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五十一話「サイモンに戻ってきました。」

前回のあらすじ


ゲレームを感情深く出た一向はサイモンへ向けて足並みを揃えていく。

 



 ──サイモン──




 「よーし、まずはサイモンに戻るよ。」


お嬢様はそう言うと手早く画面を開き、次に地図を開く。私も同じような手順を踏みサイモンを見つけるすぐさまワープしようと思いましたが、、


 「紅月様?大丈夫ですか?。」


 「ん?あー。」


その態度と手元を見て、私は助けが必要だということがわかった。確かに、このワープ機能は他のゲームにあるものとほとんど類似しているのでゲーム(場数)をこなしている人なら尚更簡単でしょうが、紅月様はゲームを基本的にやらない。


 「最初は、難しいですよね。」


そういいながら私は平然のように紅月様の画面を動かし、ワープ機能を準備段階へする。あとはボタンを押すだけの除隊までしたのでここまでくれば間違えることもないはず。


 「ありがとうウミさん。」


紅月様は少し苦笑いしながらそう返す。まるで自分の不甲斐なさを笑ってくれと言っているように見えてしまう。


 「いえいえ、最初は誰でも初心者ですから。」


私は一ミリもそんなことを思わないので紅月様にいつものような態度で返す。


 「。。むぅ。」


 「お嬢さま?」


 「、、なんでもない、行くよ。」


お嬢様の表情がどことなくよくない方向。具体的に言えばお嬢様が気に入らないことがあった時になる若干の不貞腐顔になってそう呟いていたので反応したところ、、。次の瞬間にはそっぽを向いて、


 [シュン]


特に何も残さず、ワープしていった。


 「何か悪いことしましたかね?。」


 「いや、少なくとも心当たりはないな。」


私の独り言に同感するように紅月様は言葉を挟んだ。そして二秒ほどの沈黙が私たちの周りに広がったので、お嬢様の反応を覚悟して『ワープ』のボタンを押した。


 [シュン]


 


 ──最初の町 サイモン──




再び目を開けた先に広がっていたのは懐かしい風景。いつものように広場は賑わっており、多くのプレイヤー、NPCがいるということがわかる、とにかく人口密度がすごい。渋谷のスクランブル交差点というものによく似ている、実際に私は言ったことないし加えてテレビでの情報だけれども、、その光景に似ていることは断言できる。


 「相変わらず賑わっていますね。」


紅月様は私の隣に居た。紅月様は私に対しては敬語を使うため、今の言葉は私に向けて放たれたものだということ気づき何か適当に話そうとするが、、泣かんか浮かばない。


 「とりあえず、ここから離れましょうか。」


そういい、わたしは思わず紅月様の手を引いて、近くのベンチまで誘導する。


 「ぁ。」


紅月様は状況が理解できないような垢抜けた声を少しだし、私に握られた手を離すようなつもりは一切なく、ついてきてくれた。


 ベンチに向かう途中私は何故か、自分が今やっている行動はとてつもなく、恥ずかしいことなのでは?っと思った。


 (私としては、他のプレイヤーがワープしてくることを警戒して掴んでしまったわけで、、。)


 心の中で言い訳を言って言い訳、いやせめて口に出すべきだろう、ともかくこれは言い訳だ。紅月様を誘導するなら普通に口頭でもいいだろう、いやしかし背後には【移転いてんの噴水】があったため、声が届きにくい可能性が、ってありません!。

【SAMONN】のゲームシステム上、声の方がよく通りますし、私たちの場合パーティーを組んでいるんでもっと聞こえます。証拠に先ほど紅月様の声は聞こえていたわけですし、。あれ?!なんで私…。


 「ウミさんちょっ、とまって。」


 「!、すみません!!。」


途切れて行く紅月様の声を聞いた私が振り返ると、紅月様は少しボロボロの状態になっていた。おそらく私が強引に引っ張っていったせいだろう。いくら気が動転していたとしてもこれは流石にひどい。


 「いやいや、あの場所にずっといたら俺たちは邪魔になっていたんですよね、それに結果的にベンチにも辿り着けましたし。」


紅月様はそう言いながら私は悪くないと言う、しかし私としては申し訳ないという気持ちが勝ってしまう、とゆうから入り込んできた市場には目を瞑っても瞑りきれないのである。


