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七百万

”無能”がダンジョンに入ってから十時間が経過した。


「遅い」


あんなに雑魚ならば、あのボスがやられるはずがない……善戦している?そんなはずはない。


「ゲートから誰か出てくる」


蛇の尻尾が見えたら、我々の勝ち……人間が見えたら、もう一回作戦を作り変えなければいけない。


「すいません、魔石の買い取りをお願いしたいんですけどーー」


!?どうやら我々の作戦は失敗に終わったらしい……これ、本部には私が怒られるのかなぁ、嫌だなぁ。


「あの、大丈夫ですか?」


「すいません、買い取りですね」


あのボスは一体どれほどの力を蓄えていた事でしょうかね……B級?


「失礼ですが……これは一人で貴方が倒したのでしょうか?」


「はいそうですが……他に誰か人でも来たんですか?」


「いえーー」


この人B級を一人で倒せる力を持ちながら、無能と蔑まれ来たの!

B級の一人討伐なんてA級でも無い限り不可能に近いはず……これほどの成長スピード、いつか私達の危険になるかもしれない……少し考えすぎかもしれないけど、一応見張りをつけておこう。


「B級魔石が一つだけでしょうか?」


「あ!すいませんーーこれがまだ残ってました」


私の前に見せられたのは……C級魔石が少なくとも60個は転がっていた


「これで何円になりますかね?」


「B級魔石が百万円、C級魔石が一個当たり十万円になりますのでーー七百万円でしょうか?」


「な、七百万円!!」


「買い取りますか?」


「ぜ、是非お願いします!!」


凄い食いつき……お金が足りないのかな?なら最近強くなったと考えるべき……こんなスピードでは強くなれない筈……なにか特別な事をしているのかもしれない。


「つい最近まで”無能”と言われていた筈ですが、どうしてこんなに早く強くなれたのですか?」


ここをはぐらかすのか、正直に何かを答えるのか……答えたのなら、見張りをつける意味がなくなるがーー


「普通のことですよ……ただレベルを上げまくるだけです」


「そうですか……ではこちら買取金額の七百万円でございます、キャリーケースに入れますか?」


「銀行口座にお願いします」


何故か、祈願するような声で言われてしまった……そんなにキャリーケース嫌なんですかねぇ?


「わかりました……終わりましたので、移動してもよろしいですよ?」


「ありがとうございました!」


自分が殺されかけたとはつゆ知らず、その犯人に感謝を告げるなんて……不思議な人だ。


私が下に目線をやり、もう一度上げると……そこに”無能”と呼ばれた人はいなかった。






「やった!!!!」

「七百万だ七百万!」

俺は今まで出したことも無いような速度で、地面を駆けていた。

それにしても七百万……か、これだけあればいろんなことができるけど、とりあえず、間に合ってくれ!


車を持っていない俺ができることは全身の力を使い、妹がいるところまで走り抜けることだけだ!




病院の中に入り、階段を駆け上がり、妹の部屋で待機している先生を問いただす。


「先生!妹はーーあいは大丈夫なんですか!」


「お兄さん来ていただけましたか!いくら電話しても繋がらないものでしたから」


妹は病気を患った……しかも、俺が『覚醒者』になったことが大きな原因でもある。


「過負荷病ーーけしてMPへの耐性が高く無い者が、MPの強い影響を受けてしまい、高熱は出すが、体はもう死んでいるかの如く動かなくなる病気」


「どうですか!手術の手立ては見つかりましたか!」


妹にはーー愛にはまだ時間があるはずだ。


「手立ては見つかりました……しかし、この病気を治すには30億が必要です」


さ、30億……何回ダンジョンボスを討伐すれば良いんだ。


「そして、この手術の成功確率は十%とも言われています」


「十ーー%」


時間があるなら、俺がレベルを上げて、ダンジョンボスを周回しまくればいいだけの話ーーのハズだった。


「こんな事を言うのは心苦しいですが……妹さんの事は諦めてください」


!?ーーこいつ!諦めろだと……なんで家族にそんな冷たい事をしてあげないといけないんだ!


「てめぇ!なにをーー」


「妹さんの寿命は持ってあと二週間なんです!」


「言って、やが、るんだ」


愛の寿命が二週間?そんな馬鹿な、この間の検診ではあと三ヶ月は持つって話だったはずでは?


「容態が急変しました……”無能”と言われている貴方に二周間のうちに30億集める事が出来ますか!!」

「本当なら言いたくないんです……ですが、妹さんの事は諦めてください」


そうして主治医は妹の部屋から出ていった……30億ーーか。

俺は熱い妹のおでこに手を乗せながら宣言するーー


「安心しろ……絶対にお兄ちゃんが救ってみせるから!」


そうして俺は、ダンジョンを潰すことを更に深く決意するのであった。



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