六十六話「ルルカVS『アラハバキ』」
前回のあらすじ
奇襲を受けつつも善戦し、優勢状態を保っていた一行は『アラハバキ』の能力解放に深手を負う。
ウミさんの全霊をかけた一撃はネルを倒すことまでに至るがレナは『アラハバキ』に圧倒され、大破目前だった。
『アラハバキ』がウミにトドメを刺すその瞬間、ルルカが現れ。様々な思いを力に変え、『アラハバキ』と今
相敵する。
「こい!『アラハバキ』!!。」
「いくぜぇ!強者ァァァ!!」
『アラハバキ』は地面を蹴り飛ばし、私に近接戦を仕掛けようとする。でもそれは織り込み済み。
[ボガンッ!!]
『アラハバキ』が私の一定の距離に達した時、それは作動する。
(魔法地雷、)
『アラハバキ』が踏み入った場所はたちまち爆発の海に巻き込まれ、姿はオレンジ色の光と共に見えなくなった。
(ここで後ろに下がるとは思えないよね。)
私は次の魔法の準備をしつつ、『アラハバキ』が踏んだ場所に向かって魔力砲を掃射する。
総勢13門の魔力砲はそれぞれを個別のタイミングで放っているから、実質的にクールタイムは存在しない、たとえこの攻撃を避けていても、いい加減 爆発の連鎖から逃げ切らなければいけない。
[フォン]
そう思った瞬間、爆発の光から一振りの斧がこっちに向かって飛んできた。斧は奇しくも私には届かず、中途半端のところで地面へ突き刺さった。
(、、!。)
私は気配を感じ取り、攻撃被弾盾を展開、高密度の魔力を瞬時に注ぎ込み、背後の防衛に当てた。
[バキィィ!!]
「へぇ。」
次の瞬間には攻撃被弾盾の層は最後の一層を残して一回の拳で崩れかけていた。私の目と鼻の先には拳と、それを放った『アラハバキ』がいた。
ビリビリとしたさっきを前に私は行動を起こして。魔力砲をすぐに『アラハバキ』の左右にゼロ距離で設置した。
[ヴュィィィン!!!!]
『アラハバキ』は軽いフットワークで、敵ながら天晴れな回避行動を披露し、追撃の魔力砲をひとかすりもせずに回避してみせた。
(次が来る。)
さっきまでの緊張をリセットさせ、対策を立てる。『アラハバキ』の回避性は確かに強力だ。しかしもとより、そのタイミングを減らせれば問題ないはず、
いわば
(回避のコマンドを出させなかったら!。)
「審判鎖!!」
魔法陣を新たに形成し、空中に放つ、私の言葉通りのものを魔法陣は出し、『アラハバキ』向かって行手を阻む。
「ちっ。」
『アラハバキ』はやはり突っ込もうとしていたのか、中途半端な攻めの姿勢をすぐに逃げの姿勢に切り替え、私の魔力砲の連続攻撃を回避していった。
審判鎖の効果は対象を行動遅延状態、確率で行動不能状態にできる魔法だ。ちなみに捕縛しなくても少しの掠りでもすればこの状態になる、魔法版のレーザートラップみたいな感じ。
(後ろ。)
[ガキィィン!!]
そう思った時には『アラハバキ』の斧が私の背後をしっかりと狙っていた。
しかしそれは審判鎖によって捕縛。後ろでカタカタ言いつつ、私を狙っている斧と『アラハバキ』を繋ぐパスをその場で切った。
(逃げる時に魔力糸で引っ張っていた、自分が後ろに下がる感性を利用して、確実に私を後ろから仕留める。ために、)
上手い戦法だ。私もついさっきまで糸の存在には気づけなかった、暗殺者ゆえのパッシブスキル?、色々な考え方ができるけど今は目の前に集中しないと、、。
「返すね。」
私は審判鎖をまるで手足のように扱い、回避行動中の『アラハバキ』に向かって投げた。
もちろんただ返すのではなく、かなりの速度をつけた攻撃として返した。
『アラハバキ』私のことをじっとみながら、斧の方へ当たりに行くように走っていく。魔力砲の攻撃は未だ続いてはいるが、移動する『アラハバキ』は全て見切っているように、当たらない。
対策をさらに考えなければいけない。魔力砲は多人数戦に向いている反面PvPには向いていない、当たらないのも無理ないという言い訳をしている暇があったら、当てる努力をしないといけない。
「フッ。」
(いちいちドヤ顔しなくても、高速で飛んでくる斧をキャッチしたことくらいわかるよ。)
そしてまた突っ込んでくるのだろう、なんとワンパターンな、っと私は審判鎖と魔力砲で弾幕を貼り続ける。
私自身も頼りきりは間違いなく、隙が出る。
少し操作が難しいけどアレをやるべきかな?。
(魔法陣)
