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五十話「初期メンバー」

前回のあらすじ


回想

 



 ──ルカの家・ルカの部屋──




 [コンコン───ガチャ。]


 「お嬢様時間です。」


私は扉を二回叩き、扉を開ける。


 「あ、わかってるってば。」


お嬢様は一旦驚いた顔をしたが、次の瞬間には「そのくらいわかっている」っと言葉通りの顔になっていた。間髪入れずに扉を開けたのだからお嬢様が驚くのも無理はないなと無意識に感じた、


 「ウミも早く準備してね。」


 「、はい。」


私は落ち着いた声でお嬢様はそう言う、今日のどこか焦る気持ちが少し落ち着いた瞬間だった。




 ──【SAMONN】練鉱国ゲレーム・ゲレームMk~Ⅱ──




 「んー。たのしみぃ〜!。」


お嬢様は準備運動かのように体を伸ばしてながらそう言う、私はそれに対して特にコメントもせず、ただただ可愛らしいと思った。


 「紅月様と早速合流しましょうか、。」


思い出したかのようにフレンドリストを開き、紅月様のログインを確認し、私はお嬢様へそう言う。


 「うん、確か整備室にいるって聞いたよ。」


 「では、整備室に…。」


 ((整備室ってどこ?《でしょう》))


いつも紅月様が行ってらっしゃると言う情報以外聞かない私にとってこれは難題だった。お嬢様の常に先を見据えて行動する私にとっては中々の失態、まるで、、


 『やってみて考えよう』


などと、無計画な考え方をしてしまったと心底思った。


 「ウミしって…ないね。探しに行こっか、」


お嬢様は焦って顔に出ていたでしょう私の顔を少し覗き、そう言いながら提案してくる。

私はその誘いに申し訳なさを感じつつ、


 「はい。」


っと少し低く答えた。



ゲレーム内はいつも通り慌ただしい雰囲気を出しながら人々が交差してそれぞれの職務をこなしているのが見える。この間とまったく、というよりかはいつもと変わり映えしない風景に私は安心する、、。街は大変ではあったがだからと言って誰も士気を落とさず、それぞれ己ができることをやっている活気の良さに元気まで貰えてくる。そして、


 「、、。」


平常運転のお嬢様特有の人見知りが発動、空いていた私の手はいつのまにかお嬢様の片手で塞がれており、それに対して私は庇護欲が増した気がしたから。


※【ウミは庇護欲が上がった。】



 「誰かに聞こうにもこうも慌ただしいと、、。」


 「き、聞けないね。」


お嬢様様が少しばかり弱気になりながらそう答える。ここにいる人たちは全員何か役割があって慌ただしくしている人たち、私たちが今ここで声をかけるということはその人の仕事の妨げになるということ、私はお嬢様で慣れているので大丈夫ですが、ここの人達はそうではない。


 (せめて、地図くらいあればいいのですが。)


城下町の地図はもらったことがありましたが、この施設内部の地図はいまだにもらっていない。、、もしかしたら貰えない理由があるのかもしれませんが、。


 [ピロン]


 「あ、お兄様からのメッセージ。」


お嬢様はそう言うと、画面を片手で開き肝心のメッセージを読み始める。


 「『入り口で落ち合おう。』、、だって。」


 「紅月様。」


正直ホッとした、このまま合流が遅れたらどうしようかと思ってたところでこのメッセージはかなり嬉しい。というか紅月様、こちらが詰んでいるのをもしかして気づいてしまっての配慮なんでしょうか?


 (もしそうだったら恐れ入りますが、。)


毎回の如く見せられる紅月様の勘の鋭さ、お嬢様もそうですがどうやったらそんな精神が身につくのでしょうか?っと私は素朴な疑問として思った。


 「入り口なら、ここからの方が近いね。」


 「はい。ですので早速いきましょうか。」


そうして私とお嬢様は入り口に向かった。ちなみにここで言う入り口というのはゲレームの国としての入り口ではなく、施設内の入り口、いわばエレベーターだ。


仮にこれが国の入り口なら、今も人が溢れかえって大変なことになっているのが目に見える。

なので、この施設ゲレームでの合流のことを考えると、まるで幼き日に夢見た秘密基地での集合のような感じがして私は無意識に嬉しくなった。


施設内を歩いていると変に感情的になってきた、前のダンジョン探索に行く時では感じなかった気持ちだ。おそらく、施設内から出ることがなかった、いや、このゲレームから出ることが期間的になかったので、このような感情深いことになっているのだと私は思った。

