表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

プロローグ

『大変お待たせいたしましたッ!』


その声は、よく通るものだった。


『私がこのゲームの主催者。まぁご気軽に、“仮面の男“とでも呼んでください』


男にしてはトーンの高いその声は、テレビで見る司会者のそれに似てる。

ただ一つ違ったのは、それがどこか乾いていて、冷酷さを含ませるということだった。


「……」


男の声で目が覚めた彼女は、少しイラついたように布団を投げ飛ばしてベッドから降りる。

そして彼女は自室からリビングに繋がる扉を開けた。


『それでは早速ですが、第一ゲームの説明にうつさ、れ、あっ…』


女の目に映ったのは、どこにでもあるマンションのリビング。その真ん中に立つ、怪しげな仮面を着けた男。

長いハットやディーラー服は痩せ型長身の彼によく似合っており、怪しげで只者じゃない雰囲気を醸し出していた。

しかし下半身は、短パンジャージ。白い肌に生えるすね毛は、上半身とは似ても似つかないだらしなさである。


「あーまた詰まったー!ラ行嫌いッ!!」


男はグリーンバックを背にキレていた。怒りの矛先は彼の手にあるペラ紙。

セリフが書かれているらしいそれには、他にもアクセントなどの注意点がメモされていた。今は忌まわしきラ行にマーカーを引いている。


「滑舌緩いからなー最近」


彼の目の前にあるのは三脚とスマホ。どこかのインフルエンサーのように、円形のライトまである。

それら機材の位置から言えば、確かに下半身の正装は必要ないかもしれない。


「……」

「あ、おはよ。起こしちゃった?」

「うん」


男はやっと女の存在に気づき、そして仮面の下で優しげに微笑んだ。

その声はどこにでもいる優男という調子で、先程の底知れなさとはかけ離れている。


「なんか食べる?もう夕方だけど」

「ロールキャベツ」

「好きだねぇ。それ面倒くさいんだけど……」


そう言ってため息をついた男は、高そうなベストをソファに放り、キッチンへと向かった。


仮面を着けたまま料理の準備をし始めたその男は、紛れもなく女の恋人であった。


「いつもありがとう」

「それ言えば許されると思ってるよね?」


仮面越しに睨まれたその女は、伸び切ったタンクトップにパーカーを羽織り、長い髪を雑に括った無表情。毎日寝こけて家事すらしない正真正銘のヒモニートであった。


「ったくー、こっちは新しいゲームの準備で忙しいって言うのに」


そして、彼らの生活を支えているのは、男が主催するデスゲームの収入だった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