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六十五話「死の感覚と炎の槍」

前回のあらすじ


ウミとレナは『アラハバキ』とネルの二人に再度接敵する。それぞれがそれぞれ応戦しつつ、戦局をこちら側に優勢にしていった。しかしそこは『アラハバキ』が武器の封印を解除し、新たな展開が広がる。




 [ジュインッ!ドドドガンッ!!]


 「っ!。」


目の前からくる斬撃を紙一重で避け切り、次攻撃に備える。


 [ドンッ!!]


 「しまっ!?」


斬撃を超えた先にあったのは『アラハバキ』の蹴りだった。腹部を助走をつけた蹴りで抉られそのまま地面に転がり飛ばされる。


 「ぃ。っ!」


先ほどの状態と今の状態が大違いだった。

今は劣勢を通り越してもはや壊滅寸前だ、、


 「!!」


『アラハバキ』はこちらに追撃を加えようと、斧を掲げ走り出してくる。腕に力が入るまであと数秒かかるというのに私の体はこれっぽっちも動かない。


まるで麻痺状態をつけられたみたいだ。


 [ドドドドドドドッ!]


『アラハバキ』がこちらに向かってくる途中、追撃阻止の弾幕が斜め上から放たれる。


 「行かせるわけないじゃない!」


 [ヒュィン!ヒュィン!ヒュィン!!!]


ガトリングを掃射しつつ、レナ様は背部からマイクロミサイルをアラハバキに放つ。

マイクロミサイルは個々が干渉しない滑らかな曲線を描きながら、『アラハバキ』に向かっていく。


一眼見るだけで数は10を有余に超えている。たとえ歴戦の冒険者であろうとこのミサイルを全ていなしきるには相当な練度が必要になる。

相手は『アラハバキ』だが、それでも決定打になることは間違い無いだろう。


 「フッ。」


『アラハバキ』は不敵そう笑うと、向かってくるミサイルや弾幕に突貫していった。

レナ様は驚いた顔を一瞬したが数秒後には気に入らない顔を見せ、さらに追加のミサイルを放つ。


 「お前に教えてやろう。暗殺者の本領というものを、、!」


そう言うと、『アラハバキ』は最初に来たミサイルを切った。しかしその直後に起きる爆発は彼を巻き込まなかった、いや正しくは爆発は起こらなかった、、


彼は弾頭の先端部位を切り伏せた。


 (まさか、、)


聞いたことがある、ミサイルは種類にもよるが弾頭の先端部位を本体と切断状態にすれば起爆しないという説を、もちろん詳しくは知らない弾頭の先端を切るなんて行為はまずできないし、もしそんなことができるのならそれは機械のように正確な器用さと構造を細部まで知っている者だけだろうから。


 (そしてもしそれが本当なら!)


 「レナ様ぁっ!!」


 [シュシュシュン!!]


重々しい斧をまるで針のように軽く、それでいてどんな剣よりも速い速度で周りに群がるミサイルを瞬きの間に全て無力化した。


 無力化したことがわかると、瞬時に飛び。レナへ接近を図る。しかし相手はジャンプ一回ほどでは届かないほど高い、それこそスラスターを使わなければ攻撃する届かないだろう。


しかし『アラハバキ』は向かってくる残りのミサイルを踏み台に目にも止まらない速さで一気に接近を果たした。


レナ様が反応する頃にはすでに射程圏内、斧を片手に縦振りをしギリギリで回避運動をとっていたレナ様に攻撃を当てる。


 [バゴーーン──。]


レナ様全体を覆い隠すほどの爆発が起こり、私は体が嫌でも動いた。


 「レナ様!!」


体が痛みを訴える中、私は彼女が爆発した方向へ走り出す。しかしその道中、一つの塊が残煙の中から飛び出した、青白い光の剣でアラハバキの斧を火花散る中受け止め、スラスターの感性制御によってアラハバキを引き離し地面に降り立った。


 「ちっ。」


 「レナ様!!」


 「大丈夫よウミさん航行用のプロペラントタンクがやられただけだから。」


私の声にレナ様は落ち着きながら返答した。私もその言葉を聞いて焦っていた気持ちを落ち着かせる。らしくない行動だったかもしれない、そう思いつつ軽々と地面に降り立ったアラハバキを凝視した。


