四十八話「叩きつけられた責任」
前回のあらすじ
鉄血の死神がレギオンを殲滅し、国には平和が訪れる。そしてこれはその平和を中間的に表した話である。
──練鉱国ゲレーム城内・とある一室──
レギオンがゲレームに襲撃、【SAMONN】時間にして1日後。城下町の半分はレギオンによって大打撃を受けた、残りの半分はかろうじて無事ではあるが、一目見て復興が必要だと言うことがよくわかる惨状だ、
技術革新が進むにつれ、ゲレームの国内発展水準は上がってきていた。しかしながら今回の襲撃によって新しく建てられた、施設、設備、取り組みなどは面影をかろうじて残すばかりで崩壊の一途辿っていることに違いは無い。
戦闘部隊はゲレームに潜むレギオンを1匹残らず殲滅を果たせたわけだが、警戒態勢が解けたわけではない。襲撃が頻繁に行われる可能性を危惧してか、女王エズはシェルターでの生活を国民に推奨している、また建築技術があるものは擬似的にではあるが城下町の復興に勤しむことができる。
今回の襲撃により、レギオンの新種がいくつか発見できた。新型パルス波レーダーによる観測が不可能なステルス型レギオン、能力から推測するに光学迷彩をさらに強化した様な固有能力、集団隊で行動し確実に1を仕留める、など軍隊レベルで行動するレギオンが本物の軍隊に見えてもおかしく無くなってきた。
今回の襲撃において、先述したステルスレギオンは地面を通って国内に侵入をし、城下町に多大な損害をもたらしたわけだが、。この場合ステルスレギオンにトンネル開通能力があると見るべきなのか、それとも別の工作型レギオンが存在すると見るべきだろうか?。工作型レギオンの存在は戦術指揮者の大半が存在すると答える一方で現時点でその存在をハッキリと確認できていない。指揮者が言うのだからそうであろう、っと複数人の意見で賛成するにはこの話は重すぎるため、一時的に保留提案となった。
しかしながら私見として、工作型レギオンが存在した場合、今まで以上に警戒態勢や、警備システムの見直しを行う他ない。それこそ潜伏していた敵兵がテロを起こす様なものだ。
指揮型レギオン不在状態でステルスレギオンが行動できるのか?、はたまた指揮型レギオンが強化されたのか、いずれにせよ重々秘匿情報とするほかない。戦術指揮者の大半には今回の襲撃に関するまとめを近日中に提出する予定なため、あとは彼らの腕の見せ所といった感じだ。
今回の襲撃について、規模で言えば大きい方であったからか、専門的な技術力がなくとも今回の復興に協力することは不可能では無い。ゲレームが今求めているのは国民の平和、それと人手である、、
意外にも今回の件で他国へ移住する国民は少なくなかった。オートマタはここ以外に身寄りがないと思われるが、人は違う。
いくら物資関連云々があったとしても、長居する理由にはならない。人としての矜持なのか、それとももっと深い理由があるのか、どちらにせよ復興に手を貸しているので文句があるわけではない。
今回の被害総額の請求、また国民への配布金(復興、または慰謝料を含む)は全て女王エズのポケットマネーから支払われる。本来ならば技術革新のための経費として使われる予定ではあったものの、ここで払わなければ国をまとめるものとしての威厳も支持も得られない。
(もっとも本人はこの事実があまり好きではなく、喜んで支払うと言うかなり頭のおかしいやつなのだが。)
今回の襲撃で、亡くなったオートマタもいる。戦闘部隊からは3名、国民、住民からは9名という結果だ。
どちらもレギオンの戦力差によって生じた犠牲であり、女王エズはこのことを国民の前で声明すると同時に今後起きない様に対策を全面的に発表する予定だ。
どんなに被害が最小であっても、それは守れたという言葉にならない、女王エズは国民を常に我が子の様に思っており、そのすべての責任を背負うと決めた人の上に立つものである。
己に厳しいのか、はたまた国民をある種で信用していないのか、どちらにせよ他国と比べても最高値の支持率を獲得していることに変わりはない。
本件において大きな活躍をした二名。
紅月、レナの二方は女王エズから直々に報酬を受け取るように王名が出されている。
ちなみにその雰囲気たるや、穏やかではない。
以上。
練鉱国ゲレーム宰相 国政日記
「ハァ〜。」
わたしは書き終わった日課の日記をやっつけの様に机の引き出しへ入れる。別に怒っているわけではない、ただこれから先の事後処理に少し頭が汚染される様な気がしてたまらないからだ。
「、。」
両腕を机に置き顔を埋める。机に置かれた真っ暗な部屋を照らす赤茶色のランプをじっと見る。休暇で旅していた時に見た夜のランプもこの様な温かみを持っていた。
(でも、残念なことにこれは電気。)
手が少しランプのガラスに触れる時、一瞬であったが冷たいことがわかった。次休暇に出られる日が待ち遠しいと思いつつわたしはランプをスイッチ一つで消した。
