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第13章

私は、どうしたいんだろう。どうしたらいいんだろう。

手のひらを見つめる。指先をぎゅっと握る。そこに確かな、感触がある。私は、ここにいる。でも、それを誰かに伝える方法が、わからなかった。

彩葉の中で煌希の言葉が、胸の奥で響いてる。


「君の色を見たい」


そんなこと、言われたの初めてだった。でも――彩葉は、無色でいたかった。

誰にも染まらず、誰にも触れられず、ただ静かにそこにいるだけ。それが、彩葉の居場所だった。でも、無色透明は――この世には、いない。

それは、存在しないってこと。誰にも見えないってこと。

それが、親の一番の心配だった。


「彩葉は、ちゃんとここにいるの?」

「誰かに見つけてもらえるの?」


彩葉は、見つけられたくなかった。でも、見つけてもらえないことが、こんなに苦しいなんて、知らなかった。

陽向は、彩葉を守ろうとしている。“妹みたい”って言ってくれた。その言葉に、少しだけ救われた。でも、煌希――彩葉の“色”を見たいって言った。

それは、彩葉の“存在”を見たいということなのか。

彩葉は考える。

私は、どうしたいんだろう。どうしたらいいんだろう。


《もし、ほんの少しだけ色がついたら――それは、誰かに見つけてもらえるってことなのかな。それとも、壊れてしまうってことなのかな》


彩葉は、まだ選べない。でも、もう“透明”だけではいられない気がした。

陽向に言われた言葉が、まだ胸の奥でくすぶっていた。

「彩葉は色見本じゃない」——その通りだ。煌希はわかっている。

 陽向の言葉は、優しかった。守ってくれるようで、安心だった。でも、どこかで違和感もあった。私は、守られるだけの存在じゃない。誰かに見られたい。誰かに、触れてほしい。

そんな気持ちが、少しずつ彩葉に芽生えていた。

煌希は自分の色が貴重なものだということを理解している。自分の色は、鮮やかすぎるほど鮮やかだ。誰かの目に映るたびに、濃く、強く、輪郭を主張する。

それは時に羨望を呼び、時に距離を生む。でも――彩葉は違った。

あの子は、あまりにも色が薄い。まるで無色透明。そこにいるのに、いないような存在。昔話に出てくる“見えない人間”のようだ。自分ではどうにもならない。親ですら、見つけるのに苦労すると聞いた。そんな子が、本当に存在するなんて――――煌希は知らなかった。

煌希は、様々な色に囲まれて生きてきた。誰もが何かしらの色を持っていて、それを見せ合いながら関係を築いていた。でも、彩葉は違った。彼女は、そこに“いるだけ”だった。

色を持っていても、持っていなくても――煌希にとっては、どこか遠い存在だった。だからこそ、気になったのだ。無色透明に近い彼女が。

その“いなさ”が、逆に煌希の目を引いた。見えないはずなのに、見えてしまう。まるで、静かな音楽のようだった。派手な旋律じゃない。でも、耳を澄ませば、確かにそこにある。彩葉の存在は、煌希にとってそんな風に響いていた。見えないはずなのに、心に残る。それが、気になって仕方なかった。

存在しているのに、存在感がない。

陽向の言葉が、また胸に響く。

「彩葉は色見本じゃない」――でも、色がなければ、見つけられない。じゃあ、彩葉は?彼女は、どうやって“ここにいる”ことを証明するのか。

煌希は、まだ答えを持っていなかった。ただ、彼女の“いなさ”に、確かに惹かれていた。

それは、色の濃淡では測れない、もっと深い何かだった。

彩葉の胸の奥に、何かが灯り始めていた。

それは、まだ名前のない感情。でも、確かに“色”を感じた。淡くて、揺れていて、――消えることがないものだった。



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