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【7章開幕】“VR MMO RPGってなに?”〜ほのぼの理想を目指してプレイしていたら『死神』扱いされた?!〜  作者: ハンブンシタイ
6章 プラモ好きが妹と始める最初の町編 中級
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八十五話「若葉暁の困った二つ名」

前章あらすじ


プロイシーの事変を解決した紅月達は葬海式に出て、亡くなった人々を海の果てに見送る。プロイシーを離れる時に走ってきたメビアに別れの挨拶と再会の約束をしたのち、始まりの街サイモンへと戻っていく。





 ──アパート・若葉暁の家──




 「…………。暇だ、」


だらーっと椅子に座り、スマートフォンでニュースをめくりながら俺は一人呟く。

上へ上へ流れていくニュースたちはどれも面白みもないものだった。

無論プラモデルに関するニュースなんだが、


珍しく新造形のプラモデルが発売された話はあがらず、媒体等の新作発表もあがらず、挙げ句の果てには転売ヤーが静かとくる。よってつまらない……休みの日くらい新作のプラモデルを作ろうと積みプラ置き場を確認したらまさかのゼロ。この間全部作ってしまったことを忘れていたのだ、、そのため今のやりたいことができなくなってしまった俺は意気消沈、こんなふうに敷布団に寝転がり、意味もなくスマホの画面をただ下へと送るのみ、


 「はぁ。」


暇すぎる。やる気が削がれるとは熱が冷めるも同義、というかまんま。心の中でひたすらに虚無な心が続く。

こんな日こそルルカ……じゃなかったルカが部屋に突撃してきてもおかしくない。でも当の本人は今遊園地に行っている、なんでもご当主からの「ゲーム一旦離れるDAY」らしい。

ゲームのしすぎなルカに対してはいい薬になりそうだ、っと思う反面、自分の退屈さに文句を言ってしまう。

こんな時にこそきっかけが欲しいものだけど、そのきっかけがなければ俺は布団の上に今日一日中いるということだろう。加えて外にいく気にもなれない、、


 (休みを惰眠で終わらせるにしては少し勿体無い気もするけど、)


 「今日ばかりは仕方がないよな。」


電源ボタンを押し、スマホを切ろうとする。画面が真っ暗になり俺はスマホを少し離れたところにおこうとする。


[ヴ〜。]


スマホの振動が腕を伝ってくる。俺は何も考えずやれやれと思いながら画面にパスワードを打ち込み届いた知らせを確認する。


 「前にチェックしていた【SAMONN】公式サイトから?」


内容自体は大したことのないものだった、なんでも新しいアップデートファイルが近日中にリリースされるといった、ただの告知であった。


 「────あ。あるじゃないか、外に出なくてもできるヤツが。暇つぶしにぴったりなやつが、、」


体を起き上がらせ、部屋に置いてある大きな機械の目に立つ。近くにあった機械を持ち上げて頭につける。ボタンを押してスイッチをつける。そして大型の縦に長いポッド型の機械へと身を乗り込む。


 「よし、」




 ──【SAMONN】──




 「ここは…ルルカの工房か。」


この前はサイモンに戻ってきて、ルルカの工房で解散したんだったと頭の中で思い出す。思えばあれ以降やってなかった、


 「さて、どうしようかな。」


暇つぶしがためにここにきた俺だが、目的なんかは全くない。第一、俺の意思で【SAMONN】を開くのはおそらくこれが初めて、自由に行動しろとゲーム側から言われてはいるが、実際のところ何をどう行動すればいいか見当もつかない。


勝ちも負けもない、ただただ自由なゲームは俺との相性が案外悪かったりする。俺が何か目的を持つということも普段ならあり得なく、ただ自分の生活や生きていく過程の延長線にあるものくらいにしか思っていない。

プラモも趣味ではあるが、仕事ではない…確かにもらったお金で生活しているが、それも最初と変わらず成り行きでの話。


なので、


 「こういう時ルルカは……。」


いつものルルカならどうするかを考える。きっとアイツならこのゲームでの楽しみ方というか目的もはっきりしているし、何より好きでこのゲームをやっているタイプのヤツだ。

なおさら手本にするには………



 イマジナリールルカ『お兄様がいれば問題なーし!!』



 (………思えば、俺がみているルルカってこんな感じだった。)


