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四十五話「回収」

前回のあらすじ


タルタベース詰め合わせセット




 ──ゲレームMk ~Ⅱ・工場こうば──



 …、。


 (あれ?俺どうなっているんだ?。)


重々しい瞼を何とか少し開け、気を保つ。体はまるで電車に乗っているように上下にゆっくりと動いていた、不自然さを感じながら俺は動きずらい首を少しずつ動かし、情報を集めようとする。



 「お?、やっと目覚めたか。」


聞き慣れた声がすぐ真横から聞こえる。おそらく声の正体は金髪美少女の変人であり、「うぅむ」というよくわからない言葉を使うやつに違いないり


 「ー。」


朦朧とする意識が少しずつ目が覚まして来る。

重かった瞼は少しだけ軽減され、半目ではあるが安定して開けられるようになった。

手始めに今覚えている記憶について整理をしてみる。



 (ルルカ達を探しに行って…確か、黒針鞭のヤツと戦って、そして勝って。)


そのことを考えると無性に吐き気がしてくる。どうやら覚えているし、思い出せなくないが、『よくないこと』であったことは明確なようだ、ならこれ以上思い出したとしても無意味だ…


そう思いこれ以上『そのこと』について考えるのをやめにした。とりあえず覚えていることといったら、ルルカ達を探しに行ったということ、それだけだ。


 「おっと、あんまり動くんじゃないぞ。なんせ全身ズタボロ状態だからな、全く。いくらでも作ってやるとは言ったが、壊していいなんて一言を言ってなのに。」

俺への注意と後先思いやられる未来を考える声が聞こえてくる。どうやら、また迷惑をかけてしまったらしい、


 「悪い。」


 「、、ふん。気にしとらん。」


優しい声で言うその声が俺の中での緊張という糸をスパッと切る。

次の瞬間にはまたもや意識は闇の中、、本来ならば、予測だけで背中、この場合全身だが…預けるわけにはいかない。でも俺は自然とソイツに体を任せていた、理由はいくつかあるが、まぁ決定的だったのはどこか安心できる『声』だったから、、というあやふやな理由だ、我ながらどうしてその声に安心したのか?。瞼は重く、全開にすることはとてもできなかったなか耳だけが頼り、そしてその耳も、安心できそうな『声』であったからという理由で役目を放棄している始末だ。


正直、不安要素の塊に違いないが、。それでも俺の意識は安心して暗黒へと帰っていった。


 


 ──???──



 「ー。」

光が見える、眩い光が、


 「ー。」

自分が何故この空間にいるのか、不思議と疑問は浮かばなかった。


右、左、前、後ろ、。どこを向いていたって暗闇、しかしその中で、思わず目を瞑りたくなるくらいの眩い光がある。


前述した通り暗闇なのだ、この世界は。


だが、その暗闇の中に本来ありえないはずの光がある。


それが自身の目の前にある。その光はこちらの足元へとずっと伸びる光の線を出している。背後に何もないことを確認する。


 「ー。」

その光は遠かった、あまりにも遠かった、しかし光の線が今『私』の足下まで伸びているということはもしかしたら『私』はまた戻れるかもしれない。


 「ー。」

その光の線の先に何があるか自分でもわからない、もしかしたこれ以上の虚無かもしれないし、もしかしたらこれ以上の天国かもしれない、感覚がなくなり、目に見える全てものが新たな糧となる私にとって、どちらにせよ。


この細い長い光の道を渡らないという選択肢は存在しなかった。




 ──ゲレームMk ~Ⅱ・工場こうば整備室──



 「…。」


なんか変な夢を見た気がする、でもどんな夢だったか思い出せないってことはおそらくこの上なくどうでもよかったか、はたまた、とてもつまらない夢だったんだろうなぁ〜っと俺は心底思う。。


そして、ここは知っている天井。


 「整備室かぁ〜。」


すぐに理解した俺は自分の状況を確かめる。

とりあえず危険な場所では無いということが確認できただけでも十分だ。


自分は天井を見ているということはきっと仰向けの状態。そして感覚的に恐らく台の上に乗せられているということだろう、まだ差し詰めなただ寝かされてる訳じゃ無さそうだな。


だって机が冷たいし、枕もないし、なんなら掛け布団もない。


 (またエズに精密検査でもされるのかなぁ〜)


別に精密検査が嫌いなわけじゃ無いが、、工程が面倒くさすぎて面倒くさすぎて。いや本当に冗談じゃないくらいに…まぁそのくらい面倒くさいので精密検査という言葉が俺は少し嫌いだ、、現実までその影響が出たらどうしてくれるのだろうか、、もっとも先の話にしたいが。


