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五十四話「面倒な街ですねぇ。」

前回のあらすじ


ラメリオスという雷電狛犬を倒して3人はプロイシーへとふたたび足を運ぶ。【SAMONN】の仕組みの深さに関心を寄せながら、殺風景な道を歩く。

 



 「もうすぐ日の出だな。」


紅月様はメニュー画面の時計を確認しながら私たちに知らせるように言った。


 「やっぱりちょっとや、そっとじゃたどり着けないね〜。」


お嬢様はイメージと外れた長さに少し脱力していたようだった。これだけ歩いても着かないとなると他の国と違って、とても遠いことがよくわかる…他の国はいいとこ一日中ちょっとで着くような距離ではあるが(ゲレームは除く)、中央に位置するサイモンから端っこのプロイシーまではかなりの距離がある。もちろん他の国でもそういうところはなくはないのですが、いずれも「他種族お断り」、という体制をとるのでプロイシーがまとも、とは言わないですが、、少なくとも訪れる人がいる中でこの道中はなんとかした方がいいような気がします。


 「この先に街があるので、そこで休みますか?」


 「、お兄様は?。」


 「うん?。そうだな、」


お嬢様の悪い癖だ、自分のことは後回しにして紅月様に物事の判断を任せる。確かにお嬢様がお決めになるのには少し時間がかかることは確かですが、だからといって目に見えてわかる疲労を差し置いて信頼できる人に頼むのは筋違いだ。口を間に入れてもいいが今は紅月様が聞かれている、礼儀通りならば私は嫌でも黙っているのがここの筋というもの。


 「、、ルルカが疲れてそうだし、次の街で休むか。」


 「別に、私は大丈夫だよー。」


っと言いつつ、お嬢様は持っていた杖を支えとしている。天邪鬼というか、ただの頑固というか、、。紅月様が優しくなかったらどうなっていたことか、もっとも紅月様がそのような人になることは全く想像できないが。


 「そんな体勢で言われても説得力ないぞ。、いくら休憩しながらでも、しっかりとした休憩の方が気分も良くなる。」


 「でも、。」


 「お嬢様、少しは自分のことを考えてください。」


 「うっ、わかったよ。」


仕方なさそうにするお嬢様ですが、痩せ我慢が似合うような人ではない。早い段階で決着をつけなければ永遠に話が続く、、紅月様対お嬢様であるなら尚更。


 「決まりだな。」


 「お嬢様のためにも先を急がないとですね。」


 「私は本当に大丈夫なのに。」


また、そんなことを言う。まぁとりあえず休憩することが決まったので私は特に文句とかは言わないのですが、、


 「変に痩せ我慢するな、可愛くないぞ。」


 「か、かわっ?!」


あー、紅月様の天然がまたお嬢様に、、。


 「、、。むぅ。」


しかしながら先を急ぐ紅月様、お嬢様は構って欲しいのか構ってほしくないのか、今の言葉に対する問いと答えのようなものが欲しそうな少し不貞腐れた顔をしながら紅月様の後ろにすぐついた。


私はそんな刹那のモノを見ながら、どことなく達観した気分で二人についていった。


 


 「街って何があるんだろうな、」


紅月様が次の目的地だからか、そう呟いた。今の所紅月様が訪れた街という街はサイモンくらいだ、ゲレームの城下町も含めていいかもしれないがなんせ規模も形も違うのでイメージはつかないだろう。