 「はぁ、はぁ、やっ、、と戻って来れたー。」


続いてその『アラハバキ』にネルも合流する、彼女は先ほどレナ様に遠いところに飛ばされていたはず、しかしこの短時間で戻ってこれたということは見た目以上にスペックが高いのかもしれない。

どちらにせよ不可視の攻撃を含み、警戒は怠らないようにしなければ、、。


 「さて、仕切り直しだ。」


ネルが到着したことを確認すると『アラハバキ』は斧を振り回し、こちらに数多の斬撃を飛ばす。


 「回避!!」


体が動くより早くレナ様がそう大声で叫ぶ、私は言葉に操られるまま、回避行動をとり斬撃を全て回避する。


 「ざーんねーんw」


ネルがまるで爆破予告をするように口に手を出しそう言う。目線は私の先だつまり!


 [バゴーーン!!]


地雷が私の足元で爆発し体のバランスを大きく崩す、しかしネルは追撃してくる様子はない、アラハバキがくる感じもしない。

ネルがする不敵な笑い方からの憶測でしかないが、こちらにアラハバキが来ないことはなぜだか確信レベルだった。


そしてそのことがわかると私の思考は一気に楽になる。なぜなら一番の敵はこちらに来ていないと言うことなのだから、。


 (ネルさ…。ネルはおそらく遠距離から敵を翻弄しつつ、倒すタイプだ。妥当な考えでいくのなら次の行動は。)


私は興味本位で足を後ろへ倒す。


 [カチ]


っと何かスイッチを踏んだような音が耳に入ったあと、その地点はいきなり発光し始めた。まるで今からそこが爆発するよと知らせているかのように、、


 (もちろん爆発に飲まれる気はありませんが、)


ただ単純な興味本位で踏んだと思ったら大間違いだ。あ、向こうは多分「引っかかった!」程度にしか思っていないでしょうが、、今咄嗟に思いついた技ではあるが試す価値は十分にある。


 「はいw乙カレー。」


心の底から嘲笑っていると確信できる。それほどまでその顔はこちらを蔑んでいる、しかし私にも私なりのプライドがある。


 (勝手に蔑まないでください、ね。)


爆発が次の瞬間発動する。不安要素がかなり絡んでくるゆえ、爆発系の発生は通常攻撃と違って読みづらい、棒がまっすぐこちらに倒れてくるのではなく、土管が真上から倒れてきて、なおかつその中心を狙えという感じだ。


 難易度の桁違い感を味わうことになるでしょうが、。要は失敗しなければいいということです。


 [バゴーーン!!!、]


 「ふふ、。」


 [チチチジジジジジ!!]


 「?。!、」


私は爆発した炎を右腕に貯める。

フレイム系統の技には実質的な裏技が存在する。それはこちらが炎に対して攻撃した際、その主導権を奪うという物だ、つまりということかというと


 (こういうことです!!)


 「『反攻カウンター』!!──。」


私は拳をネルに向かって後ろへ下げる。そして最大まで溜まった熱さを直に感じながら、こう叫ぶ。


 「『炎射ストライク』ーーッ!!」


拳を中心に打ち出される炎の渦は容赦なく、ネルの方へと放出された。


中核に確かに存在する熱線は炎を周りに形成しながら、ネルの防御壁に持続的な攻撃を与える。


 [バーーーーーッ!!]


 「アッツっ?!」


 (思った通り。単純な物理的なものを遮断できても空気中に含まれるも環境的影響までは流石に干渉できない。)


そうと決まればやることは一つだけだ。


私はネルに即刻追撃を入れようと、地面を蹴り上げ、直進する。


 「っ、油断したでしょ!!」


 [バゴーーン!!バゴーーン!!バゴーーン!!!]


 「私の地雷はね、環境的影響を受けない。生物の触発のみに起爆する特別仕様!!、つまりアンタは!。」


 [バゴーーン!!バゴーーン!バゴーーン!!!!]


 「っ?!、正気?!!」


もちろん全くもって正気だ。地面に地雷があることをたった一瞬でも忘れていた、しかし今はそんなことを気にしていられるほど、、気にするほどに


 (この炎は燃え尽きていない!!)


