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メリトクラシア  作者: Lancer
番外編3
29/88

★【特別章】審問庁記録ファイル:No.134 - J・レオンハルト★

【特別章|審問庁記録ファイル No.134 - J・レオンハルト】


本エピソードは、本編第23話《決闘記録》の裏側──

国家審問庁による記録資料として、ジェイド・レオンハルトの“観測データ”を描いた特別章となります。


読者の皆様には、どうか“記録する者たちの視点”を通じて、

彼の剣に宿る「もうひとつの真実」を感じ取っていただければ幸いです。


※本章は【黒封ファイル】扱いとなるため、一部演出にて黙示構造(情報の省略・暗示表現)を含みます。


特別章:審問庁記録ファイル No.134 - J・レオンハルト

【セクション1|開示許可・閲覧制限】

【黒封ファイル No.134】

《閲覧制限:審問官等級Ⅳ以上》

《転写・複写・外部開示 一切禁止》

《開示記録は全て魔印登録により保全》


記録開始日:西暦X958年 第五暦法

記録官:ヴィオラ=スティルネン(識別番号:V-0172)


本記録は、特別審問対象J・レオンハルトに関する第23話《決闘記録》における実技試験中の挙動と魔力異常についての初期観測データ、並びに同試験後に更新された心理・行動プロファイルを含む。


なお、当該対象は本記録開始時点において「監視指定群C」から「試験指定群B」へ階層遷移した初の実例であり、今後の「階層跳躍者」認定基準への影響が懸念されている。


以下、黒封プロトコルに則り、機密事項の逐次開示を行う。



【セクション2|記録:魔力発動と異常兆候】

観測開始時刻:09時14分22秒(第三魔術塔基準)

測定装置:型式M-Tune/27《双核計測結晶》


対象者J・レオンハルトの魔力発動は、既定測定範囲を逸脱する急上昇波形を示し、“臨界安定域”を僅か0.6秒で通過した後、極短時間のうちに飽和点近傍に達した。


以下、記録波形より自動解析された数値抜粋:


◆初期魔力量:中等(安定)

◆発動後2.8秒:上位中核層へ転移開始

◆共鳴反応:不定系(外部因子確認されず)

◆補助魔力:未検出

◆暴走指標:警告域に達せず(ただし制御不能状態)


初期診断では「補助魔力なし」とされたが、当庁内部分析班による再解析により、これは“補助”ではなく、“共鳴”と分類される現象である可能性が指摘された。


共鳴因子の発生源は、対象者の所持物である「緑系魔石」の近似波長と一致するが、該当魔石に対する過去の検査記録には、活性因子・導通因子のいずれも未登録。また、魔石の本来の持ち主が登録情報上“対象外個体”であることから、因果関係の明示は現時点では困難と結論された。


なお、発動直後における精神干渉・外的制御の兆候は確認されておらず、本現象はあくまで「自発的覚醒に分類される可能性が高い」との報告が提出されている。



【セクション3|行動記録:決闘中の判断と推定意思】

観測対象:決闘試験第23群・指定対象J・レオンハルト

対戦相手:L・グロース(貴族階層上位/戦術科主席候補)


対象の戦闘行動に関しては、戦術的訓練を一切受けていない無階層民としては“異常なほどの空間把握能力”と“瞬時判断”が確認された。


映像記録によれば、試合開始からの3.6秒で発動された敵側の氷槍魔術に対し、対象は視線移動および重心移動のみで回避行動に移行。

その際、「地面の微細な振動」「風圧の変化」「相手の杖の角度」を無意識に統合して判断していると推定される。


加えて、相手の“見せ技”と推測される火炎による陽動に対し、対象はまったく反応を示さず、逆に陽動の“起点側”を攻撃対象に選定したことが確認されている。


この選択は、試験監督官数名から「意図的でなければ不自然」と判断され、当庁の動態解析班では「訓練に依存しない天性の戦術直感」という評価が記録された。


なお、決闘中に本庁上層より一時的に観測を中断せよとの指令が入ったことを付記する。

指令元:グランフェリア階級以上(識別情報:黒帯)


決闘終了後、対象は一時的に昏倒状態に移行。しかし意識喪失中もなお、身体は戦闘姿勢の保持を続けていた。

その“防御の余韻”に、監視班数名が“意志の残像”と表現する反応を報告。


内部記録担当官からは次のようなコメントも添えられている:


「彼は見られることに怯えていない。彼は常に──誰かを“見ている側”だったのではないか?」


この戦闘記録を以て、対象に対する“機械的観測”のみでの評価は困難と判断され、以降の等級判定および昇格査定において、精神構造/魔力変異との統合評価が義務付けられた。



【セクション4|評価と判定:覚醒段階Ⅱ→昇格保留】

審問庁内臨時査定会議(第1133号)において、対象J・レオンハルトは以下の判定を受けた:


【魔力階層】

初期値:中等(安定)

現在値:覚醒段階Ⅱ(自律発動型)

備考:共鳴因子による覚醒の可能性あり/制御不能状態


【戦術適性】

推奨階層:B等級候補(現試験対象群中で最上位水準)

判定保留理由:対魔法制御・集団戦適応未検証のため


【精神判定】

被暗示耐性:高

意志干渉:未確認

※但し、観察下での行動抑制指標は「警戒域」


以上をもって、当該対象は暫定的に「階層跳躍対象者」として登録された。

ただし、覚醒の過程と“共鳴因子の出所”が未特定である以上、本来であれば危険群に分類すべきとの意見も一部に存在する。


このため、最終的な昇格・任用は保留とされ、以下の追記が記録された:


◇今後の措置:

・封印処理の再評価を要請中(倫理審査局第8班宛)

・再測定予定:X年9月初旬(士官学校進級前段階)

・精神プロファイルの追跡調整(記録官V・スティルネン継続)


本記録により、対象は「観察指定対象」から「試験対象」へ格上げされたが、同時に審問庁内においても、“将来的に影響力を及ぼす危険因子”として分類されたままである。



【セクション5|個人コメント・署名:V・スティルネン】

……本来、この欄に私情を記すべきではない。

そう教わってきた。

私は審問庁の記録官であり、観測者であり、ただ“記す者”であるべきだと。


けれど、彼の姿を前にして──その剣を前にして、私は確かに「感じてしまった」。


あれは、“振るわれる剣”ではなかった。

ましてや、“見られるための剣”でもない。


「彼の剣は──見られる者のものではない。これは“見抜く者”の剣だ。」


彼は見えていたのだろう。

相手の意図も、空気のわずかな歪みも、

そして──私たちの存在すら。


それが本当に可能だとすれば、あの少年は、すでに審問庁の“外”を視野に入れているのかもしれない。

私たちが「観測している」と思っていたその裏で、彼は「観測されるという構造」そのものを、見破っていたのかもしれない。


それを知ってなお、彼を“制御可能な階層”に留めておくべきか──

答えを出すのは、次の記録官の仕事だ。


本記録をもって、私は一時的に記録任務を離れる。

引継ぎ先については黒帯指定のため、ここでは記載しない。


記録官署名:

V・スティルネン(識別番号:V-0172)

記録閉鎖日:X年9月1日付


【黒封記録──ここに一時凍結】




ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


本特別章《審問庁記録ファイル No.134》では、

本編では描かれなかった“裏側の観測記録”──

審問庁の記録官ヴィオラが見た、ジェイドという存在の“異質さ”と“危険性”に迫りました。


なお、特別章で登場した「L・グロース」は、本編に登場していた

貴族階層の試験者《ライナルト=グロース》と同一人物です。

審問庁記録では略記表現が採用されているため、本名は伏せられた形で記録されていました。


---


そして今作では──


読者向け補足解説企画として、

《アイリスとAIが会話形式で世界観を解き明かすNOTE連動企画》がスタートしました!


記録官ヴィオラとはまた違った、少し優しくて不器用な語り手たちが、

“ジェイドとアイリスの物語”を外側から見つめて語ってくれます。


▼NOTE連動企画はこちら▼

https://note.com/lancer_official


---


SNSでも更新情報や裏話を発信中!


フォロー・感想コメント大歓迎です。

作品の広がりにご協力いただけたら嬉しいです。


▼公式アカウント(X/Twitter)

@BrcbGhpxvO660fL


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次回、本編第24話では──

“凍結された記録”の余韻と、“剣の意味”を取り戻そうとする少年の後日譚をお届けします。


それではまた、物語の続きを“読むあなた”の前で。


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