私が無詠唱でそう唱えると、周りに6つほどの魔法陣が即座に形成される。私はそれを『アラハバキ』の方向へ4つ解き放ち、残り二つを魔力砲の魔法陣へと近づけた。
『アラハバキ』はまっすぐこちらへ直進してくる。
道中の魔力砲が絶え間なく攻撃を続ける中、見慣れた身のこなしで意気揚々と回避を続ける、その顔はまるで戦闘を楽しむ殺人鬼のような表情。
心底不快に感じる、少しはマシな笑い方を習えばよかったのに、っと思う。
「魔力砲四分割、、。」
魔法陣から放出された魔力砲は四つの塊に分かれ、さらに細かい弾幕となって『アラハバキ』に向かって行く。
レナのマイクロミサイルほどではないが、追従性と命中性に優れた改良魔法だ。本来なら対魔法使い戦にこそ真価を発揮するのはずだけどやむおえないよね。
だって、コイツに魔力砲が当たらないんだから。
(まず、爆風をどうやって軽減しているの?。)
私は『アラハバキ』の回避感覚を観察することにした。
『アラハバキ』は私がした行動に何の驚きも疑問も持っていないような感じだった。
まるでそれくらいは対処が可能だと最初から気づいていた、もしくは魔法使いがこの戦法をすると考えついていた。っと、内側を知られているような気がした。
(でも、一旦落ち着いて、お兄様ならそこまで織り込んでいると思うはず。自信を持って、)
私はそう思いながら、『アラハバキ』を凝視、杖を少し軽く握り息を整える。
「数うちゃ当たるは、、ッ!!」
『アラハバキ』は斧を目にも止まらない速さで振り回して、真正面から魔力砲全て切り伏せた。
私はこの現象ともいうべき神技に心の底から驚愕した。
魔法を武器で切り伏せるという行為は正直できない、仮にできるとしても武器の恩恵が大きい、必中効果のある武器に魔法剣等の魔力を乗せることができる武器で切り伏せる。
魔法に対しては魔法が有効であり、単純な物理的攻撃では魔法に干渉することすらできない。
魔法剣などの魔力が込められた武器を行使することによって初めて魔法結界や、魔法理論に手を出すことができる。
『アラハバキ』が私の魔法陣を以前、解除系統の攻撃で破壊したことから、少なくとも魔法武器であるということはわかっていた。
必中系のスキルを搭載している武器は基本的に命中精度に難があるものばかりだ。
それこそ弓や、銃、クロスボウ、吹き矢、ナイフ、等の武器には必中系スキルがつく、つまり通常剣や斧、槍などの近距離武器にはつかないのだ。
ならどうやって、『アラハバキ』は飛んでくる弓矢を剣で切り伏せるのと同義の私が放った魔力砲四分割を切ったのか?。
考えられるのは通常このやり方だ、それ以外だとしたら単純に必中効果なしに剣技スキル等で捌き切るか、
もしくは、ありえない確率の方が高い。
(ただの実力………)
同義といっても、難易度でいえば魔力砲の方が圧倒的に上だ。
こちらは明確な動体視力で捉える以前に、明確には認識できない"魔法の流れ"を理解している必要がある。
"魔法の流れ"書いて字の通り、魔法を流れる魔力の集合体。
魔法は魔力の集合体が、環境を変動させて物質の生成や質量の生成などを行っている。いわば擬態型ナノマシンに近いかも知れない。
そしてそれを今『アラハバキ』は切断している。地雷を踏んだと思ったら中の爆薬だけ処理しているのとやっていること自体は一緒だ───!。
通常なら、知識や原理でカバーできる範囲を優に超えている離れ技……、
ゆえに、今この『アラハバキ』という存在がいかように不味いか。改めて自覚した、、
「あたらねぇんだよ!!」
[ガシャァァァァン!!]
『アラハバキ』の一撃は私の思考より早く『攻撃被弾盾』と『対斬撃盾』、さらには追加効果として付与していた『対特殊攻撃耐性(アンチイクスセンションアタックマニューバー)』を貫通した。
次の斬撃が飛んでくる頃には私の体は確実に壊れる。そう確信していた、相手との距離はまずか1m弱、斧のリーチで言えば確実に攻撃範囲内、
「!!っ防御術!」
詠唱速度上昇の効果によってすぐ発動されるその魔法は半透明な盾を生み出す。『アラハバキ』はそれすらを打ち砕こうと、斧を振るってくる。
[キイィィィン、、ズン!ッ。]
まるで黒板を鋭利な刃物で切り裂いたような音が耳に刺さってくる。『防御術』が斧と衝突し、火花を散らしながら私への直撃を退く、『アラハバキ』の殺気は地面へと流される。