地面を一歩一歩と踏むならすたび、爆発がそれに連動して1〜2発至近距離にて起爆する。

本来ならば足を止めて、考えを巡らせるだろう、本来ならもう少し頭を使うことだろう。


だが今!その時!仕留められると感覚でわかったのなら、ここで止まるわけにはいかない。


爆発の音が聞こえるたびに、服や体を焦がす。一瞬の痛みと持続する高熱が私の気力を削がそうとしてくる。

しかし私は爆発を一歩一歩と踏み続ける。


 「っ!『反攻カウンター』したって!私にはこれがあるから効かないに決まってるじゃん!バッカじゃないの?!」


ネルの顔色が一瞬の光で見える。その顔はとても焦っていて、携帯端末に苛立ちをぶつけながらタップし、こちらを継続的に攻撃し続ける。


さらには少しずつ距離をとりながら、こちらとの距離を離そうとしてくる。しかし私の足はそれに反応するが如く一歩一歩の感覚を開く。


 「っ、なんで?!『反攻カウンター』はとっくに切れても!!」


 「えぇ!!切れていますとも、。ですが!貴方がそれを理解するのはあり得ません!」


実のところ『反攻カウンター』は続いている。『反攻カウンター』には行動制限がかかっており、攻撃を受けて『反攻カウンター』可能な範囲が決まっている。感覚的には2〜3m強圏内だ。

しかしこれには裏技がある、マニュアルでは『反攻カウンター』可能体制が決まっており、攻撃しやすい体制のまま、相手に殴り込むという形だ、もちろんそれが一般的なやり方でありこのマニュアルは妥当と判断できる。

しかしマニュアルを解除した場合だと、『反攻カウンター』モーションに制限が付かなくなる。つまりは2m歩き、『反攻カウンター』を発動させても良い。


そして『反攻カウンター』の条件。

【『反攻カウンター』受身状態中に攻撃を受けそれがクリティカル、又は技量によって『見切り』判定が発動した場合、被ダメージを減少させ、敵の攻撃を自身の攻撃式に上乗せしダメージを与える。

※また『反攻カウンター』可能状態になった後こちらが攻撃する前に敵の攻撃を再度、『反攻カウンター』可能状態にした場合、前回の『反攻カウンター』の攻撃力を最新の『反攻カウンター』状態に上乗せする。】


により、追加攻撃を受けると『反攻カウンター』自体が攻撃分の引き継ぎを残してリセット状態に入る。


つまりは


 (実質的にこちらは攻撃力を上げ続け、相手まで距離を詰めることができる…!。)


しかしこれには弱点がもちろん含まれる。『反攻カウンター』は相手の攻撃を受けて発動する都合上、例え被ダメージ減少状態だとしても相手の攻撃を受け続けなければならない、それ即ち膨大な体力が必要となる。


そして問題は攻撃頻度だ。相手がこちらに1秒弱のタイミングで一回の攻撃をするので、私はその隙(1秒弱のクールタイムの間)にできる限り移動しなければならない。


そして一番重要なのが『反攻カウンター』を成功させなければいけないことだ。ここでの成功というのはいわば『反攻カウンター』可能状態という意味だ。


そもそもこの攻撃にはクリティカルという概念が存在しない。ということは自分の技量で『見切り』を発動させなければいけないということだ、、

私はいつも『見切り』を発動させて攻撃している都合上慣れはしているが短時間に、しかも判定が微妙にわかりにくい攻撃を何度も受け続けながら他のことを考えるとなると、相当な集中力が必要になる。


それこそその後の戦闘に影響が大きく出るほどだ。


ゆえに私は今この場で確実にネルを倒さなければならない。


さもないと私は相手に辿り着けず、体力が限界を迎え力尽きることだろう。


 (加えて相手はその気になったら距離を離しながら戦うことをできる。)