無意識中にここがもう一つの家みたいな認識になっていたのだろう…。


 「あ、お兄様!」


私のそんな気持ちを知らずにお嬢様は無邪気にも視界に入った紅月様をみて先ほどまでの怯えた気配を完全に無くした。


切り替えが早いのか、単純なのか、。


 (どちらにせよ、可愛いんですけどね。)


もっともこれを本人には絶対に言うつもりはない、なぜなら、。なんか恥ずかしいから、、



 「それでは頼んじゃぞ。」


 「あぁ、最低限の働きと責任は請け負った。」


私たちがその場に着くと紅月様はエズ様と何かを話していたようだった、しかしひとたび私たちの姿を確認すると話を早めるようにちょうど終わらせた。


一体何を話していたのか気になると同時にそれは私たちに聞かせてもらえない者なのだろうか?っと素朴に思った。


 「お兄様ぁ〜。」


 「ルルカ、よくこれたな。」


お嬢様の自然な接し方に紅月様はいつも通りに接する。そして紅月様を見て私はこの前お嬢様と話したことを思い出した、しかしそんなことを言えなかった、なぜなら紅月様がそんなことを気にしているように見えなかったし、何よりいつもと変わらないようでどことなく違っている雰囲気にとても意識が向いてしまって…。


どうしようもなく、話題なんて忘れてしまったからだ。


 「もちろん!私だってしっかり成長しているもん。」


 「、そうだったな。」


一呼吸おいて、わかっていたような笑顔を見せる、正真正銘だ。


 (流石に何か挨拶をしないと。、)

 「紅月様、おはようございます。」



 「あぁ、ウミさんもおはよう。ルルカのことありがとうな。」


 「いえ、。」


…何か、。


 「お兄様、エズと何を話してたの?。」


お嬢様は頭に浮かんだ言葉をそのまま言ったかのようなそぶりを見せながらそう言う。


 「ん?あぁ、装備の話だよ海戦専用の装備をさっきもらったばっかりなんだ。」


 「ふふん、妾が作らなかったらお主はとっくに溺れておるからのぉ。感謝するが良い。」


エズ様は絶壁の胸を張りながらドヤ顔をする。

私はあらかじめエズ様へ相談して良かったと思いながらどんどん紅月様の装備を作る時間が短縮されているのに密かに驚いた。


 「そうだな、感謝してる。武装も申し分ないしな。」


紅月様は同じ顔をしながらエズにそう言う。それを聞いたエズ様はさらに胸を張る。


…、おいたわしや。


 「、、。お兄様なんか変わった?」


 「ん?そうか?。」


 「うん、なんと言うか…。ん?」


お嬢様は鋭そうな言葉を言ったが次の瞬間にはまるで自分でもわからないというような顔をした。私はお嬢様のその行動に同感した。


 「なんだ?」


 「、、。うぅん、やっぱりなんでもない。」


お嬢様の口から何か出てきそうな雰囲気だったが何も出なかった。お嬢様と同じように自分も紅月様がどこか違うところには気がついていた、しかしながら同じように口に出そうとして伝えようとするとそれはなんとも言えないような感じだった。


まるで『そこにある』のに、自分の経験からは『そこにはない』と真逆な診断をされているような感覚、普通ならスルーしてもなんら問題はないのにここだけは妙に気になり、まるで頭から曲が離れないような感覚に近い気がする。


 「そっか。」


紅月様は特に詮索する様子もなく、お嬢様にそう言い残す。


 「あー!そうだコレ。」


エズ様は懐から紙を出し、私たちの前に差し出す。


 「一応出しておいたから問題ないと思うんじゃが、まぁもしもの時のためのコピーじゃ。しっかり全員分の情報も書いてあるから、案ずるな、。」


 「ありがとうエズ。」


お嬢様は代表するかのように紙をエズから受け取り、そのまま持つ。


 「うぅむ。お主ら楽しんで行ってこい、」


エズ様はニコニコしながらそう言い、私たちを心よく通してくれた。


 「はーい。行ってきまーす、、。」


 「、うぅむ。行ってらっしゃいじゃ!!。」


一瞬戸惑ったエズ様の顔を最後に私たちは来たエレベーターへ乗り込む。エズ様は私たちが上へ上がる最後の瞬間まで、なんの曇りもない笑顔を見せ続けてくれた、、


 [グゥーン]


