到来! 勇者パーティ!!
「ワッオ~~~~~ン!!! ワンワンワン!! クンクンクン、ワッオ~~~~~ン!!!」
動物の――犬――――の顔をし、眼鏡をかけた……人の形をした犬? 犬の形をした人? ――獣人? ――コボルト? ――魔人? ――魔族? ――魔導士? ――賢者? ――勇者ハロルドのパーティメンバーにて、犬獣魔族一の魔導頭脳の持ち主、その名は―――――
「ルキウス・ワンダッフーだ!!! ワン!!!!!!」
「「「「………」」」」
「わかったワン! さあ、ハロルド・S・アルヴァ! この辺りを剣で突くんだワン!」
冒険者ギルドの敷地内にある広場、そこで犬魔人――眼鏡をかけた犬の獣人ルキウスは、首を切られたドラゴンの身体の前で吠えていた――そして、一通り吠えるとドラゴンの身体の一部分を肉球のついた指で指さす――
「――了解」
ズブ! ビシャ!
ルキウスが指さした場所に勇者ハロルドが剣を刺しこむと、ドラゴンの身体から血が吹き出る――
「おい、ルキウス!! 僕の手に血がついたぞ!!」
「それでいいんだワン! さ、二人もこの血に触るんだワン!!」
ルキウスは、自分も吹き出た血を手につけると、一緒に来ていた少女たちにも声をかける!
「え~~……なんかやだぁ……」
「どうしても触らないと、ダメ?」
「さっさと触るんだワン! この町の呪いで身体が入れ替わってもいいのかワン!」
ルキウスは嫌がる二人の少女の手を引っ張り、強引にドラゴンの血をつける――
少女二人は手についたドラゴンの血を嫌そうに見つめる……
「で、ルキウス――この町にくるなりこんな事をした理由、ちゃんと教えてくれるね?」
剣についた血をぬぐいながらルキウスに問いかける勇者ハロルド――
「もし何の意味もないなんて言ったら、ルキウスの愛犬ロンナちゃんにルキウスの悪い所たくさんしゃべっちゃうから」
ハロルドといっしょにルキウスを問いつめるのは忍び装束に身を包んだ小柄な少女――
「それは勘弁してほしいワン、サリア・テレーゼ」
「あ、私は勇者パーティのかわいい担当、世間を騒がす噂の美少女サリアちゃん! よろしく!!」
サリアは周りにいた人たち――勇者到着の時にできた陥没と轟音で集まってきた街の住人たち他多数に向けて愛想のいい笑顔を向ける。
「あなたはかわいい担当じゃなくて新訪地の状況把握やダンジョンでのトラップ探知等の情報収集を主とするレンジャーでしょ! 今回は町中で起きた呪いの調査なんだから、サリアの役目はないはずなのに、ハロルドはなんでサリアを連れてきたの?」
「それは僕が女の子の肉体と入れ替わりたかったから!!」
ゴン!!
相変わらず欲望満載の勇者ハロルドの頭を杖で叩くマーシャ。
「うちの勇者がこんなのですいません! でも、この町にもたらされた呪いは私たちでどうにかしますので、ご安心を! あ、私は精霊魔法の使い手、マーシャです」
そう言ってマーシャもそこに集まる面々に頭を下げる――
「ま! この僕、Sランク冒険者勇者ハロルドがいるからには沈みゆく豪華客船に空飛ぶ魔法の使い手がたくさん乗っているくらいに安心だ!!」
「本当にそれ、安心できるの? 確かに空飛ぶ魔法があれば窮地脱出には便利かもしれないけど……種類にもよると思うな!」
サリアが、笑いながらマーシャを見る――
「何が言いたいのサリア……この町まで私の飛翔魔法で来たのに!」
「その結果がこのクレーターだよね?」
サリアが指さした先には、勇者パーティがこの町に来た時につけられた巨大な陥没穴がある――
「マーシャ・ハイネの精霊術は、少々力業な所があるのがタマに傷だワン」