 「ですから、せめて。。。頭を上げてください何だか注目されている気がする。」


紅月様の言葉にまたもや自分がやっている気がつく、メイドとしての経験が私にそうさせたことは明確だが、仮にも公衆の面前で90度の拝礼をしてしまうとは、、。


 「はい、すっ、すみませんでした。」


私は焦っていたのでまたもや同じ過ちを繰り返そうとしていたが、


 「ハイストップもう頭下げないでください。」


紅月様がカタコトのように言いながら私の肩を掴み、会釈程度の礼に留まった。


 「とりあえず座りましょう、ね。」


そういい、少し投げやり感を出していた紅月様は私をベンチへと座らせる。


 「ぁ、はい。」


自分のすぐ後ろにベンチがあるとは思わなかったからか、もしくは肩に手を置いていた紅月様と目がジッと会ってしまったからか、私の思考はかなり制限されている気分になった。


 「、、落ち着きました。?」


肩にあった手が自然に離れるのを感じつつ、目の前で腰に手を当てた紅月様が私にそう言った。私は急に昔の体験をしているような感じに

なり、、さっきまでとは比べ物にならないくらい落ち着いた。


 「はい、、。」


それと同時に懺悔的な気持ちが湧き上がったが、。


 「なら良かった。」


紅月様のその言葉で湧き上がっていた気持ちは蒸発した。まるで全てわかっていて、全て理解した上で「なら良かった。」っと達観した態度で言っているような気がその時ばかりは感じざる終えなかった。


 「ルルカと連絡とってみますね。」


そう言い、紅月様は放心した私に背を向けいつのまにかに慣れた動きでお嬢様と連絡を取るために画面を操作していた。


 「はい、、。」


それに対して私はひどく落ち着いた頭で現状を理解しようとした、考えて消えた部分の思考を補填するかのように、、。


 「、。もしもしルルカ?今どこに…、。え?動けない。、わかったすぐ行く。」


 「ぁ、。」


通話を聞いた私は何かを言おうと、足に力を入れ、ベンチから立ちあがろうとするが、否定されたようにまた背中をベンチに当てていた。


 「すみませんウミさん、ちょっとルルカを迎えに行ってきます。」


次の瞬間には紅月様は走り出すことがわかっていた。なぜなら顔はどことなく少しの焦りを感じさせるような、状況把握ができないような、加えて言うなら、とても心配しているような、顔をしていたからだ。今すぐにでもかける気持ちを冷静に抑えて、私への連絡を怠らないところははたから見ても感心する。


ゆえに


 「あの!、私も行きます。」


自然と私は体が動いた、それは主人の危機である可能性があるから。、、それとも、ただ紅月様の行動に私が罪悪感を無神経に感じ取ってしまったからか、、。


 「、、わかりました。行こう、」


紅月様は立ち上がった私に少し驚きはしたが、決して目標を見失わないような態度を見せ、迷いなく人混みへ突っ切って行った。


私はその跡を辿り、追い抜けない背中をただ追って行った。



 しばらくして、紅月様が止まった。止まった周りを息を整えつつよく確認してみれば、人が円状になっていることがわかる。

そして自分たちもその輪の位置部分だということも、、。


 「紅月様?、、」


 『おい!』


私が紅月様に声をかけようとした瞬間、まるで自分にかけられているかのような声が円の中心からわかった。しかしその声はこの輪のどこにいる人たちにもかけられているわけではなく、真ん中にこの声の持ち主ともう1人いることがわかる。

もっとも、前は人だかりであり最前列にいる紅月様は状況を理解できるのがやっとということが声しか聞こえない私にはわかった。


 (まさか)


私は気を逸らせる。お嬢様と紅月様の先ほどの通話を耳にして、今パズルのピースが当てはまるかのように何かが確実にハマった感じが、今現実で怒った気がしたからだ。もっともそのピースははまってほしくなかった類のものだが…。


 『〜って言ってんだろ!』


奥の声から聞こえる声は断片的にすぎない、無論周りがうるさいことと、私の逸らせた考えが頭をぐるぐる周り感覚神経を鈍らせているからだ。


そして、気になる。紅月様は先ほどまで進んでいた勢いを殺してまで立ち止まった理由わけを、、。


どうして立ち止まっているのか?、もしかして私の考えとは違うのか?、。


どんどん遠くなる声をつかむような覚悟で耳を澄ませる。先ほど聞こえた声を頭の中でリピートさせ、雑音の中から適切な音を聞き分ける。


お嬢様の一瞬の行動を分ける、あの鬼ごっこと比べたらこのくらいやってできなくてはと、なぜか得意げになってしまう自分に少し自信を持った。


 『このっ!』


その声はまるで膠着していた前線に核を打ち込むかのような感情で投下された。我慢の限界っと言ったらいいだろう、そして人の限界とはそれ即ち、対話を拒み武力に走ることとなる。


私は詰まりに詰まった人の中を一瞬にして振り払いながら向かおうと体全体を動かした。先ほどまで不自由だった手足は目的を思い出したかのように、どこまでも自由に行動して、前へ進みだす。


しかし


 (足りない!)


