流れ者
吹き荒ぶ砂嵐。
荒野の果てを彷徨う一人の男。
ボロボロの汚い格好で、腐りかけのホルスターには
錆びたピースメーカーをさす。
遠くに見える街は夜に輝き、昼に眠る。
近くにあるのは砂と岩とバイソンの死骸だけ。
夜は月がよく見える。
夜はけっこう寒くなる。
どこか遠くから遠吠えが聞こえる。
どこか遠くの獲物を狙ってるのだろうか。
木に腰掛け、夢を見る。
農場で暮らしてたあの娘は今頃何してる?
足音が聞こえ、腰に手をやる。
ランプを持った旅人が声をかける。
大丈夫さと答えると旅人はまた歩き出す。
ランプの灯りが見えなくなった。
木は誰にでも優しく、何も言わない。
月を撃つ、それでも月は平然としている。
道中の事は思い出せない。
吹き荒ぶ砂嵐の中。
無精髭を生やした男は、月夜の晩に、
静かに目を閉じて、風穴を作った。