「、、魔術か。」
「発動!!。」
[ボボボボボッーーーーン]
私が即座に、地面を蹴り。『アラハバキ』と距離をとる、そしてそこに追撃してくるであろう彼を読んで仕掛けておいた、魔力砲と魔法地雷が同時に発動。
壁を作るように地面から光がさし私達の間を塞いだ。
『アラハバキ』がこの壁を無闇に突っ込んでくると思えなかった私は大きく後ろに下がりつつ、魔法地雷や、他のトラップを仕掛ける。
(審判鎖・罠)
自己改像を施した魔法、罠としてのステルス性や配置のコスト、全てにおいてコーパフォーマンスで調整することができた、特別仕様だ。
『アラハバキ』はいわば、一度当たったりみたりした技は通用しないタイプの相手だ。なら、相手が今まで見たことなく、それでいて確実に大きなダメージを与えられるものが有効なはず。
地雷の場所が読まれる可能性があるので今回はいきそうなところではなく、予測できそうにないところにしよう。
[フォン、フォン、フォン、フォン、フォン]
『アラハバキ』が突撃してこない。そう思った、この魔法を仕掛けているうちならば来てもおかしくないはず、そう考えておき、私は懐に対抗策を忍ばせてある。、しかし相手は拍子抜けもいいところ、残煙から動きを見せない、いつの間にか背後にいるなんて芸当はしていない、、私も彼と同じタイプである以上、一度味わった戦法の対策はすでに完了している。
(それを警戒して出していない?、でもさっきの勢いを潰すなんて考えられない。)
私という人間をこの戦いを通して知っているのなら、このまま来ても十分効果的だ。
狂っているのか、いないのかわからないあの心理戦は正直苦手だ。
(勢いを潰さず、それでいて。こっちの隙を狙える牽制。)
こういう時お兄様ならすぐに気がつくのだろうか?、。っとふと感じた。怖気付いたわけじゃない、私の守りはかなり強固だ。それこそ、相手がこれ以上最悪な展開に発展するような剣技もしくは、
[シィィィィィィィー]
(全てを覆せるほどの斧技、もしくはそれを完全なものにした真技でもなければ、、)
私が心の中で考える。そしてその瞬間私は確信し、状況を一変した。
耳を澄ませたら聞こえてくる、静かな、まるで今から出発する列車のように佇んでおりそれでいてうちに秘めた力から漏れ出た蒸気は、。静かなる狂気を含んでいた、あぁこれこそ本当の暗殺、相手に気づかせるタイミングですら狂せる、どうして気がつかなかったんだろう。
、お兄様なら気付いたかもしれない。
[バリンーーーー!!!。]
たった一振り、されど一振り、その一撃は先ほど味わったどの狂気よりも静かだった。しかし私の頭はそのことを誤認していた、彼は言ったはずだ。いつも最悪な展開を予想しろと、。
知らないうちにその言葉を受け入れた気でいたのだろう、故に間違えたのではないのだろうか。
(………まさか。)
[シュゥゥゥゥン─]
私が構築した魔法が一気に消える、繋がっていたパスが全て途切れたような感覚。
まるで完成したあやとりをハサミで真っ向から切られたような、全てが台無しになり頭が働かなくなった、、永遠に近い虚無感が私を襲った。
「真技-『初無血…。』」
『アラハバキ』がニヤリと笑いながら斧を片手にそう言った。
(真技────。)
『真技』それはプレイヤーのほんのごく一握りが無数の研鑽の末に使うことができる技を超越した技。
【SAMONN】の『技』のほとんどは、自己流にアレンジされることが多い、理由を尋ねれば大抵の人が自己流だと答える。ウミも基本的にはデフォルトのモーションを使っていない。
そして『技』には熟練度というものがある、これを上げることによって、さらに新しい技を習得することができる。でもただバットを振るっているだけで熟練度がたまるわけではない。いわゆる正しい『技』の打ち方をし続けることによって、熟練度はさらに上がっていく。
デフォルトモーションが良い例、デフォルトモーションはただ初期型と設定されているわけではなく、『技』の正しい打ち方のいい見本でもある、ただそれは『正しい打ち方』であって『実戦でも通用する正しい打ち方』じゃない、。実戦はマニュアル通りにいかないことばかりだし、それに順応して変わることは悪いことじゃない、、でもそれはある種の『真に技を極める』ということから遠ざかる。
じゃあ『真に技を極める』って一体どこまでなんだろう?
