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プロローグ

異世界転生ものの予定ですが、ちょっとずれてるかもしれません。楽しんでいただけたら幸いです。

 この世界は、色がすべてだ。

生まれてから死ぬまでの間、人にはそれぞれの色が与えられる。それは、個人の色。濃いほど、鮮やかなほど、魅力的に映る。

誰かの目に留まり、誰かの心に残る。

けれど、彼女には色がなかった。生まれながらに無色透明な彼女は、誰にも認識されることはないと思っていた。

 色を指摘されれば、一言だけ告げる。


「淡いだけだから」


 それは、親に心配をかけたくない思いから。それは、彼女の精一杯。

親に教わったように、彼女は色を持っている“ふり”をする。そうしなければ、彼女は消えてしまう。だから彼女は、必死に色をつけようとする。

彼女は、物語の外側にいる。透明な彼女は、自分の役割を理解している。

 ここは、大好きだった小説の中。

『あなたの色が輝くとき』——通称『いろどき』。

彼女は、名前も出てこないモブキャラの1人。ずっと、そう思っていた。でも、ほんの少しだけ――ほんの少しだけ、願っていた。

 誰かが、自分の色に気づいてくれる日が来るかもしれないと。

 今日は、彼女にとって待ちに待った日。大好きな物語が始まる日。あの2人が入学してくる。煌希と澄華。小説の主人公とヒロインが入学してくる日。

彩葉は息を潜めて、中庭で2人を待つ。彼女の色は無色透明。まだ、色はない。だからこそ、誰にも見つからない。見つけられない。

 でも――それでも、見届けたいと思った。この物語の始まりを。そして、もしも許されるなら――ほんの少しだけ、自分の色が揺れる瞬間を。

 彩葉は思う。

私はこの物語を見届けてみせる。

それが、私にできる唯一のことだから。



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