 「うーん。いいとこ市とか、宿屋とか、武器屋とか、防具やとか、雑貨屋とか、、。」


お嬢様が指を一つずつ折りながらそう数えていった。


 「なんというかあるもの全部サイモンにありそうだな。」


紅月様は見慣れた光景が続くのではないのかと思ったのか、はたまたどこもそんなに変わらないと思ったのか、、サイモンを例えに出してそう言った。


 「もー、サイモンとは比べないでよ。あそこは『プレイヤーの庭』みたいなモノだよ、発展率からしてあっちの方が上で、、なんなら国とおんなじくらいだし、、。」


確かに、サイモンは街であるが規模で言えば一国に匹敵する力を持っている、それは大陸の中心に位置することからもわかる。他国との交流はもちろん、どこの国からでもアクセス可能で住む人も多い、そして『プレイヤーの庭』っとお嬢様が言った通り、あそこは現代人プレイヤーたちの溜まり場であるため発展力もすごい。最初の街とは本当によく言ったものだ、肩書をもし変えることができるなら最高の街と称しても差し支えない。


 「そ、そういうもんか。」


 「ですが他の街も技術発展力はともかく、サイモンと肩を並べるくらいにはいいところが揃ってますよ。」


 「『特産品』とかもいいよね、鮮度が高いから尚更美味しいし。」


 「特産品っていうと、魚とかか?今回の場合。」


 「はい。プロイシーは海の国家ですから、とれるお魚もかなり美味しいと評判ですよ。」


まぁ、私は機会がなかったりなので一度も食べたことはないのですが、それでもニュースになるレベルには美味しい、、らしい。


 「運が良かったら街で買えるかもしれないしね。」


 「そうですね。」


 私たちはそんな賑やかな会話をしながら街へと歩んでいった、日の出を通り過ぎて、気づいていたらお昼時になっていた頃、私たちはようやく街へと辿り着いた。正直「この先に街がある」という自分の言った発言に嘘をつきたくなるくらいそこそこ遠かった、、


 「や、やっとついたー。」


 「案外遠かったな、、早く宿屋でも見つけて休憩するか、。」


 「ですね。」


そうして私たちは街の中に入っていったのですが、、正直この時点で気づくべきだったと私は思いました。なぜならその街は全く活気にあふれておらず、人の声の一つもしない。


もっと、いえば門番すらいなかった。


そう、静かすぎたのだ。その静けさはある種、人を魅了するかのような独特な静けさ、誰かが一度は望んだことのある静けさ、誰かが猫のようにいつのまにかのたれ死んでしまいそうな静けさだった。





 「、、誰も、いませんね。」


 「、、もしかして廃街だったり、。」


 「うぅん。もしそうだったら立ち入り禁止の看板なんかが入り口に立っていてもおかしくないよ、、」


お嬢様の言う通りだ。唐突に街が終わるだなんてことは無い、少なくとも廃街になるなら管轄の国による取り壊し役員などがいるはずだ、たとえそうじゃなくても、


 [シーン]


ここまで静かすぎるのはありえない、人の気配すらないなんてことは尚更。



 「プロイシーが管轄を怠っているとは思えませんね。」


私はちょうど立っていた木を手袋越しに少し触る。木から煙が出されているかのような、冷たい冷気が私の手を刺激する、暖かい雰囲気が周りを包んでいるはずなのに、どうしてこうしてこの木は冷たいのだろうか?。


 「、、街はプロイシーが管理してるってことか、。」


 「うん、ここら辺の区域ならもうプロイシーの王国範囲に入ってる。だから何も対処されずにこのまま放棄させられてるのは尚更変に思う。」


 海の中に国があると思われがちだが、正確にいえば海にあるのは城だ。プロイシーは海を中心に広がっているはいるが決して海だけがプロイシーの範囲じゃない、プロイシーは魚を特産品として売っている都合上やはり陸地のある場所も管轄に入れなければ売り上げもとい国としての拡大がうまくいかない。


そのため陸上にも範囲を拡大しつつある、プロイシーだが別に陸上生物を嫌っていたり、細かくいえば人を極端に嫌っているわけじゃないので『放棄』というのはかなりおかしい。特にここまでボロボロになるまで放っておくのは、、