窓から射す月明かりのみになった部屋を少しばかり寂しく思いながら、わたしはベットに横になる。明日からまた仕事ダァ〜っと弱音を吐く気分にはなれない、そんな風に思うのであれば寝る時間が遅くなり、結果として明日の自分の首を絞める羽目になる気がしたから。
ゆっくりと目を瞑り、静かなため息を吐く。
(明日はなんだか仕事で憂鬱だ。)
『翌日』
わたしはベットから起き上がり時間を確認する、昨日の寒い夜とは一線違う暑い朝、第二の故郷であっても休暇で味わった地ほど快適ではない。
寝ぼけながらもクローゼットを開け、並ぶ仕事着を見る。ハンガーに無数に並んであった仕事着は残り一つとなっていてハンガーが服より多いことになぜだか寂しさを感じる。
「ハァ〜」
っとため息を吐きながらカゴに溜まってある詰め込まれ、シワになっているであろう黒のスーツを見る。体全身の鈍った感覚に付け入るかの様にそのなんとも言えない重しはわたしにのしかかった。
遠ざけたい現実を思いながら、わたしは真っ黒なスーツの仕事着に着替える。
(、、今日も小さいな。)
鏡の前に立ち見た目を気にするわたし。もちろん二重の意味でだ、スーツを着たわたしはこのゲレームの一職員である。それを認識すると同時に自分の背が小さいという些細な悩みも認識してしまう。
コンプレックスというほどでもないが、なんとかしたいと考える今日この頃、第一伸びるのだろうか?。
「って、考えている暇ないよね。」
カチカチなる時計に意識を向け見る。1秒1秒ずつ近づいてくる仕事の時間、本腰入れようと洗面台へ向かう。
(これ普通じゃないんだっけ?。)
[ジャー]
蛇口を捻り、顔拭きタオルをよく水で濡らし、絞る。なぜだか普通の人は顔を洗ってから着替えるらしいがわたしは逆だ、なぜかと言われたら。まぁ、仕事の気合いを先に入れて、1日のスタートを後に置く、っという感じが個人的に好きなのかな?となる。
「ふぅ。」
顔拭きタオルをバサバサとし、干す。鏡をもう一度確認しながらわたしは髪を整える、
「この癖毛、いつも治らない。」
変にピョンっと立っている癖毛はいつもなかなか治らない、なんならお風呂に入っている時でも跳ねている気がする。しかしわたしにこの癖毛と対峙している時間はほとんどない、エズ様が仕事を開始する前にわたしはいち早く行かなくてはならないのだ。
理由はすぐわかる。
昨日しっかりまとめておいた書類をビジネスバックに入れて、わたしは部屋ならぬ自室を出る。
[カチ]
オートロックの音を確認したら、若干の早歩きで急いで執務室へ向かう。道中に気配はない、日はまだ出たばっかりだ普通の人からこの時間は後5分、後5分と唸っている頃だろう、しかしわたしにその様な時間はない。
一分一秒でも早く、執務室へと入り。
──練鉱国ゲレーム城内・執務室──
[ガチャ、バタン]
「、、。」
汚部屋を片付けなくてはいけないからだ。
なぜ汚部屋なのか?、もちろんエズ様のせいだ、あの人はまとめるものはしっかりまとめられることができるのにも関わらず、面倒臭いという理由でそれをやらない。後で誰が困るか目に見えてわかることであろうと、、そのためわたしがいち早く来てやるべきことといえば、この部屋の床に無数に散らばる書類の整理だ。
「これ、。」
すぐに目についた書類を拾い上げ、静かに驚いた。地下施設の総決算書だ、これがないと財務部が頭を壊しかねない代物、地下施設に使っている費用は全てエズ様のポケットマネーで支払われる。そのためエズ様に請求する用の書類が必要なのだ、もっともそれを統括をするのもエズ様のだ。手抜きを目撃したことはないが、、大事な書類をこんなところにほっぽり出すのは流石に容認しがたい。
「、、。」
エズ様が戻ってきたらまず一言言いたい。そう思いながら他にも散らばっている書類を、怒りを溜めながら拾う。そして後でしっかりと休暇を取る申請を出す…かなり充実していた休暇だったが、さらに欲しくなった。
わたしはそんなことを思いながら手をササっと動かす。時間が経てば経つほど綺麗になっていく床を見ていると、なんかこうやり遂げたって感じがしてくる。
「よし、これで最後。」
最後の一枚を拾い上げ、机の上に展開された書類の山にそっと乗せる。気分的にはトランプタワーを作っている時になんか似ている、もっとも崩れたらトランプどうこうの話ではなく普通に大変になってしまうのがとても辛いけど。
「、あと15分。」
自然と腕時計を確認し、そう呟く。時間はこまめに確認しておかなければ後で大変になると経験からわかってくるからだ、主にこの習慣が身についたのはエズ様との仕事においてスケジュール管理がとても難しいからであることはもう明確だ。
あの人は常日頃忙しそうに…いや、違うか。正確には忙しくならないはずなのに、忙しくなっている。うん、こっちがしっくりくる。
