三十八話「地下遺跡《3》」
前回のあらすじ
紅月が宝箱を開けた。+α
──遺跡ダンジョン2F・中継行き通路──
「お兄様がなかなか来ないから、こっちから迎えに来ちゃったよ〜。」
ルルカが、ニコニコしながら俺に対して言う。
「その言い方からして、ウミさん、レナはとはもう合流してるのか?。」
「うん。でも4人居ないと開けられないギミックがあって、、。」
立ち往生していたから俺を迎えにきたと。
「なるほどな。」
4人いないと開けられないギミックって、逆に言えば4人いなかったら突破不可ってことじゃ無いか。
、、読みすぎかもしれないがそのことも含めて難易度8なのか?、ボッチには無理っていうそういう。
(精神攻撃も兼ねてるとか、。もしそうだったら恐れ入るな)
そんなくだらないことを頭の中で考えていると出口が見えてきた、ルルカは少し早歩きをしながら俺の前を先に行き、向こう側に居る人影と合流していった、そして俺はそれがウミさんとレナだと、次の瞬間理解した。
「お待ちしておりました。」
ウミさんが俺を見るなり礼儀正しく礼をする。
「ずいぶん遅かったのね、落とし穴にでもハマったのかと思ったわ。」
対してこっちは毒舌、サービス神経の一つも存在しないのかよお前は。
「なら、ずいぶん原始的な罠だな。」
レナが言ってきた例え話に俺はツッコミを入れ反論する。難易度が高いならもう少し工夫が効いた罠があるだろうと心の中で思う、
「それに、仮にあったとしてもただの落とし穴ってことはないだろぉ。」
「、、。」
レナは俺から顔を背けて、別の方向を見る。
…、、もしかして本当に道中落とし穴のギミックがあったのか?
そう考えると少し怖くなってくる。それと同時に堅物女が引っかかっていたらと思うと思わず面白くなってしまうものだ、まぁ顔に出ないようにするが。
出たところはそこそこな大部屋、天井がかなり高い。入り口、というか出口は俺が来たところを含めて4つ、それを見るにルルカ、ウミさん、レナが俺が入ってきたところと別の穴を入り口を通ってきたのだと分かる。
「二人はさっきのところに居て、お兄様はそこの台の上に乗ってね。」
ルルカがそう指示すると二人は台座の上に乗る、ルルカも自分の持ち場につくかのように二人が乗っている台座とそっくりな台座の元へと向かって行く、
どうやら四人が台座に同時に乗っていないと発動しない系統のギミックらしい、ありがち?なのかどうかはさておき俺はルルカに言われた通り指定された台座の上へと乗る。
ルルカが最後に台座に乗り、1〜2秒程度経つと。
[ガコンッ!]
それぞれの台座がそんな音を立てて、ゴゴゴッとゆっくり下へ下がって行く。台座が地面と同じくらいの高さになるかと思えば、そのままゆっくり地面へと下がって行く、あぁ、エレベーター式かっと気がついたのはこの時点だ。
そして互いの顔が地面に入って行く様を見るというなんとも言えない光景、ちなみにルルカは背丈の関係で魔女帽の上のところしかもう見えない。こういうふうに地面に埋もれて行く様をみていると如何せん不安な気持ちになる。それはまるでさっきまで味方が土砂崩れに巻き込まれて生死不明な状態になっているかのような、そんな感じが近い、まぁ実体験では無いのだが、、。
360度どの方向を見たって土。明かりはさっきまでいた大部屋を照らす…なんの光だ?地下だから太陽光でも無いし、かと言って松明みたいな感じの熱ぽっい色でも無い、感じ的には大自然の中のにある、、廃教会的な?、うん、自分でも何入っているかわからない。
(まぁ、ゲームシステム系の問題かもしれないのであまり深掘りはせずにしよう。とにかく、、これどこまで下がるんだ?。)
さっきから、ずっとガコガコ音を立てながら下がり続けているが、一向に終わらない。
[バコンっ!!]
型が外れたような音共に、理解するよりも早く俺の体はガクンっと下に下がる。その感覚といったらまるで絶叫タワーアトラクションの垂直落下のような感じ、最高度に到達した乗り物がいきなり落ちる、。
そんな感じだ。
…少し言うのは嫌だが、表現的には
《タマヒュン》
に一番近い。
「っ!!、おああああ!!!!!!」
──遺跡ダンジョン・3F──
「ん?。」
私は足元に感じる冷気に気がつき、下を向く。
足元からどんどん広がる風景に、私はそれがこのエレベーターの到着点だとも、感じた冷気の正体だとも理解した。
心の中でつまらないエレベーターがやっと終わるという気持ちになり、次にはどんなことがあるのだろうというワクワクがあった。
体が全体が新しい場所の光を浴びると、私は足場の高さを確認する、降りて大丈夫とわかったらゆっくり慎重に降りる。
前にピョンっと飛ぶように降りた時お兄様に怒られたからだ、そして
「私が来た!!」
部屋中に伝わる声でそう言う!!
