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隠話「面倒な違和感」

前回のあらすじ


素材を一通り分析し終わった紅月は最悪な事態を想定して工房の許可を得たいとメビアに提案。

メビアはあらかじめ予測を立てるために神秘である水晶を使い見通す。紅月の身勝手な願いによって方向転換、未来ではなくウミたちを見通すことに、向こう側の状況を予測できた紅月は、心配していた気持ちが爆発し思考が加速、結果思ってはいけない最悪のことをメビアと話そうとする。






最初から違和感を感じていたはずだ、海洋調査なのになぜ現場があれほどおかしな状況になっていたか、ルルカのまるで身構えていたかの様な柔軟な対応、(本当に柔軟だったかはいざ知らず)エズが持たせてくれた明らかにオーバーパワーな装備。他のプレイヤー達の団結力、目的に対する躊躇のなさ、


依頼されたのはそんなに前じゃないはずだ。しかしこの短時間で色々なことが起こりすぎて抜けていた。


 (普通はこんな短時間で事が進むはずはない。)


っという初歩的な流れに、俺は気づけていなかったのだ。


──いや、正確には確証がなかった。


だが今この瞬間はっきりした。


 どうしてエズが武器を持たせてくれたのか、どうして他の人たちはまるで最初から理解していた様な行動をしていたのか、どうしてメルドの様な人までもがここにきていたのか。

どうしてルルカがここまできたのか、


 (考察が正しければ、それは。)


強大なものに強大なものをぶつけるのと同じ理屈。

ルルカはこの依頼について何も話さなかった。(俺が聞かなかったという意味もあるが)、だが話したくなかったという可能性に転換したときこの依頼の中に凝縮されたストーリーにだいぶ当てはまってしまう。、


 (そうか、俺も強大な一つに考えられていたのなら。)


 なぜ強大な力を持ったものが集われるのか、それは強大なモノに対するカウンターが必要だから。ルルカやメルド、ウミさん、そして俺がここに集われるのか理由、『泥』という突破が困難な問題に対するカウンターがもし俺たちなら、依頼主はどこまで計算している?。


偶然にしてここまで集まるということはないはずだ。なおさら、、


 「─紅月、お兄様。」


 (メビア。)


信じたくないわけじゃない。

ただ一つ確認を取りたい。

メビア自身が全てを織り込み済みで、俺たちという道具を使って『泥』を倒す計画の立案者だったとしたら。


 (俺はメビアという存在を。)


 「ごめんなさい。」


メビアはその言葉と共に頭を下げた。俺は考えていた言葉や思い始めていた気持ちを一旦止めて彼女の言葉に耳を傾けた。


 「─。」


 「私のせいだよね。紅月お兄様がボロボロなのは。私がこんな依頼したからだよね、」


察しがいいのか悪いのかメビアは俺に向かって申し訳なさそうにそう言った。


 「─そうだな。でも俺だけじゃない、」


 「─」


 「俺の仲間も俺と同じくらい傷ついている。メビア、正直に言う。これはお前の責任だ、」


 「─!。」


メビアは俺の言葉に肩をすくめて一瞬ビクッとした。俺のこの反応や言葉が予想できなかったのか、それとも予想していたとしても彼女にこの事実は効いたのか。頭にそのことが入っている俺だが今この瞬間を止めようとする『考え』にはならなかった。


 「世の中には取引っていうのがあってだな、報酬を対価に頑張ったり、中には死力を尽くすものだっている。して、仮にその対価を貰えなかった者にメビア。お前はどう責任を取るつもりなんだ、」


 「──ちが、。」


 「そういう者に対して、己が出せる金品以外のもので支払うという依頼主も中には珍しくないよな。」


 「─違う。そんなつもりじゃ、」


 「気持ちを緩和させるのが目的か、それとも100%の善意ってモノで受け答えするのか、依頼を受けた奴はどう思うかな。」


 「ねぇ!違うの!そんなんじゃないの──!」


 「振り回されて、誰かを失って。それでいて待っていたのが慰めとか、」


 「ねぇ──。」


 「相手はどう思うんだろうな─?、メビア。」


 「っ。、違うの──信じて。」


俺が言葉を進めるたびにメビアの表情は酷くなっていた。それでも俺はこの話を進める義務があった、たとえ理解していても、たとえ理解していなくても、、必要なコトだと思ったから、それが勝手なエゴだとしても情けないものだったとしても。今この時だけはメビアに心のうちのほんの一部始終を見せたかったから、。


 「メビア、俺が言いたいのはそれだけなんだ。別にお前を恨んでいたりとか反省してほしいなんて思ってない。」


 「─ぇ。」


 「こんな辛辣に言っておいてどうかと思うが、ただ『わかって』ほしいんだ。メビアが思っている以上に責任っていうのは重たくて逃げたくなって、時によっては誰かに嫌に思われるかもしれないということを。」