っていうのも、エズ様は変なところで時間を使ってしまう、この前なんて新しい道具のアイディアが浮かんだとかなんとかですぐに地下施設にこもって行った。その間仕事を担当していたのはもちろんわたしだ、、他にも城下町にできた新しいケーキ屋さんに行ってくるとか、ちょっとリフレッシュに公園で子供と戯れてくるとか、挙げ句の果てには運動不足だから、ゲレームの城壁周りを5周してくるとか…。
最後のに関しては意味がわからない。エズ様はオートマタであり太ることはない、それに加えて耐熱仕様をつけずに行ったオートマタがどうなるか、分かった上で、、。、焼けた鉄板のように運ばれたその姿はおいたわしやと言う以外に言葉が見つからなかった。
、こういった破天荒な性格のせいで、わたしの仕事は増える一方。補佐的な役割からもはやわたしが内政のほとんど、いや全てを行なっているといっても過言ではないはず、、少し休暇に出て帰ってきたら、部屋がとんでもなくなっていたなんて珍しくない。
他の人に頼めば良いのにとか言うと、「主の整頓中に慣れてしまって〜。」とか変なこと言うし。
「ハァ〜。」
またため息が出てしまう。どうしてこうしてあの人は、、。っと心に溜まってある思いを全部この場にとにかくぶちまけたい、けど。
(あれでも、しっかりやっている時はしっかりやっているんだよねー。)
本当に仕事をやっている時は人が変わっているかのような態度になる。いつもより作業スピードが格段に速くなるし、もっといえば見直しが不必要なくらい正確に行える。
(でも、なんで本気出さないんだろう。)
「疲れちゃうからー。」とか言うと理由はわたしが言いたい、少なくとも国民を思いやれるなら部下も思いやって欲しいものだ。地下施設のスタッフさんも毎度行くたびに慌ただしくて忙しそうにしている。
エズ様の愚痴も聞こうと思えば聞こえなくもないが、
(それでもついていく、、か。)
この気持ちだけはどうしてもわかる。側から見ればこんなブラック企業、やめて仕舞えば良いと思うが、ここで働いている人は自分から辞めたいだなんて言ったことは無い。つまるところ、退職率は0%、どのスタッフからも信頼はもらえているし、本人が決して悪いと言うわけでは…無いかも知れない、または無いと願いたい。
兎にも角にも、こちらの言い分は仕事をしてほしぃ、ただこれだけだ。
ガチャ
「おはよう、なのじゃ。」
「おはようございますエズ様、今日は意外と早いですね。」
「む、うぅむ。」
目を半開きにさせながらなんとなくの返事でエズ様は答える。服の着こなし、髪の毛のおさまり具合は普通であるが、それと対照的になるかのように顔はすごく眠そうだ。
「昨日は何時まで起きてたんですか?。」
「う?、うぅむ。…あ、45分じゃな。」
腕時計型睡眠装置をカチカチと動かしながらエズ様は眠たそうな顔で椅子に座って言った。
(いつに寝たのか聞いているのに、回答が45分…。)
どうやら判断能力も低下していることがわかる、これではまるで仕事にならない。
「まぁ、いけるじゃろオートマタは基本的に休まず働ける。環境がよければじゃがな、、」
「環境がよければじゃがな、っじゃありません。オートマタであっても精神的に不調は改善できないのですよ、そのせいで作業効率が悪くなくなったら、、。」
「うぅむ、ナイス回答。これがテストなら百点満点じゃな。うはははは、、」
眠そうな顔でそんなこと言われたってあまり嬉しくは無い、というより。
「そんなこと言っている暇があるなら少しでも寝てください。」
「ムゥ、頑固じゃな。それなら仕方ない、、」
そういいながらエズ様は椅子から降りてソファーに向かって行った。わたしはこれで一安心できると個人的には確信している、、確かに仕事をやって欲しいのは確かだか別に精神を壊してまでやって欲しいだなんてことは無い。逆にそれでマイナスに働くなら尚更だ。
「こちらに来い。」
「は、はい?。」
エズ様はソファー寝っ転がった状態で来い来いっと手を振ってこちらに誘導してくる。何が目的かはわからないがわたしは特に考えず、言われた通りに向かう。
「膝枕をせい。」
「、、は。」
やばい、思わず心の声が。ってどうでもよくてわざわざわたしを呼んだ理由が膝枕、いや確かにソファーで寝るのはあまり感心できない行為であることは重々承知のつもりであったけど、まさか膝枕、、。
「なんじゃあぁ、妾は今疲れておるんじゃそんな妾を少し労ってほしいのぉ……ゆえに!膝枕を要求する。」
エズ様がドヤ顔を決めながらわたしに言う、こんな状況なのに、よくもまぁそんなことができるなっとわたしは正直なところ思ってしまった。もしかしてこの人は最初からこれが目的だったんじゃないだあろうかと思えてくるくらいの話の流れだった。そこまで想定していないいないことを祈りながら。