その答えに応じるのが、『真技』。
正しい技の使い方、正しい技の軌道、正しい動き。
形としてそれが自己流だとしても決して技の真価を途絶すことない動き。それをし続けたものに与えられるギフト、マニュアルを使い続けて結果どの技よりも磨かれ洗練された一撃。
『真技』。決して肩書きだけでは収まらない絶対的な称号であり。唯一無二の技を会得したとも理解される。
(意外だった、否定したくなった。暗殺者がまさか『真技着名者』だったなんて、)
『真技』獲得者とは一度も戦闘したことがない、何せ彼らはそれこそ私とは次元が違う。
私が魔力にとても秀でている反面、彼らはまさに技のプロフェッショナルと言っても過言ではない。
そう、プロだ。ただ才能を活かしつつ戦っている私とは比べ物にならない、才能も努力も実力も、研鑽も全てを活かすことができるトップクラスの相手。
一連の動きも、もしかしたらこっちの考えを見積もるためだったかもしれないと警戒したくなる。
(それが、『真技』を得た者の特権。)
…。
こんな強敵は今まで目にしたことがない、正直勝てないと確信できる。ここがもしかしたら初めての死になるかもしれない、、今までこのゲームを楽しみたい、という心のままにやってきたつもりだ。
もしかしたら、死にたくないという気持ちも大きかったかもしれない。
(きついなぁ。)
弱音を思わず吐きたくなる。このまま何もしなかったらたぶん終わるのは一瞬だろう、結果は誰しも目に見えている。
『真技』はどんな魔法を通さない絶技、それこそ魔法使いに優位を取るために編み出されたまであるほどソレは私と圧倒的に相性が悪い。
(このまま目を瞑って何も考えなければ、どれだけ楽なんだろう。)
問題はいっぱいある、けどそのうちの一つを今日は紹介しようと思う。
私の問題、ソレは、。
「…。」
(意地でも死にたくないってことだ。)
生きていたい。生きていたいって毎日のように感じる、人の死を見たことがある。
決して赤の他人じゃなくて、身近の親しい人そんな人が亡くなるところを見たことがある。
胸の奥が悲しみで溢れた。バケツいっぱいしか入らない水を惜しみなく、そしてまるで拷問するように大量の水を小さい私のバケツに流し込まれる。
溢れてもお構いなし、まるで溢れさせることは目に見えていてソレでもその《水》を押し付けようという感じ。
責任なのか、単純な悲しみなのか、溢れ出て心情がグチグチャになった時にはその判別はできなかった。
ただこの先自分が迎える人生から極度に外れたものになったということはわかった。
だから逃げたくなった。目の前の橋(道)が壊れて初めて後ろを向いた時、そこにはいつも無自覚で何も知っていない愚かな自分が居た。
そんな今の気持ちをちっとも予想できなくて、尚且つ、世間知らずとも言える、、ガキに。
私は、心底吐き気がした。たとえソレが過去の産物である自分だとしても、、
だから。逃げた、
(結局自分はこんなことしかできない。)
うるさい、
(逃げるよね、自分だったら。うん、)
うるさい、
(全くいつもそうなんだから。)
うるさい、
(誰も来なければ良いもんね。)
うるさい、
(。)
うるさい。
走って、走って走った。でも何もつかめなくて結局私は逃げているだけだった、そんなことわかっていた。
常に誰かに構ってほしいと思った、何でって?人生があまりにも退屈だから、
(でもソレは、子供が誰でも感じる無自覚な退屈。。)
死と直面して、私の退屈はある種逃げる口実の一つとなった。
《退屈》だから逃げます。
《退屈》だから、ソレやらないね。
《退屈》だから、目を背けるね。
《退屈》だから…
どうしようもない未来が見えた、。
私がどうせ逃げたって、いつか連れ戻されるであろう。
(でもそんなのどうせ言い訳だよね。)
別にそんなんじゃないよ、みんなっ。っと言っても
(でも今のアンタを一体誰が受け入れるの、本心から、、一体誰がアンタのことを真に信じられるの?。)
それは、、
誰かの死に直面したとしても、私の変化はきっと些細なものっとひどく自虐的な風潮で自分を見た。だって私は世間知らずで、みんなが思っているほどうまくできるうまく演じられる人間じゃない。
だからきっとこの涙も。
「あー、また泣いてるよあの人。ほんと泣き虫だよね。ー、」
(違う、違うの!信じて、私の悲しみはそんなんじゃないの!!。)
「はいはい、でもいつもそんな感じだよね。世間知らずだから、きっと本当の苦しみ知らないでしょ?。」
そんな虚言が無意識のうちにカセットテープように再生される。
きっとこんなこと言わないんだろう、でも
(言うかもよ?きっと、絶対。)
私の心はそんな言葉が浮かび上がるほどに弱っていて。この、どこにでも放り投げることができない心を、ただただグッと抱えることしかできなかった。
、私はその時だけは無邪気に笑顔を振り撒く子供ではなく、誰かに裏切られたことを知ってこれから先人間を決して信じられないようなそんな大人になっていた。
()
[ザー。]
悲しみに暮れて、何も出なくなった。涙はちょくちょく出るけど、正直雨と混じっててよくわからなかった。
(寒い)
、私の服は決して暖かさを保てるものではなかった。残り香のようにある火を再度焚き付けるにはあまりにも足りない、、このまま人格(炎)は燃え尽きてしまうのではないのだろうかと思った。
[ピチャピチャピチャ──。]
その時誰かが来たような足音が聞こえた。自然と私の疲弊した心に届きどこか聞きなれない音だった。家のものではないと無意識に感じたんだろうか。
(、、。)
嫌な心の声からその時解放された感じがした。それに気づき何か希望を見出したように私は濡れた髪に逆らって首を上げる。
そうして私はお兄様に出会った。
その時からだと思う。
(私がお兄様を目標に)
生きる目標にしたのは、、。
(今、あきらめたらそれはなかったってことだよね。)
『アラハバキ』がすぐ目の前まで迫ってきている。
(あの出会いも、)
『アラハバキ』の一歩がすぐ近くで聞こえてくる。
(、、それは譲れない。)
どうしてもあの時、あの瞬間感じた。私の中にある何かが芽生え始める感覚。あれだけはどんなに捨てても捨てきれない、私の心だ。
あれを捨ててしまうくらいなら、まだ動く体で精一杯あがこう。
きっとお兄様なら、いやお兄様なら絶対に。
(それを選択する。)