 「、。」


メビアは涙目になりながら俺をみていた。俺はその光景で熱が冷めたように自分がやってしまったことを受け止める。


 「、俺が悪いな。教え下手で、説教するような口調で大人ぶったことを言って、本当にすまない。」


俺はメビアに向かって謝った、いっときでも感情をコントロールできなかった、それを今実際に体感した。説教という名の自分のエゴをメビアに押し付けてしまったこと。いくら『わかって欲しかった』という気持ちが心の奥底に存在していたとしても、本当に教え下手だ俺は。こんなひどい言葉しかかけることができないなんて。


 「、ぁ紅月お兄様は悪くないよ。私の態度じゃそう見られても仕方がないから。」


メビアは浮かない顔をしつつ、涙目になっていた顔を腕で拭った。


 「、何か理由があるんだな。」


当てずっぽうにすぎない予想だった。メビアの顔は明らかに先ほどの後を引きずっているように見える。しかし俺はそれとは別の何か深いものが彼女を動かしているのだと知らず知らずのうちに気づいていた。


 「うん。」


 「『泥』のことだよな。」


俺がそう言った途端メビアは頷いた。返事をしなかった理由は言わずもがな、俺の説教が原因であることに違いはなかった。しかしメビアは俺の言葉に応えようと涙を一生懸命に再び拭い、瞬きを数回し冷静さを装った。

その精神力の高さに俺は何も言わないことにした。


 「やっぱり知ってたんだ、」


 「そりゃあ、俺が知ってる海と大違いだからな。あ、透き通ってるって意味で、」


 「そんなんだ、きっといい海なんだろうね。」


いい海、というのは少し言い難かったりする。実際に海に行った記憶はあるが『ない』そこまで鮮明に覚えているわけじゃないという意味なら、その通りだろう。

なのでここの答えは


 「あぁ、いい海だったよ。」


 「、紅月お兄様が知っての通りあの『泥』が、最近海を覆い尽くしてきたの。最初は天気が悪いんだとおもってたけど、明らかに晴れない天気に違和感を感じて、調査のために国を少し抜け出したの。」


 「抜け出すって、、護衛は?、流石に第二王女を野放しってのはヤバいだろ。」


 「─お父様にとったら調査っていうのは言い訳で遊びに行ったって認識かもね。昔よく抜け出したことが裏目に出たって感じ。」


 「─。」


メビアの言葉を聞いて、メビアの親の認識が少し変わった瞬間だった。どこの親もおんなじっという風におもったわけじゃない、どちらかといえば


 (メビアが可哀想だ)


っとそうおもった。


 「で、抜け出して色々調査しているうちに、流石に私ができるところも限られてるし確証を得るためにもあまりも幅が狭かったから。」


 「依頼したってわけか。」


外部と内部、照らし合わせは重要だ。メビアは海の中に詳しいように俺たちは海の外側に詳しい。地元民と観光客で見る視点が違うのといわばおんなじだ。

なので行動自体は結構則ってやっている。


 「うん。実際に紅月お兄様は結構危ない感じだったけどプロイシーに辿り着いたし。」


いやいや、全然偶然。っとは口が裂けても言えないだろう、今のメビアから感じるのは少々オーバーな期待答えたいが、答えられるほど自分を自負できていない。

少し卑怯っちゃ卑怯だが、。


 「依頼には海洋調査って書かれてたもんだから、来てびっくりしたけどな。」


なんでそう書いたのかも遠回しに聞いておく必要があるだろう。何かと理由をつけたいとかそういうわけじゃないが、今回俺が誤解したこととも関係がある。いわゆる印象的な問題だ、、


 「それは結構こっちが悪いかも。お父様になんとか通してもらうためにはああ書くしかなかったから。」


メビアが第二王女ということは、父親は国王というわけだ。今までのメビアの言葉をもじるなら、国王は娘のやっていることに関心を持っていないだけではなく、娘そのものをあまり見ていない、それが国家にとってどれだけ利益あることをしようと。

それともなんだ、それが利益だと理解していないのか?。情報が足りないから考察がなかなかできない。

だが、俺の言葉を撤回するに値する人物だということは確かそうだ。少なくとも『良い人』ではない、これだけは言える。


 「面倒な親だな。」


 「でも国のことを考えているのは確かだから。私の信用が足りないのも、私の問題だし。」


 「それを言ったらおしまいだ。、親はなんとしても子供を信じなきゃいけない俺は少なくともそう思う、だからメビアは自分がやっていることに自信を持ったほうがいいと思うぞ。」


 「、紅月お兄様がそういうなら。」


 「話は戻すんだが、メビアが依頼を出した理由と意図は理解した。でもメビアは何を目標にしているんだ?。」


 「目標?。」


 「あぁ、」


行動には理由、意図、目標が存在する。理由は単純な行動原理、意図はどう伝えるか、そして目標は依頼主の願いに近い。

ここで欠落しているのは願いだ、もっとも俺自身の予想であればいくらでも思いつきそうではあるが、ここだけはなんとしてでもメビアに聞くべきだと思う。


 「目標、。」


メビアはそう口ずさんで考えるように黙った。

俺自身の長くなりそうだともすぐ終わりそうだともすぐには結論づけることはできなかった、それほどまでにメビアがこの依頼にかけた願いというのは難しく計り知れないものだということが裏にあったと思う。


