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メリトクラシア  作者: Lancer
★【第4章】《学園編》★ テーマ:階級を超えた友情と成長
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★いらない子なんかじゃない★番外編②(アニメ化想定リライトVer.)

その一言を、言わせてはいけなかった。


その涙を、流させてはいけなかった。


これは、“ただの保護”ではない。

少年が心に刻んだ、たった一つの“誓い”の夜。


――誰かにとっては、ただのセリフ。

でも、ある誰かにとっては、それが「救い」になる。


あなたの心にも、そっと届きますように。

夜の帳が屋敷を包み、静寂だけが残された。


アイリスは、布団の中で身をすくめるようにしていた。

目を閉じても、眠りは訪れない。


グローリア試験が終わり、ジェイドのもとに保護されて数日。

彼の優しさに、何度も救われた――それでも。


(……わたし、役に立っていない。

 魔力の封印も……邪魔じゃないかって……)


唇が、震える。

掛け布団の奥で、ぽつりと、呟いてしまった。


「……ご主人様、わたし……いらないんじゃ……」


その声は、本当に小さなものだった。


けれど。

隣の布団で眠っていたはずの少年が、ゆっくりと起き上がる気配がした。


「アイリス、今……なんて言った?」


その声には、わずかに怒気がこもっていた。


「……もう一度、自分の言葉で言ってみろ」


アイリスの身体が、びくりと震える。

喉が詰まり、言葉が出ない。


「……ごめんなさい」


「ごめんなさい、ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……!」


頭の中が、後悔と恐怖でいっぱいになる。

けれど、もう遅い――彼は聞いていた。


「……ちゃんと、オレの目を見て話せよ。

 もう一度、言ってみろ」


目が合った瞬間、こらえていたものが、あふれた。

視界が滲んで、心が崩れる。


「……わたし、いらない子なのかなって……」


その瞬間だった。

ジェイドは、迷わず彼女を抱きしめていた。


「――違う。

 アイリス、お前はいらない子なんかじゃない。

 二度と……その言葉を、口にするな」


ぶっきらぼうで、不器用で、でも――温かくて。


アイリスは、ジェイドの腕の中で咽び泣いた。

自分が“必要とされた”ことの実感に、涙が止まらなかった。


「……ごめんなさい、ごめんなさい……」


その晩、彼女は、しばらく泣き続けた。


ジェイドは、ただ静かに、その涙を受け止めていた。


そして――彼の瞳に、かつての記憶がよぎる。


(「ずいぶん不服そうだね。戦争奴隷のくせに、偉そうじゃないか」)

(「また、あの商人のところに送り返してやろうか?」)

(「……いや、もっと酷い場所に売ってやってもいい」)

(「い……いや、やめて。やめてください……!」)


胸の奥に、怒りが滾る。


(ふざけやがって……)


(あのクソ野郎、絶対に許さねぇ……!)


――もう二度と、アイリスにそんな涙は流させない。

――もう二度と、あの言葉を、吐かせない。


「アイリス。お前は……オレの“奴隷”だ。

 オレが“ご主人様”だ。

 だからもう――“いらない子”だなんて、言わせない」


夜の静けさの中。

ただひとつの誓いが、炎のように灯っていた。



今回のリライトは、いつか“映像”で届けられることを強く意識して構成しました。


アイリスの「……いらない子なんじゃ」に込められた絶望。

ジェイドの「お前はオレの“奴隷”だ。だから守る」という反逆の温かさ。

そして、二人が“もう二度と”を共有する決意の夜。


この回が、読んでくれたあなたにとっての「何か」を照らす灯になれば嬉しいです。


次回、本編でまた会いましょう。



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