても、殿下は少しも気にしなかった。
『また逃げられちゃった。でも、アンジェリカと一緒だったから楽しかった!』
そう言って屈託なく笑う殿下に、私もつられて自然と笑顔になった。
いつも完璧を求められ、人の目ばかり気にしていた私にとって、何も飾らず素のままの顔で過ごせるステファン殿下との時間は、いつしか数少ない心安らぐひとときになっていた。
――そのステファン殿下が、今、私のために心を痛めてくださっている。
「アンジェリカ……」
殿下が、私の手をぎゅっと握った。
「ぼく、アンジェリカが悲しいのは嫌だよ」
その言葉に、胸の奥が熱くなった。
ずっと、誰にも聞いてもらえなかった。
どうして悲しいのか。何が辛いのか。
誰も尋ねてくれなかったのに。
たった六歳の殿下だけが、私の悲しみに気づいてくれた。
「……ありがとうございます、ステファン殿下」
それ以上、言葉が続かなかった。
泣いてはいけない。こんな大勢の前で、涙を見せてはいけない。
そう思っているのに、目の奥がじんわりと熱くなっていく。
私は俯きそうになるのをこらえ、小さな手をそっと握り返した。
「ステファン、大人の話に子供が口を挟むんじゃない」
レイナード殿下が、不機嫌そうに言い放った。
けれど、ステファン殿下は怯まなかった。私の手を握ったまま、兄を見上げている。
「でも、兄上。アンジェリカが辛そうだよ?」
「これは私とアンジェリカの問題だ。お前には関係ない」
「関係ないの?」
ステファン殿下は、きょとんとした顔をした。
「だって、アンジェリカはぼくにとっても大切な人だよ」
その言葉に、胸がぎゅっと締めつけられた。
「兄上はアンジェリカと結婚するんでしょ? なのに、どうしてアンジェリカとはお話しないの?」
「私はリリアーナを愛しているのだ。アンジェリカではなく、リリアーナと結婚したい。それだけのことだ」
レイナード殿下は、苛立ちを隠さない。
「兄上がリリアーナを好きなのは、わかったよ。でも、だからってアンジェリカが悲しくてもいいの?アンジェリカの気持ちは聞かなくてもいいの?」
小さな声だった。
けれど、その言葉は広間の隅々まで届いた。
六歳の弟の言葉に、レイナード殿下が沈黙する。
今度はリリアーナに問いが投げかけられた。
「リリアーナも、アンジェリカが悲しいのに、嬉しいの?」
「えっ……」
リリアーナの笑顔が、わずかにこわばった。
「わたくしは……そのようなつもりでは」
「でも、さっき嬉しいって言ったよ?」
ステファン殿下は、不思議そうに首を傾げた。
「どうして?」
リリアーナは、すぐには答えられなかった。
私は妹を見た。
ステファン殿下は妹の笑顔の下にあるものをまっすぐに見つめて、そこにある矛盾に気が付いている。私のために、私の代わりに、それはおかしいと声を上げてくれている。
それだけでもう十分だと思った。
「殿下、もういいのです」
私はステファン殿下の手を、そっと握り返した。
私のために怒ってくれる人がいる。私の悲しみをわかってくれる人がいる。それだけで、こんなにも心が救われるなんて。
けれど、だからこそ、これ以上は望めなかった。
レイナード殿下の顔には、あからさまな不快感が浮かんでいる。王太子である自分の決断に、まだ幼い弟が口を挟んでいる。これ以上続ければ、ステファン殿下を怒鳴りつけてしまうかもしれない。
それに……。
私は、目の前にいる人たちを見回した。
一方的に婚約を破棄したレイナード殿下。彼の隣で幸せそうに微笑むリリアーナ。私の気持ちよりも、妹と王太子の恋を祝福することを求める両親。
もう、何を言っても無駄なのだろう。
私がどれだけ努力してきたかも、何を我慢してきたかも、きっとこの人たちには関係がない。私が悲しんでいることさえ、彼らにとっては、祝福に水を差す些細な問題でしかないのだ。
「だから、もう……」
「違うよ、アンジェリカ」
ステファン殿下は、私の言葉を遮った。
小さな手が、私の手をぎゅっと握る。
「アンジェリカは悪くないよ」
「ステファン殿下……」
「僕、知ってるよ。アンジェリカがいつも一生懸命なの」
殿下は、私を見上げた。澄んだ青い瞳には、少しの迷いもなかった。