「まあいいじゃん! マーシャの精霊術でここまでこれた、人にはそれぞれ得意分野がある――それらを合わせて僕たちはSランク冒険者パーティとなっているのだから!」
ハロルドがマーシャとサリアを背後から抱き寄せる――
「もう、ハロルドったら――」
「ちょっと! 痛いよ、ハロルド……」
顔を赤らめてそういう二人――まんざらでもなさそう……
「で、ルキウス! 僕たちがドラゴンの血で汚れたことには何の意味があるのかな?」
「ドラゴンは時々魔法を使うと言われているワン――だけどそれはドラゴン体内にある竜魔石と呼ばれる存在が、ドラゴンにかけられた魔法を……まるでオウムが人の言葉を繰り返すように、繰り返しているだけとも言われているワン――」
「竜魔石といえば、最高級マジックアイテムの……核に使われる、あれね――普通は自然死したドラゴンから採取するものだけど……」
「そしてこのルーンドラゴンという竜種はひときわ強く、そして多くの竜魔石を持っているワン」
「フムフム、ということは……町でおこっている人々の入れ替わりは、ルーンドラゴンにかけられた入れ替わりの魔法を、その体内にあった竜魔石が暴走して引き起こしている現象ってわけか?」
「ルーンドラゴンの竜魔石が繰り返している魔法は、意図していない物だワン。で、その血に触れた者は、その魔法に抵抗力を手に入れる事になる、と言われているワン」
そして勇者パーティたちはその場に集まっている呪いの被害にあった者たち、あわなかった者たちを見る――
「あ、確かに俺、ここに来る時ドラゴンの首を抱えてたから、血だらけだったな!!」
入れ替わっていない者代表として、エイトが言う――
「他に、ドラゴンの身体を運んだ冒険者の中にも血にい触れた者たちがいた――その者たちには確かに入れ替わりがおこっていなかった――」
「つまり俺様は、ドラゴン回収の時にいなかったから……ドラゴンの血に触れなかったから、貴婦人と入れ替わったというわけか!!」
「あれ? でも、私とギルドマスターはドラゴンの首が持ち込まれた時に入れ替わったでございますです――つまり、竜魔石は――」
入れ替わった事がある者たち代表数名が、勇者パーティたちの会話を聞きながらある答えに行きつく!
「ドラゴンの首の中にある!!」
ドタドタドタ!!
冒険者ギルド職員たち何人かが、ギルド内にあるドラゴンの首を取りに走る――
「ちょ、ちょっと待ってくれ!? わ、私と娘――パメラとの入れ替わりが元に戻らないのは、娘が私の身体でドラゴンの首触った時に血に触れたからなのか!?」
「え~~じゃあ触っちゃダメだったの?」
「そ、そう言えば私もドラゴンの首を確認した際手に血がついています!!」
「えええ!!? じゃあパメラちゃまは一生ジェイソル様の身体で生きろというのざますか!?」
「何たる悲劇!! できるなら俺様が変わってやりたい!!」
領主貴族一家+1が嘆き悲しんでるそばでこそこそとある女冒険者が、ドラゴンの傷から流れる血に、触れようとする――
「ちょ、ちょっと! あんたはまだアタシと入れ替わったまんまでしょうが!?」
「いや、戻ってる!! 戻ってるぞアタシは!!」
そんなごたごたが起こっている。
「う~~ん、これってノムラダマスの予言詩にある隣人を信じられるかってところだね……入れ替わってるのか戻っているのか……自己申告でしかないのだから」
「……わかったわ……ちょっと待って……“人の魔を映せし鏡を精霊の名のもとに顕現させる――”」
そんな様子を見たマーシャが精霊魔法を使う――
「“出でよ――エレメンタルミラー”!!」
ガッシャ!! ズウゥゥゥゥゥン……………
マーシャの魔法で、一枚の巨大な鏡が出現する!!