俺の前では自己をある程度隠しているのか、ルルカが自分勝手なところを見たことが……ないわけではない。が、それでもこのゲーム内で一緒にやっている間は常に俺のことを気にかけていた。

やりたいことっていうのはあるだろうけど、ゲームに限ってできることについてルルカは何も言ってはいなかった。まるで自分はできることをやり尽くしてしまったと意識しているように。


 「……本当にどうしたものか。」


 [ピロン]


画面右上のメッセージ欄に一つの連絡が入ってくる。内容を見てみれば冒険者ギルドからだった、どうやらカードの機能更新の知らせらしい。


 「……そうか、冒険者ギルド。」


前に来た時はランクを上げるとか、あげたらどうとかの説明をしてもらってそれっきりだったはず。今思えば冒険者ギルド、ガードを含めたコンテンツがあることをすっかり忘れていた。


元々目的自体が装備を作るということから始まっていたのが原因だ。装備を整えて、それから?……と考えてみれば意外にも何もない。

他所に冒険しにいく志も、自分から行くという気力も俺にはなかったのだから。


 (ルルカは、確かSSランクだったか。)


上から数えて2番目、だというのにここぞというところではヘマをしたりする印象が強いのは俺だけだろうか。

だが、数字が嘘をつかないように資格もウソをつかないはずだ。となると本気があるかどうかはわからないがルルカは強いということになる。


いったいどれほどの強さなのかと少し考えるが、戦わない運命になるだろうなと個人的に思っているのでこの思考はすぐになくなった。


 「……とりあえず行ってみるか。他に行くところもない、」


少なくともこの工房にずっといるというわけにもいかない。せっかく体を起こしてまで始めたのだからそれなりに時間を過ごすべきだと思い、俺は工房をあとにした。(スペアキーでしっかり戸締りも)


 街に出た俺は大通りに出て、冒険者ギルドを目指す。街は夜の雰囲気と思えないほど騒がしく、それこそ夜の街と解釈できるほどに賑わいもしていた。夜の時間が惜しいとは少し違う、ここにいる全員が街を活気立たせている、そしてその雰囲気に酔いしれているように感じた。


 (半数以上がプレイヤー、かどうかはわからないんだった。ネームプレートを出していない限りは、NPCもただのAIではなくここに生きる人と同じ。向こうからしたら俺たちは紛れもなくここの住人だろう……)


不思議な話だ、NPCからしたらプレイヤーはリスポーンができる非人間だというのに、向こうはそれをわかっているのかわかっていないのか関係なく、接してくれる。


そこにいる人の中身が決して違ってもだ。

現実と違ってここでは違う一面を出しながら生きて、生活することができる。

それを当たり前とするかしないかはこちらに委ねられる、だがそれを知らないNPC(彼ら彼女ら)は少しかわいそうだとも思う。


AIだから、作り物だからと解釈すればそれまでだろうが。


 (…………エリア。)


俺はとてもじゃないがそうとは思えない。普通に生きて、普通に話して、普通に死ぬ。

それのどこに違いがあるというのか、、。


だからこそ俺は、この世界、このシステムにどことなく不条理を感じている。


 [ビー。──決闘システムの起動を確認──]


 「……!」


脳内に響くような警報音。次の瞬間、俺を中心にした半径10メートルの人は強制的に押し出され、空いた空間と人を隔たせるような青い壁が出現した。俺は体を身構えさせ、今の異常自体を頭の中で考える。


 (いったい何が……)


周りの人たちも何が起きたか一瞬理解できないような表情をするが、すぐにこちらを振り向き物珍しそうな顔へと変わる。

まるで見せ物が始まった観客が抱く、好奇心の瞳。俺は嫌な予感を感じ取った。


 「おいおいおいおい、こいつは驚きだよなぁ。」


そう口にしながら、さも当たり前かのように青い壁を貫通しながらこちらに姿を見せる5人組、不敵な表情を見せ、獲物を狙う目で俺をみる。


 「まさか、あの"鉄血の死神"がここにいるとはなぁっ、」


その言葉を言った瞬間、青い壁の向こう側にいる人たちは一気にざわめき始めた。改めて、この名前の知名度に驚くとともに俺はこいつらがこの現象を引き起こした張本人だと確信した。