 それにしても今自分の体はどうなっているのだろうか?なんか結構軽い気がするが、、。



 「?!」


俺は首だけ起き上がらせ、自分の体を適当に見る。するとどういうことでしょうか、なんか、うん。骨組みだけになってる…、


 (例えで言えば厄災戦の骨董品で使われている類のフレームみたいになってる。)


マジで鉄だし、配線は外れているものもあれば、内部と内部に繋がっているものもある、しかしそんなことはどうでも良い、俺からしたら骨組み状態がなぜだかとっても不安だ。

さっきまで満タンに、、とはいえないもののそこそこ満たされていた心は一気に飲み干されたようにカラカラになった。


いやさ、だってさ,確かに俺はオートマタだけどもよ。いきなり起きたら体が骨組みだったとか、、「いいですか、落ち着いて聞いてください。」とか言われても全く落ち着ける気がしない、、


いきなり起きたら体が骨でしたw、なんて冗談にも程がある。おかげで俺の心臓はいまかなりバックンバックンだ。


生きている心地が全然しない、こういう時は、、。


 (とりあえずルルカセラピー)


と、思いチャット画面に手を伸ばそうとすると。


 その手は骨組みだった。


 「…、、スゥー」


受け入れ難い現実(二回目)を目の当たりにして俺は一旦落ち着くため息を吐く。


 (手もかぁ〜、、。)


そして次には顔を骨の手で触って確認していた。


 「顔は、、いいんかい。」


顔はいつも通りというか、普通に皮膚?があった。髪もあったし、。なぜここだけ許されたのか、普通に聞きたい…。


 (危うくターミネーターみたいになるところだった。)


アイツらのかっこよさは機械的な人間ってのが売りだ、対して骨組み状態のアイツらはかっこいいというよりかは不気味というイメージが色濃い気がしてならない。


 まぁ、そんなことは本当にどうでもよくて、、さっさとルルカに話でも聞いてもらおう。


 [ピ]


 《ルルカ オフライン》


 「…、。」


…、、。


 (、。)


俺は骨組みとなった手を顔に落とし、そのまま脱力する。どうやらついにこの時が来てしまったようだ、


 (捨てられたぁ〜。)


いや本当に涙がめちゃくちゃ溢れてくる。涙腺を抑えるのに必死で本当にそのほかのことが考えられない…。


 俺にとってルルカに捨てられる、ことは辛い以外になんでも無い。


 例えばある日突然。


 『お兄様きもい』


なんて言われてみろ、1年は立ち直れない鬱病になるぞ。


そして残念ながら今がその時だ。、、もうお家に帰ってとっとと寝よう。明日の学校は別に行かなくても単位は大丈夫だから問題なし。


 [ピ]


 《お兄様、ごめーん。体調が変になってきたから先に落ちるね、お兄様も体に気をつけて早めにログアウトしてね!。》


音と共に現れたそのメッセージ、恐らく今放たれたものだろう。なるほど,なるほど、



 「スゥーーーー…、、。」


 (捨てられてなかった〜ァァァァ!!)


さっきまでとは別の涙が込み上げてくる。

嬉し泣きとはまさにこのことだろう、本当に嬉しい。、、勝手に察して勝手に泣いていただけの話だが、もしものことを考えるだけでメンタルが崩壊しかねない。


 正直言うなら、つい数分前くらいの拷問より…。


 「、今何時だ?。」


俺は画面上に表示されている時計を見た、今日はただのダンジョン探索、、ではなかったし、何より結構道のりが長かったので、恐らくかなり時間が経っているはずでー


 [15:29]


※始めてから約3時間。


 「…ウッソだろ。」


なんということか、全くもって時間が経っていない。体感的に9週間弱くらい経っていたはずなのに、、。いやそれはないか、まぁそうだとしてもかなりの長い時間過ごした筈…これはどういうことか。


確か、エズに新型の装備を試させてもらって、そこからルルカとウミさんと合流して、ルルカのテストの点数について色々言って、エズが突拍子もなく、レナを出してきて、、。

エズが怒って、とりあえずでダンジョンまでスタッフさんに案内をしてもらって、、。


ダンジョンに潜って、はぐれて、合流して、はぐれて、機械兵をぶっ倒して、遅かった装備をもらって。


 「あ、後でエズをボコさないと。」


まぁそれは後で、でまた落とし穴で下におっこちて、その後はルルカを守るために防衛戦をして、手に入れたやつのために、落ちた場所をまた上がって、、。オリハルコンゴーレムとかいうやつを倒して、奥に進んで、。?、運ばれてここまできた?。