「お城でレイナード兄さまを待っている時だって、いつもお勉強してるでしょ? 僕が遊ぼうって言ったら、一緒に遊んでくれるけど……自分のことは一番後回しで、いつも何かを頑張ってるでしょ?」
思いがけない言葉に、私は何も返せなかった。
ステファン殿下は、今度は私の両親を見た。
「お父様やお母様がわかってくれなかったら、悲しいよね?」
その言葉に、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
「僕だって、一生懸命に頑張ったのに、お父様やお母様が褒めてくれなかったら悲しいよ。もっと頑張りなさいって言われるだけだったら、僕だって、悲しい」
「ステファン……」
それまで黙って成り行きを見守っていた国王陛下が、その言葉に反応した。隣に立つ王妃様も、はっとしたようにステファン殿下へ目を向けている。
「アンジェリカを褒めてあげてよ。辛そうなときはお話を聞いてあげてよ。ぼくだったら絶対そうするよ?」
私は、うつむきそうになる顔を、必死にこらえた。
もう泣かないと決めていたのに。
私の気持ちをわかってほしいと願うことすら、いつしか諦めていたのに。
どうして、こんなにも小さな殿下が、私の欲しかった言葉をくれるのだろう。
「アンジェリカ、私たちは……」
父が、ようやく口を開いた。
「私たちは、何もお前の気持ちを無視しようと言うのではない。ただ、王太子殿下にもお考えがあり、リリアーナにも幸せになる権利がある。だからこそ、お前には少し大人になって、状況を受け入れてほしいのだ」
母も、すぐに続いた。
「そうよ。私たちはあなたのためを思って言っているの。いつまでも悲しんでいても仕方がないでしょう? あなたなら、きっとわかってくれると思っているのよ」
聞き慣れた言葉だった。
あなたならわかってくれる。
あなたなら我慢できる。
あなたなら、もっと頑張れる。
そうして私は、何度、自分の気持ちを後回しにしてきただろう。
「……でも」
ステファン殿下が、父と母を交互に見た。
「アンジェリカはいっぱい我慢して頑張ったのに、またアンジェリカが我慢するの?我慢して我慢して、それでも誰も褒めてあげないの?どうして?」
父も母も言葉を失った。
ステファン殿下は、本当にわからないという顔をしていた。責めているのではない。ただ、理解できないのだ。私を認めず、褒めず、ただ我慢だけを求め続ける人たちのことが。
「頑張ったら、褒めてもらえるんじゃないの? ちゃんとできたら、よかったねって言ってもらえるんじゃないの?」
殿下の声が、少しだけ小さくなった。
「アンジェリカは、ちゃんと頑張ったのに……」
その先は、言葉にならなかった。
広間は静まり返っていた。
父も母も、何かを言おうとしているのに、言葉が見つからないようだった。
私は、ステファン殿下の横顔を見つめた。
この場にいる誰よりも幼い殿下が、誰よりも簡単なことを尋ねている。
ステファン殿下の手は、まだ私の手を握っていた。
その温もりだけが、今の私をこの場所につなぎとめてくれていた。
「ねえ、アンジェリカはどうしたい?」
ステファン殿下が、私を見上げた。
「僕は、このままアンジェリカだけ辛そうなのは嫌だよ」
「殿下……私は……」
答えようとして、言葉に詰まった。
どうしたいのか。
考えたこともなかった。
レイナード殿下の婚約者に選ばれてから、私はずっと、どうすれば立派な王太子妃になれるのかを考えてきた。何を学び、どんな振る舞いを身につけ、どうすれば周囲の期待に応えられるのか。失敗しないように、誰かに迷惑をかけないように、ただひたすら努力してきた。
けれど、私は。
本当は、どうしたかったのだろう。
「ステファン、いい加減にしろ!」
鋭い怒声が、私の思考を断ち切った。
「子供のお前が何を言おうと、私が決めたことは変えられない。これ以上話をややこしくするな! 自分の部屋に戻っていろ!」
レイナード殿下の顔には、隠しようのない怒りが浮かんでいた。
ステファン殿下はびくりと肩を震わせた。けれど、私の手を握る小さな指は、離れなかった。
「レイナード」
そのとき、低く落ち着いた声が広間に響いた。
国王陛下だった。
陛下はステファン殿下のそばまで歩み寄ると、幼い息子の頭にそっと手を置いた。