 (決闘システムって言ったよな、確か…)


前に聞いたことがある。確か殺す殺される関係なく、限定的に殺し合いをするシステム、殺したとしてもキル扱いにはならなくドロップもない、あくまでイチ模擬対戦的な形であると。まぁありていに言ってただの力試しと言ったところか、


 「………(だがどう考えたって1対3の構図なんだか)


 「おい。警戒するなって、お前はもう有名人だ、」


だ、そうだ。実際に俺がそんなことを意識したタイミングはないのだが、まさか喧嘩を売られるほどの有名人だったとは、我ながらその点は驚きだ。それはそれとして本当に1対3の構図なんだが、、


 「だから、決闘を挑まれんのも当たり前。そして俺たちにやられるのもな…」


真ん中のリーダ格のヤツが悪そうな顔でそう言う。言葉を聞いた後の二人は余裕の表情で声を出しながら笑う。確実にこちらを貶している、というか煽っている。別に名誉とかそんなものは俺にはないのでこいつらがただただ愉快なヤツなんだなぁという認識で終わっている。


だが、このまま戦うのはちょっと面倒くさい。勝手に売られた喧嘩にのるほど俺も時間を無駄に使うのが得意な方ではないからだ。


 (確か、普通に辞退できたはず。)


コンソールを動かして、決闘辞退のボタンを押そうとする。しかしキャンセルと書かれたボタンをいくら押そうが、一向に変化は起こらない。そして俺は赤く書かれた小さな注意事項に目を向けた、


 「辞退しようとしているなら、無理だな。冒険者ランクが足りない……なんて"鉄血の死神"にしては随分と怠けていたわけだ。」


ヤツが言ったように、注意事項には冒険者ランクが相手より下の場合には辞退が不可能と記述がされていた。

つまりは冒険者ランクがこの決闘システムにおいてかなり重要な事項であるということ、あまり気にしてなかったが少しは考えを改めた方がいいのかもしれない。


 「……なるほど、どうりで強気なわけか、冒険者ランクが下ならば自分たちの方が上だと。」


 「分かってんじゃねぇか、でもなそれだけじゃない……俺たちは最初からお前を倒すために来てんだよ。装備の面でもスキルの面でも劣ってるわけねぇだろ!!」


そう言いながら、三人は装備を身につける。それぞれの武器を見るに弓使い、剣使い、盾使い遠距離、中距離、近距離の割り当てで挑んでくるのだろう。バランスが取れた編成、だけじゃなさそうだろう、俺と戦うことを前提にしているのなら、装備も技術もそれに合ったものを用意するはず。


俺の嫌な予感が的中した気がする。


 「…………(データベース接続、判定開始…)


回収した右目に新しく搭載した分析システム、ゲレームのデータベースとリンクして膨大な情報を処理、そして目標に該当するデータを見つけ次第照合、ピックアップした中から特に適合率が高いものを映し出し、説明してくれる画期的なシステムだ。

もちろん接続から発見までのタイムラグはほぼゼロにちかい。


 [該当──以上のデータが検出されました。]


画面横に相手の装備データが映し出される。そこには結論として対オートマタ適性が高い装備だと出されていた。しかも完成度的にかなりの高性能らしい、からっきしの俺からしたらどのくらいなのかよくわからないが、レートが赤、つまりは危険に傾いている時点で、通常よりは警戒しておくべきだと言うことか。


 (……あれは?)