 (なんか若干記憶があやふやだが、大体こんなもんな筈。)


俺は頭をかきながら1人でそう呟く。、思えばここの部屋には俺しかいない、1人大きなテーブルの上で横になっているだけ、、。


 「、エズでも問い詰めに行くか。」


ルルカは先んじて退出したし、このまま俺も退出するべきなのだろうが、正直言ってエズの一件を思い出して腹が立ってきたで、とりまエズを探そう。仮に終わるにしてもまだ少し早い、その間にエズを探して問い詰める程度はできる…。

 そう思いながら俺は起き上がり、エズを探そう…と思ったんだが。


 「流石にこの見た目は対外的によろしくないよなぁ〜。」


苦笑しながら俺は自分の体を見る。ほぼ骨格でできた体は、なんというか結構不気味だ。表面装甲があるオートマタは基本的に人間となんら遜色はないのだが、その装甲がなければ一気に見方は変わるものだ。

露わとなった骨格はいわば人間の骨と同じ,しかし肋骨や、脚部位、心臓部位などは似ても似つかなかったりする。


まず肋骨は無く、そこには胸部プレートの下敷きのようになっている。フレームの独特の厚みがある。


そして心臓部位はコアがあるからして、中心部分の装甲は基本的に取り外しは不可能と見られる。少なくとも俺が許可を出さない限り、胸部のフレームプレートが開き、コアを直接いじることはできないだろう。


脚部位は他の骨組みと違い、どこと無く筋肉がついた骨、っという印象を強く受ける。

胸部と同様にフレームプレートが厚く敷かれており、オートマタの適地能力が予想できる。

また、脚部位は以前エズがバッテリーを取り付けた時があったので、このように脚部位が厚くなっているのはそのような意図があるのかもしれない。


こう見ると、なんとも装甲を外したオートマタは不恰好と言えばその通り。いわゆるダサいというのに当てはまる、、デザインは俺も好きだが…正直言って対外的じゃない。


 「なんか上から着れるものとか、、。」


ここにいる人たちならもしかしたら見慣れた光景なのかもしれない(全員オートマタだし)しかしながら、それとは別に一個人としてなんだか俺は見られるのが嫌だ、、なんかこう、羞恥心的なものが関わってきている気がするので。


 俺は自分を中心に周りを見渡し、何か羽織るものをが探す。正直なところ、服でも、マントでも,、、なんなら布でも。


っと探していたら、白シーツ発見。適当に干されている程度だったので、今使ってもなんら問題はないだろうと即決し、急いで俺はその白シーツを身に纏う。纏うといっても結果的にマントみたいになってしまったが、、まぁバレなきゃいいでしょう。


 (正直、靴も欲しいところだが、、)


そんなものここにはないので諦めよう。靴に関してはエズを問い詰めた後で、装甲と一緒に確保でもしよう。、もしかしたらこの後こういう骨だけ状態の場面が来るかもしれない。


 そう思いながら俺は整備室を後にし、いつも通りエレベーターに乗った。エレベーターから見える景色はいつもどうり変わらず、鉄をったく作業音や銃器のような音が聞こえてくる。


 (前まであった、大きなやつはどこ行ったんだ?)


前まで確かにそこにあった大きい建築途中物は今、そこにはなかった。きっとどこかに移動したのだろう、っと考えてもよかったのだがあまりに大きかったことが頭の中で印象として残っているので、逆にあの大きさのものを一体どこにやったのか?。っという疑問しか浮かばなかった…が、考えてもまぁ今のうちはわからないし、。もしかしたらまたお目にかかれる日が来るのかもしれないと、、今はそれくらいの認識でとどめておこうっと俺は思った。


 ガタンっと鳴りエレベータは止まった。開かれる扉に飛び出し、俺はエズを探しに行くため、通路を通る。


 「なんか今日は人が少ないな。」


いつのなら俺の整備室だけでも6〜9人くらいが何かしらの作業を行なっていたはずだが、そういえばで考え返してみると人がいなかった。それはここも例外ではなく、明らかに人は少なかった、防音機能が仕事していることがわかるくらい大声で喋る研究員たちも、ブツブツ言いながら持っていたタブレットに対して険しい表情をする人も、報告を急がんとして、息を切らしながらも走っている人も、今日はいなかった。


 …全然関係ないのだが、ゲレームってブラックなのでは??。


 (まぁトップがエズだから、、ということも、、)


