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七十五話「類似相違」

前回のあらすじ


ウミさんが逃げて、焼かれて、夢を見た。


 




 「……っは!」


私は自分の体が重く感じると同時に目を開き飛び起きた。状況を把握しようと左右を確認する自分が次の瞬間分かったことは先ほどまでの出来事は夢のようなものだったということ、

そして誰かが私をベンチに寝かせてくれたことくらいだった。


 (何せ、ベンチに座って炎の槍を出した記憶がありませんからね。)


そう思って、心の中で感謝を告げていると。


 [キン──ガキン──!!]


感謝の気持ちを遮るような剣撃が耳に入ってきた。音の大きさから推測するにすぐ近くだ、


 (ここは修練場、別にそんなに驚くことでも無いのですが。)


しかし私は興味があった、プロイシーの人々がいかような戦闘を行なっているのか……幼い子供がふと抱く好奇心に似た感覚、それを原動力に私は音のする方向へ体を動かしていった。


 [キン─!シュイン!!ジジジ──ガキィン!!!]


私が近づいて行くに連れて戦いはどんどん激しくなっていく、音の苛烈さから宙を舞う人影。正確には人では無いのだろう私達に無いはずの尾ビレがそれを何よりも表現している。水中を舞い、さまざまな剣技を繰り出す様はまるで翼のない戦乙女ヴァルキリー、私の率直の感想はそんなところだった。

過大評価もいいところだったのだが、頭が完全に目覚めていない自分からしたらこの評価にも若干の納得はいく。


 戦っているのは二人であったが奥には数人の人魚族、魚人族が待ち並んでいる…おそらくはあの縦横無尽に戦っている魚人族の相手待ちなのだろう…


 (それにしても…すごい戦い方だ、)


魚人族の戦い方自体はあまりわからない。人間の構造から水中戦の応用まで私たちとは全く別の動き、理解できるのはせいぜいその領域だ、そしてそれを真似ることは基本できない。

だが次々と武器を出し、同族であろうと圧倒的な攻めを見せ続ける彼女は私が思うに間違いなく強い分類に位置する。何がすごいか詳しく表現できないが……とにかくすごいことはわかる───そういうものだった。


 「今日はここまでとする、場所の変更も含めた今日の疲れをしっかりと癒すように──!!」


 『はい!!』


そしていつの間にか、終わった。

あの魚人族は結局最後まで誰にも引けを取られず、疲れる様子すら見せずに戦い終えた。私は場違いながらその光景を見ていた傍観者にすぎない、彼女の教官のような風格が生み出す威勢の良い声が私の耳まで届くまで私にその場を離れる考えは浮かばなかった。

解散する人々があたりに溢れかえる前に私は先んじてこの場を離れようとその人魚族に背を向けた瞬間───。


 「そこの人間……少し待ってもらおうか!」


明らかに私へと向けられた言葉が背後から飛んでくる。私は歩むはずだった足を止めて後ろを振り返った,解散する足取りだった魚人族と人魚族が私の方をじっと見つめていた。大きな声に反応して無意識的にこちらを向いたという表情の表れだと1秒後には理解できた、しかしそれを踏まえたとしても私の心と体は緊張と冷え切った空気感に当てられまるで石のように固まっていた。

そんな心境を持ちつつも私は声の持ち主を目で探し、見つけ出した。それは私が先ほどから誇張した表現を用いて凄さを語っていた人魚族の女性だった──、彼女の真剣な眼差しが私の目に向けて差し続けられる感覚をひしひしと感じていた。


 「──。」


私はその大きな声をあげた人魚族の人がこちらにくるまで、いつも以上に正しい姿勢を保ちながら考えをひたすら巡らした。人間がここにいるという事実が気に食わなかったのか、これから何をされるのだろうか、私がいったい何をしたのだろうか?、といった恐怖にも似た思考が私の心を身構えさせる。


 人魚族は周りの人達を帰らした後、私に再度視線を向ける。その目には先ほどとは違い真剣さはそこまで感じられない、心が落ち着いていると解釈もできる……どちらにせよ私からすれば話しやすいと思う他ない。