「いいのだ、ステファン。よく声を上げてくれた」
「お父様……?」
「お前の言う通りだ。ここにいる者の誰一人として、アンジェリカの気持ちを聞こうとしなかった。この私も含めてな」
陛下は、私へと向き直った。
そして、深く頭を下げた。
「すまなかった、アンジェリカ」
「へ、陛下……!」
思わず声が裏返った。
国王陛下が、私に頭を下げている。
その場にいた貴族たちが、一斉に息を呑んだ。レイナード殿下も、リリアーナも、私の両親も、何が起きたのかわからないという顔をしている。
やがて、誰からともなく姿勢を正し、皆が陛下に向かって頭を垂れた。
私も慌てて膝を折ろうとしたけれど、陛下は手でそれを制した。
「よい。今は、そなたの話を聞かせてほしい」
「私の……話、ですか?」
「そうだ。そなたは、どうしたいのだ?」
どうしたいのか。
これまで、私が何を望むかなど、誰も尋ねてはくれなかった。
だから私は、自分の望みを口にすることにも、ひどく臆病になっていた。
「……レイナード殿下のお心が、リリアーナに向いていることは、わかっておりました」
声が震えないよう、ゆっくりと言葉を選んだ。
「私も、これ以上、殿下の婚約者であり続けようとは思いません。リリアーナを妻に迎えるのでしたら、それも異存はございません」
妹がわずかに顔を上げた。
私は、その顔を見なかった。
妹が何を望み、何を喜び、私のことをどう思っていても、私にはもう関係ない。
「ただ……」
胸の奥に、ずっと押し込めてきたものがあった。
レイナード殿下のためを思って、私が自分の思いを、願いを、感情を、すべて押し込めて犠牲にしてきたこと。自分の役割に囚われ続けてきたこと。
それらが、殿下にとっては余計なお世話でしかなかったのなら。
私の努力が間違っていたというのなら。
もうこれ以上、私に差し出せるものはない。
「私はもう、殿下のお側にお仕えすることはできません」
顔を上げ、陛下を見つめた。
「リリアーナが殿下の妻となるのであれば、私が妹の手助けをすることもできません。殿下が私の言葉をお求めでない以上、私が妹に助言をすることも、かえってご迷惑となるでしょう」
喉の奥が、熱くなった。
それでも、最後まで言い切った。
「どうか、それだけはご容赦いただきますよう、お願い申し上げます」
言い終えたとき、自分でも驚くほど、心は静かだった。
努力してきた年月が報われなかったことも、これまで信じてきた未来を失ったことも、簡単に忘れられるはずがない。
けれど、もう二度と、私の気持ちを押し殺してまで、誰かの期待に応えようとは思わなかった。
陛下はしばらく私を見つめ、それから静かに頷かれた。
「わかった。そなたの意志を尊重しよう」
そして、広間に集まった人々に向き直った。
「本日、レイナードとアンジェリカの婚約は、双方の意志により解消するものとする。アンジェリカに、これ以上の負担を求めることは許さぬ」
「父上!」
レイナード殿下が声を上げた。
しかし、陛下は息子を一瞥しただけだった。
「この件はこれで終わりだ」
きっぱりとした陛下の口調が一切の異論を封じた。
これで、終わり。
長い間、私の未来そのものだと思っていた婚約が、こうして終わった。
「アンジェリカ」
小さな声に振り向くと、ステファン殿下が私を見上げていた。
まだ心配そうな顔をしている。
私は、そっと膝を折り、殿下と目線を合わせた。
「ありがとうございます、ステファン殿下」
「……アンジェリカ、もう悲しくない?」
その問いに、すぐには答えられなかった。
「……わかりません」
正直にそう答えると、殿下はぎゅっと私の手を握った。
「そっか……」
それから、少し考えるように俯き、顔を上げた。
「でも、僕が一緒にいるよ」
その言葉に、とうとう涙がこぼれそうになった。
私は慌てて目を伏せ、殿下の小さな手を握り返した。
「……ありがとうございます」
今度は、ちゃんと声にできた。
私の悲しみを、わかってくれた人。
私が頑張ってきたことを、見ていてくれた人。
この日、私は婚約者を失った。
けれど、すべてを失ったわけではなかった。
握り返した小さな手の温もりを、私はきっと、忘れない。
*