そして私が来た!!ということはみんなも、っと思い私は降り立った部屋全体を確認する、するとちょうどメイド服のスカートが足場に乗って降りてくる光景が目の前にあった。
「、、。」
それを私はただただ黙って眺めた。なんかシュールだなぁ〜っと思いながら、そしてウミが降りてきていることが確認できたので、他のメンツもっとまた部屋を見る、するとちょうどウミ隣の方から鉄のような足が…あのフォルムは…うんレナだ。
いや、嬉しいんだけど、なんか、ガチャの一番欲しかったキャラクターじゃなくて二番目が来たみたいな、そんな心境になった今日この頃。
まぁ!次は絶対にお兄様がくるだけどね!そう!それはまるで次星5キャラが来た時には必ずピックアップキャラが来るアレのような感じ!!しかも現実の過酷な天井と違いこっちはわずか数秒!せっかくだから、お兄様が降りてきたタイミングでっ!
そう思い私は1〜2秒待った。その間、ウミやレナの質問が来ているが全く私には聞こえない、今考えていることは一つだけ!そう!お兄様だけ!!!
「っ!お兄様ぁぁぁぁ!!!」
私は目を瞑ったまま両手を広げ、振り返りお兄様が降り立つであろう神聖な領域、もとい肉体に抱擁を…、−
[ペタ]
「。。。、え?。」
私は目がぱちっと開く、そして考える。
あれ?お兄様こんなにゴツゴツしていて砂っぽくて変なところで砕けて妙に一部分ツルツルしてたっけ?、
いやしてたな。少なくとも砂っぽさを除いて、
[ズリ、。]
私はくっついていた物体から離れる。そしてこの目で確認する。
…土砂…、、正確には遺跡の壁が崩れた後だ。
…つまりさっきの感触は土と、壁となってお互いレンガと…、それだけだ。
…、
「…。」
私は後ろにいるであろうというか気配がしている二人の方へ振り返る。
「、、お兄様は?。」
「…ルルカお嬢様、大変申し上げにくいのですか、。−」
ウミはなんだか話題を変えようと、しかし変えられないような感じを漂わせながら私に言う。
「あのバカとはまたハグれたみたいよ。」
レナがストレートにそう言う、それに対してウミは少し焦ったような困った顔をする。
…、頭が真っ白、お兄様、お兄様、
「お兄様まぁ、、ぁ〜。」
私はさっきまで一人でいた時の不安が抑えきれなくなり、その場で涙を流した。
「!!お嬢様!大丈夫!大丈夫です!!紅月様ならきっと無事ですから!ね。ですから気を確かに!!。」
ウミが私を抱きしめてそう言い続ける。でもキャパオーバーした私には、少しこの状態での時間が必要だ。
涙を流しながらウミの抱擁に対してこちらも返す。とても暖かくて、。
…、とても大きい。どことは言わないけど、、ちなみに私は小さい。
ぁ〜そんなこと考えたら涙がぁ〜。
「…ルルカってこんなにメンタル貧弱だったっけ?。」
「お嬢様も、最近紅月様がよく危険な目に遭うのでちょっと、、。」
「、、そういうもんなのねぇ〜。」
二人の会話を聞き流しながら、私は涙も流す。
お兄様、危険な目に遭うなら、私も一緒に。
──遺跡ダンジョン?F──
「…スラスターがなければ即死だった。」
俺ははるか上に見える落ちてきた穴を見ながらそう言う、かなり深くまで落ちたというか落とされたというべきか…、これも仕様なのか?っと思うもしそうなら頭が痛い。
ギリギリでスラスターを点火して着地時のダメージを軽減できなかったら今頃脚部位はとんでもないことになっていただろう、
もちろん悩ませる的な意味での痛さだ、ここまで来ると罠でこのダンジョンがが辿られているかのような気がしてならない、そしてその罠を突破するにしてもやはり魔法が必要だ、
ま、俺にはそんな便利なやつ存在していないんだが。
「と、ここは〜」
バイザーを下げ、目を覆う。風景は電子化され先ほどの肉眼で見ていた風景よりかなり見やすい、ライトもオンにするとさらに見えるようになる。
ずいぶん湿っぽいところに来たもんだ、ところどころから水の音が聞こえる、よくある水が抜けた感じの洞窟?、みたいな感じになってる。遺跡ぽさどこにいったよ全く…、
そんなことを考えながら俺は湿った地面を歩き出す。無駄に広く、無駄に先が続いていそうな道なき道を歩いて行き、奥へ奥へと進んでいく、少しぬかるんだ道はとても気分が悪いが…、
