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メリトクラシア  作者: Lancer
番外編2
14/88

【番外編②】★いらない子なんかじゃない★「完全版/添削不要回」

本編第5〜6話の間に起きた、アイリスとジェイドの静かな夜の物語です。

グローリア試験後、“仮保護”という関係になった二人。


誰にも言えなかった不安と、

それに応えた少年の言葉──


本編では描かれなかった、ふたりの“夜の一幕”をお届けします。


※このお話には続きがあります。

※NOTE限定で「モノローグver.」を公開予定です。

夜の帳が屋敷を包み、静寂だけが残された。

 アイリスは、布団の中で身をすくめるようにしていた。

 目を閉じても、なかなか眠りは訪れない。

 グローリア試験が終わり、ご主人様――ジェイドのもとに保護されて数日。

 彼の優しさに、何度も救われた。

 それでも心の奥には、言いようのない不安が残っていた。

(……わたし、役に立っていない。

 魔力の封印も……邪魔じゃないかって……)

 唇が震える。

 思わず掛け布団の奥で、ぽつりと呟いてしまった。

「……ご主人様、わたし……いらないんじゃ……」

 その声は、本当に小さなものだった。

 けれど、隣の布団で眠っていたはずのジェイドが、ゆっくりと身を起こす気配がした。

「アイリス、今なんて言った?」

 その声には、わずかに怒気がこもっていた。

 アイリスの身体がこわばる。怒られる? 捨てられる……?

 そんな不安が、頭をよぎった。

「……わたし、いらない子なのかなって……」

 その瞬間、ジェイドは思わず彼女を抱きしめていた。

「アイリス。お前はいらない子なんかじゃない。

 二度と、そんなこと言うな」

 ぶっきらぼうで、でも温かくて。

 少年の腕の中で、アイリスの瞳から涙がこぼれた。

 その晩、彼女はしばらくのあいだ、少年の腕で泣き続けた。

 そしてジェイドは、そっと目を閉じて誓う。

 ――もう二度と、この子にそんな涙は流させないと。

――二度と、その言葉は吐かせまいと。


 夜の静けさの中、ただひとつの誓いだけが、灯のように静かに揺れていた。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。


今回の番外編は、

アイリスの“心の輪郭”と、ジェイドの“無意識の優しさ”に焦点をあてて書きました。

ふたりの関係が「仮保護」から「信頼」へと変わっていく――

その“きっかけの夜”になればと思います。


なお、このエピソードは本編【第5話】〜【第6話】の間にあたる、

“静かな補完回”として位置づけています。


そして、次回からはいよいよ──

本編【第13話】より、新章『士官学院編《前期》』が始まります。


制度、階級、そして視線の交差する場所で、

少年と少女の試練の日々が幕を開けます。


これからも、彼らの物語を見守っていただけたら嬉しいです。

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