音を立てながらエレベーターは上へと上がって行く、エズ様の姿が下の方へと消えていく様を見ながら、心で区切りがついたような気がする。


 「感情深いですね。」


 「まぁそうだな。」


紅月様は自分の独り言に重ねて言うように言ってくれた。そんなはずないのにゲレームのあの施設に戻れないという気がたってしまう。

それほどまでにあそこには思い出があったと言う物だ、決していつも通り落ち着ける場所ではなくても…。


 「もー。何言ってんの?」


お嬢様が雰囲気を壊すかのような口ぶりで私たちにそう言ってくる。私たちはその言葉に疑問と驚きを隠しながら振り向く。


 「その気になったらいつでも帰って来れるんだから、それに今生の別れってわけでもないでしょ?。」



お嬢様の言葉はただただまっすぐに私たちの胸を通した感じがした。世界は互いに遠慮がちになることが多いが、まるでそれはそれ、これはこれ、っといった風に物事をしっかりわけて話しているような感じがし、私は「あ、ここにいてもいいのか」っという風に心から思った。


それと同時にお嬢様のこういう点はずっと生き続けてほしいと思った。(ただの天然であっても。)


 「、、。そうだな、土産話の一つでも持って帰ってやろう。」


 「うん!。」


…。


 [ピンポーン]


突然なった高級なチャイム音はエレベーターが着いた証だった。次の瞬間には眩い光がドアから溢れ、エレベーター内を照らした。


私は思わず手を出し、明るすぎる世界を一旦隠した。


地下にいることが長かったせいか、現在の明確な時間感覚というのがわからなかったが、、この光によって一瞬で理解した気がした。


 「眩しー。」


 「日の出か、?」


 「眩しいわけですね。」


街中をすり抜けてエレベーターへ一直線、壁から出てくる太陽はまるで日の出を表しているかのようだった。もっとも壁がある影響で日はとっくに出ているわけでコレは日の出ではないのだが、、それでもゲレームに住む人々にはこれが日の出であることは変わりない。


ちょっと遅れた1日のスタート、電子的な画面に表示される時計とはまた全然違った、ここに住む人たち限定での朝。


それを直に感じ取った気がした。


 「とりあえず、日陰に。」


それはそれとして、眩しいことに変わりはないので私たちは近くの建物の影は逃げ込むように移った。


 「さて、これからどうするんだ?先に言っておくけど俺はルート管理なんてものはできないからな。」


紅月様が早くも丸投げ。ゲームに詳しくないとは言え、これには流石に私も苦笑いせざるおえなかった。


 「もー、私はしっかり調べてきたよ。」


まるでだらしない弟を管理している姉かのように振る舞いながらお嬢様はデータを二つこちらに渡してきた。現実とゲームでは紅月様とお嬢様はまるで正反対の立ち位置、それにどこか新鮮味を覚える今日この頃、、。


 「まず、ゲレームを出た後ワープして最初の町サイモンに戻って、そこからプロイシーに行くよ。ちなみに交通手段は馬車とかでもいいけど、プロイシーまで街がいっぱいあるから今回は徒歩で行くことにするよ。」


 「街がいっぱいあると、馬車でどうなるんだ?。」


紅月様が唐突に手を挙げて私たちに質問してくる。そしてアンサーとしては、、


 「、、そうですね。常に各駅停車する電車といえばわかりやすいでしょうか?。」


 「あー。(察し)」


 「そう、だから案外歩いても変わらないから歩きで行くよ。到着までかかる時間としてはゲーム内時間で1週間、リアルタイムで大体3日くらい。」


 「あー。、、そんなにっ?!」


 「うん。」


紅月様は慣れていないのか、とても驚いたような顔を見せた。私たちからしたら街の外に出て冒険するのも数時間かかることが当たり前であり、最初の頃こそ紅月様のようにしていた頃がありましたが、今ではもうすっかりこの仕様に落ち着いている自分がいる。