 [───測定結果、魔剣と推定。]


魔剣、、確か魔物の素材や核などを剣の合成に使い続けることで完成するタイプの剣、デメリットとメリットがあるアンバランスな武器だと聞いたことがある。だが特定の特攻効果を確定で持つ武器であり、限定的な使い方をする分には戦いを有利に進められると聞いたことがある。


この場合、あの魔剣は対オートマタだろう。


 「正直、なんで俺と戦いたいか知りたいんだが。」


 「なんでも何もねぇだろ、お前を倒せば俺たちは有名になれる。有名になればもっと高みにいける、それだけだろうが!!」


自分たちのために人を殺すことができるタイプか。まぁそういうのもいるにはいるのだろう、もしくはこいつらは人を殺すと全く認識していないかのいずれか。

俺からすれば決闘だろうが実戦だろうが、他者を傷つけ、殺すことに変わりはない。ゆえに心底がっかりしている。


 「なるほど。なら、お前達を真っ向から退けないとな、」


俺は一瞬でベディヴィアールを身に纏い、対人刀を背部のラックから引き抜き構える。背部のスラスターを起動させ、我流の構えをする。剣術なんてものは昔からやったことないので他人の見様見真似だが、なぜだかこれだけは言える


 アイツらに負けることはない。


 「はっ!。いくぜぇーーー!!」


剣使いがこちらに走り出し、遅れて盾使いが前進してくる。速度をつけた一撃を剣使いが繰り出す前に剣筋を見切った俺は体を最小限の動きで回避させ、鍔迫り合いに持ち込む。


 「多重切り!!」


鍔迫り合い状態だというのに、半透明な剣筋が突如として現れ左右をから切りつけるように追撃をかける。俺は剣がこちらの装甲を傷つけるよりも早く、剣使いを蹴り飛ばし、攻撃範囲から逃れる。そして追撃としてバランスを崩した剣使いに対人刀で追撃を入れる。


 「偉大盾アークシールド


盾使いが割って入り、俺の追撃を逸らす。そしてすかさず弓使いは俺に向けて攻撃を放ってきた。


 「破壊矢ブレイクアロー!」


光り輝く矢がこちらに向かって放たれ、すぐさま爆発して俺の体を光で包み込む。


 「雷撃剣ライトニングソード!!」


爆発では俺の装甲は傷ひとつつかない、しかしそれを分かっているのか、追撃として剣使いが煙幕を利用して攻撃を仕掛けてくる。レーダーと高精度ツインアイを使用していたからか、剣使いの動きから剣筋まで何もかも見えていた。

俺は流石に電気系統に損傷を与えるわけにはいかず、対人刀で切り払いをして、視界が悪い煙幕から抜け出した。


 「見えてんだよ!!」


煙幕から抜け出した俺に弓使いの追撃射撃が飛んでくる。シールドでガードしつつ、回避運動を織り交ぜ完全回避。続けて、盾使いが飛び出し、盾で殴るように振るう。

オートマタである以上パワー負けは基本的にしない。盾使いがいくら強靭な腕力を持っていたとしても打撃くらいではこちらの盾でも受け止められる。


しかし動きを止めた俺を逃さんがばかりに剣使いが切り込んでくる。


俺は盾使いをスラスターで押し返し、蹴りの感性を利用して向かってくる剣使いを真っ向から切り伏せる。しかしそれを悠々と回避する剣使い。

追撃を警戒して、盾使い、弓使いは剣使いのカバーに回りながらこちらの様子を伺う。俺も同じように一旦心を落ち着かせるために、相手の様子を伺う。


 (厄介な連携だな。)


まるで相手の思う壺、相手の作戦にまんまとハマっていながら、間一髪で回避しているという気がしてならない。攻勢に出ようにも盾使いが防ぎ、そのすきに剣使いが前線に復帰する。弓使いがこちらを援護射撃していることもあり、攻めづらく、相手にとって守りやすい陣形になっている。