無い。っと完全否定できないところがエズである。正直あの性格にスタッフさんは手こずらないのだろうか、俺だったら手こずっている。そう考えるとここで働く人は…。


 「エズに情が厚いのか、、」


それとも単に給料が良かったり、忍耐強かったりとか、そう言う感じなんだろうか?。いつかの機会にスタッフさん方に聞いてみてもいいのかもしれない。だが、いつの日か聞いた話によるとエズは仕事だけは良くできるそうな…。


 (……本当かなぁ。)


 そう思いながら一人廊下を進み続ける。

思えばエズに関する情報が皆無だ、何ならエズが今ここにいない可能性だってある。スタッフが全員移動していると言うことは、それすなわちエズを合同で移動していることだってある。

 

 (仮にいるかいないかにしても場所くらいは知りたい。)


そう思いながら、足を止めていると。


 「あれ?紅月s、様?。」


そう声がしたので、右を振り返ってみると。


 「…?どちら様で??」


見知らぬ女性が両手に荷物を抱えたまま、佇んでいた。どうやらこちらを知っている口のようだが、、。そして、何も考えなしに俺はそう言ってしまう。


 (まずい、全くもって顔が思い出せない。)


おかしい、一度会ったら「どこかで会いましたっけ?」っというものだが、それすら出てこないほどに心当たりがない、本当にどこかで会いましたっけ?っと今口で言いたい、しかしここで言ったら仮にめちゃくちゃ会っている人ならば、俺はこれから、今目の前にいる相手さんに合わせる顔がない。

もしそうだった時のリカバーを考えなければ、考えろー考えろー若葉暁。。


 「あ、これでどうですか?。」

その言葉とともに、その女性はメガネを外した。ちなみにだが、、メガネの形は四角だった。


 「え、あ!アンジュさん!?。」


 「はい。」


ニコッと笑いながら俺に対して微笑むアンジュさん、おぉ別嬪さん。何だかこの間あった時より綺麗な気がする、、じゃなくて。…、メガネをかけた美人さんはアンジュさんでした、はい。正直言おう全然気づかなかった、いや本当に、メガネで人が変わるとか「いやいやアニメじゃないいんだから」、、アニメじゃないよ本当に。メガネでこうも人が変わるのかと、、何というかめっちゃショックだ。


 「すいません、気付けなくて。メガネかけると人変わりますね。」


アハハと言い雰囲気を誤魔化す俺、本当に申し訳が立たない。いくらメガネが偽装として完璧だとしても、結果として世の中は騙された奴が悪いのだ。、つまり全面的な責任はこっちにある。

それをアハハと笑いながら、、失礼極まりないことである。神様がもしいるなら、どうかどっかの時点で神罰でも与えてください。


 「やっぱりですか?、エズ様にも言われちゃったんですよそれ。」


…エズと俺が同等なのが癪だと一瞬考えた自分とエズをぶん殴りたい。


 「そう、なんですか。」


言葉を詰まらせながらいう俺の脳裏には次どういうふうに話を繋げるか、について頭を回していた。


 「、、もしかしてエズ様をお探しですか?」


おっと、ここにも勘のいい人が一人、そして自然な流れの話の切り替え。さすがだぁっとこれには日本兵たちもニッコリである。


 「えぇ、まぁ。ちょっと用事(物理)があって。」


 「なるほど。今の時間帯なら多分(入口の)エレベータ付近で指揮をしていると思いますよ。」


腕時計を見ながらアンジュさんはそう言ってくれた、どうやら(物理)の方には気がついていないようだ。何だかホッとした、、。。。


 「ありがとうございます。」


アンジュさんは見た目的には俺より年上だ、なら敬語を使うのが筋だろうと思い、俺は礼儀正しく頭を下げた。

…レナや、ルルカがいたら何か言われそうだな。

そんなくだらないことを考えながら、俺はエレベーターに向かう。


 「あ、あの!」


 「?、どうしました?。」


アンジュさんの声に俺は急ぐ足を止め、振り返りながら反応する。


 「えっと、敬語で話さないでください。なんか気が張ってしまうので。」


苦笑しながら、アンジェさんはどこかぎこちなく、そういった。それに対して俺は深く考えず。


 「、わかった。」


っとそれだけ伝え、俺は入口方面へまた足を急かす。


 


 「、、そういえば。レナ様もさっきエズ様を探していたような。」


のちにアンジュさんはこう思ったそうだが、それを知るのはかなり後の話だ。特に俺に関しては…。




 「人が多くなってきたな。」


俺がそう思いながら、向こう側からくる人々の合間を縫うように進んでいく。気分的には満員電車で出たいのに向こう側から人が来るという一種の絶望感に近しいものだ。今現在はそれほどでもないにしろ、このまま進んでいったら、もっと人の密度は増えるはずだろう。そのため俺は若干覚悟を決めながら、進んでいた。