おかげで、現実とのずれがそんなになくて助かってますが、、。


 「まぁ、誰しもぶつかる難関ということで。」


 「今週は結構暇なんでしょお兄様?、もちろんしっかり付き合ってくれるよね?。」


 「あ、あぁ。二言なし。」


たまに出るお嬢様のこの切り替えというか、鋭さというか、なんというか、。それは一体どこからきているのやら、私は変に成長しないか心配ですお嬢様。


 「よし、じゃあそれで行こう。」


お嬢様は言質を勝ち取ったが如く、握り拳をグッと締め、ガッツポーズ。やる人が違うだけでなぜか可愛く見えてしまう、不思議な現象だなと私は思いました。


 「とりあえず、ゲレームから出なければですね。」


 「あぁ、気になっていたんだがゲレームでワープ使ってもいいんじゃないのか?。」


紅月様が進もうとする足をゆっくりにしながら私たちへと質問する。私たちはその行動に導かれるまま無意識に足を動かし、ゲレームの入国所の方まで歩いて行く。


 「お兄様、マナー違反だよ。」


 「え、なんで?。」


紅月様は何も知らないようで、そのような態度を取る。

国からワープを使った出国はこの【SAMONN】内においてはマナー違反になる。

それは何故かというと


 「たとえば、悪い人たちが国を簡単に渡るためにそのワープを使い続けたどうなると思う?」


 「、、犯罪し放題か?」


 「うん、そんな感じ。だから国中でワープを無断で使ったらマナー違反なの、下手したら指名手配だってつけられるし、、。」


 「そんなに?!」


 「ちょっと前までそれで好き放題していた方々がいたので、最近では警備体制が固くなっているんです。ゲレームのように毎回入国に審査を使う国なら尚更で、、。」



ゲレームはオートマタの入国についてはかなり寛容ですが、、その他の種族に対しては少し厳しい。毎回入国するのに審査が通るのはエズ様のオートマタに対する愛なのでしょう、、それゆえに。。。



 「、、なるほどな。確かに軽率けいそつすぎたかもな。」


 「特にゲレームとか入国が厳しい国は尚更気をつけないとねお兄様。魔法国なんかはオートマタ入国禁止だし、。」


 「禁止って、ゲレームよりやばくないか?。」


 「一応、形状的には多民族国家として成り立っているのですが、おそらくソリが極端に悪いのでしょう。魔法を使えない、という意味でも。」


まぁ、正直この理屈は理に叶っていますが酷いと思いますが…。


 「、、。嫌なところだな魔法国、、少なくともオートマタにとって。」


 「でも、今回行くプロイシーは誰でもオッケーだよ。、、基本的にはだけど。」


お嬢様が曇らせながらそう言う。


 「基本的ってのは?」


 「うーん、来てはいいけどそこまで寛容的じゃないよって感じ、」


 「なんじゃそりゃ。」


そういう反応になることもまぁ当然ですねっと言った感じ、何故ならプロイシーは入国自体には制限はないものの、他の種族を好きでも嫌いでもないと言ったところ。いわゆる中立を維持し続ける国。


 「うーんここら辺は言ったほうがわかるかも。」


 「なるほどな。」


私たちはそんな会話を交わしているうちに、いつの間にか入国所にたどり着いていた。来た時と同様に大勢の人が門の前に集まっており、身分証確認を厳重に取り締まっているのがわかる。


 「いつもこうなのかな?」


お嬢様は門番の人に私たちの身分証を渡し、そう言った。


 「さあ?、イベントの一つでも催すんじゃないか?」


紅月様は軽くそういい、集まっている人たちを目で追いながらそう話す。


 「、、商人が多いですね。」


紅月様が向いている方向を真似るように向いてよくみてみると、大きなバックを持ち、さまざまな道具を持っていたり、どことなく旅の者ではないような服装をしていることからそのことがわかる。商人が来る理由は魔物のドロップ品を流通させたりや、鉱石を売るなどさまざまだが、。ここまで多いと逆に気になってしまうほどだ、ぱっと見全体の半分くらいいる気がする。そしてほとんどがオートマタではない、、。


このことから、ここにきたのは『オートマタを連れてでも手に入れたいものがあるから』という理由付けが必然的にできる。


 「、、まさか。」


 「?。」


紅月様?。


 「ありがとうございます。、2人とも手続き済んだよって、どうしたの?。」


 「あぁ、なんでもない。それじゃあ行こうか、」


 「はい、」


私は紅月様が気にしていたことに口を出そうとしたが、結局うまくいなされたみたいに話す機会はなかった。後でお嬢様に相談してもいいかもしれない、この間の街の件も含めて。


私たちの旅はまだ始まったばかりで、これからも機会が絶対にある、その間で私は…、。


この2人の進む道を、間違えないように、。



『topic』


ゲレームの列車は優秀だが繋がっている場所が極端に少ない。現状バスク砂漠中継オアシスキャンプ、鍛造国ヴァーバリフの二つしか繋がっていない。

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