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隠話「紅月と新しい物」

前回のあらすじ


ウミやルルカとの合流を目的に紅月は装備の改良案を考える。メビアはその話を聞くと部屋を出ていき、そしてエリアが変わりばんこになるように部屋に入ってき、緊迫した空気感の中世間話を進める。

しかしメビアが再び帰ってきた、エリアは命令で部屋から追い出される。


エリアのへの回答を頭に入れつつ、メビアが持ってきてくれた魔物の素材を事細かに紅月は分析していった。






メビアの持ってきた素材を一通り分析し終え、魔物のデータを元に改修予定の装備の設計図を書き直していると、


 「紅月お兄様、他にも必要な素材とかあったりする?。」


素材を戻して帰ってきたらメビアがそう聞いてきた。目にはやる気が満ち溢れている様に見える。


 「そうだな、じゃあどこか広々とした工房が欲しいな。ここでやってもいいが少しばかり日用品なんかも多いし、作っている途中で下手なことが起きたら嫌だしな。」


 「工房かぁ。ちなみにその下手なことって?。」


 「─、爆発とか。」


俺はメビアの質問に正直に答えた。別に隠す必要があったわけではないが、メビアにもこれで危険性というのは伝わっただろう。


 「爆発、するんだ。」


 「まぁ、滅多にしくじるわけじゃないが。起きなくはぁ〜〜。」


・・・


 [バゴォン!!]


 「うひゃぁ!!」


エズが爆発の音と共にこっちまでゴロゴロと転がり降りてきた。俺は慌ててエズの元に駆け寄って心配する


 「エズ!大丈夫か?!」


 「大丈夫じゃ、いやぁバレルの調整を少しばかりミスったわ。」


エズはそう口にしてきていた白衣についた汚れをパンパンとはたき落とした。

しかしその後ろ、エネルギー放出の出口が不安定になったビームマグナムは歪んだエネルギーを銃口に集めていた。


 「エズ、まさか発射ボタン押してないよな?。」


俺がそう言いながらエズの後ろを見る。

エズは俺の視線の先に気がつき後ろを向く、今にも爆発しそうなエネルギー弾が周りの紙や細かい部品などを吸い込んでいっていた。


 「あー、ほら撃たなきゃ調整できんじゃろ?正確に。」


そう言うエズはどこか遠目で物事を見ている様だ、もはや結果は見えているとしか言いようがない。


 「なぁ、次からはセーフティかけような。」


元々セーフティをかけたことでの調整が今回の目的だ。しかしエズはあろうことかセーフティをかけずにバレルの調整を行なった。その結果が何をもたらすかもはや誰もが直感的に理解できることだった、、


 「──まぁ、悪くなかった!!。」


 [ッドゴォォォォォォッッッン!!!!!]


・・・


 「ごめん、やっぱこの部屋が爆発するかもしれないから工房が欲しいわ、」


 「えぇ?!何を作ろうとしてるの。」


 「えっと、ちょっと特殊な兵器を。」


 「──、なんとなくだけど危険なことはわかったよ。じゃあ工房使えるかどうか許可取りに行ってくるから、少し待ってて。」


そう言うとメビアは早足で部屋をまた出て行った。一連の行動を見返してみれば俺はメビアをパシリに色々なことをさせている気分がしてなんだか今まで以上に申し訳なくなってきた。


そしてしばらく時間が経過して。


 「戻ったよー。」


扉の音と共にメビアは帰ってきた。


 「どうだって?。」


 「大丈夫そう。でも片付けがあるからしばらく待ってほしいって、」


メビアの言葉を汲み取るなら工房自体はこのプロイシーにもあるっていう認識で大丈夫そうだ。しかし片付けという言葉、なんだかまた申し訳なさが増えて来た気がする。


 「そうか、にしても片付け、なんて本当申し訳ない気がしてくるな。」


 「言った私が悪いんだけど、向こうも向こうで結構ノリノリだったし。」


 (ノリノリ?。)