 そう思ったところで人魚族の人は私へと泳いできた。


 「引き留めて悪かった。火傷はもう大丈夫そうか?。」


 「え、えぇ。はい、……もしかして貴方がベンチへ?。」


今更なのだが私の腕には服から被さるように包帯が綺麗に巻かれていた。きっとこの人がつけたのだろう、


 「あぁ。いくら地上人といえど、怪我をしていたら放っておくわけにはいかない……」


 「──お気遣いありがとうございます。」


私はその心意気に深く感謝の意を込めて頭を下げた。


 「いや、そんなに気にしないでほしい、私はただ……当たり前だったことをしただけだ。」


人魚族の人は少し落ち込むような様子を見せながら私にそう言った。私はその表情に複雑な悩みがあると見た、本来ならあまり深く関わらない私だが一応助けてくれた恩というのもある。


 「何か、あったんですか?。」


 「いや……。それより貴女の名前を聞かせてほしい、」


 「ウミです。」


 「ウミ…か、不思議な名前だな。」


いくらイントネーションや言葉の意味が違ったところで、ウミは海だ。それはそれでとても不思議だと思っても無理はないと私自身思っております。ですがそれをあえて言わずしっかりと区分けできているところ、変に過激派というわけではないのでしょう。

海を侮辱しているのかー!みたいなノリで来られても困りますから(切実)


 「自分でも自覚してます…」


 「あぁいや、変って意味ではなく───、そうだな少し珍しいと思っただけだ。」


 「左様で…それであなた様は、」


 「エリアだ。」


 「エリアさんですか。……改めましてありがとうございます。」


 「先ほども言ったが、頭はもう下げなくてもいい。私も…地上人はまだ慣れないが、かと言ってあまり嫌いにも慣れないからな。」


 (……不思議な方だ)


ここまでの会話を振り返ってみてもこの人は心の底から地上人を嫌っている感じはない。いや、それも含めて何か理由があって控えているのかもしれない。だが、あえて相手の言い分や事情を聞かないのもメイドとしての役割でもある。


 「それでウミ……はなぜあんな火傷を?。」


 「えぇっとですね。」


急に火傷を負いまして、という理屈は通用しないだろう。なぜかといえば海の中それもプロイシーで火傷を負う場所といえばそれはとても限られている、水熱炎という海の中でも燃え続ける炎があるということは存じ上げてますが、さすがにそこら辺に浮いてるなんてことはないでしょう。

なので海の中で火傷というのはいささか変な話だ。なので下手な嘘はこの場で怪しまれる可能性がある、この際オブラートに包みつつ本当のことを話すのが手っ取り早いのかもしれない。

 

 「実は……」


私は必要最低限の原因をエリアさんに伝えることにした。あの夢見たいのから目覚めて一度も炎の槍を使っていない自分だが、一応使えるということにして、そのコントロールを誤り結果火傷してしまったということにして話を進めることにした。


 「……なるほど話はわかった。それにしても水炎石以外で海の中で燃えるものがあるとは──何とも不思議な話だ。」


 (私からしたらその水炎石も十分不思議なんですけどね。)


 「ウミは確かコントロールできないと言っていたな。」


 「えぇはい。一応出せはするんですけど形がうまく定まらなくて(ということにしておこう。)」


 「……もしかしたら力になれるかもしれない。、申し訳ないのだが一度目の前でやってみてもらっていいか?。」


 「えぇ……はい。」


どう力になるのだろうかと私は疑問を抱きつつも、エリアさんの前でやることにした。

彼女が悪い人かどうかの区分は自分の中では一応つけている、ただ自分自身まだ彼女が完全にいい人なのか怪しがっているだけだ。プロイシーは地上人に厳しい国だいわば敵地に潜り込むのも同然、警戒するのもまた当然ですが、さすがにつけれている自分がいる。早くお嬢様のもとに帰りたいと私は思う。

ですが、それも今ここで仮の信用や協力関係を作れば、私の心にも少しの余裕が生まれるというもの。


それに誰かの行為を無下にできるほど私は冷酷ではありませんし!。


 (炎の槍)