 「私は、この国をもっと良くしたい。お父様にこの国が本当に危ない時が来ているんだって、わかってほしい。」


メビアの言葉には芯が通っており、固い決意がみなぎっていると直感的にわかった。しかしその実に自分の親に対しての真っ当な対抗心というのがあったと思う。それの意見を買ったのか、それとも感情的な賛同なのかは知らないが、


 「わかった。なら助けてくれたお礼として俺も協力しよう。依頼としてではなく恩人として、メビアの目標を達成するために。」


俺自身、目標があることは理解していた。この言葉に賛同すればしばらく頭の中から仲間のことを忘れなければならない。だがそれが正しいと俺の直感が、俺自身が決めたのなら迷いも後悔も今この瞬間で生まれる不要なものも断ち切らなければいけないと俺はおもった。


すごく身勝手な思想に飲み込まれたと思う。

しかしこれは誰かを利用して誰かを助けるというような卑劣さを一切含まない俺としての、人間性を表立って出した行動だと思う。

自分の立場に縛られたくないという思いからきているのかもしれない、侮っているわけじゃないがゲームなら少しの自由は許されるだろう、


 ゆえに俺は今メビアに協力する道を選んだ。


 「でも、仲間の元に帰るんじゃ。」


メビアは俺の行動を見据えていたんだろう、じゃなきゃ俺がさっきまで目的としていた言葉をこうも的確に口に出したりはしない。

これを言えば俺が言い淀んだり、迷ったりする。自分についてこなくなるとおもっている証拠でもある。


 「いつかは帰らないといけない、でもメビアが目的を達成するまでの間は絶対に帰らないよ。」


少なくとも誰かを見捨てるほどの人間じゃないはずだ俺は。なら今目の前の少女の願いを叶えることにきっとバチなんか当たらないと思う。

みんなには悪いが俺はしばらくメビアのために協力することにする。


 「約束する?。」


 「もちろん。」


俺はメビアの言葉に頷いた。メビアの顔はどことなく喜びに満ち溢れており、その顔を見れただけでも俺は言って良かったと初めておもった。


 「それじゃあ、これからよろしく。紅月お兄様!」


 「あぁ、こちらこそよろしく。」


この後に続くのはきっと苦難の道で未だ想像のつかないことだらけだろう。でも、それでも仲間たちともう一度出会うために、メビアの目標を叶えるために俺は尽力する。

そう決めたのだった、


 「…ところでさっきから言っている紅月お兄様って。」


ずっと気になっていたので思わず聞いてみた、きっとこのタイミングでしか聞けないとも思ったための本当に心の声が漏れたようなセリフだが。


 「?、紅月っていう名前でお兄ちゃんでしょ?、でもお兄ちゃんを丁寧に言ったらお兄様、でも私のお兄様だと変な感じで語弊があったりするから紅月のお兄様ってことで紅月お兄様。、なんか変だった?、」


 「あー、いや変じゃない。うん。」


なんで俺はお兄様と呼ばれるのだろうか。っと前から考える、ルルカはわかる一応義妹だし(戸籍上全く関係ないけど)。それにルルカがお兄様って呼んでいいか聞いているし、それにOK出したのも俺だし。


ただぁ、、ここまでお兄様が立て続けに言われるようになるとなんだか変な感じがする。様と呼ばれるほどの風格は俺にないはずだし、。


 (エリアのことを姉様と呼んでいたりするのと同じなのかな?。)


でも本当の姉?兄?だっているはずなのにどうして、家族のような感じで。


 (いや、時間があったら適当に聞こう。)


詮索する行動もあんまりよろしくないこと、先ほど決めたばかりなのに忘れるところだった、メビアが目標に向かってまっすぐな時に変な疑問を俺だけ持ち歩くわけにもいかないし、それにこういうのはおいおいってやったほうが。


 「?、」


 (メビアのため、そうだなぁ。)



『topic』


【神秘】は魚人族や人魚族が扱う力の総称。

生まれながらにして固有の能力が備わっており、生活の主軸や経済発展などに役立っている。

基本使用するには水が必要なため、地上では扱うことができない(まず水から出ないためそんなことないと思うが。)

メジャーなもので言えば【水から物体を構築する】や【物を遠隔で運べる】や【水で絵を描くことができる】わ【水で他の人にちょっとした加護をつける】などの【神秘】が挙げられる

固有の能力と言ってもいわゆる才能の延長線にある力という見方が一般的。

野球の才能があるとかサッカーの才能があるとかそんなのとほぼ同等でもちろん隣の人がおんなじ【神秘】を保有しているという事例も全く珍しくない。


しかし王家の血を引く者やごく稀に希少な【神秘】を持つものが生まれてくる、いわゆる【希少神秘】と呼ばれるものだ(そのまんま)。メビアなどがそれに該当する。


また【希少神秘】とは別に【多重神秘】という一人で複数の神秘持ちも中にはいたりする。ぶっちゃけ、ある一定の血筋を除けばほぼガチャである。

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