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三十五話「色々ありすぎて収拾つかない。」

前回のあらすじ


第二公式大会は無事終え、紅月はオートマタ生で初めて再起動を味わう。悪魔によって目覚めた紅月はどこか心にあった枷が外れたような気分になりつつも、状況整理。

エズの提案によって地下遺跡に潜ることを決定する。




 「─さて、そろそろ時間か。」


俺は出来上がったプラモデルを机にひとまず置き、時計を見る。時計の針は10時を指していた、もうすぐルカとやる時間だ、確か遺跡?を探索する予定だったはずだ。

エズが簡易的な装備を完成させていることを願おう。


 俺は無駄に部屋の場所をとっている機械に入り込む、このフルダイブにも慣れたものだ。


いつものようにアプリ【SAMONN】を起動させる。




 ──ゲレームMk ~Ⅱ・工場こうば──




 (エズは無事に装備を作ってくれたかな?。)


少しの不安を胸に、体は形成されていく。

広がる世界は工場こうば、少し騒がしいことが耳を通してわかる。


 「何かあったのか?。」


耳から聞こえてくる人々の声に振り向く、見てみればスタッフの何人が何かに注目しするように集まっている。

気になって俺はスタッフ達の方に近づいてみた。しかし当のご本人たちはそんなことをお構いなしに会議を進めている、すごい熱量と集中力だと感心する。


 「うぅむ、ロックオンシステムがあれば可能だと思うんじゃが。」


 「だとしても、難しくないですか?。第一今回は狭い場所での戦闘ですし、それにテストもなかなか進まず。」


どうやら何かの装置について話しているようだ、もう少し近づいてみよう。


 「あやつなら、使いこなせるじゃろ。」


 「しかし、やはり改修に時間を。それか、いっそのことオミットを──、」


スタッフの一人がそう言ったところで俺とエズの目は合う、エズは一瞬驚きはしたものの、次の瞬間には不敵に笑って見せた。まるでちょうどいいところにという言葉が今にも飛んできそうな顔だった。


 「──なら、本人にやって見せてもらったらどうじゃ?、そこからどうするか決めても良いだろう。」


エズの視線にスタッフ達も気付き、その場にいる全員俺の方を見て固まる。どうやら俺は何かさせられるようだ、


 「……っわかりました。」


スタッフは折れたように脱力、渋々エズに従うような態度になる。話がひと段落したところでそれぞれ机の上に置いてある水を飲み始めたので、俺は思わず聞いてみた。


 「で、何されるんだ俺。」


まぁその光景を見て、何だか碌でもないことされるんじゃないかとうすうすは感じていたが……、


 「何、簡単な実験じゃよ。──新兵装の、な。」




 ──ゲレームMk ~Ⅱ・闘技場──




ということで、俺は新しい兵装を右背部に背負い久しぶりに訓練場へ、毎度のこと思うが本当にここは広い。


ステージの入り口に立つ、。


 (懐かしい、BOのせいで酷い目にあったことが自然と蘇る。)


まるで一年だったかのような懐かしさ、しかしだからと言ってまた味わいたいか?っと聞かれたらもちろん答えはノー!一択だ。


 「で、ここに来たってことは新兵装の実験ってことだよな。」


俺は制御盤の方にいるエズに向かってそこそこ大きい声で言った。それに対して堂々たしているエズは


 「うぅむ。最終テストという名目でな、最後にお主に試して欲しかったんじゃよ。」


と言う。そういえば第二回公式大会準備時にも最後にはテストプレイヤーを任されていたな。


ふとさっきのBOのことが頭をよぎり、一気に不安になった。


 「なるほど、ところで──。」


 「大丈夫じゃ!、今回は!本当にBOブルーオルタみたいなヤバいやつはおらんて!!」


 「お、おう。」


エズは焦ったように弁解というか、説明してくる。俺はその言葉に押されるように納得、、これはあの時の説教がかなり効いているんじゃないか?っと思い。次エズを戒める時の方法の一つとして覚えておくことにした。

少し可哀想だが、たまにエズはやらかすことがあるので対策しておいて損はないと俺は思う。


 「そ…それじゃあ早速始める!!ダミー展開!!」


気を取り直したような焦りを含んだ大きな声でスタッフ達に指令を出す。


スタッフが制御盤を動かしたかと思えば、向かい側の方に地面からダミーが現れる。直立不動で簡易的なデザイン、まさにダミーっと言った感じだ。


 「、、エズ、使い方は説明でわかったつもりだが、本当にこれ使えるのか?。」


 「なぁに、大丈夫!。少しイメージすればできる筈じゃ、、多分。」


「心配だなぁ〜」っと小声で言いながら、目の前のことに集中する。


 (えーっと、まず、相手に照準を合わせて、自分の背中から射出して、。)


カキンっと音が背中から聞こえ、糸に繋がれた縦長い装置が自分の横につく。小型のスラスターが息を吸うような静かな音で装置を対空させている。


 (そして、相手を、──撃つ。)


狙いを定めそう思った瞬間、隣の装置からビームが放たれ、ダミーの頭を撃ち抜く。

ダミーは膝から崩れ落ち地面に倒れ落ちる。


 「おぉっ!」


かなり距離が離れていたにも関わらず速度減衰の兆し無しの威力、役目を終えたように装置は有線を辿るように戻っていく。


 「ふむ、ここまでは予想通りじゃな。次は紅月、他兵装と混じりえて戦闘をしながら使ってみせろ。」


えっ!っと驚いた瞬間地面からコンテナが現れ、カパッと開く、中にはビームサブマシンガンとサーベルが入っている。


 「いきなり難易度高くないか?。」


そう言いつつも俺は二つを装備して、準備を整える。


 「お主ならいけるじゃろお主なら。」


 (酷い過大評価だ。)