 「プロイシーって、あんまり他種族に、、。」


 「寛容的ではないけど、流石に生き物としての感性はあるよ。ただ、陸地を嫌っているというか。」


 「というか?。」


 「嫌ってるわけではないんですよ、ただ陸の上で過ごせないので、その陸地に住んでいる人の気持ちがわからないという意味でいえば正解かもしれませんね。」


プロイシーにいるプレイヤーのコメントを見てみると、「マーメイド族マジで陸上舐めてやがる、ここまで民度っていうか、知識乏しいのかよ。それと牛肉食いてぇ、魚飽きた。」っと、同族であるマーメイド族のプレイヤーが愚痴っているのを見たことがある。


 「なるほど、見方、感性が違うって感じか。」


 「そんな感じ。」


 「では、話を戻すと、これからどうします。流石に休憩は出来なさそうな雰囲気ですし。」


この廃街に着いたはいいが、やることといっても特にはないの。休憩するも施設がまず運営しているのかすら怪しい、とうか多分していない、なぜなら人の気配がしないから。

宿屋などの施設はこの【SAMONN】において無人で経営はできない、詰まるところ「店主がいないんで、休めません」っと言ったところだ。


 「この不気味なところから早いとこは出た方がいいかもな。」


 「なんか呪われそうだし、、。」


お嬢様は苦笑いしながら紅月様の意見に賛成した。となると主人に従うのがメイドの役目というわけで、、


 「では、街の外で少し休憩したらプロイシーにこの件も共に持っていきましょう。流石にこのままにしておくにしては悪いですからね、、」


 「よーし、それじゃあ街を出よー!。」



 [数分後]



 「って、私が言ってから何分経ったっけ?。」


疲れたように椅子に座り、お嬢様は気力無しでそう言う。私は先ほどの時間と照らし合わしながらメニュー画面の時計を見た。


 「11分と、、31、32、33秒ですね。」


 「で、現状は?。」


 「街を出ていません。」


ちなみにこれは単に街の中が複雑で帰り道がわかりませんでした。というわけではなく。、、


 「、、呪われたね。」


 「呪われましたね。」


 「呪われちゃったかー。」


そう言う三銃士はほとんど諦めモード、というか呪われた体験がそれぞれ初めてだったと言うわけで、焦ることもなく、かといって落ち着いているわけでもなく、事はもうそれは本当に諦めモードだった。


『呪い』、それは一定条件下で起こる状態異常、だいたい、「なんか呪われてそうな場所だなぁ〜、」的な感性で察知できるレベルだ、上位の物になると(呪いが)誤魔化してきて、「なんか怪しそうだなー」てきな感性になるため、そこそこめんどくさい。



 「もー、めんどくさいぃ〜。どうして呪われるのー、私聖職者の職業取ってないからお祓い出来ないよー、、」


聖職者の職業をとっていれば、『浄化』というスキルが使えてある程度の呪いなどは楽に解除できる。そのためお嬢様は今悔やんでいる次第だ、、


 「、、つまりこの呪いは聖職者のスキルかなんかで解除できて、でもルルカは聖職者っていう職業をとってないと。」


 「あぅぅ。ごめん。」


 「でも、聖職者をとってなくても呪いは一応解除できますよ。気をつければわかることと言っても呪いはほとんど初見殺しのようなものなので、一応手順を追ってでも解除が可能です。」


 「でも、こういう系ってめんどくさいでしょ、ただただぐるぐるしせるやつなんて尚更。」


 お嬢様がため息をつきながら、腕を組む。

おっしゃる通りこういう系の呪いは仕組みは簡単なのですが、変に凝ったストーリーだったりめんどくさいお使いだったりする。なのでお嬢様は今すごいめんどくさそうな顔をしている、


 ちなみに他の呪いの種類だと、敵がいっぱい湧いてくる系、これよりもっと簡単の、特定のアイテムをおかないと先に進めない系、タイマン、時間制限以内での脱出、特定のスキル必須、鬼ごっこ、などがあります。