なるべく早く、相手に悟られず、体力が限界を迎える前に、、近づき、相手を屠らなければならない。


 「アンタ!死にたいわけっ?!」


 「っ、。、っ残っ念ながら、死ぬつもりは、、ありません!!。」


 「──っ!くんなし!!。」


そういうと、さらに携帯端末を早くタップした。ネルの必死な表情が見えた途端に爆発によって防がれる光景は遅かれ早かれ私の神経をだいぶ妨げてくる。


体にくる刺激を予測して、感覚を掴め。ネル以外の聴覚、視覚、触覚を頼りに一歩一歩と、『反攻カウンター』の糧として行け。


自分の周りのことだけに集中しろ、自分がどこにいて、どこに何があるかは考えるな。


ただただやるべきことをやって、それに考えを持つな。ただただ気が熟すまで、待て。


 「あー!もう嫌い嫌い!!、なんでアンタみたいなのが居んのっ?!気色悪い!!」


またまた爆発の数が増えていく。それでも私はその中から正しいのを引き出し、次へ繋げるために体を保たせながら前へ前進していく、、


後少しと自分に言い聞かせながら決して油断はしない。油断したらもしかしたら全て水の泡になるかもしれないから、だから絶対に、何事にも関しても


 (諦めません!!)


 「─ならっ全て吹き飛ばしてあげる!!」


そう言いながら、ネルは高速で指を動かし。何かの攻撃姿勢を取る。私はそれが例の大技だということに気がついた、もし当たったら流石の体力も、、


 (いやそんなこと考えるな!、今はただ。)


地雷が目の前で爆発しながらネルとの正確な距離を妨げてくる。だが、それもあくまで視覚情報だ、、感覚、そうもっと感覚を頼れ、紅月様のように鋭く、お嬢様のように正確に、、!。


 一、ニ、三、、。


 四、五、六、、。


 

 (後少し。)


 「これでぇ〜っ!!」


相手の声がすぐ近くまで聞こえてくる。私はその情報を爆発の中から取り出し、頭で考える。


そして私の中でタイミングが決まると同時に足元に爆発が起きた。


 (今だ!!)


そう思った瞬間にはすでに体は動き出していた。爆発を最速の『反攻カウンター』で、獲物にし大きく2、3歩前へ踏み出す。


地面を大きく蹴り、蹴り、私は『反攻カウンター』の射程圏内へとやっと近づいた。


 相手はまだこちらを正確には理解していない、せいぜい爆発の中から狙っていた獲物が飛び出した程度の認識だろう。

しかしそれは大違いだ、貴方が思っているよりこの世界は甘くない、貴方が思っているより、戦闘は簡単ではない。


そう、一言ただアドバイスを差し上げるとするなら


 「もっと後ろにいるべきでしたねッ!!」


チリチリと燃える服、今まで受けた炎を溜めた右手がさらに再熱する。

体1動作1動作に痛みが走る。焼け焦げ、軋む体を思いっきり握り締め、再熱させる。


体温がこれでもかと上がっていく、見間違えのないほどの熱さに思わず歯を食いしばってしまう。その刹那に抱いた心は数知れない、やめたいとも思った、進もうとも思った。


ただ一つだけ諦めようとは決して思わなかった。


 (この気持ちが誰に対して入れたものかはわかりません。そんなことを考えている暇がないのですから、ですが!。)


狙うは目の前の敵ただ一人、ここまで溜めた炎を反攻とともに燃やせ、燃やし尽くせ!。


イメージしろ、相手の壁をただ通すのではなく、いかにして相手の壁を打ち破るのか、いかにして相手の壁を壊し突くすのか、、!。


そうでもしないと、いややはり何事においても確実な方がいい。


 この一撃がこの後の戦局に十分影響するのであれば、私は今ここで確実に、、


 (ネルを屠る。)


そのためにはより正確なものが必要だ。貫くためなら一体何が必要か?どんなものなら構造がまるでわからなくても、どんなに恐ろしいものでも、どんな神秘でも貫くことができるか?!



 (、、。)


一瞬時間が止まったような感覚が私を襲った。なぜ?今?この場で?あらゆる思惑もとい思考がまるで流水のように私の脳内を駆け巡った、しかしそれは次の瞬間の映像で全て消し飛ばされる。


 「」


 (あれは、、)


目の前にあったのは見覚えのある。槍、しかし彼の持っていたそれとはどことなく違う、いやよく見てみれば物それ自体が違う。

彼が持っていたのは鋼鉄の槍だ、先端がとても尖っているわけでもなく、なんなら叩きつけるためのプレートが四枚、鋭錐を作る形で配置されていたはずだ。


しかし今目の前にあるそれは、形で言えば面影すら残さない、全く別な物だ。


だが魂が、という表現は少し具体性がないだろう。強いていうのならば雰囲気が…彼の持っていたものに一番近いと感じた。


それは原理を理解する、という工程を必ず飛ばし、最後に残るのはこれであると結果をまるで先に提示された感覚、数学の公式が全ていらないと否定され、結果答えが無から求められた。