私は深呼吸をして、今浮かぶ策を頭の中で考える。大切なのは明確なイメージ、目に見えないけどそれが確実にあると信じよう。
私があの瞬間お兄様を信じたみたいに、私も
(この世界を信じようと思う!。)
「、!?。」
[ィィィン、、。]
でもその刃まるでそれ以上進めないかのように私の目の前で止まった。
茎すら切り裂く勢いがわずか数センチのところで削がれ、一瞬何が起きたかわからないような顔を『アラハバキ』はした。
(…。)
さっきまで落ち込んでいた私の心は急激に右肩上がりになった、理由は簡単だ。
今この瞬間わたしは勝利を手にしたもの同然だから、何を根拠にっと自問自答する。
なら答えよう。なら示そう、この行動を。
「っ。っ!。」
『アラハバキ』は見えない壁を無理やり通し抜けようと力を腕に込めたようだ。斧を持っている手にさらに手を重ね、私の頭に明確な殺意を向けて殺しかかりに来ている。
が、壁は通り抜けられない。
「、テメェ。」
『アラハバキ』は何かに気づいた、ように私へ言った。
「やっぱり。その真技、魔力までは消せないんだ。」
そう言うと私は顔色を変える。
魔力が消せてない、魔法が全て解除された時私が考えたのは二つの可能性、
一つ範囲内の魔力が全て消えた。二つ、範囲内の魔法を全て破壊する技、もしくは設置不可にする。
前者だった場合私は、今頃助かってはいない。
なぜなら今目の前で斧の刃を押さえているものは確かに魔力だからだ。
(でも正直賭けだった。)
私の脳裏に浮かんだ策、それは魔法でも魔術でもなく魔力を操るという行為であった。
魔力を操るというのは魔法を操るというのとは一線を画すほどに違う。
魔力という流れが決して止まらない水から、魔法という器で汲み取り、そしてそれを使う。
(当の私でさえ、魔力を扱うことができない…できなかった。魔力はそれほどまでに不確かでそれほどまでに何者にも囚われない。そんな存在なのだ。)
まるで式が存在しない個々として確かに存在する全てをまとめ上げる様な感覚。
人に例えるなら世界中に住む人の夢を全て現実に持ってこなければいけないほど難しい。
「でも掴んだ!。魔力の流れ。魔力の本質性、あの本に書いてあったのと似た感じ、、。〜っ!まさか、まさか!掴めるなんて!!」
「………っお前。」
「今まで、絶対に掴めないと思ってた。、失敗したらどうしようってずっと考えてた。でも、掴めた。」
故に、私は今最高に嬉しい。私が信じたあの本は間違っていなかった。誰もが諦め捨てられていた理屈を私は初めて達成できた。
こんな私でも確かに、何かを叶えることができる!。
そして喜ばしいことにそれを今この目の前にいる『アラハバキ』に対して純粋に楽しむことができる。
「だから。、、!」
私は空気中にある魔力を確かに掴んで離さない。そしてウミの見様見真似で拳を握り、『アラハバキ』に向かって突き出す。
「殴るねッ!!」
「─────っ!?!」
[バギャァァァン!!!!]
魔力によって自分の位置を『アラハバキ』の手前に移動させる。様々な神秘へと転換が可能な万能のエネルギーそれが、魔力。ならばこんな瞬歩みたいな該当もできる、
『アラハバキ』はとっさに斧でガードしたのだろう、しかし私のたったひと拳によってまるで蹴られたサッカーボールみたいに吹き飛んでいった。
──海正道──
「うおっ、、─!。」
斧を地面に突き刺し、飛ばされかけた体を『アラハバキ』はとどめた。
(っ。まじかよ)
『アラハバキ』は心の底から驚いている。先程まで自分は彼女の上に立っていたはずだ。それなのに、今では彼女は自分の想定範囲を大きく外れた術者になっている。
(……。魔素か、)
今の【SAMONN】内で"魔素"を操る者はまず存在しない。理由としては単純な感覚やイメージ力でどうにかなる話ではないからだ。
"魔素"はある図書館の中の書物の中で発見された理論。プレイヤーはもちろんそれを信じた、しかし。
なんどその理論にもじった臨床実験を行ったとしても明確な操作方法を発見できなかった。
それはまるで子供が夢描いた『ありえるかもしれない』魔理論、机上の空論、攻略班というゲームを攻略するものたちでさえその理屈は解明できないまま、結果『そういう説があった』という形にとどまらせた、世界の謎。
都市伝説や、UMAが霞んで見えるほど不確かさ、現存する情報はたった一冊の書物のみ。
その理屈の純粋に信じるものはいるのだろうか?。
(は、────居た。)
目の前の魔法使いは間違いなく"魔素"の扱い方を理解している。そうでなければあの拳に混じった、"半純正魔力"を感知できない。
素人でもわかる、魔法や魔術を用いた攻撃との圧倒的違い。
魔法は魔力というというリソースを消費して、魔力に含む純正、純負をわけ、行使する。
その都合上混ざり合った、魔法というのは使えない。いや使えるというのがある種正解なのだが、。
魔法の形を保てなくなった中途半端な魔力は瞬時に膨張し爆発する。
自爆するわけでもなければ通常混ぜて使うなんてことはしない。
故に、純正か純負、どちらかに分かれる。
だが、目の前の『全知の魔女』は"半純正"という決して魔法では扱えない状態の魔力を攻撃に転換させた、
つまり彼女は誰にもできなかった"魔素"の操作を可能にし、今攻撃に転用したということだ。
(五体満足なのがその証拠だな)
肉体に纏わせたなら、体に通っている魔力を操作する神経がズタズタにされ、結果形を保てなくなった魔力と同じく爆発する。
(化け物、って言った方が光栄そうだな。)
『全知の魔女』は先ほどの不安が嘘みたいに。笑っている、それは先ほど自分がやっていたことの真似なのか?っと『アラハバキ』は思った。
「笑い方が違ェ──ッ!!。」
『アラハバキ』はそれだけを確認すると無鉄砲のようにただただ自分の主張を通すためにルルカへ向かっていった。
『アラハバキ』は止まらなくなったのだ。彼の脳内にあるのは生か死、相手に下すのは死のみ。暗殺者という括りは外され戦闘狂としての立場が大きく出たのだ、なのでたとえ大きな相手だとしても向かっていく。
その先に何があろうと。
・・・
「来るんだ。」
私の顔は少しニヤけている、不敵にも、、。こんな顔はおそらくお兄様には見せられない、ドン引きされたら嫌だからだ。普段なら絶対しないような顔、でも今、この瞬間だけは、どうか。
(心の底から、探究たい!!)