「また、面倒くさそうな敵とかが出てきそうな雰囲気だ。」
どうせなら少しは頭を使った敵と戦いたい、いんやぁ別に戦闘狂だとかそういうのじゃなくて、なんだかやりごたえが欲しい、そう具体的に言えば、、一定以上のダメージを蓄積しないと本体へダメージが通らないバリア持ちで、なおかつ戦闘パターンに隙がそんなになくて、目から特大なビームを放ってきて、フィールドが火の海になりかけそうな威力な、そんな上級者向けの敵がいてくれたらなぁ〜
っと思う。まぁ出会いたく無いという気持ちも一緒だが、大体出会わないことを前提に話した夢物語であり、実際にそんな奴がいたら思わず俺はこういってしまうだろう。
ありえへん、、って。
──数分後──
[ビーーーッ!!!!!!!バババババコーン]
「イヤイヤいや、ない…これはナイ!」
、、話をしよう、あれは今から36万いや、数分前だったか、まぁ俺にとってはついさっきの出来事だったが、君たちにとっては多分一秒後の出来事だ。
俺は変わらず、何もない洞窟を考え事で埋めながら歩いていた。いわゆる暇人だ。
「ま、そんな変なこと考えたって仕方ないし、さっさとルルカ達と合流しよう。」
多分だがきっと寂しがっている、俺の間が少なくともそう告げている。
いや嬉しくない嬉しくないぞ、まるで俺が嫉妬心に駆られているみたいじゃないか、、。
「嫉妬か。」
そういえば俺って嫉妬したことがない気がする。いや正確には忘れているが正解なんだろうが…うん。
如何せん未だに昔のことが思い出せない、何がトリガーになっているかは、、なんとなく想像はついている。
だが、きっと、よくないことだ、。
パンドラの箱っていうのと同じだ開けちゃダメ系のヤツ、。ま、こういうのは時間が解決してくれる、適当に箱が風化するまで待てばいい、ゲームじゃあるまいし。
たまに自分がやっているのがゲームじゃない感覚がある、ルルカに変かどうか聞いたことがあったが、
『うーん?、楽しんでるならいいんじゃないかな?私も楽しいし。』
っといい笑顔で答えてくれた、なるほどねっと話を理解しながらルルカはやはり可愛いとおもった。
ゲームにのめり込むことは別に悪いことじゃないことくらい俺だって知ってる、でもそうじゃないと変に俺の勘が告げてくる。
外れたことのない勘が変に警戒して、俺は余計にこのゲームを楽しむどころか現実味を帯びた別の世界なんじゃないかと思ってしまう。
…。少し考えて結論を出す。
「ルルカが、楽しめるならいいか。」
あの時のルルカの答えに対するお礼の言葉と一緒のことを言う、ちなみに本人は結構デレてた、そして可愛かった。
別に結論なんて仮初で十分、これはあくまでゲームなんだから気軽にやるべきだと。
本来の目的を見失わないように俺は歩みを早くする、一人で探索するよりもなんだかんだ全員で行ったほうがいい、(解けないギミックも含めて。)
考えながら俺はまだまだ続いていく洞窟を歩いていく、ほんっとうに何もない。製作陣の手抜きさが伝わってくるくらいだ、
「ん?、なんだあれ?。」
奥の方からの明かりに気がつき俺は早歩きで洞窟の岩に隠れながらビームサブマシンガン片手に様子を見る。
明かりは篝火だった、開けてくださいと言わんばかりの大門の両サイドに置かれていて、その前には箱?いや、なんか石レンガ製の正方形の物体が置かれていた。
何かのギミックだろうか?。…敵性反応はレーダーに感知しない、ということは大丈夫なのだろう、っと安心し近づく。が決してビームサブマシンガンは離さず持つ。
「、、。」
なんか嫌な予感がする。二つの篝火、真ん中に一つだけの妙な正方形の物体…
[ガシャンガシャンガシャシャシャシャンッ!!!!]
騒がしい音が天井を突き破って降りてくる、無数の鉄柵は先ほどまで俺が居た洞窟を封鎖した。
「っしまった。」
油断したまさか罠だったとは。いや、待てよ別にさっきの洞窟はほとんど収穫なかったし、なんなら塞がれても別になんの問題なしだ、だとしたらこの柵はなんのために…
[ゴガゴカン、キンッ!。]
「っ!!」
違和感のある背後からの音に俺はスラスターを使いすぐさま横に移動した。、
[ギィィィン、ボォーン!!!]