よほど、この陣形で長く戦ってきたんだろうなと、少し感心してしまうほどに。


だが、いい加減決着をつけなくてはいけない。俺の目的はこいつらではなく、冒険者ギルド。


 「少し荒っぽくいくか………!」


魔力放衣を展開して、最大稼働状態に突入する。対イレギュラー、水中戦に調整された本機だが、別に地上戦でも負け知らずに戦えるほど俺は作っている。

よもやこんな奴らに遅れをとる俺ではないはずだ、


 「っ、なんだあれ!?」


 「魔力を………」


相手がこちらの現象に留まっている間に俺はスラスターを吹かし突貫する。

こちらの動きに気づいた相手は少し慌てながらも、盾使いを全面に展開する。

おそらくいつもの通りにやって体制を整える魂胆だろう。


だが、、


 「遅いッ」


盾使いがしっかりと防御体制をとる前に俺は右足で蹴りを入れ、盾使いのバランスを少し崩す、身を盾に隠す前に俺ははみ出た左手を対人刀で一刀両断する。


 「な…………!」


盾使いは驚いた声を出しながら、体の重心を右へと傾ける。もはや正しい防御を取れないと悟り、回避行動へ移るその瞬間だったのだろう。俺は右手から対人刀を離しスラスターで大きな一歩とともに盾使いの額をがっしりと掴む。


 「これで……!!」


左手に搭載されてある掌部収束型エネルギー砲で盾使いの頭撃ち抜く。パリンっという音ともに盾使いの頭はガラスの破片のように散らばりしばらくしてそのごたいも同じように割れた。


 「ッメェ───!!!」


怒りを抱きながら剣使いはこちらに攻撃を仕掛ける、目を見たらわかる。狙う場所はおそらく心臓だろう、オートマタは頭を潰そうが下半身を折ろうが結局のところ心臓部を突かれなければ稼働できる。

怒りの中では結構なまともな行動だろう、最初から遊ばず、そうしていればよかったものを。


 相手の剣が自身の胸元に接触する寸前、俺はハインドコードを展開して、自身の装甲からさらに上乗せするように出現させる。魔剣はさっきも言った通りデメリットが存在する、攻撃力を上げればあげるほど、特攻効果を上げればあげるほど、必然的に防御性能や耐久性は、、落ちる。


 [パリン]


 「っそだろ。コイツは、オートマタ───」


迂闊になった体を俺は対人刀で一刀両断する。攻撃に振っていることはなんとなく想像がついていたため、対人刀の攻撃力ならば余裕でフルプレートだろうとフルアーマーだろうと両断できると確信していた。


 「次───っ、」


 「っ!!」


俺は驚きの中におそれを恐怖を感じている弓使いを見つけそう呟く。向こうも俺と目が合い一気に青ざめる。戦意が削ぎとれていることは間違いない、だがそれが生き延びられることに直結するわけではない。


 「ま、まて!!」


 [ビィィィー!!!]


腰部に搭載してあったビームライフルを手に取りすかさず射撃。相手が最後の言葉を話す前に頭を貫く。


 [───決闘終了・勝者紅月───]


頭の中にアナウンスが流れ、倒された3人は目の前に気絶した状態で復活される。

決闘後はこうなるのかっと思いつつ俺は装備を解除し、何事もなかったかのようにその場を離れる。


 ザワザワと俺に関する話が耳を通して聞こえなくもないが、やめておく。どうせ碌でもないことだろうから、、




 ──冒険者ギルド──




 (あの後、3回くらい決闘申し込まれた。いや全部最速で終わらせたんだけど、、)


まさか、顔が割れるというか少し話題になるだけで下剋上してくる輩がわんさか出てくるとは夢にも思わなかった。ジェットストリームなんとかとか言って突撃してくるけど連携下手くそで踏み台にしてやった奴とか、なんちゃらストラッシュとか言って切りつけようとしたけど飛距離が足りなかった奴とか、挙げ句の果てにはルルカを騙るものまでいた。無論完膚なきまでにボコボコにしたわけだが、


 「流石に疲れるな。」


冒険者ギルド内での戦闘禁止の札を少し見ただけで安心してしまう。すなわち決闘も禁止なのだろう。少し息というか気持ちを落ち着けながら、受付に向かおう。


 「こんにちは!、今日はどんな御用ですか?」


 「カードの更新と。あと、冒険者ランクの少し踏み入った話を、」


 「はい!、かしこまりました。ではカードをお預かりします。」


俺は持っていたカードを受付の人に渡す。

渡されたカードは近くの板のようなものに置かれると青白い光がカードを包み込み、色の違ったカードへと姿を変えた。


 「こちらが、カードです。では、ご説明させていただきますね。」


受付の人からカードを受け渡され、少し確認するついでに話に耳を傾ける。


 「冒険者ランクは以前お話しした通りE.D.C.B.A.S.SS.SSSの順番に上がっていきます。また、それにあった依頼も受けることで資金やさまざまなアイテムなどが獲得できるようになりやます。」


