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メリトクラシア 処女作  作者: Lancer
第3章:士官学院編《前期》:視線と試練の教室
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【第18話】★導火線、それは模擬戦の名を借りて★

──それは、“模擬戦”という名を借りた挑戦状だった。


制度の檻に閉じ込められた少年が、

規則の隙間から、たった一つの武器を握りしめる。


これはまだ前哨戦──

けれど、確かに“戦い”は始まっていた。

訓練場に集められた新入生たちは、冷たい石畳の上で整列していた。  空は雲ひとつない快晴。だが、その光すらどこか冷たく感じるのは、漂う空気のせいだろう。

 整列の中で、俺――ジェイド・レオンハルトは、アイリスと並んで立っていた。  平民枠。訓練区分・第2班。

 金バッジの生徒たち──貴族は第1班として、最上列に堂々と並んでいる。  そのすぐ後ろに、何もついていない俺たち平民。  さらに後列に、緑の従属バッジをつけた使用人たち。

 その線引きは、残酷なほど明確だった。

「模擬戦の対戦相手は、ランダムに選出される。魔力量、属性適性、戦術理解度に基づいて編成される」

 そう説明するのは、訓練担当の教官。  だが、その編成に異議を唱える声が一つ。

「ランダムとは言うが、貴族と平民を同列に戦わせるのは無意味じゃないかな?」

 皮肉げな声。  ライナルト=グロースだった。  白い制服の金糸が、朝日にきらめいている。

「戦力差がありすぎると、訓練にはならない。見世物ならいいけどね」

 まわりの貴族がくすくすと笑う。平民たちは、視線を逸らすしかなかった。

 でも──

「なら、証明してみろよ。お前が“強い”ってことを」

 俺の声が、静寂を割った。

 視線が集中する。  ライナルトの目が、試すように細められる。

「……君、名前は?」

「ジェイド・レオンハルト。第2班、平民枠」

「ふうん。じゃあ、特別に希望してあげる。次の模擬戦、君と対戦するよう申請するよ」

 それは、明確な“挑戦”だった。

 訓練教官が一瞬、眉をひそめたが──

「制度上、可能です。演習形式であれば、希望対戦も許可されております」

 ユミナの声が、背後から届く。  振り返らずとも分かる。彼女は、ずっと見ている。

「では、記録官の許可により、次戦を指定試合とする。立会いはヴィオラ」

「えぇ……」と、やや不満げな声が漏れたが、すぐに気配が消えた。

 制度の隙間。  そこを使って、俺は“牙”を剥く。

「おい、無茶だ」

 小声で、同班の生徒が言った。

 分かってる。  ライナルトは、たぶん本当に強い。魔力量も、経験も、俺とは桁違いだ。

 それでも、引けなかった。  あの日、アイリスを庇ったあの時から、俺の中の何かが変わっていた。

 黙って、俯いて、ただ耐えるだけの日々には、もう戻れない。

 俺は、前を向いて歩き出す。

 この一歩が、どんな結末をもたらすのかは分からない。

 でも、それでも──

(やるしかないんだ)

 ライナルトと視線が交わる。  笑っていた。

 けれど、俺は、それ以上に“熱く”なっていた。

 それが、すべての“導火線”だった。



模擬戦という制度の裏には、“表に出せない感情”があります。

ジェイドにとって、それは自分自身との対話でもあり、

アイリスや他の“同じ立場の者たち”のための戦いでもあります。


次回、第19話ではいよいよ【激突】です。

心の中の剣が、初めて振るわれる瞬間──お楽しみに。

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