八十一話「その名は隻腕の騎士」
前回のあらすじ
国王と対面する三人、メビアに関する重すぎる過去を叩きつけられ…戦意を失いかけたその時。ウミはそれでもメビアを守ると立ち上がる、海洋国王:ギルバルド・フェインシーを乗り越えるためにウミはメビアを守りつつ奔走する。紅月は『泥』化したエリアを相手に防戦一方を繰り広げ、囮をかって出ていたルルカ達も徐々に前線の安定性を失いかけていた。
どこまでも自己勝手な国王からの要求をウミは真正面から断り、消費し尽くしている力を最後まで振り絞り一太刀を入れようとするも、そこに一人の騎士が王の間に舞い降りる。
──少し前・プロイシー王城・上水中──
『泥』化したエリアの相手をして数分、激しい戦闘を道中にしてこなかったせいか機体的には余裕があった、しかし今ではそれも冗談で言えるほどではない、心にあった余裕は少しずつ削られ、エリアの強力な一撃が一秒単位で飛んでくる。
[ギィィィン!!!]
「──ぐっ!。」
振り下ろされる大剣は先ほどより勢いづいていた。もはや片手で受け止められているのが不思議なくらいであり…回避と防御の繰り返し、しかしそれをノーダメージに抑えることは難しいことだった。
レールクローガンで抑えていた大剣は少し向きを変えると同時にずらすように突破する。擦りではあるが装甲に目立つ傷を残し、追撃をさらに開始する。
大剣を振り回しているという表現が合う通り、エリアは『泥』化によって大幅な強化を受けている、そうでなければそも短剣を振り回してかのような勢いで自分の身の丈半分以上もある大剣を疲労の表情なしに扱うことはできない。
「───チッ。」
「────!!。」
エリアは表情ひとつ変わらず、こちらに向けて攻撃を仕掛けてくる、いずれもが即死級…回避か防御の二択を常に迫られ、こちらは攻撃なんて行動すらできなかった。
(このままじゃ間に合う前に死ぬか─。)
そう思っていた俺には実際、この戦局を覆せるであろう案がすでに考えついていた、問題はそれが時間を要するということ、そしてその指定の時間内にこの自分自身が耐え切れるということ、問題はそれだけだった。
[ガゴォン!!]
「──ッ。…エリア!」
「──なんだ。大人しく死ぬ準備ができたのかっ!。」
「──、お前は騎士のはずだ!なのにメビアを討とうだなんてッ!!。」
相手の攻撃をできる限りいなしつつ自身へのヘイトをさらに高くする。話している間はこちらも相手も戦闘に集中できなくなる、そしてエリアはおそらく……
「何を今更ッ!言ったはずだ、私は国王様に従える"騎士"であり、メビア様に従えるものではないとな──!!。」
「それがなんの理由になるっ!。──お前だってメビアを殺したくはないだろッ!!。あいつは……メビアを殺すつもりなんだぞ!。」
「たとえそうであって、何が変わるッ!。私たちは王に従える忠実なる騎士。ならば──たとえ残虐な行為であってもソレは行うべきことなのだ!。」
「そこまで信用していて、そこまでの考えがあると知って…!なんで自分の幸福をとらないッ!。」
「これが私の知る幸福だからだッ!。貴様のようないつまでも知らないままの人とは違う、私は貴様達より優れ、そして貴様らにはない大義がある……自分たちが愚かな者だと、貴様の方こそなぜわからないッ!。」
エリアの表情は無表情ながらも覇気を感じる者だった。可能性があるのなら、彼女はまだ終わっていない───たとえそれがこちらに刃を向け、次の瞬間死に至らしめる攻撃をする相手であっても、
「人に、優劣があるわけがない──全員生まれてくる瞬間は平等だ!。それに偉いだとか劣っているとか、愚かだとかが生まれるのは全て環境が──世界がまだ間違ってるって証拠だろっ!!。世界を常に変える人がいるなら、お前も理解者の一人として正して見せろよっ!」
隙をついて電撃攻撃をエリアに浴びせるも、少しの怯みと回避によってまた距離を縮める。
「私は──騎士だと言っただろうっ!。そして貴様が言うように世界を正すものがいるのなら、それは決まって我々であり、国王様なのだ……寝ぼけた戯言を言うなーーーッ!。」
「────っエリア!!。いい加減目を覚ませッ!」