 そして人が俺の方向、ここでいうところの、建物に向かってきているということは、エズと共にもしかしたらさっきまでどこかに行っていて、おそらく用事が終わったため、またいつも通りの仕事をするために戻ってきている。そういうところだろう。

さっきアンジュが言ってくれたエズが入口付近にいるというのはどうやら本当らしい、なぜならこの人混み、全員エレベータ側からどんどんきている。つまるところこの人混みの奥にエズがいるというもの…。


 (問題は案外向かってきている人が多いということ)


エズの元に辿り着けるか、ではなく。目先の、ここを無傷で突破できるかっという不安の方が大きくなってきている気がする。満員電車しかり、人が密集しているところは怖いのだ。



 『うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』


その時雷撃のように、その声が周りに響き渡る。

人々は足を止め、咆哮が聞こえた方向、ここでいうところのエレベータ方向を、見た。もちろん俺も例外ではなかった。


 「!?っ何だ今の声。」


っと思わず一言、ここにいる人達の心の声を体現するかのように俺は大きな声で言い放った。

俺のセリフには誰1人振り向かず、意識を向けず、皆、本命に対して考えているだけであった。


 (、、とりあえず確認してみるか。)


一旦冷静になり、俺は止まっている人々のうまいこと避けながらあの大声の元まで行く。


それとなく聞き覚えのある悲鳴だった。もしやとエズなのでは?っと考えを膨らませたが、どちらにせよ悲鳴を出す理由にはならない。

一体向こう側で何が起きたのか、「聞き覚えのある声」である以上知人かもしれない、実際のところ誰かは定かではない。

しかしながら悲鳴が聞こえたら真っ先に行くのは当たり前の行動だ。

ここにいる人たちは足を止めているばかり、それがどうというわけじゃないのだが、、正直言って道の一つでも開けて欲しい気分だ。


 愚痴をたれつつも俺は人混みを分けて進んでいく。先ほどまで遠くに見えていたエレベーターラインが近くなっているのがわかる。、その手前の大門もだ、。


 (で、一体何が起こっているのやら!。)


若干の覚悟を決め、俺は人の最後の壁を押し通る。そしてそこに広がっていた光景は…


 「ま、待ってくれ。」


エズ、。「やっぱりか」と納得しながら。俺はエズが向いている視線を追うようにその人物を見る。


 「あら、待つ理由なんかあるかしら?。」

堅物女ことレナ…。どのようなことが起こってさっきの悲鳴が出たのかはわからないが、一つだけわかることがある。はい、みなさんご一緒に。



 ((エズが悪いことだけはわかる。))



 「た、確かに妾が其方達の持たせる装備をいじったことは認める。じゃがそのおかげで、良いチームワークを築けたじゃろ!、なら別にこんなことしなくても。」


 「別に頼んでないんだけど、こっちは。」


 「う、。で、でも!」


 「その弁解で私たちが死にかけたことがチャラになる自信があるなら言ってもいいわよ。」


 「…、。な、ないです。」

潔い奴だな。


 「そう、じゃあ大人しくしていてね。」

うわ、レナがキモイ笑顔してる。これはエズはバッドエンドルート確定だろうな…ってただ傍観しているつもりはないんだった。


 「あー、そこのお二人さん。面倒ごとなら、せめて人がいないところでやれ、迷惑だから。」


 「おぉ!紅月、もしや妾を助けにきて[ガシ]え?。」


俺はエズが満面の笑みでこちらを何も知らずにみてきたので思わず頭を片手で掴んだ。


 「そんなわけないだろ、あとお前は黙ってろ。」


 「…ひゃい。」


すっかり弱気となり、子犬のようにビクビクしながらエズはさっきの威勢を失い縮こまった。


 (エズはこれでオーケー、あとは堅物女だ。)

そう思い、俺は加入してこないレナを若干不思議に思いながらレナの目をじっと見る。

アイコンタクトで伝われば、ここで言い争いになったりすることがないので、あえて口を開かず目で見て伝える。


流石にここでやったら面倒だ、?わかる?っという目を。向こうがキレてきたら一貫の終わりであることには違いないが、、。そこはレナを信じる。


 「、はぁ。わかったわよ、ついてきなさい。」


 「う、うぅむ。」


レナに手を引っ張られながらエズは、こちらに連行されてくる。しかしその様は容疑者と警察では無く、まるで親子の様。とか言ったらレナに殴られそうなのであえて言わないようにしよう、、


 ということで、俺たちは一時的に模擬戦場を貸してもらって。


 「今から尋問を開始する。」


はい、尋問です。


そういえばといえばそういえばなのだが、前も尋問した時ここだった気がする。ある種、ここは場所として適しているのかもしれないと俺は適当に思う。


 「私たちの質問にきっちり答えてもらうわよエズ。」


今回ばかりはレナと揉め事を起こしている暇ないので、致し方なく共闘、共にエズの口から真実を語らせるべく、押しが(物理的に)強い尋問が始まる。


 「うぃ。」


ということで、ここからは多少省略しながら、、。


 まず、レナが俺の装備を持っていた理由は?