そんな不可解で理解し難い現象をこの目で見たというのに私の心はとても晴れやかでいっぺんの霧も張っていなかった。


そして私はその槍に触れた。しかし、


 [─。]


槍は確かに形を保っていたはずなのに、私が触れるとまるで炎が作った幻像のように呆気なく消え、私はその場から一歩下がる。


すると再度炎の槍は元の形を形成していた。


 不思議だ。それは確かに私の前に現れた、なら私以外に一体誰がこの槍を取るのだろう?


 (、、必要なのは資格ではない?)


1、2秒待つとその答えが見えてきた。もっともそれが正しい答えなのかは計り知れないが、、


この槍は私が取るべき物だ。ならいかようにして取るのが正解なのか?着眼点はここだ。


 (炎。)


そう思う手から一瞬炎が出た。正確にはまとわりついているはずの炎が目に見えたというべきだろう、いつの間にまとわりついていたのか?


そう考えると暇なく私は目を瞑り意識を集中させた。


 (炎、、。)


手の甲が熱くなるのを感じる。そしてそれが少しずつ実感として湧いてくる、念じる?、思うたびにその炎はより大きくなっていく。


たとえ目を瞑っていたとしても、それが感覚だけで理解できる。そして、私は十分に溜まった炎を手に槍に触れた。


 [─ッ!]


槍は先ほどまで抑えていた炎を放出し、私をまるで反発するかのように引き剥がそうとした。私は一旦離そうと思ったが、何かが私を動かすように離れた片腕をもう一度槍へと戻した。


自分の炎に意識を向けた。槍先から出る炎は確実に私と反発する関係にある。


しかしこれを私は試練だと受け取り、自身の炎をさらに燃やし、槍を上から覆おうとした。


槍はそれでも無機質に反発する。生命が宿っているようで宿っていないその自衛に似た反発はなぜかもっと私を奮起させた。


 「っー!ハァァァ!!」


そして、だんだんと強くなる自身の炎と反発、二つの対立を私は押し切り、槍に自身の炎を完全に認めさせた。


 [─。]


槍の炎は私自身のものとなり、そして槍を中心にまるで星の爆発のような光がその世界を私を包んだ。



 「…っ!」

 

夢、だったのだろうか?、止まった時間が動き出したと認識する。私の体は先ほどの夢と違い、ボロボロであった、目の前のネルに反攻カウンターをする直前に戻ってきたのだ。


 (夢、にしては出来すぎてますよね。)


そう思うと、自分の新たな炎を感じ取った。今の今まで少なくとも先ほどまでに存在しなかった存在だ。


私はその存在が消化され、消えゆく前に。

しっかりと掴む。何で掴んだ中はこの際どうでもいい、手で掴んだのか、心で掴んだのか、感覚で掴んだのか、どちらにせよ私はこれをただ使うことができるということだけだ。


 [─ッ!!]


私は手の甲に違和感を感じる。しかしそれは今までなかったものが急に現れたというものであり、危険視という範疇には決して引っかからないものであった。


手の甲に確かなものを感じると、それが先ほど見た槍だということに気がつく。


 その槍がいかような意味を持つかは理解できない、、だが感じることはできる。


槍は何かを貫くためにあると、。


槍に火を灯し、灯し、燃え上がらせる。【反攻カウンター』によって溜まった炎を全て槍に乗せる、これでいいこれが最善で、これがいちばんの、。


 私の中でそう復唱され続けられる。


そして私はその槍をかたどらせた炎をたった一人の目の前の女に打ち込む。


 「っ?!な、!!」


反応した。おそらくこの時点からあのバリアを貼られる、貼れる。、問題はこの槍が貫けるかどうかだ、


しかしそれもやってみないことにはわからない、故に。


 「っ!!」


私はネルに向かってその拳、もとい拳の隣に立つ槍を相手に差し込んだ。


 [ジーッッッッ──!!]