「ちょっと待ってね……魔力共に――魂が映る様に調整するから……ゴニョゴニョ……パッパ……リラリラ……」
「マーシャの精霊魔法って、時々わけがわからない場合があるよね」
「静かにしてなさい、サリア……ゲラゲラ、カンカン……ドッテンカイメイ―――――ハイ、これで肉体の中に別人がいるかどうか――映してわかるはず、よ――」
マーシャにそう言われ、ドラゴンの血に触ろうとした女とそれを制した男が鏡の前に立つ――
「ああ!!」
「うっ……」
鏡には、男女の姿の周りに流れるような光が写し出され――それがそれぞれ別の形になる――男には女の、女には男の光で作られた姿がが重なる――そして、元の身体と同じ姿も写し出されるが、それはかなり小さい――
「やっぱりあなた!! アタシの身体、盗もうとしていたのね!!」
「く、くそう!! 人生やり直すチャンスだったのに!!」
「ふざけんな!! アタイの身体を返せ!!」
自分自身を相手にもめ始める男女をしり目に別の人物が鏡の前に立つ――
「うう、パメラ……お父さんが必ず元に戻してやるからな!!」
少女の姿が鏡に映る。その姿の周りに漂う光が小さな少女自身と、少女の父親の姿を形作る――
「あ、ちっちゃなお父様もいるね! 何かあったらこのちっちゃなお父様に質問すればいいのかな?」
少女の父親の姿を映す鏡の鏡像には、愛娘と共に少女曰くちっちゃなお父様――ジェイソル子爵本人の姿もある――
「うおおおおお!? 俺様はこれほど大きく貴婦人に侵食されてるのか!!?」
Bランク冒険者のシックはかろうじて自分自身の形がほんの少し大きいものの、ほぼ同じくらいの大きさの貴婦人クララの姿も見える――
「わたくしの中のBランク冒険者のシックさんはこんなに小さく、わたくしの質問に答えてくれる程度なのに、不思議ざますわね」
シックと入れ替わっていた領主婦人クララには、婦人そのものの肩にチョコンと小さなシックが座っているというような感じで映っている――
「うう……私の中のもまだギルドマスターが中にいるでございますです……」
受付嬢のドナテラも、肩車のように自分の頭の上に乗っかっているギルドマスターゴライオスの姿に絶望する――まあ、それなりに小さいゴライオスがドナテラの頭の上で何かぶつぶつ言っているように見えるのはどこか危ない感じがするが……
「うむう……ワシの中のドナテラ成分はこの程度、か……しかも眠っておるようじゃ」
ゴライオスは自身の姿と共に映るドナテラが目を閉じ微動だにしないのを寝ていると判断したらしい――どちらかというと、必死にゴライオスの身体にいることから逃避しているように見える――
「この身体の周りをまわる光の渦――これが噂の魔力光流ですか?」
入れ替わりにあっていない家令のラッセルは、別人の姿が重なることはない――くるくると小さな光が体の周りをまわっているだけで時折その光がラッセルの姿になるだけだ――
「てか、俺も入れ替わっていないんだが?」
次に鏡の前に立ったエイト――
ドドドドドドドドド!!! ギュルルルルル!!! ビカビカビカ!! バリバリバリ!! ジュバババババ!!!!
「て、なんだこれ!?」
エイトを映す鏡――そこにはド派手な光の渦とその周りを踊り狂う小さなエイト本人の姿――なんていうのがあった――
「――!? え、何これ? これって……君、魔法使いなの? 魔力、かなり高いでしょ?」
サリアが驚いてエイトに問いかける――
「いや、俺は剣士のCランク冒険者エイトだ! 魔法使いじゃない!!」
「いやいや、これだけ派手な魔力を持っていて、魔法使いじゃないなんておかしいでしょ!? ――フルネームを教えてくれる? 私、知っているかもしれない!」
「はあ? 何でお前に俺のフルネームなんか教えなきゃならないんだ!? 俺は将来Sランク冒険者になるソードファイターのエイトだ!!」
「魔法の才能に気づいてないの? だったら今からでもジョブチェンジをするべきよ! あ、でも――マージファイターは剣と魔法、どちらもかなり中途半端になるからやめておいた方がいいけど!」
「何で見ず知らずのお前に俺のジョブを決められなきゃいけないんだ!?」
エイトとサリアが言い争っている中で、ドラゴンの首を取りに行っていたギルドの職員たちが戻ってくる――
「ええっと、ドラゴンの首を調べたけどどこにも竜魔石なんて物はない!!」
職員たちは、勇者ハロルドにドラゴンの首を手渡し言う!
「どれどれ……? ねえ、マーシャ! 竜魔石ってどんな形だっけ?」
「私たちが普段見ているものって、研磨されている物だからよくわからないけど、宝石の原石みたいな物だと思うわ」
「フム………ワッオ~~~~~ン!!!」
「「「「「!!?」」」」」
ハロルドと一緒にドラゴンの首を見、鋭い嗅覚でその匂いを嗅いでいたルキウスが、突然吠える!!
