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メリトクラシア  作者: Lancer
第5章:希望の階段
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【相談室RADIO 第9回】★深淵の囁きと選ばれし者の決意★

こんばんは、アイリスです。

今回は、審問庁のヴィオラさんをお迎えして、“選ばれし者”と深淵の囁きについて語ります。

夜空に赤い月が昇るとき、静かに響く声……。

それは導きなのか、試練なのか――。


どうぞ、耳を澄ませてお聴きください。


【BGM:静かなストリングス → ゆっくりフェードイン】

 アイリス:「皆さんこんばんは、『メリトクラシア・ラジオ』のお時間です。MCのアイリスです」

 その声は、どこか慎重に選ばれた響きを持っていた。



「前回は“街に潜む噂話”をテーマに、デイジアさんと賑やかにお届けしました。……あの赤い月の話、覚えていますか?」

 マイク越しに問いかけるようにして、少し間を置く。

 裏ネクサス(低く):「影は、足音を立てない。立てる必要がないからだ」

 アイリスは小さく笑い、「……今夜は、少し真面目な話をします」と続けた。


「お迎えするのは、審問庁のヴィオラさん。秩序と規律を守る立場から、“選ばれし者”についてお話しいただきます」

【SE:紙をめくる音】

 アイリス:「ヴィオラさん、こんばんは」

 ヴィオラ:「こんばんは。……今夜は、軽い話は用意していないわ」

 アイリス:「構いません。むしろ、皆さんもきっと知りたがっていると思います」

 裏ネクサス:「知ることは、時に耳を汚


す。だが、耳は塞げない」

 アイリス:「……それでも、聞く覚悟のある方は、このままお付き合いください」


【BGM:ほんの少しトーンダウンし、次セクションへ】



【BGM:淡いピアノ、間を大切に】

 アイリス:「“選ばれし者”って、噂ではよく耳にします。でも……実際はどういう存在なんですか?」

 ヴィオラ:「選ばれる、というより……“選び取られる”の。環境や偶然、そして本人の選択によってね」

 アイリス:「本人の選択……」

 ヴィオラ:「ええ。本人が知らないうちに門をくぐっていることもある。自分の足で歩いているつもりでも、門はいつの間にか背後で閉じるわ」

 裏ネクサス(低く):「開いた音は聞こえない。閉じる音だけが響く」


 アイリスは息をのみ、視線を落とす。

「……それは、幸運なんでしょうか」

 ヴィオラは一拍置いて、ゆっくりと首を横に振った。

「試練よ。幸運であってほしいと願うのは、傍にいる者の祈り」

 アイリス:「傍にいる人……」

 ヴィオラ:「“見届ける者”とも言うわ。選ばれた誰かが目を逸らさないよう、静かに支える役目」

 裏ネクサス:「支える手は、時に突き落とす手と同じ形をしている」


【BGM:一拍置き、薄くフェード】



---



【SE:遠くで鐘の音】

【BGM:低弦が静かに鳴り始める】


 裏ネクサス(低く):「赤い月の夜を、君は見たことがあるか?」

 アイリス:「……いいえ。でも、あの夜を見た人は、何かの声を聞いたと……」


 ヴィオラ(ゆっくり):「囁きよ。風だと自分に言い聞かせる人もいるけれど――本当は違う」

 アイリス:「……違う?」

 ヴィオラ:「その声は、境界の向こうから届く。問い返してはいけない」


 アイリスは息をのむ。

「問い返すと……どうなるんですか」


 ヴィオラは答えず、逆に問うた。


「あなたは――誰かに名前を呼ばれたら、振り向くタイプ?」


 アイリス(戸惑い気味に):「……たぶん、はい」

 ヴィオラ:「なら、答えを返した瞬間にはもう遅いわ。相手の輪郭が、こちら側に寄ってくる」


【SE:空気がわずかに圧を増す演出】

 裏ネクサス:「輪郭は、境界線を食べる」


 アイリス(小さく繰り返す):「……境界線を、食べる……」