 「それは、いつもギクシャクしている2人に仲良くしてもらいたく、装備を逆に持っていれば互いに頼らざるおえないと思って、、。」


 『二度とやんな。』


はい、次。レナがスナイパータイプと頼んでいたはずですが?なんであんな重武装のヘビー系装備に?


 「えっと、ダンジョン内での長期戦闘や,多数の敵が出てくることを見越すと、どうしてもスナイパータイプではある程度の殲滅力と、他の3人との連携が個別かされる可能性があったため、重武装からのパージ型にしました、また、レナのスナイパー装備はフレームとの互換性がイマイチだったこともあり、済むならヘビー状態で帰ってくることを想定していました。はい。」


 なるほど、そこは理知的に対処しやがって、。でレナはどう思う?。


 「なるほどね、それだけ聞ければ十分よ。実際助けられた部分もなくはないから。あ、自惚れないでね。」


 「ぅ、はい。」


レナが釘を思いっきり刺し、エズがちょうど刺さった瞬間がわかるまさに1シーンだった。


まぁそんなことはどうでもよくて、、フレーム。


 (後で聞いてみるか、)



次、俺がなんでこんな骨組みなんだ?


 「うわぁ。」


俺がマントの下にある骨組みの体をエズに見せた途端、。レナが露骨な顔して嫌悪ってわけじゃないがなんともいえない顔をしてそう呟く。


まぁその反応わからんでもない。


 「えっと、装甲の侵食が酷かったので、とりあえず外しました。正直内部装甲まで行っていたので、なんで紅月が生きているのかも妾にすらわかりません。」


ふむふむ、ちょっと待て、俺死ぬレベルだったのか?。


 「あぁ、ほんと生きているのが不思議なくらいじゃったわ。」


 「…御愁傷様。」


ちょっと待て、まだ俺死んでないからそれ言うの早いぞレナ。


ていうか、まじか死んでもおかしくなかったのか。あぁ〜めっちゃ寒気がするが次、(後でしっかり聞こう)


 さっきまで、何してた?具体的には、スタッフと一緒に。


 「あぁ、お主らが攻略したおかげでモンスターゼロの自由探索ができるようになったからの、皆で一緒に少し覗きに行っていたんじゃ。もっとも、お主らを見つけて回収したのは妾だがな。」


おおう、ありがとう。(もしエズに回収してもらえなかったらどんな結末になっていたのやら。)


 「どういたしまして。お主がダメになってはデータが収集できんからな。、こっちも利益目的じゃ、、」


だから謝るなって道理は通らないと思うが、ここは言葉に甘えるべきか、、。そう考えると何だか責めずらくなったな、、


 「あんたにしては珍しいファインプレーだったわね。」


ふんと言いながら相変わらず冷たい態度でレナはそうエズに眼を飛ばす。


 素直じゃないなぁ〜っと一息ため息を吐いた後、質問の続きに戻った。


 「、タルタベースについてどのくらい知っている。」


俺は少し躊躇いながらもエズにそう質問する、。


 「タルタベースって、あの場所の名前よね。」

レナが俺の言葉に付け足すように言う。そして俺から何か意図を読み取ったように少し顔を変えて考え出した。


俺たちにわざわざ遺跡探索を依頼して、まるで狙ったかのようにタルタベースが出てきた。ダンジョンと一体化しているゆえに、調査ができない、だから俺たちを派遣して攻略してもらったと考えるのが邪道だろう。何ならここだったらアンジュさんのどの戦闘員だっているだろう、難易度が8だったからか?。仮にそれだとしても…、。