舞踏会から数日後、ステファン殿下が私のもとを訪ねてきた。
「アンジェリカ、お願いがあるんだ」
いつものように私を見上げる顔には、いつもとは少し違った決意の色が浮かんでいた。
「私に、ですか?」
「うん。僕に勉強を教えてほしいんだ」
思いがけない申し出に、私は目を瞬かせた。
殿下はまだ六歳だ。王族としての教育はすでに始まっているが、これから本格的に学ぶことが増えていく年齢でもある。私が王宮を訪れた際には、殿下の勉強のお相手をすることもあったけれど、正式に教師を務めるというのはまた別の話だ。
「でも、私でよろしいのでしょうか。殿下には、すでに立派な先生方がいらっしゃるでしょう?」
「先生たちも好きだよ。でも、アンジェリカに教えてほしいんだ」
殿下の口調に迷いはない。
「アンジェリカは、僕がわからないことをちゃんと教えてくれるでしょう? 難しいことも、僕にわかるように話してくれるし。それに、僕ができたら、ちゃんと褒めてくれるもの」
最後の言葉に、私は返事を詰まらせた。
殿下に勉強を教えたとき、私は特別なことをしたつもりはなかった。わからないことがあれば一緒に考え、できるようになれば、その努力を褒める。それは当たり前のことだと思っていた。
けれど、殿下はそれを覚えていてくださったのだ。
「……私でお役に立てるのでしたら、喜んで」
「本当?」
「はい。殿下が望まれるのでしたら」
「やった!」
ぱっと顔を輝かせた殿下に、思わず笑みがこぼれた。
ほどなくして私は、ステファン殿下の教育係を任されることになった。それに伴い、国王陛下は私に王宮近くの住まいを用意してくださった。
婚約破棄の一件で私を傷つけたことへの、王家なりの配慮でもあったのだろう。殿下の教育を引き受ける以上、王宮へ通いやすい場所が望ましいという事情もあった。
私はありがたく申し出を受け、長年暮らした公爵家の屋敷を出た。
両親には、しばらく距離を置きたいと伝えた。あの舞踏会でのことを、まだ何もなかったかのように水に流す気にはなれなかったからだ。
陛下も私の意向を尊重してくださり、両親が王宮で私に面会を求めても、無理に引き合わせることのないよう取り計らってくださった。
実家からは時々手紙が送られてきたけれど、返事を書く気にはなれなかった。
今の私には、新しい生活があり、向き合うべき自分の仕事があり、私を待っていてくれる大切な方がいる。そのほうがずっと大切なことだった。
ステファン殿下は、たいへん優秀な生徒だ。
一度教えたことはすぐに覚え、難しい問題にも臆せず挑戦する。わからないことがあれば納得するまで質問し、ときには私が答えに困るような問いを投げかけてくることもあった。
もちろん、いつも真面目なばかりではない。わからないことがあると頬を膨らませてむくれる子供らしさもある。
それでも、一度取り組んだ問題を途中で投げ出すことはなく、学ぶべきことから決して目を背けたりはしない。
「殿下、先ほどの問題は解けましたか?」
「解けたよ! 見て、アンジェリカ!」
得意げに差し出された答案に目を通し、私は頷いた。
「正解です。よく考えられましたね」
「えへへ」
褒められて嬉しそうに笑う殿下を見ると、私まで誇らしい気持ちになる。
日を追うごとに成長してゆく殿下を見守る時間は、思ってもみなかったような喜びを私に与えてくれた。
かつての私にとっては、立派な王太子妃になることがすべてだった。何でもできて当たり前。期待に応えて当たり前。そうやっていつも自分を追い込んでばかりいた。
けれど今は、違う。
私が教えたことを、殿下は喜んで吸収してくださる。できるようになったことを一緒に喜べる。
自分の努力が誰かの力になっている。
それが、こんなに嬉しいものだなんて。
私は日々、王宮へ向かうのが楽しみで仕方なかった。
*
レイナード殿下の立場は、私が王宮を訪れるたび、少しずつ悪くなっていると耳にした。
もともと、殿下の仕事ぶりに不満を抱いていた貴族は少なくなかった。重要な政務を側近に任せきりにする一方、自分は遊興にふけり、諫言する者の声にも耳を貸さない。これまでは王太子という立場が、そうした振る舞いを覆い隠していたのだろう。
けれど、私との婚約を一方的に破棄した一件は、彼らが抱えていた不満を公然と口にするきっかけになった。