人の壁は厚かった。それは目に見える物理的な理由とは程遠くして人とは珍しいものに惹かれ、それをずっと見ていたいという好奇心、それが私を大きく拒んだ。


目の前の暴力を見過ごせないっと、意気込んで行った私の固い『物』は、奇しくも薄い膜が集まった『物』に防がれてしまった。予想外ではあるが予想外ではなかった。もしかしたらこうなるのかもしれないと、思っていた自分がいるからだ…しかしだからと言って止まれない、っと思った心が今私の体を動かしている。


満員電車でどうしようもなく、降りられなかったことを体験したことがあるだろうか?。


今回はそれを2000倍にしたかのような悔しい気持ちが、放たれた核のの2秒後に背後から覆い尽くすように私を巻き込んだ。


 [バッ!!]



、そんな無力な私は届かないはずの思いを誰かに託せた気がした。もっともそれは、私よりも深い縁で、深い絆で、深い愛で結ばれた、者だ。


少なくとも埋もれる私はそう認知して理解している、心から。


 「おい、何してんだよ。」


人混みで引っかかっていた私の体が今さっき飛び出たスペースを埋める軌道を取った時、目の前では既に紅月様が飛び出ていた。


 「っ、お兄様!。」


予想通りに展開されていた構図に紅月様は手を出した余所者の腕をしっかりと掴んでいた。それは側から見ても窺えるほどに。


 「ぐぅっ、ぉッ?!」


余所者は紅月様に腕を掴まれて如何にもこうにも動けない状態のように見えた。その一瞬では、、


 (でも、そうじゃない。)


あれは体を動かそうとしていない。まるで一方的にその場から動かせなくさせられているような感じ、紅月様が関節を捻って体を動かせなくしているのではなく。


それは目だった。


紅月様の目は私が今まで見てきた中で一番に冷徹で、本来人には見せていないのではないのだろうか?、っと意識させるいや、意識せざる終えないほどに恐ろしかった。


光の反射か、紅月様の虹彩は紅く色づいているかのように見えた。それはあたかも名前と同じ『暁』色に。


 この場合、その『暁』色は「綺麗」と表現できない。正確には「とても恐ろしい」、まるで、、こんなことを言うのは失礼かもしれないが、、。


 (悪魔の瞳。)


私は本当に失礼ながらもそう思った。しかし事実として、その悪魔の瞳に見られているものはお嬢様に手を出そうとした不届者で、これから判決を下される哀れな者だと。


これが私や、お嬢様や、善の心を持つ者に、当てられないことを、失礼ながらも心からそう思った。


 『お兄様!、。』


その場に響き渡るかのようにお嬢様の声はよく聞こえた、私も、紅月様と例外ではなく。


 「!っ、ルルカ?。」


紅月様は掴んでいた腕を見てわかる通りにやわらげ、ルルカの方を向く。その時の目はいつもの目に戻っていた、無意識なのか、意図して切り替えているのか、その間や差を考えるだけで私は…。


 (怖い。)


 「私は大丈夫だから。」


 「…、、。」


お嬢様はその後には何も言わなかった。状況を理解できない余所者はその言葉をしっかり見て、聞いていた、しかし次の瞬間には紅月様が再度振り返り、先ほどと同様に鋭い目をしっかりと見せていた。

まるで「お前は聞くな、見るな、その下賎な目で」と紅月様が訴えかけているような気がした。なぜなら次の瞬間には余所者は「ぃっ。」っと言葉にできない恐怖を精一杯口で表現していたからである。


 「行け、。」


それだけ言うと紅月様は服が思いっきりシワになるほど力を入れていた腕を離した。余所者は、自分の恐怖を思い出してか、顔色を瞬間に悪くして情けなくその場の人をかき分けながら必死に逃げた。


 「お兄様、大丈夫?。」


 「…あぁ。」


紅月様は自分の口に軽く手を当て、俯きながら何かを考えるような動きを取った。


私はそのことについて考えはしたが…


 「お嬢様、紅月様、行きましょう。」


 「あ、うん。」


 「…。」


結局何も答えは得られず、2人を人集りから連れ出した。帰りは行きよりも楽で、人々は私たちに道を譲るように離れて行った。


『topic』


紅月の目の色はオートマタによる影響により変わるのではなく、元々そういう遺伝子的な話であるためである。光の移り方によって本来黒色であるはずの紅月の目の色は赤色として当たることがある。

ちなみに変異的なものであるため、遺伝もどこからかもらってきたなんてこともないらしい。


「別に目の色なんて、気にする連中はいないだろ。」

っとは紅月の談

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