「、、もしかして疲れてません?。」
「うぅむ、だからそう言っておるじゃろ。」
しかし、顔は誤魔化せない。今にも寝落ちしそうな目の細さ(1ミリくらい)をしており、表面上は心配したくなるが、どうしてこうしてか今の一連の流れでなぜだか疲れているとは思えなくなってきた。
「、、どっちですか。」
挙げ句の果てには疲れたのーっと言っていたはずなのに、疲れてないと遠回しに言う。天邪鬼なのか、こちらを弄んでいるのか、それとも本当に眠くて判断能力が仕事していなくておかしなことを言っているのか、それともただの強がりなのか、前者はただの悪戯。後者はもはや酔っ払い。(エズ様がお酒を飲んだところ見たことないけど。)
「うぅむ、、だから、、。」
「、エズ様。」
「ZZZZZZZZ。」
あ、後者でしたか。とわたしは何よりも先に思った。どうやら眠気に耐えられなくて眠ってしまったようだ、エズ様の態度的に変なところで強気に出てしまったり、変なところで間違っていたり、ミスをしたり、いわば掴みようのない人といった感じの人だ。そこが民に好かれている点でもあり、好かれやすい点だと言うことはわかっているが。
(今回のような感じはどうにも読めない、。)
わたし一個人的にはそう思ってしまう。
「さて、」
エズ様は寝てしまったので、現在進行形で仕事は遅れに遅れている。その分を誰が取り戻すのかというともちろんわたし。
わたしはエズ様が寝ている向かい側のソファーに座り、机の上に溜まっていた髪を少しずつ取りながら仕事を進めていった。本人の確認証が必要な場合はエズ様が直々に確認を取らなければいけないので、それ専用に分けておく。わたしが担当するのはその過程か、もしくは確認証を使わないタイプの書類。
わたしの立場はいわば国でのナンバー2、なので仕事の大半以上を個人的に担当することができる。本人の確認証が必要でなければほとんどがわたしに回されるのが鉄板だが、エズ様はよっぽどの忙しい時期じゃないとそんなことをしない、確かにいつも12割分の仕事を回されているが、本来の宰相であれば15か、17割くらい回されても文句は言えない。
そのことを鑑みると自分の職場がいかにホワイトかわかる。残業代はもちろん出るし、残業した分だけ休暇の時間が伸びるといった待遇具合、しかしながらわたしはこの待遇を満足に受け取ってはいるものの、仕事をしないエズ様を許せる理由にはならない、確かに本来ふっかけられてもおかしくない仕事量を抑えてくれていることには感謝しているが、それ以前に多分仕事をしない人が個人的に嫌いなのだと思う。
地下施設で働いている人はみんな全力だ、しかしそこに厄災が如く現れ、自分で回らない仕事を押し付けるエズ様はもはや残業量産マシーンだろう。
『まあ、我々も楽しいですから。』
、、一種の信仰的意図を感じるレベルに、この目の前で寝ているオートマタ・エズは慕われている。もちろんわたしも上司部下の関係である以上、逆らいわしないし嫌いだとも思ったことはない。ただわたしが言いたいのは…
「んむぅ。」
「起きましたね、仕事してくださいエズ様。」
彼女にただただ仕事をして欲しいのだ。
「うむぅ、デスクワークは疲れるのぉ。」
エズ様が起きてからしばらく経ち、本人は執務室に座りながら肩を回している。一方わたしはノンストップだ。しかしながら仕事スピードで言えばわたしより早い、生まれ持った技術的なスピードなのか、それとも何かのオプションを積んでいるのか。どちらにせよ羨ましいことに違いはない。
[トン、トン]
「これもお願いします。」
「うぅむ。」
まだ手をつけていない書類を持ってわたしはまたソファーに座る。そして、書類を上から順番に手を取り、目を通していく。
「お主は働き者じゃのう、。」
「そうですか?。」
話している間も、時間は無駄にできない休暇のために一刻も早くわたしは仕事を終わらせる。
「人間であれば、この国に留まっている理由はないじゃろうに。。」
「、人それぞれですよそれは。」
「まぁそうじゃなぁ〜。」
髪を捲る音が大きく聞こえる中、わたしはエズ様と仕事をしながら会話をする。前まではこの脳の分割になれなかったが、経験を積めば誰でもできるのだなと正直に思う。
「あ、今日は来客が来るぞ『知ってます。』」
「お二人でしょう?」
「うぅむ。やはり知っておったかー」
「、エズ様こそ、よくご存知なのでは?。」
「、くれぐれも取り乱さぬようにな。」
「こちらのセリフです、ご友人だからといって抜かないでくださいね、責任。」
「…。」
わたしの言葉にエズ様は考えるように黙った。次にエズ様が紙を捲る音はいつも聞いている音とどこか違った、それほどまでに紅月さんが特別なのか、っとわたしは思ってしまう。もちろんもう片方の、、レナさんも今回の一件で優秀の活躍を見せてくれたことは知っているしかし。
[ポン!]