俺はレールガンを撃ちつつ、エリアから距離を置く、牽制用に放ったものだがものの見事な余裕の振る舞いで攻撃は全てヤツの盾に防がれる。そして盾を切り払い、エリアはこちらに向けて接近する。
「目を覚ますのは────貴様だッ!!」
その一言と同時にエリアは今まで出さなかった『泥』の触手を展開し、こちらにオールレンジ攻撃を仕掛ける。四方八方からの針の攻撃、スラスターを激しい動きに使っていたため回避するにも…限界があった。魔力放衣を展開と同時に完全防御に回し、被弾次第そこを切り離す…そうまでしなくてはこの無尽蔵な攻撃を乗り切れる気が正直しなかった、
「何を…!。お前こそ、本当に自分たちが正しいと思っているのかっ!。こんなことが…あの国王が言ったことが──全ての平和につながるとッ!!。」
「王を信じない臣下がどこにいるっ!。」
「っ……信じるのと、──崇拝しているのは違う!!。」
「では───なぜ、私は戦っているっ!!それを言ってみろッ!。」
エリアの攻撃がさらに激しくなり、魔力放衣の装甲もかなりのダメージと切り捨てを行い、スラスターの冷却も間に合わずオーバーヒート寸前であり、限界がそこまで近づいていた。
「お前には言えないだろうっ!。力で示すことができない、お前には──ッ」
「……力で示すことがッ!───それが本当に、お前が望んだ未来なのかっ!!」
武器が衝突するたびに、無表情のエリアの顔にはどこか人間味が現れてくる、そしてそれを暗喩するように武器の太刀筋に荒さが顕著にでできていた、明らかにエリアらしくない戦い方だ。その言葉の意味も乗せると同時に俺はエリアにそう叫ぶ、
「そうだッ、これが私がっ……私が選択した。───未来なんだッ!!!。」
俺の言葉がどこか最後の逆鱗に触れたのか、エリアはついに表情を今までで一番大きく表し、その表明として大剣をこちらに向けて投げる。オールレンジ攻撃と魔力放衣の防御を掻い潜り、大剣はスラスター部位へと直撃…無論許容値を超えるダメージを受けたスラスターは即座に爆発する。内部へ直接的に繋がっている機構ならば爆発によって後に支障が出るはずだ。
俺はなんの躊躇いもなく、爆発寸前のスラスターを切り離し、残った魔力放衣を爆発への防御へと回す。
[ボガァァァァーンッ!]
爆発するスラスターを勢いと衝撃で俺はかろうじてエリアから距離を置く。爆発の後に発生する黒い煙幕が水に浮かび、アイツと俺の視界を塞ぐ。
「これで終いだ───紅月!!。」
「────っ!。」
その叫び声と共にエリアは煙幕を掻き切り、こちらへと真っ直ぐ突撃してくる。右手に備えた大剣はまさにその殺意の証拠…これから自分が辿るであろう末路を嫌でも連想させる代物だ、だがだからと言って、ここで諦めるわけにはいかない。
[──ピピピ。]
レーダーに新しい反応だ、俺はその反応を聞いた瞬間。決死の思い出レールクローガンをエリア目掛けて投擲する。
レールクローガンはこちらに向かってくるエリアの勢いを削ぎつつも彼女の生み出した盾によって防がれると同時に侵蝕されていく。
「──そうかっ、ならば最後は貴様の武器でとどめを刺してやろう!!!。」
レールクローガンを自身から溢れる『泥』によって掴み瞬時に侵蝕させた。左手にレールクローガンを持った時にはすでに武器の形が変わるほどの変形をしていた。
予測通り、オートマタでも『泥』が獲得した進化した侵蝕行為を防ぐことはできない。
それが全体の規模で適応されているならば、俺も余裕に侵蝕される…つまりはほぼ被弾が許されないものだ、
エリアは武器を振るいこちらに向けて投擲するような構えに移る、さぞ当てやすいだろう、こっちはスラスター破損によって高速移動ができなければ単調単純な水泳技術でアレを避けれるとは到底思っていない、エリアの動体視力はすでに生物の範疇を超えている。かのマグネットコーティングを施した例の機体が如し反応速度で俺の心臓目掛けてピンポイントな投擲を見せてくれるだろう……。
(もっとも、武器を持った時点でそんなことはできないんだが…)
[ビィィィッ!!!。]
ある一筋の光がエリアが持っていたレールクローガンを射抜き、そして誘爆させた。
「何っ?!」
[バゴォォォォッッッッン!!]