さっきまで俺が立って居た場所は一線のオレンジ色のレーザーが見えた直後、爆発。
すぐさま回避行動をとっていなかったらおそらくやられていたのは確実だった、そして悪い予感が同時に的中したことの暗示でもある。
俺は攻撃があった方向に振り返り、武器を構える。
「っ?!」
[キンキンキン、ガコンッ!、ギィ、ウィーン、ゴキン!!ゴーンゴギギュッ!コンッ!カコン、シュンジジジーピンッ!!]
…、。
[ギュインッ!!!!]
「…スゥ〜。」
俺は大きく息を吸う、その空気には驚き、昂り、喜び、それと少々の絶望が含まれていた。
今起こったことを簡潔に説明すると、、
箱がトランス○ォームした。、
[ビーーッ!!!]
「っ!」
そうだ!何ボーッとしてんだ俺ェ!今は戦闘中だっての!!!
紙一重の反応でまたも来るレーザーを回避、着弾地点が大きく爆発する。おまけにこの威力にどこか既視感を感じてしまう始末だ。そう、強いて似ているというならば
(ビームマグナム。)
それとおんなじ感じがする、似ているだけではっと一回考えたが、どうにも俺の勘がそうではないと言ってくる…アキネーターかよ俺の勘は。
[ビーーッ!!!]
第二波!、先ほどと違ってこれは難なく回避、初見殺しと言えば初見殺しなのだから、単体観察してみれば躱わせないレベルの話じゃない、レーダーを打つ際に1〜1.5秒程度の時間が生じるためそこさえ見切っていれば方向もわかる。
まぁ問題はこれを単体として見た場合であって、他の兵装との織り交ぜによってはどう変わるかわからないところだ、なんにせよ相手の手札を明かしてもらわなければ、、。
「ゲィザー!!」
俺の掛け声に反応して敵の真横を一瞬にして取る、直撃は免れない、相手から引き出すもしくは撃破してしまってもいい、
[ビーュィィィィィィィン!!!]
極太ビームが目の前の石人形に掃射される。ビーム全体が石人形に覆い被さり、俺はその後に現れるボロボロとなった姿を想像していた。が、
[ビーーッ!!!]
ビームの光の中から赤く光る点が見えた次の瞬間、先ほどのビームが俺のちょうど真横を掠っていった、あと少し角度がずれていて、俺が反応に待ち合わなかったら確実に即死コースだった。俺は頭の整理ができたタイミングですぐさま回避行動を実行し、ゲィザーを戻しながら、ポジションを変えた。
「ぶっな!!」
肩装甲がほんのり強火で焼かれた程度の損傷で済んだが、それを鑑みてもさっきと威力が別物だ、まるで手加減されていたようなそんな感じがする。さっきのビームは威嚇用でなんかならこっちが本命ですと言わんばかりの違い、冗談じゃない、
そして生物や、金属を容易に溶かすことができるゲィザーの一撃をまるで涼しい顔(顔がついているかはさておき)で受け止めていや、無効化している。
[ピピピピッ!!!]
俺は確認と威嚇を込めて相手にビームサブマシンガンを撃つ、すると案の定というか相手にビームの弾が届くことなく、なんなら相手の手前数センチのところでビームは弾かれてしまった。
(これは、相性最悪だ。)
今回こっちには高火力武器が備わっていない。あのバリアが無限に続くか、もしくはそうでなくとも先に不利になるのはこっち。
恐らく、物理・魔法障壁の同時発動か、もしくはフライのようにスキルによるるダメージ無効化シールドか…
どちらにせよ、あのバリアを壊さないことには本体へのダメージは与えられないと考えるのが
[ビーーッ!!!]
(回避ッ!!!!)
妥当だろうな。
、そうなるとやることは単純明解、アイツが俺を倒す前に俺がアイツを倒すまでだ、ここまでくると弾数を気にしている場合じゃなさそうに感じる。
、、ハァ〜。
「ありえへん、」
どうしてこうして俺の道には危険しかないんだ、少しはほのぼのさせてもらったっていいだろうに!!
『topic』
【SANONN】の世界にもゴーレムは居る、オートマタ、ホムンクルスとの違いは構造がより単純化されているかいないか程度である。またコスト面でもゴーレムというものは作るのが楽であり、前述した二つを作るよりもプレイヤーの中ではゴーレムを作った方がはるかに効率的だという考え方をもつ集団も存在する。
職業ゴーレムマスターも存在し、専門の小国もある。