どういった意味なのだろうと考えているとメビアはある方向へ歩き出した。


 「──それに、爆発するかどうかは最悪わかるから。」


そう言うと、メビアは近くの棚に飾ってあった大きめの水晶を机の上に置いた。


 「それは?。」


俺はメビアが何をやっているのか、そしてなぜ水晶を出したのかを気になり聞いてみた。さっきの話の流れから爆発に関係しないことだとは思うが。

 

 「これは私の神秘の道具。これを使えば近い未来とか遠く離れた場所とかをみることができるんだ、制約付きだけど。」


近い未来ってことは、おそらくこれを用いて爆発するかどうかを見れるって感じなのか、メビアの言葉から少し考察するなら、未来を映し出してその未来を回避するために使うのが主な使用方法に聞こえる、今回の場合だが。

しかしそれとは別に俺は神秘のことについてあまりよく知らないので単純な探究心が一人でに歩く。


 「神秘にも道具があるのか。」


 「うん、エリアのやつは道具を生み出すタイプの神秘、私のは道具を用いて次元的に物事をみる神秘。」


道具自体を生み出すタイプの神秘もあるのか、じゃあさっきエリアが見せていた剣とか弓は道具製作という括りの中の一つということか。


 「それぞれ持っている神秘が違うのか?。」


 「うぅん、ほとんどの人は日常的にも使えるエリアのみたいな神秘が多いよ、私のは結構特殊なだけ。」


 「そういうものか。」


エリアは魔法みたいなものって言っていたが、どちらかと言えばこれはスキルに近い。固有のスキルを魔法の様な明確な実用段階まで落とした様なものが神秘ってなことでいいのか?。


俺の頭の中では考察や独自の解釈などで埋め尽くしている一方メビアが言っていた一つの能力に意識が向いていた。


 「メビア、少し頼みがあるんだが。」


 「何?、」


メビアは水晶で今から何かをやろうとしている時、俺からの声を優先して振り向く。


 「さっき遠くの離れたものを見ることができるって言ってたよな。」


 「うん。」


 「それは人物とかでもいいのか?。。」


 「うん、全然大丈夫だよ!、でも。あんまり遠く離れたところにいたりするとうまく映し出せなかったりするから。それに映し出すには何かその人に関連してるものが必要だから、あるといいんだけど。」


 「もの。か、」


俺は膨大なアイテムの中からルルカに関係しているものを探し始めた、そんなに多く貯めている気自体はしていなかったのだが、いつのまにかこんなに増えていたっと思うほど数多くのものが入っていた。

エズとの実験で中途半端に生み出されたエネルギー体や、初期段階の装甲、ルルカに買い物を付き合わされ買ったゲレームの特産品、魔物のドロップ品、どれもが宝と言えるほどではないにしろ本当にバリエーション豊かだ。

だが思っている以上に人に関するものはない、あくまで間接的に渡されたり手に入れたりしているだけで根本的にその人を象徴する様なものはなかった。


 「うーん。」


 「その人が作ったり、持っていたりしていたものでも大丈夫だよ。」


メビアが俺にアドバイスをする様に言ってくれた。その言葉を聞いて俺は余計に神経を研ぎ澄ませて数あるアイテムの中から探し始める。

焦りとはまた違うようなものが、自分自身を変に追い詰めている気がする。自分がパーティメンバーの品を何も持っていないのではないのだろうかという事実、それが時に変な孤独感を生み出し襲ってきている感じがしたのだ。


 (あ。)


しかし俺は見つけた、おそらく今このアイテム群の中にあるもので下手したら唯一の繋がりを持ったものと仮定できなくもない、ものを。しかしこれはいかがなものか、なんというかメビアにこれを見せたらどんな反応が返ってくるのか、探究心よりも別方向での恐れが来る。そんな気がするのだ、だが他に何かいいものがあるわけでもない、もしもう一度念入りに探すというならもう少し時間はかかる、メビアの時間も立場から推測するに自由人とは言えないだろう、そして今連絡がつかない仲間たちに一体どんな言葉が起こっているのか、。