ちなみに今回のは分類上、謎解きになるため普段謎を解かないお嬢様に対するカウンターのような形なので、珍しくお悩みになっているということです。


 「これって、何がヒントとかあるのか?。」


 「いえ、ありませんよ。」


 「えぇ、めんどくっさ。」


 「ですよね、この街めんどくっさいですよねぇ。アハハ、ハ、ハァ、。」


全く笑えない現状に紅月様までもが頭をやられたご様子、それはそうだと言いたくなる私の心情、しかしながらこれが解決策に直結するわけでは全くない。普通ならば急いで行かないといけないところなのですが、


 (((【SAMONN】の難易度でこれかぁ。)))


【SAMONN】の難易度設定には一部のプレイヤーから不満が出るレベルで、なんというか凝っている。リアルを目指すという試みは大切なのですが、シナリオライターが何人いるのか?っというほどにこのゲームのストーリーはかなり凝っていて、謎解きに関しては重複された事例をいまだに見ないほど、しっかりと作られているものが多い、ネタバレ防止なのか、それとも難易度の引き上げなのか。


 (どちらにせよ、今私たちがここから抜け出せないことには、、。)


 「、、こんなことなら、たくさん敵が出てくるタイプの方が良かった〜。」


 「だな。」


 「え?。」


私は二人の言葉をそのまま流そうとしていましたが思わず、「え」っと口に出してしまいました。普通に素朴なっ疑問であり、普通に驚きの一言でした。


 「お二人とも、戦う方がいいのですか?。」


そのままの流れで私は二人に疑問を投げかける。ついでにこの時口調が少し柔らかくなっているのに気づき、どうしようかと一人で考えてしまった。


 「あいや、。なんというかなぁ〜、」


 「うん、〜。目に見えてわかるやつの方が。」


 『簡単だと思って。』


 「…そう、ですね。」


確かにそうだなと思いつつも、どこかその事実というか考え方を否定したくなった。バーサーカーとまでは言わないが、どことなくその言葉が暴力沙汰じみている雰囲気を人知れず、私が感じたからだ。


 「まぁ、今はそんなこと言っている場合じゃないし。進めるしかないか、」


 「うん、。」


そう言ってお二人とも顔を互いに見合わせ、やる気ない雰囲気のまま街を歩き始めた。私は切り替えの速さと、この先どうしようかと、お嬢様がだんだん紅月様に毒されている気がして、少し頭がいっぱいになった。





『topic』

状態異常:『呪い』について。


『呪い』には二種類あり、プレイヤーが付与するタイプの『呪い』。イベント系、自然発生系の『呪い』と二つある。


プレイヤーが付与する『呪い』は付与確率があるため完璧には付与できない。武器付与エンチャントによる追加効果:『呪い』も同様である。(オートマタは状態異常無効があるため付与不可)


自然発生系、イベント系の『呪い』は100%の付与確率があるため、状態異常無効、呪い無効、の効果を持つ種族、アイテムを装備していたとしても付与される。(オートマタも例外ではない。)解呪は可能であるが、永続的に付与され続けるものなので手っ取り早く効果範囲から抜け出すか、クエストクリアを目指した方が良い。


『プレイヤーが付与するタイプ』


『呪い』は、毎秒固定ダメージを与えるものや、一定の行動禁止や、スキル使用禁止、武器使用禁止、武装解除、盲目、等がある。


『イベント系』


座標ループ(呪いが付与される範囲内からの脱出不可)


呪霊戦(迫り来る呪霊を一定数倒す等の内容、『浄化』を使えば大抵すぐ終わる。)


お供え系(必要物を持っているか勿体無いかで難易度がだいぶ変わる。持っていたら取りに行くまで過程がなくなるので楽)


タイムラン(言わずと知れた制限時間以内に指定された座標へ行く、【SAMONN】の難易度なので他のゲームとは比にならないくらい難しい。)

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