炎がまるでレーザーカッターのように半透明な壁を傷つけ始める。あまりある炎を消費するように火花が当たった先から散り散りになっていく、炎の息吹が槍先を中心に四方へ分散していく、X字を描くようにして炎は勢いよく噴出されて行くのだ。


 (燃費が悪い、、!)


そう感じる私は自分がこれ以上犠牲になることを範疇に、槍先から溢れ出て、彼方へと向かおうとする火すら操り、槍の後ろへ味方付ける。


槍は変わらず熱気を漂わせ、まるでこの場にある全てを燃やし尽くす勢いで、透明な壁に向かいただただ押し穿ち潰すように、攻めていた。


私の体はまるで熱全体に燃え溶かされているように、業火に巻き込まれた。しかしそんなことをつゆ知らず、私はただただ目の前だけに集中していた。


 「ぁ、っ。くっ!」


炎が向こう側に通っているのだろう、ネルの表情は驚きからだんだんと額に汗を出し、険しいものとなっていた。


 「ハァァァーッ!!」


私はさらに槍を押し込める、見えない壁は向こう側に反発する。まるで空気の壁だ、こちらが押せば向こうは下がる、向こうとこちらが一定であれば押しも引もできない。


だが、今回ばかりは押し込ませていただく、。この槍で、!


 「なにっ!それ!?。」


まるで、今まで見たことない。そんなことが起こったことないと、否定したいけれど目の前の現象がいやでもそれを証明していて、心の底からの驚きと、拒絶する気持ちが合わさったような感じ。そんな目をしている、、


 (ぁ、なるほど。)


きっとレナ様もこんなふうに私を理解していて、こんなふうに掴んでいたのですね。相手の胸ぐらを!!


 [ジリジリジリジリッ!!]


 「っ?!、や、やめ!!」


炎の槍は、見えない壁を明確に具現化する。それが炎の影響なのか、はたまた自分の幻覚なのか、それは本当に些細なことだった。


ただただ、今は紅月様を葬った目の前のネルという少女に、、。


 「喝采をッ!!」


 「や、やめてよぉぉぉぉっ!!!!???」


 [バヂンッ!!───。]


見えない壁が破れ、炎の槍は役目を終えたかのように消えた。

目の前にいるのはただ驚きと、呆然としたネルの姿のみ。

私は今までの想いと言葉にならない叫びを胸にその横っ面を


 「〜〜〜ッーーーー!!!!!!」


 思いっきり殴った。


ネルは殴られた勢いで向こう側まで飛んでいき、床をまるでカーリングのように滑り。

動かなくなった、


 [ドサ]


全てを出し切った、そう確信した途端体に力が乗らなくなる。体は勢いを失いまるで死に体だ、指を一つ動かすのにも数分かかることは明確で、ただただ晴れた心が私の中にはあった。


 [─ザ]


それでもここは戦場だ、疲れ切った体でもそれが倒されていると認識されていないのであれば追撃は必ず飛んで来る。


 「てこずれせてくれたな。」


尽きた本能は最後の瞬間を目にする。『アラハバキ』は額に傷を負いながらも、こちらを凝視していた。

アラハバキはレナ様が担当していたはずだ、ここにきているという事は。


 [ババババババ!!]


『アラハバキ』を狙う的確な射撃が目の前で起こる。『アラハバキ』はそれをものともせず、ノールックで斧で受け止め、反撃の斬撃を軽く飛ばす、その次の瞬間にはまるで機械がスクラップにされ多様なガシャンという音が耳を通して聞こえた。


 「っ、動き、、なさい、、!。」


レナ様の声だ。そう認識したと思ったら『アラハバキ』は面倒そうにこちらをもう一度見た。


 (殺す目だ、)


 [ドシ]


うつ伏せの体に足を乗せられた。逃げられると少しでも考えにあった心が今度こそ尽きる。


相手はフッと何か別のことを考えたような声を静かに出すと足に力を入れ、私の背を痛ぶるかのように押した。

声は出なかった、満身創痍ゆえの感覚麻痺か、もうこの際どうにでもなれと若干諦めが出ているのか、、。


 (それとも本当は諦めていないのか、)


 「、気に入らんな。その目、」


『アラハバキ』は足の力を緩めた。まるで反応を期待していのに裏切られ、あろうことかもっとも求めていない答えを出されたようなそんな目の前のヤツをとことん気に入らなくなった顔をして、斧を頭上へと持ち上げた。


 (、ここまででしたか。)


 [ス─ッ。]


斧が振り下ろされ、私の首は切られる。その瞬間であろうと私は諦めたりしない、諦めたらここまで積み重なってきたものが無駄になると思ったからだ。


ただ、それとは別に意識が途絶える。首は繋がっているのだろうか?、繋がっていないのだろうか?、それは定かではない。


感覚と意識が遠のき、私は一時的に眠りについた。



・・・


 [ガンッ!!!]