そう考えるともはや自分の身振りを気にしている場合じゃないことを改めて悟った。

そして俺はアイテムを取り出し、メビアが水晶を置いている隣にソレを置いた。


 [ジャラ]


 「…お金?。」


 「それが俺が持っている中で唯一繋がりがあるもの、、だと思う。」


いたって俺は真面目だ、しかしメビアからしたら真面目に見えないっと言われてしまっても文句は言えない。だって信じられるだろうか?、俺にここまで親身になって手伝っているというのに、その親身になっている人が出したのはまさかのお金。印象が180°ひっくり返るでは済まないインパクトだろう。しかしこの選択は間違っていないと直感も告げている、正直疑心暗鬼になってしまいたい気分だが。


 「え〜っとコレが?」


 「あぁ、ていうか多分それしかない、」


 「、。とりあえずやってみるね。それと話は後で聞くね」


 「はい。」


そうしてメビアは集中し始めた。さっきまで俺が感じていた雰囲気とはまた別の感じ、エリアに厳しい言葉を放った姿にどことなく似ているかもしれないが、直感がその理屈を否定している以上、『何か』が違うのだろう。

すごくあやふやだが、水晶を撫でるように、纏うように、そして操るように指先を動かし表情の変化を一切見せないメビアからはいいとこそのくらいの認識が読み取れる限界のように感じた。


最初こそ水晶はメビアの非科学的な動きに応えようとしなかった。球体は常にメビアの顔を含めた部屋を映し出しているだけでこれといった変化はなく。ある種メビアの行動が変人じみたような印象を受けることも無きにしも非ずだった。しかし水晶は長い時間を経て無から何かが錬成されるように球体の中はたちまち煙で満たされた、どこからともなく湧いて出た煙に俺は探究の念と驚きを隠せなかった、そして俺がそうこうしている合間にその煙はどんどん変化していった。白色、水色、紫の順に変化していき、ついには光の反射で輝いて見えているだけだった水晶からまるでLEDライトのような演出が部屋の色を一巡した。


 「───。」


そういう演出を見たことないわけではなかった。しかし実際にこの目で映るとそれが現実なのか非現実なのか頭がおかしくなるような体験に陥るものだ、目の前の事象一つ一つに何か特別な理由づけを意地でもしたくなるような感情が心の底から湧き出てきたり、集中しているメビアに声をかけたくなってしまったりと、我ながらこの空間の中では幼さを隠しきれなかったかもしれない。


 「ふぅ。」


メビアは一旦手を貯めてため息を一つついた。言動からは休憩することが容易に読み取れる。


 「大丈夫か?」


おそらくやっている最中はものすごく神経を使っているはずだ、摩耗していっているなら尚更俺はこういう掛け声などでメビアに協力していくしかない。今現状で自分がどれだけ無力な立場に置かれているかそれをしっかりと理解しなくてはいけないのだから。


 「大丈夫。後少しだから、」


そういうとメビアは抜いていた方の力を入れる様に背筋を伸ばし、目を細め集中する。

俺は心配になりつつも本人の言葉を信じて、ただひたすらに待つ。


 「見えてきた。」


メビアが俺に声かけする様に、水晶の周りを手で操りながらそう言う。

俺はメビアの言葉に反応して、水晶に映るであろう光景に注目する。


 水晶に映った光景はベットに上半身だけ起き上がらせていたウミさんがルルカ、メルド、そしてもう一人とテントの中の様な場所で会話をしている光景だった。俺が最後に見た光景からどんなことがここまで起こっているのか分からなかったからため俺の頭は少し混乱気味でこの自体を見守っていた。


 「この人たちで、あってる?。」


メビアが捻り出す様な言葉で俺にそう言ってきた。俺はメビアの心配をする暇もなく彼女の言った問いに対しての答えを早く出す。


 「あぁ。間違いない、だが。」


水晶に映し出されている風景は限定的だ、小さい空間の中でそれぞれがやり取りてしているだけで何を話しているかまでは分からない。メビアのことを考えてみればこれが限界なのは理解していた、しかしそれ以上にも俺は気になることがあった、