エリアは驚いた声を出しつつ、レールクローガンを手から放し…すぐに離れようとするが爆発の規模はとても大きく、彼女自身もモロで直撃を受けた。そして彼女が驚いている隙に声が後方から飛んでくる。
「待たせたわね…紅月!!。」
「遅いぞレナっ!。それで例のモノは、」
「アレよ、完成度はいいとこ75%。アンタのせいで見切り発車だけど、細かい調整で済むようにしといたわ!!。」
レナが顔を向けた方向にはこちらに向かってくる一つのコンテナのようなものがあった。レナの後をついてきたという認識が先に来て、おそらく中には俺の求めていたものが入っている。俺は自然にその方向に向かうと同時に、
「…時間稼ぎを頼む!。」
「はいよ、任せなさい。」
レナにそう伝え、彼女は俺と入れ替わるようにコンテナの方へ…レナはエリアに向かっていった。
「さぁて、新装備の評価実験に付き合ってもらおうかしらっ!!」
「く───、貴様ァ!!。」
二人がそのような掛け声と共に戦いを始めるのを傍目に俺はコンテナの方へと急ぐ…コンテナと俺との接触速度と位置を自身で微調整しつつ、ゆっくりとコンテナの速度に合わせる。
スラスターがない今の自分にとっては至難の業だが、やってみせなければ後がないという気に駆られてもはや失敗なんて結果は考えてない。
[───通信を確保。ドッキングシステムオールグリーン、対象との誤差修正…及びデータ出力を開始。]
そのアナウンスが流れると同時に、コンテナが一方的に減速し開いた。体の自由が自動システムに置き換わり俺はコンテナに背中を見せる。赤外線のようなレーザーラインが俺の破損した背部とコンテナ内のある装備に繋がる。
そしてガチャンという音ともにドッキングする。
[───ドッキング成功…コレよりデータ出力を本格的に開始します、所要時間は50秒と予測。]
そのアナウンスともに開いていたコンテナは俺を包み込むような形で閉じた。
「いいや、20秒だ。」
俺はキーボードのホログラムを目の前に呼び出し、打ち込みを開始する。確かにシステムがやれば40秒だがおあいにくさま、俺がやれば15秒で確実に済む。
すぐにデータ一覧を横流ししつつ高速でそれを全て暗記する。本来たりないデータをプッシュアップさせて横に並べシステムにはそっちと動作確認を全て任せる。
俺は慣れた手つきでデータ出力によるシステムの誤差を修正する。
レナが言っていた通り大体75%の完成で収まっている。アズサさんがプログラミングを少しやっているおかげで助かった、出なければ俺でも流石に40秒かかる内容だコレは…元々急ピッチでシステムと装備の制作を行なってしまったこちら側からしたら申し訳ない気持ちが出てきてしまう、が。それは後の話だ…
「術式理論構築完了、データ出力によるバランサーシステム、ウェポンプラグ、ドッキングと共に再適正化、プログラム制御導入、各部制御系統問題なし、続けて、武装総括プログラムと本体を神経接続、ハインドコード自動変換システム、アルゴリズム再構築、各部電力供給、コアデータからの最大出力、真相術式[神秘]再確立確認、コアとの直列パターン識別コードデータ出力。各部、各所、各武装、コア及び本体との完全リンク完了、システムオールグリーン。」
呪文のような言葉を並べながら口頭で確認作業を同時に進める。最終確認ボタンをクリックしたのちにシステムオールグリーンの文字が現れ、全ての工程が終了する。
それと同時に腕部各部位に新規武装が次々とドッキングされていく、欠けていた右腕部も新しいもの装備と共にドッキングされ、最後に背部の特殊兵装もドッキングが完了した。
[───全システムオールグリーン、出力安定、ベディヴィアール、発進どうぞ。]
コンテナが開き、画面に赤い発進ラインが表示される。背部スラスターに火を付け、発進体制になる。