私は心の中でその単語、その形を明確にイメージする。以前出した時の強烈なイメージがフラッシュバックするように頭の中に焼きつく、そしてそれを現実に出力する。


 [─────。]


一つの小さな火種から炎の槍は形成されていき私が不愉快に思うほどの熱を感じとる頃にはイメージ通りの姿として映し出されていた。


 「──────っ」


私は静かに歯を噛み締め、形成した炎の槍を安定状態にしようとする。螺旋を描くように槍先から炎が纏われ渦巻く状態、一歩足を引いてゆっくりとゆっくりと、イメージしながら炎の速度を緩める。


 「───ぁ、あっ!」


 しかし描いていた通りにはいかず、炎は不安定な螺旋を描いた瞬間、何事もなかったかのように槍と共に消えてしまった。


 (以前より熱によるダメージも、抵抗も少ない、。)


なんならイメージもだいぶしやすくなった、先ほど見た夢は単なる幻ではないのかもしれないとも思ったが、それにしては難易度がまだ高いとも感じる。一応所有物認定をされたとしても、暴馬を御するのはまだ先だということなのだろうか


 (順序が逆とか……?。)


 「ウミ…大丈夫か?。」


 「えぇ…、やっぱり難しいです。」


エリアさんは私の側まで近づき、安否を心配する。私はそれに対して大丈夫の意を感想を通して伝える。


 「………アドバイスなんだが。」


 「はい、」


 「ウミはいったいどんな形にしようと考えていたんだ?あの槍を───」


 「……どんな形ですか?」


思えば考えたことがなかった、あの槍を…あの炎をなんとか自分の支柱に納めコントロール自体をうまくしようと考えていた。だが今のエリアさんの言葉できにそれはあまりいい方法ではないことが読み取れた。


 「…もし決めていないのなら多分難しいだろう───例えを出すなら目標もなしに泳ぐこと自体をなんとかしようと決めているような感じだ。もし私が目標を決めつけるなら王城に向かって泳ぐという目標を決める。まぁだから…炎を操って槍の形を変えるとかじゃなく、槍の形を一つのものに変えるために炎をコントロールするというのがやりやすいのかもしれない。」


 「なるほど。やってみます!」


私は気を取り直して、また意識を集中させる。

炎の槍は先ほどよりも早い段階で形成されたことが生暖かい炎の感覚からわかった、ここまでくると肉体が槍の出し方を覚えているという解釈をしても申し分のないほどだった。


 そして、私はエリアさんから言われたことを思い出しつつ、自分が今求めている形を思い描く。


 (これは武器だ…拳とは違った炎の形、私が扱いやすく。なおかつお嬢様にも紅月様にも類似しない、私だけの武器。)


悩めば悩むほど、炎の安定性は難しくなる。しかし今の私はひどく冷静だ、まるで最初から見えている答えに向かって走って走って、もうすぐそこまで来ているような、自分を励ますことのできる領域まで到達しているのではないかと自己分析している。


 (槍──────、槍。)


槍は敵を刺すものだしかし今お私には扱いづらい、もしこれが薙刀のような薙ぎ払い切ることを目的としたような武器なら…………


 「────ッァ、アァッ!!」


私は目を見開き、確信した直感を信じて不安定な形をした炎の槍を思いっきり掴み振り切った。

周りに付着していた余分な錆を落とすかのように炎を振り払い、私の目の前に一つの武器が姿を現した。


 [────、ジジジ]


その武器は燃えていた、まるで一つの武器を今現在も燃やし焦がすような勢いで、しかし安定していた。そしてかたどられていた、私が心の底から望んだであろう形へ。


 「………、」


その武器に見惚れた。手から感じる温かい炎はまるで私を包み込むかのような包容力がある。それでいて私を決して裏切らない唯一無二の武器となって今ここに姿を現したのだ。槍の形をした武器、しかし刃先は突き刺すためではなく間違いなく切るための物だ、だが私はこの結果に満足している。必要なものは殺傷力が高い武器ではない、誰かを守るための武器だ。


 (炎の槍…では似合いませんね。)