それに加えて、さっきのスタッフとエズたちの態度から察するに、まるで開けられる扉を目のまで待っていたような感じがした。

アンジュさんが出なかったのは俺たちが出たからだろうが、にしたって人が少なすぎる。遠足に行った小学生の教室が如く静かになった施設内は不自然しか感じない。


そしてそれを先導していた、エズが知らないわけがないと睨んでのこの質問だ、さて。どんな言葉が飛んでくるのやら?。


 「タルタベース?。もしかしてさっきの場所の名前か?。」


 「え。」


俺が感じたのは驚きだった。エズはプレイヤーのはずだ、なら。


 「、、そうか。紅月、そういえばあそこ場所名称の表示が出てなかったわ。」


 「っ!。そうか、、」


思えばゲーム特有の『──  ──』の場所表示が出ていなかった。俺たちがタルタベースっていう単語を知ったのはゴーレムの名称に使われていたり、実際に現場をよく探索したからだ、。

探索が未熟なエズには知るよしもないことだろう、何ならそれが仮に俺たちの救出であれば…。


 「、、さっきの質問は一旦忘れてくれ、情報提供なら後ででもする。」


 「?うぅむそうか。」


納得してくれたようで。


と、大体質問もとい尋問はこのくらいだろう。後は俺個人の問題だ。


 「、紅月。エズの対処はあんたに任せるわ。」


 「あ、あぁ。お前は」


 「今日は疲れたから寝るわ。」

レナは俺たちから離れ、別のところに歩いていく、どこに行くかはわからないが、、空気を読んでくれたのは確かだろう。


 「、お疲れさん。」


 「お疲れだ様じゃレナ。」


俺たちの言葉にレナは後ろを向きながら手を振り、どこかへ行ってしまった。もしかしたら俺と同様に整備室がどこかにあるのかもしれない。


 「で、妾に何か用があるのじゃろう?。」


 「。あぁいくつか、な。」


急に察しが良くなるやつだ、別に嫌いじゃないがな。


 「どうせなら整備室にでも行くか。」

っとエズはまるで当たり前のように、ばの主導権を握り俺を先導する。

俺はそれに対して特に不服さを感じず、ついていく。


 「…装甲に侵食があったってやつはどういうことなんだ?。」


期を見計らって、覚悟を決め、聞いてみた。もしかしたら俺が死んでいたかもしれないので少しは慎重にだってなる。何なら今も動悸が通常より早い、、。


 「あぁ、そのまんまの意味じゃよ。装甲があそこに住んでいた生物によって、分子レベルで侵食を受けていてな。行ってしまえば悪いナノマシンみたいなものじゃ、、。侵食が本体の間で届いていれば、いくらオートマタだろうとでも切り離すことはできん。

装甲をパージして大部分を落としたとしても、0,1ミリの侵食がその骨組み、いわゆる『フレーム』についていた場合、もう助からん。ゆえにほとんど侵食を受けていたにもかかわらず生きていたお主が不思議でたまらんのじゃよ。」


言葉をそのまま受け取ると、付着から侵食へ移る速さはかなり早いことがわかる。そして『大部分』という言葉や『ナノマシン』と言う言葉から推定するに、接触したら金属質の泥のようなもので自己的に増える能力、『自己増殖』の機能があることがわかる。


 (、、泥、っか。)


 「基本的にこれらの侵食能力を持つエネミーは神聖属性が特攻として聞いたりするものじゃが、うちにはそんなものないからな。結界石を応用した特殊結界で今は隔離中じゃ」

さしずめ神聖属性入りの結界石でFFバリアみたいなことで閉じ込めているイメージが用意に浮かぶ。まぁ処分自体はできるん…のか?。、できていたら今頃隔離なんてされていないか…。


 「んで、少し気になっていたんだがそのフレームっていうのはなんなんだ?。」


 「うぅむ。オートマタがそれぞれ保有している内部管制起動システム構成装置のことじゃ、まぁいわば内部駆動系のさらに内側、人間で言うところの骨組じゃな、ちなみに内部駆動系や、内部装甲は筋肉と現した方がいいじゃろ。オートマタのほとんどはつけておるぞ。」

エズは知っているにもかかわらず律儀に説明してくれる、わかりやすい例えも添えて。


 「なるほど、ん?でもフレームってその?非公式なのか??装備欄にも、ヘルプにも載ってなかった気がする。」

よくよく考えてみればそうだったなと思い出す。しかしエズのほとんどのオートマタはつけているということは、プレイヤーも例外ではないということなんだろう多分。なら、装備欄とかそういうメジャーなところにあるはず、しかしなかった。

なので俺はエズに質問する。


 「あー、そういえば未解放じゃったな。えっ〜と、ほれ!」


エズはポケットに入っていたものをポイっと突然俺に投げる。俺は少し慌てながらもなんとかソレを手に入れ、手を開く。

すると中には石が入っていた…


 [ピロン]