間に合った。ウミとの間にある少し遠い距離、振り下ろされ切られるはずの首が実は切られていなく、『アラハバキ』の斧が寸前で止まっていることを確認すると私は初めてため息が出た。


『アラハバキ』は防がれた刃をガンガンと二回ほど、攻撃被弾盾アタックダメージシールドを叩く。しかし壊すことができないと悟ったのかあたりを見回し、私と目が合う。


『アラハバキ』は一瞬驚いた顔をしたものの、次の瞬間には不敵な笑顔に変わっていた。


 「、、。」


その顔に体震える、思わず一歩後ろに下がろうとしてしまう。

しかしウミの言葉をとたんに思い出してしまう、


 『待っています、私が愛してやまないお嬢様を。』


この言葉をいい意味で捉えてはいけない。ウミがもし倒れていなかったら私に「逃げて」と言うことだろう、たとえ私がこの言葉を復唱したとしてもウミはそんなことのために言ったのではないと大きく否定するだろう、。


でも、それでもウミが苦しんで乗り越えたというのに、私がいつまでも俯き、逃げていたら一体何の示しがつくのだろ?。

たとえそうじゃなくてもウミは私を信じてくれた、


 (私もたとえ形じゃなくても信じ続けるべき。)


そう覚悟すると、私は一歩前に立ち『アラハバキ』というアサシンを前に戦闘態勢を堂々ととる。


 「バカルルカ!、アンタは逃げるべきよ!!コイツの目的は、、っぅ」


レナは全身がボロボロの状態であった、彼女の戦闘センスは決して悪くはない。向こうに転がっている金髪の、お兄様を飛ばした奴が転がっていることを考えると、『アラハバキ』がレナをボロボロにして、ウミにトドメを刺そうとしていたことがわかる。


 (魔法火力上昇マジックアタックアップ飛翔フライズ詠唱速度上昇カウントスピードアップ多重魔法制御マルチマジックコントロール反撃魔法カウンターマジック攻撃被弾盾アタックダメージシールド気力上昇テンションアップ効率時間半減クールタイムカット追撃魔力攻撃プラスマジックアタック対特殊攻撃耐性アンチイクスセンションアタックガード対斬撃盾スラッシュガードシールド魔法会心上昇マジッククリティカルアップ…)


相手に聞こえないくらい小さい声で私は静かに魔法を唱えていく。この状況をどう動かすのは私の技量にかかっている、『アラハバキ』を止めるにしろ、抑えるにしろ追っ払うにしろ、私は今この場で救える未来を試すだけだ。


 (─────反応速度上昇リアクションスピードアップ、。)


 「、準備は終わりか?。」


『アラハバキ』はまるで待っていたような口ぶりをする、どうやら見抜かれていたみたいだ。


 「うん、。ごめんだけど、あなたには容赦できない。」


実のところ本命は最後まで隠してはある、あの状態は下手したらここにいる全員が巻き込まれないほどの大業に発展する可能性がある、なので今はあくまでSSランクの実力で出せる、力を出していこう。


 「ふふ、アハハハハ!!。手加減していたみたいな言い方だな!。いいぞ、、その自信、命共に壊してやる。」


火蓋は切られる、この戦いはおそらくとても難しい展開になるだろう。、そのことが『アラハバキ』の背後に浮かぶオーラからも読み取れる。この世界でここまで人を殺そうという殺意を生み出せるものなのだろうかと、実際のところわからない。もしかしたらゲームだから出せるのかもしれない、ま、例えそうだとしても私がやることは1ミリも変わんないんだけどね。



 「こい!『アラハバキ』!!。」


 「いくぜぇ!強者ァァァ!!」




『topic』


『アラハバキ』の武器は封印抑制がかかっており、外すごとに『アラハバキ』自身の能力も比例して向上する。

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