魔力を手に纏う。流れる流水を無理矢理にでも切り替え、私のものとする。
[パチ]
自分の体が自然と反発する気がする、おそらく長く『魔法を行使』してきた体のせいで『魔力を行使する』という行為に体が慣れていないのだろう。
(嫌いな食べ物を無理に食べてるのと同じ感じ。)
でもそんなことは全然関係ない!、流れに逆らって、逆らって!自分の形を汲み出す。
「そうだっ!」
面白いことを考えつき、私は拳の魔力を体全体に回そうとする。
[ドクンッ!]
一瞬全身の血が裏返ったような不快感が襲った。手ですら違和感がある程度なのに全身に回そうとするからだ。
でも、これで、
「擬似・魔力放衣──!」
杖を一時的にしまう。ここからは未知の戦だ、攻撃も、守りも、力を全て新しい領域、自分を試したくなる。ただ純粋に、たとえどんな弊害があったとしてもお兄様ならこう言う!。
「乗り越える!!」
足に力を入れ踏み出す。軽い体が私の高揚を後押しし全身の身が引き締まる、『アラハバキ』との距離がどんどんに近くなっていく。そのタイミングを頭の中で無意識に考え、拳を突きつけるため後ろに引く。
「ッハァ!!」
「オラァ!!」
[ダァァァァッッッッッッン!!!!]
『アラハバキ』の縦切りに対して私は真正面から、拳を突き上げる。魔力と物理の衝撃が体を通り抜ける、。
(ただ魔力を通すだけならっ!!)
[シィュン─!]
攻撃被弾盾を拳の全面に意図的に配置する。今の私はいわばゾーン状態だ、例え杖(媒体)がなくても魔法を使用することができる、
「もう一回!!」
[ギギギィィン!!]
「くっ─そ?!」
『アラハバキ』は攻撃に転じさせた攻撃被弾盾を斧で受け切り、衝突の勢いはどこへ行ったのか、後方へ思いっきり飛んでいった。
「てて。」
私は自分の拳を楽にしてヒラヒラする。直接当たったわけではないけれども魔力を通した感触というのは変にキツかったりする。具体的に言えばなんかこう、手が圧縮されてる感じ。
(拳もなかなか良いけど。やっぱりここは魔法の方がっ!)
頭の中で知っている魔法を選択する。
ゾーン状態に入っていたからか、何ができて何ができないか、ソレの判断が曖昧になっていたと思う。でも正直言ってその頃は何でもできたと今になって感じる。
理由に関して私は【全知の魔女】という肩書きがある。単に魔法力的意味で強いわけじゃない、私の真骨頂は
(その気になれば知っている魔法を全て行使することができるからだ、)
私はある限定的なモードであれば自身の魔力が続く限り無尽蔵に魔法を使うことができる。
しかしソレも魔力が続く限りであった、魔力がなくなれば魔法使いは後がない。
なので『アラハバキ』との戦いは使わないと思っていたけど、
(今、私を纏っているこの魔力は全部!)
自然界にあるもので代用している。自然界のまさに底なしの魔力が全て私の思うがままに操れる。そう考えるともはや後や先を考えていることに頭を使う必要はない、単純に、ただ純粋に。
「おっとと。」
ウミとレナにしっかりバリアを張って。、後この空間にも結界張らないと。
今から行う魔術の範囲がどのくらいかは計り知れない、もしこの場所が吹き飛んで請求書を出されたらいくら何でも悩んでしまう。
(お兄様は言うよね用意周到って!)
「ヨシっ!じゃあ始めよっかぁー!!」
私はそういうと、魔術を奏でる。普段であれば大奮発するところの魔術、今回は思う存分使うことができる。
そういえば魔術について考えることはあまりなかった、魔術は魔法の完全上位互換の魔力行使術、その内容もあるものであれば世界を滅亡にも追いやることができる。でも、ここはかなり自重しよう。
(アラハバキがどっかにいったら試せないもんね!。)
そう狂気の笑みを私は見せながら、魔術を構成する。できれば相手が死なないくらい、それでいて相手が少し深傷を負ってくれるくらいの、、ー!