王太子妃となるべく教育を受けてきた公爵令嬢を、衆目の前で侮辱する。しかも、自分の責任を省みることなく、別の女性を選んだことを誇らしげに語る。
そのような人物に、国を任せてよいのか。
疑問の声は、やがて王太子としての資質そのものを問うものへと変わっていった。
陛下も、当初は息子に反省を促し、態度を改める機会を与えようとなさったらしい。しかし、レイナード殿下は自らの振る舞いを悔いるどころか、周囲の忠告を疎ましがり、相変わらずリリアーナとの時間を優先したという。
ついに陛下は、レイナード殿下に王位を継ぐ資格なしと決断を下された。
その知らせを聞いたとき、私は驚かなかった。
あれほど多くの人に支えられながら、その恩を当然のものとして受け取り、自分の務めから逃げ続けてきたのだ。いつか、その立場を支えていた人々が見切りをつける日が来ても不思議ではなかった。
レイナード殿下には、王都から遠く離れた領地が与えられた。王族としての体面を保つための措置でもあったのだろうが、そこには、これまでのように王宮の人々が何もかも肩代わりしてくれる環境はない。
領地を治めるには、税を集め、民の暮らしを守り、問題が起きれば責任を負わなければならない。誰かに任せておけば済むことばかりではないのだ。
そして、その地へ向かう殿下の隣には、リリアーナがいた。
妹は、私が持っているものを欲しがった。私の婚約者も、私が担うはずだった立場も、全部自分のものにしたがった。
けれど、妃という地位を得ることと、妃としての務めを果たすことは違う。
レイナード殿下が責任を負わずに済むよう、陰で支えてくれる者はもういない。リリアーナに、私がしてきたような働きを期待することも難しいだろう。
これまで自分たちの望みを優先し、面倒なことは誰かに任せてきた二人にとって、領地を守り、そこで暮らす人々を守っていくことは、きっと大変な苦労を伴う。
それでも、私は二人を気の毒だとは思わなかった。
自分たちで選んだ道なのだから、自分たちで歩いていけばいい。
その先で何が起ころうと、もう私が気にかける必要のないことだった。
*
実家からの手紙は、その後も届き続けた。
最初のうちは、私の身を案じる言葉と、あの舞踏会での振る舞いに対する謝罪が綴られていた。
やがて、手紙の内容は少しずつ変わっていった。
公爵家と王家のつながりが失われたことで、社交界での立場も以前とは違ってきたのだろう。両親は、私に戻ってきてほしいと繰り返すようになった。
家族なのだから、いつまでも意地を張らないでほしい。
これまで育ててきたのだから、話し合う機会くらいは与えてほしい。
そして、私なら公爵家の将来についても力になれるはずだ、と。
手紙を読み進めるうち、私は静かに息を吐いた。
両親は、私を王太子妃にするつもりだった。
そのために必要な教育を受けさせ、礼儀作法を身につけさせ、将来の王妃として恥ずかしくないようにと厳しく育てた。私自身も、それが自分の務めなのだと信じ、努力を重ねてきた。
けれど、レイナード殿下がリリアーナを選んだ途端に、両親は私の努力を否定した。それまで私が積み重ねてきた日々には何の価値もないと、突き放したのは両親のほうではなかったか。
私の気持ちに目を向けてくれたのは、六歳のステファン殿下だけだった。
そのことを思い出すたび、今さら両親のもとに戻ることはできないと感じる。
両親が今になって後悔しているのは、嘘ではないのかもしれない。私を傷つけたことを本当に悔いているのかもしれない。
けれど、謝罪を受け入れることと、元の暮らしに戻ることは同じではない。
私は、もう公爵家の娘として期待に応えるためだけに生きるつもりはなかった。
手紙を丁寧に折り畳み、引き出しにしまう。
返事は書かなかった。
両親の願いが何であれ、それに応える義務はない。
私は王家から与えられた住まいで、自分の生活を築いている。
自分で選んだ仕事があり、私を信頼してくださる人がいる。もう、誰かの望みをかなえるために、自分の気持ちを押し殺す必要はない。
両親にも、レイナード殿下にも、リリアーナにも、それぞれの人生がある。
私はそこから離れ、自分の人生を歩いていく。