「紅月。べディヴィアール、出るぞっ!!。」
新たな体を手に入れた俺は水中を駆けると同時にコンテナから飛び立った。
それと同時な各部へ新規装備が次々と構築されていく。初めて構築術式による装備付与を行ったがいいできだ、システムの確認があったとはいえ、この手の魔法理論との組み合わせはとても難しい、アズサは本当にいい仕事をしてくれた。
そして、すぐさま目の前に戦闘に光が映る。レナとエリアとの一騎打ちがそこではすでに行われていた。
「そこッ!!」
「く───ちょこまかとっ!。堕ちろっ。」
レナが隙を見つけ次第にビーム砲で射撃、エリアはそれに対して追いつこうとするが機動性の違いからか、なかなか追いつける機会はない。
オールレンジ攻撃も、四方八方から飛んでくるはくるのだが、攻撃範囲から逃れて仕舞えば簡単に逃げ切れる。しかしだからと言ってレナの一方的な形ではなく、そもそも攻撃があまり効いていないので互いに決定打が与えられない状態が続いていた。
俺は腰部に搭載されたビームライフルを片手にエリアをロックする。そしてレナが注意をちょうどいいタイミングで射撃すると同時に、
「レナ!!。」
「わかってるわよッ!」
俺の掛け声と共に互いに同じタイミングでビームを発射する。エリアはすぐさま盾で二つのビームを防ごうとするが、着弾が同じだったため思った以上の威力差に盾で受け止めきれずに吹き飛ばされる。
「ッ、───まさか!!。」
エリアはそう言いながら、体制を立て直そうとする、そしてその隙に俺とレナは接触する。
「レナ、交代だ。代わりに持っていけ、」
「!、わかったわ。」
レナに一つの録音データを俺は渡す。それを受け取ったレナは何かを察したように、そう言いながら撤退していった。
「───紅月。今更出てこようとは。」
「今更で悪いか、お前だって万全な俺と戦いたいとは思っていただろ?。」
「──フン、右腕が戻ったところで…貴様の敗北は決まっているのだ!!。」
大剣を出しつつエリアは俺に向かって突撃を開始する。俺はそれに応対するように右腕部に搭載されたシールドから対人刀を引き抜き、エリアに向かって構え、突撃する。
[ガギィィィン!!!。]
二つの剣がぶつかった衝撃が腕を通して伝わってくる。先ほどまで一方的だった、こちらのパワーが相手と互角以上だということを体感する。
「───お前が言った、お前が選択した未来で……今のお前を打ち負かす!!!。」
「───っやらせるかぁッ!!!。」
俺とエリアは互いに剣を再度交える。エリアの豪快な一撃を高度な機動によって難なく回避し、隙をついて切りかかる。
剣撃でいえばエリアの方が圧倒的に上だ、しかしそれはあくまで通常の話。
『泥』化したエリアは繊細さや精密さといった要素が完全に抜けている、いわばそこが最だ。
この装備ならば今のエリアを救える、俺はそう確信しエリアに攻撃を続ける。
[ギィィィン!!ザシュン!!。]
「───ぐっ!なぜ?!」
エリアの大剣を押し除け、俺はエリアの『泥』の肉体に一撃を入れる。そして大剣をエリアの手から離すために無理くりもう一度剣をぶつける。
「まだわからないのかっ。自分自身の過ちに!。」
[ギィン!ガギィィィン!!。]
「何ォっ!!」
それに対して、エリアは理解しようとしているのに、理解を拒むような苦しむ声をあげ大剣で対人刀を切り払い力任せにぶつける、しかしながらパワーが互角以上のため、大きな決定打にはなり得なかった、そこを彼女の気迫が押した。
「私は──"騎士"なのだが、敗北は許されないッ!常に手に入れるのは勝利だ、そのためならどんな手段も厭わないっ!!。」
「───違うっ!それは戦士だ。"騎士"は常に誰かを守るために存在している、一方的な侵略者じゃない!、お前もそれをわかっているんだろ!!エリア。」