…。ふぅ、っとため息をつき束になった書類の形を整える
「もしかして怒っておるか?、妾が仕事押し付けてこと?」
「いえ、少し考えることがありまして。」
「…聞かない方が良いか?」
「はい。」
人は一定の期間離れていると、次会った時の変化にとても驚く。夏休み前は普通だった友人が、夏休みを後にはすごいことになっている、今回はそれと同じような感じだ、、『鉄血の死神』、言葉だけで聞けばそれは恐れ多くも誇らしい名前なのかも知れない、自分の実力を表すにまさに二つ名はとてもふさわしい。
しかしわたしは紅月さんがそういう感じの人とは思えない、彼は至って普通の妹と一緒に生きている人、確かに戦闘で無類の強さを誇っているのは確かだし、それが恐れられる理由にもなることは仕方ない。が、問題はそれに何も反応を示していないこと、実際に公表しているのかも知れないが、彼が自分から言ったという話を一切聞かないところを見るに不本意というニュアンスが大きいのだろうか……しかしながら黙っていたとしてもそれは黙認と捉えられがちだ、本人がそれに対しても何も言わないのであれば尚更。
もしかしたら、わたしが会っていた頃は氷山の一角で、本当はとても怖い人なのかも知れない。それを考えるとレナさんがとても、、怖く思えてくる。
「、今回は少し事情を聞くだけじゃ、そのあとはお茶会でもしよう。」
「…仕事がしっかり終わればの話ですよ。」
「うへぇ、手厳しい。」
エズ様の気遣いには、本当に骨が折れる。わたしは悪く無い気分で仕事を続けながらそう感じた。
「まさか終わるなんて、」
私がそう口に出すのも無理はない、いつも嫌じゃー嫌じゃーと言いながら全くもって進まず私も残業することが日常的となっているこの書類仕事がこんなに早く終わるとは思わなかった。
(いつもこのくらいの速さで終わってくれれば楽なんですが…)
「いやぁ、妾もびっくり。さて、なにぶん頃合いよく終わってよかったの…」
エズ様がそう言う通り、あと数分後には面会が始まる。今日は変なところで几帳面だ、確かにどうでもああ会議ではないことだし、仕事が早く進むのも納得する理由ではある、しつこく言うがもう少しいつもこのくらい早く終わらせてくれればと思う。
そして私は休憩がてら部屋の中にある時計を見る。
スケジュール管理は宰相の仕事だ、この時計も正直見慣れて入るが…今日はその見慣れ時計ですら変に新しみを感じてしまう。簡単に言えば落ち着かないのだ、
(なぜだろう、この時をある意味待ち望んでいたのに、、。)
わたしの心の中には不安しか残っていなかった。もし、もしという可能性を無限に頭で考えてしまう、時計の針が一つ動くごとにわたしの心はガタンっと揺れ動いていく感じがする。
まるでそれは死へのカウントダウン?いや違うどちらかといえば終わりのカウントダウン、なにの?なんの?誰の?。
頭の中の不安が妄想を作っていく、。
「これ、しっかりせい。変なこと考える前にまず目の前のこと…もうすぐくるからシャキっとせい、シャキっと。」
「。はい」
エズ様はわたしな心を読めるエスパーのようだ、もしくは顔に出ていたことをある程度読み取っただけなのかもしれないが、この優しさだけでもわたしがリラックスするには十分。
そうだ、いくらどんな人と会おうとわたしがすることは、この方の補佐なのだから、、あまり気張っていても仕方がない。
肩の力を抜いて、ただただまっすぐ、この人の相方です。っと見せれば良いのだ…
いつも通り、なんの狂いもなく、、。
「よし、その顔じゃ。抱え込んでおるのは感心しないが、お主はただいつも通りにすれば良い、いや、しろ!。さすれば勝手に話は終わっておる。」
「、、はい、できる限り。」
[コンコン。]
扉をノックする音が聞こえる、本来の時間より5分ほど早い、恐らく何かをわけに早くきたのだろう。…落ち着け、。
「うぅむ!はいれ。」
[ガチャ バタン]
部屋には紅月さん、そして生のレナさんが入ってきた。紅月さんは丁寧に扉を開け閉めし、その間にレナさんが入ってくる形だった、これだけ見れば他国との交渉として見れなくもないが…はぁやっぱりかっこいいレナさん。
そう思った矢先、
(っ!今レナさんと目が合った,あーー!!こんな姿見せるんじゃなかった。わたしはわたしのあのフリーのままを見せたかったのにぃ〜!!)
「えっと、エズ、その子は。」
(キャァァァァァァ!!!!!!覚えててくれてるーー!!)
