Cランク冒険者エイト
とある王国の辺境にある比較的大きな町――地方貴族のジェイソル子爵が治めるその町に、とんでもない騒動がおころうとしていた。
その始まりは、1人の若い冒険者が町にやって来た事だ。
その冒険者は、たくましい体つきをしていたが、全身汚れていて、必死なって町にたどり着いたという感じだ―――――そして、その腕の中に―――――ドラゴンの切り落とされた首を持っていた―――――
「門を開けろ!! 冒険者ギルドに緊急クエストがある!!」
その若い冒険者は、町の入り口の門まで全力で走ってくると、門のところにいた門番2人に向かってこう叫んだ!!
「と、止まるのじゃ!! お前さんは、何者じゃ!? そのドラゴンの首はなんじゃ!?」
2人の門番――そのうち、老人の門番が男に問いかける。
「俺はエイト! Cランクの冒険者だ!! 緊急クエストだ!! この町の冒険者ギルドどこにある!?」
「え? 門を通ってすぐ左手にある建物がそうだけど? でかい看板があるからすぐわかるよ」
もう1人の若い門番がエイトの問いかけに対し、そう答える。
「そうか! ならすぐに門を開けろ!! これについて急いで人をかき集めなきゃいけない!!」
「ひ、ひえ!! う、うわぁ~~!!」
ドラゴンの首を若い門番に突きつけエイトが叫ぶ! エイトの体を汚していたであろう血が飛び散り、それが若い門番にもついてしまい彼は悲鳴を上げてしまう!!
「まだ、首を落としてから時間が経っていないようじゃな」
一歩二歩引いて、そのドラゴンの首を見ていた年老いた門番がそうつぶやく――
「ああ、この町に向かう街道沿いで、ドラゴンと冒険者たちの戦いがあった!! 死者多数!! だがまだ生きてるやつもいる!! 俺1人じゃ運べないから助けを呼びに来た!!」
「なんじゃと!! ドラゴンは一頭だけのはぐれかの!? まさか……複数頭の群れ、かの!!?」
「ひぇ!! ドラゴンが群れでこの町に向かって来ている、とか!?」
事態を把握した門番たちも慌てて門を開こうとする!!
「わからん!! そういう事も含めの緊急クエストだ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴ……………
「あ、あそこが冒険者ギルドだ!!」
「わかった!!」
若い門番が指さした先にエイトは全力で駆け込んでいく!!
「……お前さんは急いでお貴族様に報告するんじゃ!! ドラゴンの群れがこの町に来るかも知れん、と!!」
急いで冒険者ギルドへ駆け込んでいくエイトを見ながら、年老いた門番は若い門番にそういう!
「じ、爺さんは!?」
「ワシはここで町に近づくドラゴンがいないかどうかを見張る!! 何かあったら信号弾を上空に打ち上げるから、この門の方向にはずっと注意しておくのじゃ!!」
「わかりました!!」
若い門番はそう叫ぶと、一目散に貴族の館に向かって走り出した!
バアン!!
冒険者ギルドの扉が勢いよく開かれる!!
「ギルドマスターはいるか!? 緊急クエストだ!!」
飛び込んできた青年冒険者――エイト――がそう叫ぶ!
「この町に続く街道で何人かの冒険者がドラゴンと遭遇!! 打ち倒し、首を切り落としたものの、死者負傷者多数!! そして―――――群れがいる可能性がある!!」
そう言ってエイトは持っていたドラゴンの首をそこにいた冒険者やギルドの職員に見えるように掲げて見せる――!!
「「「「「――――――!!!!!」」」」」
クエスト帰りの冒険者たちや、簡単なクエストを探していた冒険者たち――そして、ギルドの職員たちは見せられた物の衝撃で沈黙する!!