俺の剣撃がエリアに着実にダメージを与える。彼女乱暴な一撃はもはや精密さのかけらすらなく、暴れる姿は意識あるバーサーカーという表現が似合うほどだった、
「────私は。それでも、国王様の!!、反逆者を全て皆殺しにっ!。」
その言葉を聞いた瞬間、俺も頭に血が上った。反逆者とはこの場合誰を指すのか、内側の裏切り者は誰を指すのか……その事実だけが俺の中で目の前の敵を許してはならない理由になり、エリアに本気で怒る理由になった、
「───こんのっ!分からずやがァァァァ!!!。」
最大稼働状態に突入した俺のはエリアに向かって一直線に対人刀を構え、一点突破を慣行する。エリアがオールレンジ攻撃を展開し、四方八方から攻撃が飛ぶ中、背部の特殊兵装によって加速をさらにあげたスラスターを前に一撃も当てられず、俺のエリアの胴体を覆うその『泥』まっすぐ切りつけた。
「───────ぐっ!?」
胴体から『泥』が切り払われると同時に赤い液体が水中に浮かぶ、そしてそれを瞬時に穴埋めをする周りの『泥』、一撃では決して勝敗がつかない訳だ。
「そんなことで…そんなことで。何が変わる!!。」
懐に入った俺は勢いに任せて、エリアの体に覆われた『泥』で覆われた各部位を切り刻んでいく。ガードされた剣を無理くり弾き飛ばしながら、相手に着実に一手一手と剣撃を繰り出す。
「今のお前はただの暴力装置だ!。わかっているんだろ、あの国王は真の平和なんて目指してないことくらいっ!!。」
「──黙れっ!。」
事実から目を背けようとするような表情を浮かべたエリアの体内からはさらに『泥』が溢れ出し、ウニのような針攻撃を全方位に展開した。一旦距離を置き、即座にくる見慣れたオールレンジ攻撃に俺は回避しつつ、対人刀で切り払う。
「こんな攻撃を…まだ!!。」
「貴様に…わかるものか、背負う者の…!。」
「その結果がこれかッ!!。お前はいつまでもそうやって自分をひた隠している…いい加減自分の心に従って見せろ!!」
さらに増えていく『泥』の攻撃、しかし装備を新しくした俺にとってこれらはまるで意味をなさない、高機動からなる自由自在な動きを『泥』は決して捉えることができない。そればかりか攻撃後の隙を大幅に見せ、それを天下無双が如く俺が高速で切りつけ続けながら前進していく。
「、なぜ。」
「、分からないのか…その力が、お前を殺しているんだぞ!!。」
「………それはっ。」
背部から放出される粒子は対『泥』用に作られた[神秘]の産物、時間経過によって水中における濃度を増加させる。すなわち、時間が経てば経つにつれて相手のパワーダウンを見込める、無理くり短期決戦に持ち越すことができる新兵器でもある。
それを今更気づいたエリアにほぼ勝ち目はない。
「エリアーーー!!。」
「っ────私は!。」
言葉に詰まったエリアの気持ちを体現するように『泥』の触手は動きを鈍らせる。その一瞬の隙を見逃さず俺は対人刀を構え、前方へ突貫する。
「ッ!。」
すかさず『泥』の触手を守りは回すエリアは一瞬にしてその姿を覆い隠せるほどの壁を俺との間に作る。しかしそれすらを無意味にするように俺は大きく切りかぶり、壁の向こう側にいるエリアごと断ち切る勢いで触手の壁を一刀両断した。
「、俺が───ッ!」
[フィィィィィィン!!!]
対人刀から手を離し、右手にエネルギーをためエリアの頭部に向かってぶつける。エネルギーの光がエリアの頭部を包み込む、
「───お前を、引き摺り出す!!!。」
その声と共に、光はさらに強くなりエリアの肉体を四肢爆散するようなエネルギーが彼女を襲い、そして『泥』だけを落とす。エリアの生身の肉体をしっかり掴み、王の間に向けて一直線に突き飛ばすように撃つ。
[ゴォォォォォォォォン!!!!!]
