第2話 『ユークがいなくても余裕? ……のはずだった』
一方、その頃――
「俺たちだけの最強パーティで、初戦を飾るぞ!」
勇者レオナールは自信満々に剣を構え、目の前のオークを睨みつけた。
「どうせ雑魚だ。サクッと片付けるぞ!」
目の前のオークは三体。緑色の肌をした巨体が棍棒を振り回しながら唸り声を上げている。
以前なら、こんな連中に苦戦することはなかった。
「グオオオォォ……!」
リーナが不敵に笑い、呪文を詠唱する。
「フフッ、ユークがいないと戦いやすいわね。ファイヤボルト!」
赤い火球が飛び出し、オークの胸に直撃する――
はずだった。
だが、オークはびくともしない。
「……え?」
リーナの顔が引きつる。
「おいおい、リーナ。何やってんだよ。仕留めろよ」
ガルフが軽く笑いながら剣を構え、オークに全力の一撃を叩き込む。
「オラァッ!!」
金属が肉を裂く音が響く――
はずだった。
しかし、剣はオークの肩に浅く食い込んだだけで、すぐに弾かれる。
「なっ……!? こんなはずじゃ……!」
まるで、オークが別の生き物に変わったかのようだ。
ニヤリと口を歪めたオークが、棍棒を振り下ろす。
「ぐぉっ!!」
ガルフは衝撃で吹き飛ばされ、地面を転がった。
「いってぇ……! なんだこいつ、こんなに強かったか!? エレナ! 早く回復を!」
エレナは焦りながら回復魔法を詠唱する。
「ヒール!」
聖なる光がガルフを包み――
しかし、傷は完全には癒えなかった。
「……回復が足りねぇ……?」
普段なら即座に全快するはずの魔法の効果が、今日は半減している。
その間にも、オークたちは唸り声を上げ、じりじりと迫ってくる。
「グガァァッ!!」
「くそっ、囲まれる!」
レオナールは剣を握りしめながら、ようやく異変に気づいた。
(まさか……いや、そんなはずはない……)
(ユークがいなくなったせいで、俺たちが弱くなっている……?)
バカな。そんなはずがあるか。
しかし、冷や汗が背筋を伝う。
「ねぇ、ユークって戦闘に直接関わってなかったわよね? なのに、なんでこんなに戦いにくいの?」
リーナが震えながら問いかける。
「アイツ、確か『万能適応』とかいう変なスキル持っていたよな。でも、戦闘には関係ないだろ?」
ガルフが困惑気味に答えるが――
(……本当にそうなのか?)
エレナの手が、小刻みに震える。
(まさか……ユークがいたからこそ、私たちは強くなれていた……?)
オークたちは容赦なく迫ってくる。
レオナールは剣を構えたまま、歯を食いしばった。
(おかしい……おかしい……! なんで、俺たちはこんなに弱くなっているんだ!?)
以前はどんな強敵でも勝てる自信があった。
だが、今は――
(まずい……このままじゃ、負ける……!)
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