※無表情です。
「うぅむ、お主らなら一度は会っているじゃろうな、まぁその時はたまたま休暇であったが、。こちらは妾の、というよりこのゲレームの宰相をしておる。ほれ…」
「あ、は、はい。ナズナと申します。改めましてお二人様、よろしくお願いします!。」
「、、驚いたな。」
紅月さんは本当に意外そうな顔でこちらを見た、そんな顔もするんだぁ〜っと思っていたイメージと離れていたため、なんだかかなり気分が軽くなった気がする。
やっぱり『鉄血の死神』はただの異名だったらしい。っと個人的に思った…
「、、。」
「、レナ。」
(あー!レナさんすっごい驚いてるー!!なんか照れる〜!!推しを驚かすってとっても悪いことだけど!!それほど自分のことをって思うとこうカー!!!!!!ってなるー!!)
「おい、戻れ。」
「え、あ、えぇ。ごめんなさい止まってたわ。」
(推しを止まらせたぞー!!なんかすごいうれしぃ!!!!!!)
「あー、おほん。、では気を取り直して、、。」
(あ、話始まる良い加減この落ち着きをなんとかしないと、、。)
「うぅむ、今回呼び出したのは他でもない。先日の一件の報酬云々と、少し重い話だ。」
「、、。」
「、先に報酬からで良いかしら、。」
「もちろんそのつもり、ナズナ。」
「はい。それでは報酬金額に関してのご説明をしていただきます。(かっこいいところ見させなきゃあ!!)」
そうして、わたしはドキドキしながらもなんとか無表情を終始通しながら報酬の話について終えた。報酬内容は金額の他にも、ゲレーム内での施設管理を自由に行える権限、使用すればゲレーム内を顔パスで入れる権利、それとゲレーム内に存在する料理店などのクーポン券、その他大勢の感謝品が譲渡された。
ちなみに金額もエズ様のポケットマネーなのだが、わたしは家計簿などを担当したことがないため、エズ様が一体どれだけの資金を溜め込んでいるか、わたしにもわからない。
「以上です。」
「うぅむ、ご苦労。」
「…思った以上に好優遇ね。」
レナさんが少し驚きながらエズ様へとそう言う。
「もちろん、労働にはたいかが必要じゃからな。このくらいせんとお主らに合わせる顔がない。」
「こっちのセリフなんだけど、まぁいいわ。」
わ、クール。
「さて、改めて今回の遺跡攻略と襲撃してきたレギオンの迎撃、本当に感謝する。」
エズ様は頭を下げて二人に対して感謝の気持ちを伝える。
「俺が言うのもなんだが、あれでしっかり攻略できたのか?。」
「うぅむ、ダンジョンは攻略済みと記されている。お主らがいささか適当にやったところで問題なかったと言うわけじゃろう。」
「そうか。」
紅月さんはなんだが納得していないような顔でエズ様の話を飲み込んだ。彼が帰ってきたら状態を考えれば腑に落ちないのは仕方なないことだ。
「それで、報酬と今の以外にもう一つ話すことがあったんじゃないか?。」
「あぁ、うぅむ。そうじゃったな…レナ、悪いがここからはプライベートな話じゃ、しばらく外で待ってくれぬか?。」
エズ様はそう言う、こういう時レナ様は反抗というか何故か不服そうな感じになるのが定番だけど、、。
「、、わかったわ。」
[ガチャ バタン]
しかし、エズ様の今出している雰囲気、それはなかなか人に見せない威圧の感じだ。エズ様は一体どこまでが本気なのか、わたしはいまだにわからないが、、この威圧は間違いなくその一つであるということがわかる。
それほどまでこの空気は吸いにくかった。
「、。」
「単刀直入に言おう。」
紅月さんは察していたのか、それとも予想外の展開を冷静に見ているのか、どちらとも捉えられる顔をしていた。
「そのフレーム、一体どこで手に入れた?。」
フレーム、オートマタの基盤となる近代技術、オートマタが人と分けられていても、唯一の対等となれる技術の一つ。魔法が使えないというバッドステータスを帳消しにできる他、人と違い職業スキルのレベリングを行う必要がなく、常に最高峰の力で行動を可能にできる。
そして、紅月さんの動きやこれからの行動のことを考えると、分類上はバトルフレーム、しかしながら提供したのがエズ様ではない?、っとくると、。
「、別に隠しているつもりはないし、聞かれなかったら聞かれなかったらで、と思っていた。だから包み隠さず、俺は今から話す。」
・・・
あの襲撃が起こった日、俺はゲレームのよくわからないところにいた。道中は迷路みたいになっていてただただ頭がこんがらがりながらも直感を信じて、進んで行った、勝手に待っていろ、の命令を無視したことは謝ろう。
「なかなか、くらいな。」
そこはまるで暗闇だった、別に目が見えないレベルの暗闇とかそういう感じじゃなく、ただただ悪い雰囲気が渦巻きそうな場所だなと無意識中にわかるくらいだった。
そしてそのまま、上の音が激しくなっているのを理解しつつ少し足を早めて、ある場所に着いた。
「扉。」
SFなんかでよく見る宇宙船の扉みたいなかなり大きいやつだった。見た目から一瞬シェルターか?っと思えるほど,その壁は目視で分厚さを表現できていた。