それでいいと今は心から思えた。
*
レイナード殿下が王位継承権を失ったことで、王宮にも新たな動きが生まれた。
貴族たちの間では、ステファン殿下の聡明さと勇気、そして誰かの心に寄り添って一緒に立てる強さを、王を継ぐ者の資質として評価する声が高まり始めたのだ。
まだ幼い第六王子ではあるけれど、だからこそその将来に期待を膨らませる人は少なくない。
教育係である私の責任も重大だった。
もちろん、まだ何も決まったわけではない。幸い、国王陛下はまだまだ壮健でいらっしゃる。ステファン殿下がこの国の未来を託される日が来るとしても、それはまだしばらく先の話だろう。
かつて私は、立派な王太子妃になるために、何もかも完璧にこなさなければいけないと思っていた。
けれど、ステファン殿下に教えたいのは、ただいつも正しくあろうとすることではない。
自分で考え、迷い、誰かの痛みに気づける人間であってほしい。
あの日、誰も気に留めなかった私の悲しみに気づいてくださったように。
それから、月日は流れた。
*
「アンジェリカ、これ、僕が持つよ」
そう言って、殿下は私が抱えていた本をひょいと持ち上げた。
十二歳になった殿下は、いつの間にか私に並びそうなほど背が伸びていた。肩幅も広くなり、以前は私が苦労して運んでいた荷物を、今では殿下が軽々と運んでくださる。
「本当に、ずいぶんたくましくなられましたね」
「……もう子どもじゃないから」
殿下は前を向いたまま、少しだけ口を尖らせた。
その横顔は、昔の面影を残しながらも、ずいぶんと少年らしくなっている。整った顔立ちも、成長するにつれてはっきりしてきた。
王宮で殿下を見かけた令嬢たちが、将来が楽しみだと騒いでいるのもわかる気がした。
「ええ。とても頼りになります」
「……そう?」
殿下はほんの少しだけ口元を緩めた。
けれど、すぐに何でもないような顔をして歩き出す。
その仕草がおかしくて、私はつい吹き出しそうになった。
六歳の頃は、嬉しいことも悲しいことも、思ったままに口にしていた殿下が、今では恥ずかしがって自分の素直な気持ちを見せようとしない。
成長とは、少し寂しいものだ。
それでも、こうして私を気遣い、役に立とうとしてくださることが嬉しかった。
書庫を出たところで、殿下がふと足を止めた。
「アンジェリカ」
「はい?」
「僕、もっと勉強するよ」
突然の言葉に、私は目を瞬かせた。
「どうなさったんですか?急に……殿下は今でも十分によく頑張っていらっしゃいますよ」
「そうじゃなくて……」
殿下は言いかけて、口を閉じた。
少しの間、何かを考えるように視線を落としていたけれど、やがて意を決したように私を見た。
「もっと強くなりたいんだ。自分でこうしたいと思ったことが、何でもできるように」
「何か新しい目標があるのですか?」
「……うん」
殿下は頷いたものの、すぐには歩き出さなかった。
私が待っていると、殿下は少しだけ頬を赤くした。
「それで……アンジェリカが困ったときに、僕が助けられるようになりたいんだ」
その言葉に、胸の奥が温かくなった。
あの日、舞踏会で誰も私の気持ちを気にかけてくれなかったとき。殿下は、たった六歳の小さな手で、私の悲しみに触れてくださった。
――じゃあ、僕が一緒にいるよ。
あのときの言葉を、私は今でも覚えている。
そして今、殿下は自分の足で立ち、誰かを支えられる人間になろうとしている。
「ありがとうございます、ステファン殿下」
私は微笑んだ。
「殿下がそう言ってくださるだけで、私はとても心強いです」
「……それだけじゃ、だめなんだ」
殿下が小さく呟いた。
「え?」
「なんでもない!」
少し慌てた声でそう言うと、殿下は本を抱え直し、足早に歩き出してしまった。
私はその後ろ姿を見つめた。
いつの間にか、あんなにも背が高くなった。昔は私の手を握りしめていた小さな少年が、今では私の荷物を持ち、私を支えようとしてくれる。
これから先、殿下はもっと成長するのだろう。
いつか私の背を追い越し、私の知らないことを知り、私には思いもよらない未来を選ぶ日が来るかもしれない。
そのとき、彼がどんな顔で私を見つめるのか。
私はそれを、少しだけ楽しみにしていた。