「こ、これはこれは、Cランク冒険者様!! 随分ととんでもないものをお持ちしてくださいましたね!!」
ギルドの職員の一人――若い受付嬢が、顔を青くしてエイトの所にやってくる。
エイトの胸にある冒険者プレートを見て彼の冒険者ランクを確認、そして彼の持ってきた物――ドラゴンの首――に目を向け、すぐそむける――
「取り合え、対応は受付嬢のドナテラがさせていただきます――」
「受付嬢に何ができる!! 緊急クエストだと言っている!!」
普段は商人からの採取依頼や簡単な討伐クエストしか取り合わないのだろう――緊急時の対応がまったくなっていない若い受付嬢の対応にエイトは激高する――
「ドラゴンの生首……間違いなく死んでるんだよな!?」
「てか、なんつうもんを持ってきてるんだよ!?」
「たしか、今日はAランク冒険者のあいつが複数人の冒険者をつれて大型採取クエストに行ってなかったか?」
「そう言えば、あいつらはまだ帰ってきて、ないよな……?」
周りにいたギルドの冒険者たちがエイトが持つドラゴンの首を見てヒソヒソと言い合う。
「そのAランク冒険者って、このプレートの持ち主か!?」
まだ少し血が流れているドラゴンの首をテーブルの上に置いたエイトが持っていた冒険者プレートを見せつける!!
「これは、まさか……!?」
「すぐに緊急クエストを発動させろ!! 転がってる連中が死ぬかも知れないぞ!!」
「転がってるって……」
「ドラゴンと、戦ったって事か!?」
「俺らも、あいつについていってたら今頃……」
「てか、ああいうドラゴンって普通群れで行動する、よな?」
「じゃあ、あれ一頭だけじゃねえって、ことか!!?」
周りの冒険者たちもひそひそと自分たちの考えを口にする。
「まだ生きてるかもしれないし、ドラゴンの群れがいるかもしれない!! だから早く緊急クエストを出せ!!」
「ええっと、それじゃまず、クエスト発注書類に必要事項を書いてくださりますか?」
「それじゃ間に合わない!! だから、ギルドマスターを呼び出して、緊急クエストをだせと言ってるんだ!! わかっているのか? 受付嬢のドナテラさんよ!!」
エイトがそう叫んだ瞬間だった―――――!
ポラリン♪
突如、おかしな音が聞こえる――その音に青年や受付嬢、周りでヒソヒソしていた冒険者たちも一瞬静かになる――そして、ざわめく――
「―――――ワシがこのギルドのギルドマスター・ゴライオスじゃ!! 緊急クエスト発動じゃ!!」
「へ?」
受付嬢のドナテラいきなり叫び、のっしのっしと歩き始める。
「あの? ドナテラ?」
「何を言っておる!? ワシはギルドマスターのゴライオスじゃ!!」
エイトは突然ギルドマスターのゴライオスと名乗り、歩き出した受付嬢をけげんな表情で見る――
「疲れてるかもしれないところを悪いが、そのドラゴン首から下がある場所まで案内してくれ!!」
受付嬢は壁に飾ってあったでかい戦斧を手に取ると入口に向かう。
「手の空いてる者は一緒に来てくるのだ!! エイトといったな! 案内を頼むぞ!!」
「あ、ああ……わかった!!」
受付嬢の突然の変貌に少々面食らったが、一刻も早く行動しなければならないと思い、ドラゴンの首をテーブルの上に置いたままエイトも動く――
だが、周りの者たちの反応はまちまちだった――冒険者たちと職員たちの一部は、受付嬢のドナテラやエイトと一緒にギルドを出ていくが、まったく動かないものもいる――
「おおぅい!! 急げぇ!!」
どこにそんなパワーがあるのか? 片手で戦斧を持つと受付嬢のドナテラは、エイト他一部の冒険者を連れてギルドを出る――
しばらくして――
ドンガラガッシャ~~ン!!!!!
残された者たち――けげんな顔をしながら事態の把握をしようとしている人たちの所へ、ギルドの二階へ続く階段から1人の大柄なおっさんが転がり落ちてくる!!
「何が起こったでござりますか~~~~~!!!?」
そう言って転げ回るおっさんのネームプレートには、『ギルドマスター・ゴライオス』と刻まれていた―――――