 【フレーム機能追加】


連絡音と共に、画面に大きな、トピックが表示される。詳しく載っている説明をざっと見たがエズと言っていることが同じだなと区切りをつけ、消した。


 「オートマタはその鉱石を手に持つだけで、フレーム機能が開放される。逆に言えば解放にはその石が必要になるがな、、」


 「つまり、俺はこの石を手にしていなかったから、開放されていなかったと?。」


 「うぅむ。」


エズは頷きながらそう答える。


俺は石を少し観察して、持ち主であるエズに返す。手に持つだけ、っということは別に後から手放したところで問題はないのだろう。


 「で、そのフレームがどういった感じに機能するんだ?。」


 「うぅむ、フレームは基本的にそれぞれオートマタの特色に合った形で分けられる。例えば、

戦闘に特化したバトルフレーム、

農業に特化したファーマーフレーム、

採掘に特化したマイニングフレーム、

職人やものづくりに特化したメイクドフレーム、

その他大勢ある。要はオートマタ版職業みたいなもんじゃ。で、そのフレームがあるとそれぞれ効果が上がったりする。妾のは、、。マイニングフレーム、レナも同様じゃな。」


 「…詰まるところ俺はバトルフレームって感じか、。」


 「うぅむ、そうなるな。おそらくお主は戦闘をする機会がこの先も増えるだろう、それを見越すならバトルフレーム一択じゃ。」


 「で、それをなぜ今更?。」


普通にわかる疑問だった、だって俺はそのフレームについて今まで説明がなかった、結果死にかけたり、死にかけたり、ルルカが死にかけたりと、結構危うい目にあってきた。

もしそのバトルフレームというものがあれば、ここまでひどくはならなかったはずだ。

詰まるところ俺はそのことをエズに質問する権利がある。


 「あ、えっとー。そのー。正直なところ、フレームを作るのには結構時間がかかってノー、ほらっ、主の場合じゃとあまりにいい動きするから、一生使っていけるタイプのやつがいいと思ったんじゃ。だからそれのために素材を揃えるのにも時間がかかって、、〜それとフレームは一度つけたら滅多なことがない限り外すことはできん!、換装もじゃ!、だからまぁ遅れてしもうたすまん。」


ハァ〜っと俺はため息をつく。まぁ、まぁまぁまぁ、今回はいいでしょう、っと心の中で納得させ、言葉を出す。


 「わかった、で、肝心のフレームは?」


 「もう完成間近じゃな!、あとはお主のリンク調整くらいじゃ、」


エズが腕を腰に当てて、胸を張りながら自慢げに言う。


そこまでできているなら、エズはしっかり客との距離をとりつついい仕事をしたってことになるな、流石に咎めるタチにはなれない。


 「なるほど、仕事を残しておくのは後味が悪い、今から行ってもいいか?。」


きっとエズも今がいいタイミングだろう、っとそういう意図を含みながら俺は言う


 「うぅむ!もちろん。なんなら整備室にあるからの、ささ行くぞ行くぞお〜」


そうして俺はエズの後を追っていく、。エレベーターに乗り、いつも通りガタンっという音を聞きながら動くエレベーターの中俺はエズにまたもや質問する。


 「なぁ、レナは生産職だけど、。」


 「あぁ、あれに関しては無理やりつなげた。ゆえに能力自体はバトルフレームの数十倍にも劣る、よって戦力的にはフレーム無しのお主と張り合いが持てるくらいになっておる。、普通はバトルフレームからの装甲を連結するのがメジャーなのだが、お主は生産職の道に進む可能性があったから、無理はできんかったのじゃよ、改めて言うがの。」


将来を見越して、っていうのは間違いなく本物だなコイツ、なんというか。

そしてレナはあの出力のまま,これからの戦闘に臨んでいくのだろう。いくら技術力でカバーできたとしても、エズが言っていたことを考えるに、バトルフレームの俺とはおそらく戦力がかけ離れることになるだろうな、、。


ま、俺が思うに技術力カバーが強すぎて今後の俺とレナの性能差が埋まることがないように感じてしまうんだがな。これが…




「今回は腕によりをかけて、っというか正直言うと自信作じゃ!妾が作ったフレーム、とくとご覧あれ-、」


ガコンッ!っと部屋に着く寸前の動いていたエレベーターが止まり、エズも違和感に気づき声を止める、すると次の瞬間。


 [フォォォォォォォォォォーーーン]


カチャっと音がした次の瞬間、部屋の電気は赤く染まりまるで空襲を合図するかのようなサイレン音が響き渡る。


 「、、な、なんと間が悪い!!」


 「?!…。、」




『topic』


"異生イレギュラー"レギオンは人類の敵。

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