エピローグ
春の午後。
公園のベンチに、彩葉と煌希が並んで座っていた。その間には、小さな男の子——耀理が立っていた。
まだ幼いけれど、瞳はまっすぐで、笑顔は太陽みたいに明るかった。彼の髪は彩葉に似ていて、柔らかくて少しだけ癖がある。でも、その瞳の色は煌希そっくりだった。鮮やかで、どこか人を惹きつける光を宿していた。
彩葉の空のような青に、煌希の鮮やかな光が重なって生まれた色。
耀理の色は、鮮やかだけど柔らかくて、他の色を包み込むような、優しい輝きだった。
「ねえ、見て!あっちに桜が咲いてるよ!」
耀理が指をさして、はしゃぐように言った。彩葉は笑って頷いた。その笑顔には、あの日の安堵が重なっていた。
耀理が生まれたとき、彩葉はほっとした。色が、確かにあったから。
彩葉の中に、煌希の中に、そしてその重なりの中に――ちゃんと、光が生まれていた。
煌希は、耀理の頭を優しく撫でながら言った。
「君の色は、ぼくたちの色だね。でも、君だけの色でもある。すごくきれいだよ」
耀理は、照れくさそうに笑った。
その笑顔を見て、彩葉はふと空を見上げた。彼女の色は、今も空のように薄かったり濃かったり、不安定だった。でも、それでも煌希の隣で、確かに輝いていた。
それは、2人の“ひかり”。
彩葉と煌希の色が重なって生まれた、未来そのものだった。
風が吹いて、桜の花びらが舞った。
耀理はそれを追いかけて走り出す。ベンチの近くでは、近所のおばあちゃんが「耀理ちゃん、元気ねえ」と笑いかけてくれる。保育園の先生が通りかかって「またお花見しようね」と声をかける。耀理は、みんなに愛されて育っていた。
その笑顔は、誰かの色を照らすように、まっすぐに広がっていた。
彩葉は、煌希の肩にもたれながら、ぽつりと呟いた。
「……私、幸せだな」
煌希は、少し笑って言った。
「そんなの、俺がいるから当たり前でしょ?」
彩葉は、くすっと笑った。
「うん。そうだね。でも、耀理がいてくれるから、もっと幸せ」
煌希は頷いて、彩葉の手を握った。
「じゃあ、ずっと一緒にいよう。耀理の色がどんなふうに変わっても、ちゃんと見ていこう」
2人は立ち上がり、耀理のあとを追って歩き出す。その背中には、3つの色が並んでいた。
静かな青、鮮やかな光、そしてその重なりから生まれた新しい色。
彩葉の物語は、まだ続いていく。
それは、誰かの影ではなく――自分自身の色で描く、静かで確かな人生。そしてその隣には、煌希がいて、耀理がいた。
3つの色が重なって、未来を照らしていた。
3人の歩幅は、少しずつ重なって、やがてひとつの道になっていった。
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