「アッゥオ~~ン!!!!! …………探知魔法に反応があるワン!!」
ルキウスはある方向を指さす――そこにはうすら笑いを浮かべながら歩いてくる一人の女がいた――
「……あの女が手に持っている物が竜魔石だワン!」
「――勇者ハロルド――どこにいる?」
女はそう言って、手に持っている石を指でつつく――
ポラリン♪
「「「「「―――――!!?」」」」」
その音と共にその場にいた何人かが反応し、何人かが動きを止めてしまう――
動きを止めない者は警戒するように身を構え、動きを止めた者は自分がどのような状況になっているか確かめようとする――
「う、うわあああ!! 俺様が幼女になってるぅ!!」
ひときわ甲高い叫び声が周りの人たちより低い場所から聞こえる――
「―――――ええっと、貴族の娘のパメラ、か? 中身は――?」
精霊鏡に映るパメラの周りにBランク冒険者のシックが大きく映る―――――
「おいおいおいおい!! イルダ!! お前一体何をやっている!!」
幼女の身体で歩いてくる女に向かって怒りの声を投げる!
「イルダ? 誰だ?」
今回も身体の交換から逃れたエイトが、問いかける――
「イルダ……この町の、Cランクの女冒険者の一人でございますです……Aランク冒険者と共に大型採取クエストに赴き、ドラゴンと遭遇――何人もの死人を出した先日の事件で生き残れたごくわずかな冒険者の一人――」
パメラの母親、クララの身体を使う誰かがそう言う――それは、冒険者ギルドの職員であれば、知っていてもおかしくはない情報―――――
「確か……元々はどこかの没落貴族出身だという触れ込みの女冒険者だ――噂では、Aランク冒険者に体を売ってその愛人ポジに収まっていたという話――」
「こらこらこら!! どこのどいつが愛しのパメラちゃまの身体を使っているかは知らないざますが、卑猥な言葉を口にしないでほしいざます!!」
幼女の言葉にギルドマスターの身体を使う誰かが叫ぶ!
「勇者ハロルド――はどいつだ――?」
そんな混乱中の者たちに、イルダと呼ばれた女が声をかけてくる――
「教えろ……勇者ハロルドは、どいつだ?」
「僕だけど――君は、誰なのかな?」
ハロルドが油断なく大剣を構えながらそう言う――
「その姿……本来のあなた、じゃないのでしょう?」
マーシャも、ゆっくりと杖を構える――
「ふざけたにおいがするワン――人間とも魔族とも違う臭いが――」
ルキウスが肉球のついている手を地面につける――
「イルダ――自称没落貴族――だっけ? 残念だけど、貴族名鑑に該当者がいないよ」
忍者装束には似合わない二振りのサーベルを取り出す――
エイトが、精霊鏡を歩いてくる女の方に向ける――
「―――――!? な、何だこの男!?」
精霊鏡に、イルダの姿が映る――だが、本来この世界の人間になら多少はあるはずの魔力流が、映らない――
そのかわり――イルダという女の姿に重なるように、奇妙な男の影が映る――
「オレは……この世界を救う勇者となるために、異世界――日本からはるばるやってきた転移者だ――勇者ハロルド、お前の身体を、オレによこせ!!」
ポラリン♪
夢を見たのは何年ぶりの事か?
「ローダンは、私の恋人」
14歳の少女にとって、ほんの少し年上の冒険者を目指す少年はとても眩しく見えたのた。
「今は初心者のⅮランクだけど、絶対Aに……いや、勇者に並ぶSランク冒険者になる!! そしたらお前を迎えにくるから……結婚しようぜ! リエット!」
うれしかった――私にはローダンしかいない、そう思っていた……
「今回の仕事はお貴族様からの依頼で、Aランク冒険者も参加する大型採取クエストだ! 俺は絶対に成果を出してCランクに上がってやる!」
ローダンなら、絶対に大丈夫! 私たちには明るい未来がきっと待っている!!
そう、思っていた……
「街道にドラゴンが出た!! 街道に、ドラゴンが出た!!」
ワシが頼んだとおり、あの若い門番は貴族の屋敷にちゃんと連絡を入れてくれたようだ――
「ドラゴンは、はぐれ一体――討伐は完了、冒険者の死者、多数――負傷者数名は救護院で治療中――」
私、救護院に行ってみたの……絶対、生き残っている人たちの中に、ローダンがいるはずだって、信じてた、から…………
ワシは……知っている――町を出た冒険者が、帰ってこないのは珍しい事ではない……
「でも、いなかった、救護院に、ローダン、いなかった……私、どうしていいのかわからなくなった……先輩のメイドにお屋敷に連れ戻され、切り替えて仕事しなさいって、言われたけど、けどけど、けどけどけど――――――――」
「私も、死んじゃおうッて思ったの…………」




