【第25話】★ノウス近衛の影★
【決闘の影、動き始める審問庁──】
前話で描かれた決闘の余波が残る中、ジェイドはついに“特例昇格”の承認を受けます。
しかしそれは同時に、彼が「監視される側」の人間になったことを意味していました。
今話は、ロータス直属近衛たちが水面下で動き出し、ジェイドの進む道に新たな緊張が生まれるエピソード。
光と影が交錯する、学園編本格始動前の“静かな波紋”をお楽しみください。
王都の空気は昼よりも冷えていた。
決闘が終わってなお、街の空気にはどこか張り詰めた緊張が残っている。
ジェイド・レオンハルトは、黒い馬車の中で膝の上に置いた両手を見つめていた。
指先にまだ、あの戦いの余韻が微かに残っている。
(……勝った、のか。けど……)
勝利の実感よりも、背筋を這い上がる冷たい感覚が強かった。
「この先、君が進む道は平坦ではない。」
向かいに座る銀髪の女、ユミナが口を開いた。
彼女はロータス直属の近衛であり、審問庁への窓口を兼ねる存在だ。
「試験の“特例措置”として、君には早期進学が承認された。」
「……」
「だが同時に、君は『功績認定』と引き換えに監視対象となる。」
ジェイドは小さく頷く。
受け入れる以外の選択肢はなかった。
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屋敷の会議室には、さらに二人の近衛がいた。
黒い外套をまとい、冷徹な目を光らせる男。
その名はグラウス。
そして隣に立つユミナの気配も、いつもより厳しさを増している。
「……決闘での魔力暴走は未然に防がれた。しかし潜在値の異常は隠しきれない。」
グラウスの低い声が部屋を震わせる。
「認定対象は保護の価値がある。だが、同時に脅威にもなり得る。」
「……」
ジェイドは視線を上げる。
その双眸は、まだ揺れていない。
けれど、拳は無意識に握り締められていた。
「この先は審問庁も動く。覚悟しておけ、レオンハルト。」
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【記録官ヴィオラ視点】
「対象No.134、特例昇格承認。功績評価:適正。潜在値:観測継続。」
「ロータス直属近衛により進学措置処理中。引き続き監視。」
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「……ありがとうございます。」
ジェイドの声は小さいが、確かだった。
彼はこの瞬間、正式に“選ばれる側”へ足を踏み入れたのだ。
まだ見ぬ階段を登るために。
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審問庁ファイル:No.134 - J・レオンハルト
分類:要監視対象
- ステータス:特例昇格候補
- 魔力量:潜在異常値観測中
- 備考:功績認定により早期進学承認済
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
この第25話は、ジェイドが“特例昇格”の承認を受け、士官学校編への橋渡しをする重要回でした。
物語はいよいよ学園・派閥・そして「審問庁の影」が色濃くなる第26話へ。
次回からはアイリス視点も交えて、よりキャラクターの心情が深堀されていきます。
また、補足情報や伏線解説は【NOTE公式アカウント】で公開中です。
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