「、、。」
近くに端末があることがわかったから、もしかしたら開けられるんじゃないかって思って、俺は好奇心で端末に触れてみた。そうしたら、
『、、承認者確認。お待ちしておりました、ケレム様。』
「ケレム?。」
[ガコン ガガガガガ。]
その音声認証が聞こえた直後、開かないとみていた扉は突然動き出して開いた。少し時代遅れ、いや経年劣化したような音が耳に響くったらありゃしない、が、俺はそんなことよりも目の前にある景色に気を取られていた。
この部屋の中には何があるのか、正直にいえば探究心が止まらなかった、。
扉が完全に開き終わると、光が向こう側から溢れ出てきた。感じでいえばパッとライトが光ったような感じだ、、
このようなシュチュエーションはいろいろな媒体で見たことがあったので、俺は目が慣れるよりも先に光の部屋へと進んでいっていた。
そしてあったのが、このフレーム。
大きな部屋に対比するようにフレームと最低限の武装がいくつかあった。だが最低限と言ってもそれは外見の問題、質量兵器と全身を覆える茶色に塗装された金属製のアーマー、一言で言えば鎧だこれは。
フレームの前には扉の前にあったのと同じく、端末があった。俺は先ほどと同じ方法で手をかざしてみた!しかし帰ってきたのは了承ではなく…
『生体コード 該当なし。承認できません。』
こう帰ってきた、普通扉が開けば中身も。っと思うが、それは家の中に金庫を置いている人と同じだなと思った。しかしどうしたものか、扉はこうもあっさり解錠できた、生体コード、詰まるところこの装備たちは本来の持ち主しか扱えないようになっていると考えるのが、妥当だ。
(生体コードは開発されてたんだな。)
ゲレームの技術力を甘くみていたわけじゃない、が。生体コードに関してはかなりSF寄りの技術範囲であったため、俺はその当時少し驚いた。
《スキル 魔力放衣を使用することで解除が可能です。》
「魔力放衣?。」
俺はスキルの欄を調べてみた、そしたらガイドとうりにそのスキルは存在していた、。オートマタはスキルがないのにも関わらずだ、、
(、あるなら仕方ないから。)
そう思いながら俺はスキルを使用した、確かスキルを使用するにはイメージ?、口に出すんだったか?、ん?。
《スキルは口に出すことで発動できます。小声でいうなどして戦略の役に立ててくだい。》
なるほど、小声でいうことで恥ずかしさも戦略もできる画期的だなっと、思いながら。、目で選べるくらいの技術は詰め込めよ、っと思った。現代技術であれば目で選択することくらいできるはずだ…。
「、、魔力放衣。」
俺が迷いなくしてその言葉を口にすると体の周りに白紫色のエフェクトと、なんだか心が高揚してきた。思わず「おぉ、」っと言いたくなるほど、俺はその時、なんというか。テンションが上がった…
(時間制限か?)
この状態がずっと続くというのはイメージがしづらい、時限強化という見方が一番良いのかもしれない。というかなんとなくそんな感じがする。
そう思いながら俺は手をかざす。
[フォン]
《生体コード確認、誤差範囲修正、パラメーターレベル確認、固有周波数確認、オートマタ専用コアを電子確認、 完了。》
次々に浮かんでくる確認作業、俺はその場に立っていること数秒であっという間に終わった。
[ピピ]
《最終確認完了、装着を開始します。》
「装着?。うぉっ!?」
[ガシャン!!!]
フレームは自律可動したかと思えば、自分の骨格をバラバラにしていく勢い、いやなんと表現すれば良いのかわからない、骨の中に骨が入るような感じと見るべきか、とにかく、気持ち悪くも気持ち良くも表現できない、それが一瞬にしてきたので、驚く他なかった。
《装着を確認、外装、及び。本機のデータをインストールします。》
「ちよっ?!」
そうしてものの数秒の間に、俺という存在は一つの形として出来上がっていた。俺は手に入れた装備を衝動的に扱い、いつのまにか外に出て、戦闘をしていた。
その時はとんでもなく集中していたのかどうかわわからないが、あまり記憶に残っていない。
・・・
「これが、あの日の全貌だ。」
「、、なんと、。まさか。」
紅月さんの話を最後まで聞いたエズ様は恐る恐るの声を出しながら、紅月さんにそう言う。
「お主が、箱の持ち主となったから。かぁっー。」
「、箱っ?」
そう、箱。このゲレームの要であり。このゲレームの、要とも言わずもはや命である。
「、一つ、お主が開いたものはこのゲレームの技術力の結晶であり。いまの今まで妾が最大限に政治活動に用いてきたものじゃ。いわば、『開かなかったことでその役目を果たしてきた』ものじゃ。」
「開かなかったこと?。まてその…あの箱とやらはお前の管轄じゃないのか?。」
「いや、難しい問いじゃな。立場的にいえば動かざる第三の存在といった感じか、第一は妾の相手となる存在、第二は妾が自身、そしてあの箱がどちらでも扱える、いや正確には妾が最大限に使える第三の者じゃ。」