 「光焔槍こうえんそう─────。」


その名前を口にすると、馴染んでいた炎の温かさが私の体温と同じほどになり、燃えていた槍の形がより洗練された形状へと変化していった。私の体の一部として完全に馴染んだことを今身をもって体験した。

そして同時にこの槍の使い方が頭へと自動的になおかつ無理のないような量で伝わった、何を思ったか私はこの槍に自我があるという結論に行き着いた。


 「ウミ、おめでとう。」


 「いえ、こちらこそありがとうございました。おかげで──この子をしっかりと感じるようになりました。」


 「────。その気持ちを大事に、それは貴女だけのものだ決して迷わないように。」


 「……はい!。」


 「──では腕ならしと行こうか。」


 「………はい?」


返事はしたが私の頭はこれっぽっちも理解していなかった、なぜそうなるのかという言葉で頭がいっぱいだった。


 「幸いここは修練場だ、思い切りのいい戦いをしても誰も困りはしない。」


 「ちょ──っと待ってください!なぜいきなり!?」


 「ん?、なぜと言われても武器というのは腕試しが基本だ。何せ武器だから使われなければ錆びる一方、ならば慣れることも含めて今この場で戦ったほうだいいというわけだったのだが…」


 「いや───(間違っていない理論だけど、否定する材料がびっくりするほどない、つまり断れない…教えてくれたお礼もあるし、自分自身も礼一つじゃ満足しないタイプかなぁ〜とか思っていましたが!まさか戦闘なんてあぁ〜ウミ!あなたやっぱり相手を選んだほうがよかったんですよぉ〜!!なんて今は言えないですね──しょうが…ない!!!)─────…はい!。不祥ウミ、相手をさせてもらいます!!!。」


 「──いい意気だ!。見たところウミは戦闘もこなせる口だろう、服がギリギリ破れない程度には相手させて貰おう!!。」


 「はい───(ギリギリ破れないってなんですかぁ〜!!!)──!!。」


私は光焔槍を再度出し、エリアさんに向かって構える。エリアさんもそんな私を見て両手に集めた水から短剣を形成する。二刀流だ、型は相当に難しいと聞くが私の前であれほど啖呵を切って出たということはおそらくノーマルで二刀流使い、先の戦いでもエリアさんは様々武器を使っていたが二刀流だけはここぞという時使っていた記憶がある。そう考えると最初から二刀流を使うということは完全にやる気だ。


 (───使い方は知っている。)


槍をこの手に得て名付けた瞬間にどうすればいいかなんてことはすでにわかり切っている。問題はこの体が相手の動きについていけるかという話、なんせ


 「私は水中戦が初めてなので、できる限りお手柔らかに…お願いします。」


 「承った───!」


そうエリアさんが口にすると、彼女との戦いは切られた。

エリアさんの繰り出す技はどれも彼女自身の戦術の延長線にあるものだった、いわばポテンシャルをフルに活かした近中遠距離全てに対応を効かせたオールマイティーな戦術、相手の攻撃やスタイルに合わせてさあざまな相性を切り出すことができ、なおかつ彼女はそれを使いこなせていた。

私自身もそれなりに善戦した方だと思う──、最終的に言えばいい経験になったと思う。でも


 「つ…疲れましたぁ。」


はしたないことだと理解しているが、私は大の字になって修練場の真ん中に仰向けで倒れた。指一つも上がらないほど疲弊した体が、いっときの休息を求めて地に体を預ける。その光景を見たエリアさんは真似するように私の隣に仰向けになるように倒れた。


 「いい戦いぶりだったっ!ウミは随分と死戦を超えてきているようだな。」


 「死戦っていうほどではないのですが、まぁ私の主人がっても個性的な方なので。」


 「主人か…どんな主人なんだ?。」


 「そうですねぇ……思いっきりがよくて、私以上に進んでいて、見ていて危ないところもあれば、私自身その人に色々救われる部分もある──っていう感想なのですが!、そんな人です。」


自分で語っていながら少し恥ずかしくなっていく、自分が語っているのは特徴なのか、それとも感想なのか、エリアさんには伝ったのだろうかと、色々考えてしまう。いい大人が表現に困ってどうするともまた自虐する。