 【SE:無音。短く呼吸音だけが響く】


 ヴィオラ(少しだけ声を和らげて):「覚えておいて。“答えを欲する心”は、扉の鍵になる」

 アイリス:「……扉の向こうに何がいるかも分からないのに?」



 ヴィオラはわずかに微笑む。

「そう。でも――もしかしたら、それは救いかもしれない」


 裏ネクサス(低く):「鍵穴は気にしない。開くことだけが意味になる」


 ヴィオラは一呼吸置き、短く結んだ。

「だからこそ、深淵は人を試す」

【SE:低弦に微かなコーラスが重なり、次セクションへの入り口を用意】



---


【SE:微細な風の通り道/BGM:薄い合唱パッド】


 ???(微かに、女性の声):「選ばれし者よ――契約の時は近い」


 【SE:一瞬の無音】

 アイリス(驚き):「……今の、声……」


 ヴィオラ(即座に):「気にしなくていいわ。ここでは、音が遊ぶことがある」

 裏ネクサス(低く):「遊び相手を間違えた音は、すぐに孤独になる」


 アイリス(呼吸を整えて):「……でも、確かに聞こえました。皆さんにも――」


 ???(重ねるように、より近くで):「目を逸らさないで。深淵は鏡。覗くのは、あなた」


 【SE:軽いハウリング→即カット】

 ヴィオラ(低く、苛立ちを押し隠して):「……収録環境、調整を」

 アイリス(小声で):「はい……」


 裏ネクサス(淡々と):「名は、まだ呼ば


ない。名を呼べば、場所が決まる」


 【BGM:コーラスが引き、低弦だけ残る】



---

【BGM:静かなピアノ+低弦、やや前向きに】


 アイリス:「……ヴィオラさん。もし“囁き”に呼ばれた人がいたら、どうすればいいんですか」


 ヴィオラ:「後戻りはできない。けれど、歩幅は選べるわ。早足で傷を増やすか、息を整えて進むか」

 アイリス:「歩幅を……選ぶ」

 ヴィオラ:「そして、ひとつだけ約束して。――目を逸らさないこと」


 アイリス:「……もし、恐くなったら?」

 ヴィオラ:「一度だけ目を閉じていい。でも二度は閉じない」


 裏ネクサス(低く):「二度目は眠りだ。目覚めは約束されていない」


 アイリスは短く笑い、吐息を整えた。

「怖いけれど……優しい言い方ですね」


 ヴィオラ(淡く、しかし確かな声で):「私は見届ける。誰かが選ばれてしまったのなら、最後まで。……それが、私の仕事」


 アイリス:「ありがとう、ヴィオラさん」


【SE:深呼吸の効果音。BGMが少し明るみに】



---



【BGM:余韻のストリングス】


 アイリス:「……さて、そろそろお別れの時間です」

 デスクの上の原稿を軽く叩き、彼女はマイクへと視線を向ける。

「皆さんは――深淵の声を、信じますか?」



 裏ネクサス(低く):「信じるな。けれど、否定もするな。どちらも扉の鍵になる」

 アイリス(微笑む気配):「器用ですね、あなたは」


 ヴィオラ:「今夜はここまで。どうか平穏な夜を」


 ???(遠く、しかしはっきりと):「また会いましょう、選ばれし者」


【SE:遠ざかる風】

【BGM:低い鐘の音が一度だけ鳴る】


 アイリス:「次回――『夜の契約と囁く声』。誰と、何を、交わすのか……お楽しみに」


【BGM:フェードアウト/END】



---




お聴きいただきありがとうございました。

深淵の声は、恐ろしくもあり、どこかで救いを求めているようにも思えます。

ヴィオラさんの言葉を借りれば、それは「試すもの」。

皆さんなら――問い返してしまいますか?


次回は【相談室RADIO 第10回】★夜の契約と囁く声★。

いよいよ「契約」という言葉が意味を持ち始めます。どうぞお楽しみに。

#メリトクラシア #ラジオ回 #異世界ファンタジー

@BrcbGhpxvO660fL


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