以前聞いた話をどことなく簡略化したような内容、正直最初の説明これでよかったんじゃないかとも思うが、まぁ初回は大切だともよく言ったものだ。


 「今回は少し踏み入ったということですので、ランク上昇に対応する特典に関してご紹介します。まず、"購入制限の解除"冒険者ランクが上昇するにつれて上位の素材などの購入権利を獲得できます。ですので、ランクが低ければ低いほど、購入できる素材やアイテムは下位のものに限定されることになります。」


"購入制限の解除"、今までルルカやエズなどに素材を提供してもらっている関係上そう言った類のものを気にしていなかったが、1人で集められるようになるならばやはり冒険者ランクは上げておくべきなのだろう、必要素材を自ら取りにいけなくして何が製作者だ。


 「続いて、"職業の進化、派生、転職"。紅月さんはオートマタなので気にしなくても大丈夫ですが、冒険者ランクが一定に達していない場合、職業の派生先が未開放になったりそもそも、上級職への進化ができなかったりの注意点があります。転職も冒険者ランクによって月にできる回数の上限が上昇します。いずれも、紅月さんには全く関係ない話なので覚えていただかなくても結構です。」


なんか辛辣なこと言われた気がするが、まぁその通り。オートマタは職業という型が存在しない唯一の種族、人権剥奪いや機人権剥奪もいいところだ。だが、俺はそのおかげでややこしいシステムに惑わされたりしないのだから、この点に関してはよかったと思う。

悠長に冒険者ランクなんて上げていれば、海に潜ったり大会にすぐ出ることもできなかっただろう。


 「続いて、"契約"。ここでは特定の条件や依頼の中で"契約"と呼ばれるシステムが存在します。契約は物の取引から、戦闘面においてのサポートなど幅広い分野に分かれていて正直説明がかなり難しいです。ですが、いずれも冒険者ランクが上がれば契約先の人数や契約にさまざまな条件を付け足したり、逆にさしびいだりすることが可能になります。オートマタでも可能なので、見つけ次第どんどんやっていくのも良いでしょう。」


"契約"、初めて聞くシステムだが。要は人間関係のコープみたいなものだろう、契約が成立していれば戦闘面で役に立つアイテムや効果などを間接的に受けられる。こんな感じの認識で間違いはないはず、ただどうも人間相手ですんでいる気がしない。いや種族的な意味ではなく、もっと別の存在とも、できるようなニュアンスが言葉から読み取れたような。


 「続いて"パスポート"。冒険者カードはそのままパスポートとしての利用も前提に考えられています、ですので冒険者ランクが一定に達していないと入れない場所、国などが存在します。難易度が高いダンジョンや魔王軍との最前線地帯への侵入は冒険者ランクが高くないと門前払いされます。多くの国がEランクでも入れる措置を施していますが、中にはそうでない国もあるので、旅や旅行する際には必ず確認しておきましょう。」


カードにパスポート機能があることは知らなかったので、俺は少し驚いた。

だがそれよりも驚いたのはカードのランクによって入れるところに制限があるということだった、レベルが足りてないから入れないではなく、ランクが足りてないので入れないは少し現実的な気がするがまぁそれで事故が減るのはいいことか。気になる単語が出た気がするがそれは後の話だ、