「決めた!」
私はパンッ!手を叩きそこから魔力の糸を構成する。構成する糸一つ一つには微細な魔術式が刻まれており本番ぶっつけであるのにも関わらず私は見惚れてしまった。
「綺麗─。とと、しっかり撃たないと。」
魔力の糸は形を形成し、一つの銃になった。半透明な神秘的な銃を片手に私は『アラハバキ』へ標準を定める。
「『魔弾・死虹』───!。」
[バンッ!!───ィィィィィッ!!!]
黒色と虹色の混じり気がありながらその内側はとても輝いて綺麗だった。そしてその一撃は光の速さが如く、放たれた弓の如く速さで『アラハバキ』に直撃した。
『ピシピシピシピシ───バリンっ!!』
ガラスが壊れるようなあっけない効果音に正直私は気持ちが下がる。せっかくの高威力魔術なんだからもう少し派手だったらなーっと思い後ろを振り返る。
一二歩歩き、違和感を感じる。
「、、倒してない?。」
「大当たりだ、、ッ!!」
その直後、『アラハバキ』が背後から切り掛かってくる。吹き飛ばして橋の柱にぶつけたというのに、どうやってここまで一瞬にしてきたのか、今の私にはその疑問を解決しようとも、
(解決したいとも思わない!。)
「そう出なくっちゃ!!」
[バチィィィン!!]
私は腕全体を魔力の刃で纏う。そしてそれを『アラハバキ』一撃を受けるのに利用する。本来細かな調整がこれでもかと必要になるが、完全にスーパーハイテンション状態であった私は一種の直感ともいえる異能でこれを一瞬のうちに形成した。
「ハッ、面白れぇ!!切り刃比べだ!」
『アラハバキ』は心の底から面白がっている顔を見せつけつつ、私に対して神速の連撃を繰り出す。
(『反撃反鏡』)
私の目の前に一つの水鏡が現れる。そしてその水鏡から『アラハバキ』に似たシルエットが飛び出し彼の動きを完全に真似るように攻撃を互いに激突させた。
「─!こいつも真似できるかぁッ!!。」
『アラハバキ』の動きについて行っていた水鏡は速度を上げていく『アラハバキ』の攻撃にいつしか受け止める側に変わった。魔法にも実質的に限度はあるけどそれを単純な物理で押し切るのは正直突破法としては好きじゃない、でも
(それが相手のやり方ならこっちも答えないとね。!)
「擬似形成・四師剣」
[バリン─ッ]
[ガッ!キィィィィィィ─!!]
水鏡の幻影がガラスの様に割れ、勢いのままに『アラハバキ』はやってくる。私はお兄様譲りの直感でそれを瞬時に見極め、先ほど水鏡がやった様に刃と刃を合わせさせ鍔迫り合いに持っていく。
「─魔術剣かっ!。」
「だけじゃないよ!!。」
私は剣を思いっきり振り切り、『アラハバキ』の真横をすぐさま取る。
「んっ?!な、、」
「力勝負じゃ、こっちが勝ち!!」
[キィィン!─キィンギィィン!!]
惜しくも私の連撃は『アラハバキ』に読まれ、全て防がれた。いくら魔術だと言っても所詮は借り物、本物の技には幾分か劣る。
なら、
「『逆流・薙刀』!!」
私の両側から薙刀型の槍が射出され、『アラハバキ』に向かって振りかざされていく。
薙刀はまるで意思を持っているかの様に行動し、『アラハバキ』に鋭い斬撃を与えようと自動で奮闘する。
その間私はまた新しい魔術を展開する。
「おいこれっ!卑怯だろ─」
「『神断・蜃気弓』」
まるで揺れた炎の様な形をした弓が私の元へと現れて、私は矢替わりに四師剣を思いっきり引っ張り『アラハバキ』へと照準を合わせる。
最後に少しだけ魔力を込めて、、
「発射──。」
手を離すと真っ赤な直線を描きながら剣は狙った『アラハバキ』に向かって迷いなく突き進む。
薙刀は『アラハバキ』をギリギリまで厄介した後、興味をなくした様に散らばり剣の道を作る。
「─っ?!」
『アラハバキ』は速度を頭の中で考えていなかったのか、それともひたすらに薙刀の相手をしていたからなのか、回避をせずこの攻撃を斧でいなしながら自分の後ろへと通り過ぎさせた。
[シュュゥゥゥン────ボギィガァァァァンッ!!!]