 「…なるほど、いい主人を持っているということか───少し羨ましいな。」


 「エリアさんも誰かに支えているんですか?。」


 「あぁ──でも貴女ほど素晴らしい人では……」


沈黙、なんとも言えない雰囲気が私とエリアさんの間に形成された。彼女の立場は思った以上に複雑と見ていいだろう。どこか遠くを見据えているその横顔は憧れと自身への悔しさが含まれているような気がしたもっとも自分の感想ではあるが、……そんな顔をされたら放っては置けない。


 「……もし今支つかえている人が不安なら、変えるべきだと思います。」


 「えっ。」


 「私は今は支えたい人に自分からつかえています。エリアさんがどんな人につかえているかは正直なところ存じ上げませんが、─────本当に大切なのは自分の気持ちだと思います。つかえたい人につかえて、その人を笑顔にして、自分も笑顔になる。……その形こそが正解だと私は考えています…。」


 「──ふ。あはは……」


 「──…」


 「そうだな貴女の言う通りだ、私も自分の気持ちに少し正直になってみるのもいいかもしれないな。」


 「はい!──私たちにはその権利があると思います。それが私の思う、メイド道なので!!」


自分の言いたいことを言い切った。それだけで私自身満足だった、だがこれ以上に満足できたのは私の話を聞いて真剣にエリアさんが笑ってくれたこと、それだった。


 「そうか………あぁ──、私もメイドになってしまおうか。」


 「えぇ、メイドは色々奥が深いですし。エリアさんも慣れると思いますよ…」


 「そう……なのか?私にお淑やかさはないと思うのだが、」


 「お淑やかさが全てではありません!、私はほとんどオールワークスですが、メイドには役職もありますし個性豊かのほど映えるものです!。──ですが、常に主人を目立たせることを意識しなければならないのです!!下手にでしゃばる奴はメイドではありませんので!!!」


 「──なるほど…もう少し詳しく効かせてもらっても?。」


 「もちろんです!!、私でよければいくらでもっ!!」


そんなたわいもない会話を続け私とエリアさんは二人、修練場で話した。その後も女性同士の些細な悩みやその他諸々について結構熱く語り合ってしまった。


 「さて、そろそろ私は戻らねば。まだ、やることがあるからな……」


 「──。」


戻るということは彼女自身が語っていたあまり良くない主人の元に帰るという意味だ……彼女と今話して感じたことは、私たちはもっといい交友関係を築けるのかもしれないという新しい可能性だった、つまり今ここで引き止める行為をやめてしまったら、それは友達を死地に送るのと同じだ。


 「本当に戻るんですか…?」


私は思わず口から本音がこぼれ出てしまった。でも仕方ないエリアさんは悪い人ではない、いい人だ。地上人はあまり慣れていないと言っている口、話してみれば偏見などの思惑を彼女から感じることはできなかった、それこそ同じ種族かのような気分でこちらは話せていたというもの……、そんないい人がどうして次からそんな目に遭わなくてはならないのか─?っと理不尽のように考えてしまう。


 「…ウミ、心配しないでほしい。私も貴方と話して決心したことがある、が──今は後回しにする。」


 「……それでも支えるんですね。」


 「あぁ……貴方のように素晴らしい主人じゃないかもしれないが、それでも今の私はメイドではなく騎士だ。いずれメイドの歩みを始める前までこの責務を通す必要がある。」


 「──わかりました、ではエリアさんがメイドになれることを祈っていますね。」


 「助かる。」


そうして私たちは互いに別々の道を再び歩み始めた。一度交差したひたつの道は思いを改め再び進み始めたのだ。そこに私からの意志はなく、また彼女からの意思もない、他力本願のような話かもしれないが…私は彼女の行く末をそっと信じることにした、いつか彼女がメイドになれますようにと心からの祈りを思いながら…は


 (また会えたらいいですね。)


帰り道へと向かう私の心の中では常にその言葉が止まっていた。


『topic』


スキル:光焔槍……がウミのスキルに追加された。 


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