エリアは一撃の光と共に、王の間まで一直線。
彼女の内側にまで侵蝕していた『泥』は確実に落とされていき、彼女は本来の姿へと戻った。
しかしそれが早すぎたのか遅すぎたのかは今の俺に気にする時間はなく、エリアを退けた俺はすぐさま王の間へとスラスターを吹かし向かっていった。
『topic』
紅月
種族 オートマタ
[HP]100000()
[E]100000([神秘]搭載)
[A]80000([神秘]性障壁耐久値)
[STR]5000(通常)
[VIT]90000(基本装甲+ハインドコード)
[AGI]300(通常歩行)
[LUK]125 (運)
[DEX]9000(器用さ)
[スキル] [称号]
・魔力放衣 ・無限のエネルギー
・第二公式大会優勝
・鉄血の死神
・受け継ぎ
・イレギュラー
[身体構造(内)]
[頭]パララス(新) [胴体]パララス(新)
[左腕]イーズ(新) [右腕]イーズ(新)
[左脚]イーズ(新) [右脚]イーズ(新)
[身体]サー・アーマー [内部]サー・アーマー
[劣化部位] 無 [修復部位] 無
結果 無
コア:アトルコスコア[神秘]
[身体構造(外)]
[頭]アンチイレギュラー [胴体]アンチイレギュラー
[左腕]アンチイレギュラー [右腕]ヴィスライト
[左脚]アンチイレギュラー [右脚]アンチイレギュラー
表面状態 ハインドコード展開
[装備]
・ハインドコード特殊感性装甲
【詳細】コアを通して生み出された[神秘]が立体的な形を形成し完成した装甲。
魔力放衣同様特殊な感性操作が求められる防御装甲なため一般的に扱うのはとても難しい。
右腕部に搭載されてある浄化装置の影響を受けているため、『泥』の攻撃を完全に防ぎ切り、尚且つ直接的な攻撃に関しては逆に相手にダメージを与えることができる。
・サー・マント
【詳細】背部に搭載された最新型の推進装置。
水中でも無類の機動性を誇る本装置は水中効率適正化という独自の機能を搭載しており、燃費も何ら問題なく。地上専用で開発された推進装置の約3倍の出力で稼動することができる、
最大稼働時には理論上5倍の出力を叩き出し、またマント状の水色に光輝した[神秘]を展開する。
展開時に放出される[神秘]はコアを通して生み出されたものであり、魔力と神秘の実質的なハイブリッドエネルギーであるため『泥』に対しての防御兵装としての有力性が出る他、放出され続ける[神秘]は水中に停滞し、一定範囲内の『泥』にスリップダメージを与えることができる浄化性が副産物として付く。
・掌部収束型エネルギー砲
【詳細】換装された右腕部に搭載された新兵装。
対『泥』をコンセプトに設計されいるだけあり、『泥』対象時に大幅な効果をもたらす浄化装置をエネルギー源としているため、これ単体で『泥』を消滅させることができる。
・対人刀グラディウス
【詳細】右腕部に搭載されたビーム・実体刃複合兵装。実剣表面にビーム刃を展開することで高い切断力を誇る。名前の通り、人を斬るのに適して開発されたため対人補正は高く、対PvPにおいてはおそらく秀でた活躍が見込まれる。
一定値の防御力を貫通する特性があるため、生半可は防具では太刀打ちできないとされる。
レールクローガンの槍先部分を一部流用しているため耐久性は折り紙付きであり、また収納時はシールドとドッキングする形になるため不使用時のエネルギー問題も安定している。
・実体盾複合BC[神秘]
【詳細】通常は実体物としてのシールドであり、展開状態にはビームで六角形を描く形で[神秘]が付与された強力な防御兵装になる。
対人刀グラディウスとの収納も兼ねてあるため、耐久性も高い。具体的にどのくらいかというとAMSの装甲データを流用し設計されていることもあってか……紅月がドン引きするほど硬い。
※対人刀グラディウスの直撃をほぼ軽傷できるレベルだとされている
・牽制用新型ビームライフル[神秘]
【詳細】中距離の戦闘をコンセプトに考えられ、[神秘]の属性を纏った新型のビームライフル。牽制用として開発されているが、威力は十分なため主兵装とさて活躍できなくもないが、そも中遠距離戦は『泥』の得意とするところなので出番があるかは難しい。