「…つまり、エズはあの箱とやらを利用して今までこの国を治めてきた。違うか?。」
「いいや、何も間違っとらん。」
エズ様は鋭い発言をものともせずに、紅月さんへそう言った。エズ様が次に飛んでくる言葉を予測しないはずはない、これは対外的に見れば誰のものかもわからないものを拾い、それを自分のものとし、それを利用しながら上は登っていたというやり方、その箱がなければエズ様がないのと同じような感じだ。、対外的に見れば…
ゆえに、エズ様が正直に言ったことは意外だった、このことは心情的に見ればそれは許されないことだろう。『運も実力の内』という言葉を一定数の人が嫌うのと同じだ。
エズ様は紅月さんに嫌われるかもしれない、っと思っているだろう。しかしそれでも真実を話すことを選んだ、その主君に何もできないのは、悔しくてたまらない。
「、紅月さん。エズ様は確かにあの箱を使いました、しかし!エズ様の心はいつも民思いです。現に職場の人々はエズ様よ政策や決まりに関しては全面的に強力的であり、今までのゲレームの歴史を辿ってきても、ここまでの発展具合は過去最高です。なので、」
「、、。ナズナ、ちゃん?さん?、は何か勘違いしているようだけど、俺は別にその箱の持ち主にもなるつもりはないし、それでエズをどうこうするつもりはない。」
「、そうじゃよな、そうじゃよな。箱はお主がっ、、ってエェェェェェェェェェェェェーーッ!!!!」
「はいぃ?!」
「?!、なんだよ、だってその箱ってやつ。俺からしたらなんか面倒くさそうなやつだし、別に箱の持ち主になって好き放題するのも、なんかこうやっていることが小物すぎて、、。」
「こ、小物。」←箱を政治的に利用しまくったオートマタ。
「え、エズ様は善に使ってたので!。」
「それに、今の俺としてはなんだか扱いきれないし、変に有名になってこれからまた面倒が増えたら、ゆっくりしてやる時間も無くなりそうだしな。」
「、、つまり。お主はその手一つであらゆることができる箱を、そのままにすると?。」
「あぁ、そう言った。なんなら変なやつにつけられるくらいなら前みたいにエズが使えば良い、開けるか開けないかは任せるけどな。」
「、、本当に?。」
「あぁ、ナズナ、さん。を悲しませたらなんかレナに言われそうだし、、。それとエズの方が俺よりマシに扱ってくれる気がする、ほら適材適所ってやつだ。」
「…そ、うか。」
「あぁ、もし何もないなら。戻って良いか?今日は帰ってルルカと予定があるから、、」
「、う、ううむ。」
そうして私たちが頭を真っ白にしている間に紅月さんは帰って行った。
「まさか、箱を。」
「ふ。ふふ、」
私が唖然としている中、唖然としていてもおかしくないエズ様はなぜか不敵に笑い出した。
「エズ様、。」
ついに頭がおかしくなりましたか?っと言おうとしていた口をギリギリで止める。じゃなきゃこんな時に笑ったりしないからだ。
「、なるほど、妾みたいな頑固者が選ばれんわけじゃ。」
「、、。エズ様は頑固者ではないと思いますよ。」
「フ、ならなんじゃと思う?。」
「そうですね。、」
民思いな素敵な王様だと、私は思いました。
『topic』
《箱について。》
箱の本来の名前は『ケレムの遺産』名称は発見者のエズによって命名された。四角いキューブのような形状をしており、扉のようなものが確認されていたことから当時ではただの旧式シェルターなのではないかという理屈が立っていたが、エズがこれを全面的に否定、様々な証拠や現存する書類などをまとめ上げ、ゲレームがまだ国として成り立っていなかった時代の遺産、『ケレムの遺産』であることを大々的に発表し、以後その歴史的遺産の影響性を利用して女王となる。
《ケレムについて。》
【SAMONN】の世界で伝説と語り継がれている72人の勇者の一人、一説では山を複数作り出し、人々に無限の食糧や水を提供したことにより、慈愛の勇者だとされている。見た目は媒体によって異なっているため種族は不確かな点が多い、天使であったり、精霊であったり、いずれも慈愛という単語から来ているものだと推測されているが、人型である資料が大半であるため現代では人という説が有力だ。
しかしながらゲレームというオートマタがよくいるところに出没していたからか、その実態はオートマタである説が多いと共に、人間にも一定数の支持者がいる。
練鉱国ゲレームの礎とも言える街ゲレームを作った人物であり、国民にとってはまさに伝説的な存在である。
しかしケレムは天災の年に姿を消しており、《天地創造災害》にて亡くなったと予測されている。また、ある資料にはケレムには唯一無二の友がいたそうだが、その友も同年姿を消している。
またその後に起こった《世界崩壊戦争》によって歴史からゲレームという名前が一時期消えたことがあった。が、ケレムの遺産に残された情報によりその名を再び世界の表舞台に出すことができた。