『アラハバキ』を通り過ぎた剣はまるで時限爆弾を仕込まれていたかの様に爆発し、彼の背後を真っ赤に染める。
赤い波動が青い世界を一気に彩る。一瞬この世の終わりなのではないのだろうかというほど目の前が真っ赤に染まり、私のボルテージはそんな光景にさらにワクワクを感じた。
「─、は。」
『アラハバキ』も思わず背後の光景を見ていた、そしてだんだんと彼がこちらを見るにつれてまた世界が目に優しい青に広がる。
「、、あー、やめだやめだ。」
「?、やめ?。」
「あぁ。やめだ。」
『アラハバキ』はそう言いながら手を後ろに回し何かを取る様な動作を行おうとした。
私は彼の言葉から、まるでこの場を仕切っている様な、もしくは今から確実にそれが行える様な感覚がした
「ッ!『溶術放烈』─!!」
手に持っていた弓に新しい魔術を矢のように形を変えセットして、間も無くして放つ。
[パシュ──!]
『アラハバキ』によける兆しはない、ただこちらの攻撃に合わせて手を出すスピードを早めただけだった。
[ピュルルル───ダッジュュュュュ!!!]
矢は形を変え、緑色の水の膜になる。そうして一つの丸い玉の様な塊になり破裂した。
破裂したと同時に酷い溶解音がその場に響き渡り、橋をたちまち溶解し始めた。
しかし溶解した手応えからわかる、そこに『アラハバキ』はいなかったのだ。
「、、。」
先ほど二人が倒したもう一人暗殺者の方を向く、しかしそこには誰もいなかった。
私の心は少しも悔しさが残っていない、いわゆる私らしくない状態だった、、ただ目の前に起こった可能性、予想を立てることや観察することは特別に気になって仕方がなかった。
「、。帰還の聖杯かな───」
帰還の聖杯は無条件で必ず安全圏へと離脱できる道具だ。前に掲示板で見たことあるが、オークションだと街が買えるレベルの金額になるらしい。
「、魔術結界でもダメなんだ。一応頭に入れておこっかな、、」
そう思いながら私は指を鳴らす。そうすると先ほどまで展開していた魔術結果はあっけなく消失、私の高揚した気分もだんだんと落ち着いていき、
(、ちょっと恥ずかしかった。)
深夜テンションっていうのは知らないけどああいう感じなのかな?、。すっごい恥ずかしい。
次からはやらないように気をつけないと。
そう思いつつ私は倒れていた二人の元へ向かう。
「、ウミは治癒すればいけそうだけど。レナはどうしよう、、?。」
機械にあまり詳しくない私は、頭を悩ませる。機械って下手なことすると壊れるってお兄様から昔言われていたことを思い出したからだ、
かと言ってこのまま放置するわけにもいかない。
苦難の末たった方法は、、
「、とりあえず純正魔力でも送ろっかな。」
お兄様の話を思い出す、確かオートマタの心臓部は魔力で動いている。なら尚更与えればうまくいくというもの、もしかしたらこの記憶が間違っているかもしれないと少し感じたけど。
まぁ、なるようになるっと思いつつ少し与えてみる。
[ガバッ!]
「アイタッ─!!」
びっくりした。レナは私がたった1.2秒魔力を与えただけなのに心臓部を何かと大事そうに抱えながら飛び上がった。
「〜っ!アンタ、ルルカ!送りすぎよ!!。」
「えぇー、?私の100分の1だよ?!」
「起動には1000分の1でも十分なのよ!危うく核が爆発するところだったじゃない!!」
「う。なんかごめんって。」
「それと!次は混合魔力を、、─はぁまぁ良いわ。」
そういうと、レナは頭をかきながら変に納得してくれたいつものレナだったらこのままネチネチ追撃してもおかしくなかったはずだ。でもしなかった、逆に私のことを変に気にしているような感じだ。
「ウミさんは?。」
「今こうして回復中だよ。」
「、、そ。」
レナはウミさんの容態を気にしているようだった。私は二人がどんな戦いをしていたのか明確には聞いていない、でも『アラハバキ』の動き的におそらくかなりの苦戦を強いられていたのではないのだろうか?っと推測くらいはできる。
「、、アンタ、魔力増えてない?。」
レナが突然、こっちをジーッと見てそう言った。私は何で説明しようかなーっとうーんと少し悩んで話すことにした。
レナは私が話を進めている中で様々な表情を見せてくれた。もっともそのほとんどが間違いなく良い方向ではなかったことがわかる。
「…もうアンタ達、兄妹は。、、はぁ。」
レナは頭を抱え、ため息を大きく吐いた。ソレはまるで我が子に手を焼く親のような姿だった。いつもお父様がそんな姿を見せてくるので嫌でもわかる。…つまり私って手のかかる子?
「もう、本当に。、、少し自重して、」
「ご、ごめん。」
私は自分の行いに反省した。次からあんなハイテンション状態にならないということも、。
次お兄様に会う時はこんな姿を晒さないということを、、
『topic』
《魔力核と掌握(操り)》
【魔力核】は書いて字の通り魔力の核いわば中心であり意識的に操ることはほぼ困難に近い。
【魔力】はMPと似ているが実は違う。【魔力】を取り込み、肉体が無意識中に【魔力核】を掌握。
肉体が【魔力核】を掌握し、【魔力】を魔法などを行使する上でより扱いやすくしたものをMPという。
しかしこれは肉体に【魔力掌握機能】が備わっていて初めて可能となることで、体を通さず直接的に【魔力核】を操り、掌握するとなると相当な集中力と想像力が必要となる。