 「これ、なんだかゆっくりじゃないか?。」


 「う、ん。」


そう俺が言った途端水晶に映る風景は消えてしまった。メビアはためていた力を一気に抜いたかの様に脱力し、近くにあった背もたれがある椅子に座り込んだ。


 「大丈夫か?!」


 「全然大丈夫、でもやっぱり遠くを見通すのはキツイなぁ。」


 「、未来を見通すのより難しそうだな。」


メビアが大丈夫そうなことを確認しつつ俺は質問を入れた言葉をかける。未来を見通すときは結構軽かった割に遠くを見通した今のことを考えるとこの言葉自然に浮かんでくる。


 「そうなんだよね、未来を見るのは限定的でいいけど遠くの場合だったらこっちとの時間の差っていうのがあるし、さっき水晶で見てた光景もゆっくりだったでしょ?。プロイシーと地上じゃ時間の流れに結構な差があるんだよね。」


予想を裏切らないメビアの回答。そしてサラッと言ってくれたがかなり重要なことが今の言葉に含まれていた。それは時差のこと、さっきのゆっくり流れていた光景を考えるに、、


 「、てことはこっちが数時間経ってても、」


 「向こうじゃ数分くらいかも。」


俺の言葉に合わせる様にメビアは言った。寄っかかっていた背もたれから少し起き上がり、見た感じだいぶ回復したことが伺える。


 「なるほど、」


俺は少し安心しつつも、どこか気がしれない感じがしていた。ウミさん、ルルカの安否が確認できたことは大きな点だ、しかし二人があそこから何もしないということにはつながらない。

きっと俺を探しにくることだろう、なら。


 「思った以上に、早めに行ったほうがいいかもな。」


 「───。」


だが、この状況で行くのも難しい。工房の貸し出し許可がおり次第装備を早めに作ってメビアの迷惑になる前に出て行ったほうがいいかもしれない。それこそエリアのような連中もいるはずだ、今はメビアの権力で保護下状態にあるがそれがいつまで続くかも分からない。


 「ねぇ、紅月お兄様はどうしてプロイシーまできたの?。」


メビアが突然俺に質問を投げかけてきた。今更にすぎない質問だったので俺は少し考えて言葉を返した。


 「依頼でな。内容は確か海洋調査?だったけ。受注したのが仲間だったからあんまり内容は見てなくて──」


俺がそう言葉を続けようとしたとき、メビアは少し驚いた様な顔を俺に見せていた、もしかしたら不意に出たという言葉が正しいのかもしれないが。


 「メビア?。」


俺はその顔にどんな意味が含まれているかまだ知らないし、分からない。しかしメビア本人にとって、第二王女という立場の者が顔を変えるほど、大きなことには変わりなかった。


 「、それ私が依頼したの。」


 「──。」


俺は驚きが口には出なかった。なぜなら嘘に真実をぶつけられた様な感覚だったからだ、メビアにさっき言った言葉は本来の半分程度しかない、本当は


「─それに、『泥』みたいな厄介なやつまで出てきてな。」


っとここまでが本来伝えるべき言葉だった、だが俺はメビアの顔色でこの言葉を伏せた。それは曲がりなりとも彼女に関係していて、彼女にとってこの話題はある種タブーなのではないかと、察したからだ。

余計なおせっかいと言われればそれまでだが、曰く俺の直感はなかなか外れない。


 そして彼女の黙った顔に考えていた言葉。隠していた言葉を置いておいて俺は「メビア?」っと聞いてしまった。

結果訪れたものは彼女が一連の騒動の依頼主であるということ、そして俺が今まで引っかかっていた取れなかった違和感を全て繋ぎ止めていた主でもあったということ。


そしてそのことから、彼女今の言葉から推測するに、


 「───メビア、お前は『泥』を知っているんだな。」


メビアの言葉に黙っていた俺が口を開きその言葉を続ける。



『topic』


人魚族と魚人族が人間を嫌う理由は過去の事件が関係している。

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