 「続いて"銀行を通しての貯金、投資、借金"、これは一応ギルドの管轄外なので、街にある銀行で話を聞いてください。」


必要以上の仕事はしないとくるが、それだったら別に言わなくてもいいんじゃないかと少し気になりながら俺は思った。


 「最後に"決闘システム"、挑まれた回数が3回以上なので察していると思いますが、冒険者ランクが高いと有利です。冒険者ランクが足りないと格上相手に一方的に手も足も出せないでボコボコにされることが"普通は"当たり前なので、紅月さんも気をつけてください。逆に冒険者ランクが高いと低い相手からの決闘の申し込みを断ることができたり、こう言ってはなんですが、みくびられなくなります!」


なるほど、とてもわかりやすい解説をありがとう。というか最後がなんやかんやでありきたりというか普通の解説だった気がする。


 「説明は以上です、何かご質問等はありますか?」


 「いや、とてもわかりやすい解説だったありがとう。」


 「どういたしまして、それでは良い冒険者ライフを。」


っと言われ俺は近くの椅子に座る。カードの見た目は素朴な感じではあるものの、冒険者ギルドの旗の色と同じ青色の装飾がカード全体に付けられている。いわば見た目が変わっただけなのだが、、


 [ステータス振り分け可能]


そういえばあったなそんなシステム、コアを調整してきたからか、そこそこな数のポイントが貯まっている。今振り分けてもいいが、それは後で。


 (とりあえず、何事にも冒険者ランクを上げないことには始まらないってことか。)


とりあえずでここにきたが、なんだか無視していい内容でもなくなってきた。これから先ルルカと共に行動をしていくのなら最低でも同じ土俵に立てるほどのランクまで、つまりSSランクまで上げる必要はあるだろう。確かウミさんはSランクだとどこかで聞いたことがあるが、まぁなんとかなるだろう。


ウミさんの強さを見るにルルカはそれ以上だとは少々考えずらいが、妹のためだ。努力を惜しむ必要なし早速始めていこう。


 「なぁお前聞いたか、どうやら噂だと…"鉄血の死神"は、、」


 近くの冒険者が話しているのを偶然にも俺は聞いた。俺に関する話だ、"鉄血の死神と言われてはいるが実際対面的にはどんな感じなのだろうかと俺は唐突にも少し疑問に感じ、席を立つ体をもう一度椅子に戻す。


 「なんと、あの"全知の魔女"の兄らしいぜ!、」


 「ウッソダロォオマエ!!、天使様の兄が死神とか眉唾もんだろ!」


 「いやだって、結構証拠あるんだぜ?!、」


 「わかったわかったから、写真送んな!!、お前の趣味の押し付けはちょっとキツイんだよ!。」


 「でも、信じられねぇだろ!、どうやったらそんな正反対が生まれるのか気になるくね?!」


 「まぁな、もしかしたら。天使様も悪魔の皮かぶってたりして………」


 「っ!」


 俺は一瞬そうでないと、後ろにいる二人組に声をかけようと思ったが。冷静になり呼吸を整えた。

まさか、俺の二つ名でルルカの名誉に泥がつくようなことになるとは思ってもみなかった、大袈裟かもしれないが、こういう噂や間違った認識はとにかく広まりやすい、俺の見解でいえばそんなところだ。

だからこそ、危機感を感じる。俺のせいでルルカが他人からの印象が悪くなったと知れば、きっと悲しむだろう。昔から友達作りだけはそこそこなルルカにとってこの世界での対面的な印象はとても大事だ。


 それこそ、今日の俺みたいに決闘を仕掛けられる可能性だってある。危険な目に合う未来が見えたのなら、兄として真っ先にそれを切除しなければならない。


 (となると時は一刻を争う。理由は整った、あとは今から行動を開始すれば………)


 [グゥ〜〜〜〜]


 (オートマタは基本食事を取らないはずなんだが………)


いや、少し落ち着いて。焦っていい結果は出ないとよく聞くし、ここは昼食を先に取ろう。

ギルドなら恐らくちょうどいい飯があるはずだ、外での外食も悪くはないと思うが、たまにはバランスの取れた食事も……


そうして俺は全財産を確認する。


 [0Cキャピタル]=資金ZERO


 「……………よし今すぐ始めよう。」



『topic』


魔王という存在は確かにいるものの、対等する存在が勇者ではない。魔王はあくまで魔族の中の王というくくりであるのに他ならない。

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