そう思い、目の前を見るとダミー達は各々武器を構え、こちらに向かってくる。


心を戦闘モードにしていざっ!。

バイザーを下ろし、敵全体を捕捉する。

数は6、全員アサルトライフル装備、バースト式ではなく、連射式。スラスターは無し、


ここまでわかればビームサブマシンガンで倒すだけでもいいのだが、今回の目的は新兵装のテスト、ビームサブマシンガンはいいとこ武装解除程度くらいの認識で挑もう。


まぁ問題は俺がこの装置をうまく使いこなせるかってところなんだが、、



  「よーい!はじめ!!」


エズの掛け声が訓練場全体に響き渡ると同時にダミー達は攻撃を開始、こちらを狙ってただ一直線に撃つ。


 それに対して俺は懐に飛び込む。

通常ならば目の前というかほぼ全面から放たれる攻撃に突っ込んでいくものではないが、不思議とこの時の俺にはタイムアタック意識があった。合ったなら仕方ないということで、


 (まず右からだ!)


一番右側に位置するダミーを目標に接近する。しかしその行手を阻むように他ダミー達からの掃射が飛んでくる。今回は装甲とスラスターに余裕がなく、なおかつ球数が格段に多い。


 (ならっ…いけッ!)


俺の意思に反応するかのように装置は飛び出しダミーへ、一目散に向かう。

それに対してダミーも射撃を行うが、的が的だから、なかなか当たらず接近される。

そして「今だっ!」っと俺が念じると装置はダミーの体を攻撃始めわずか2発程度で戦闘不能に。


 (よし!、次だ!。)


次に近かった奴へと1発攻撃し、武器を落とさせる。アサルトライフルは宙を舞い、地面に落ちる。2発目を放とうとするが、エネルギー切れを起こしたらしく、そのまま戻ってくる。この場合仕方がないので


 [ビビビビビビッ!]


ビームサブマシンガンで相手を廃車にする。

蜂の巣にされたダミーは、パーツがバラバラになりそのまま落ちる。


 (これエズに怒られるのかな、?)


戦闘中だというのに呑気なことを考える、しかし追撃は来ない、相手はリロードに入っている。


一斉発射は瞬間火力自体は高いものの、全員がリロードに入る。この時誰も火力支援ができない以上敵に大きく隙を晒すことになる。そこが弱点だ、


 (次っ!)


俺はまた装置を起動させ、飛ばす。

恐らく持つのは15秒、それもビーム3発折り込み済みの。


 (今度はエネルギーを調整して!、)


装置でまず胴体を攻撃バランスを崩した隙を見て接近、ビームサーベルを抜き。

ダミーを蹴り倒し刺しこむ。


頭に風穴を開けてやった瞬間、残りのダミー達がリロードを終了してこちらに攻撃を仕掛ける。

戻していた装置をバレルロール回避と共に射出し、4体目を狙う。


俺は5体目を狙いに向かう。


攻撃命令を出し、装置に攻撃させ。ダミー四体目を撃破。

指示を出している自分も負けてはいけない、ダミーが真っ正面にいる自分に下手な射撃をする中、俺はビームサブマシンガンで確実に撃ち抜く。


 [ピピピピッ!]


さっきはオーバーキルをしてしまったが今回は最低限の時間で落とす。


 [ババババババッ!]


こちらを淡々と狙い続ける最後の相手。

最後は威力を調整させ、華々しく散らせようと、装置を起動させ、飛ばす。


相手に向かっていった装置はジジジっと音を立て、溜まったエネルギーを放出する。


レーザーカッターのような動きを見せ、敵の首を斜めに焼き切る。


頭はボトンっと落ち、体が続いて倒れる。


わずか20秒ほどの出来事、変な意識でやっていたからか、まだタイムを縮められると思ってしまうが、、面倒なのでやめよう。


 「オーケーオーケー。終了じゃ!お疲れじゃったのう紅月、」


エズは俺にも聞こえるくらい大きな拍手をして、余裕の表情で言う。


 「ゆーてそんなにだけどな。」


バイザーをあげ、戻ってきた装置を確認する。

初めて使ったがすごい技術だ、

バイザーに仕込まれているロックオンシステムによってこっちはだいぶ楽して動かせた。

こっちはバイザーの指示に従って射出と発射をコントロールしただけだ、大まかな誘導などはシステムのサポート有りき、というのがさっきの戦闘。


 「ふむふむ、どうじゃ諸君。紅月なら!使いこなせたじゃろう。」


その言葉を発すると、スタッフ達はヤレヤレと顔を見せ、何だか不満そうな雰囲気を出す。目の前の結果には逆らわないがどことなく「そうじゃない」と言いたそうな感じだ。


うん、エズのそういうところ確かに疲れるよなぁ〜っと俺も思った。


そうして、その場を後にして工場こうばに戻ろうと訓練場を出ようとした時。


 「あの!」


後ろから声をかけられたので振り返ると、一人の眼鏡をかけた女性スタッフに声をかけられた。


 「さっきはすごかったです!どうやったんですか?!」


そう言うグイグイくるスタッフに俺は2歩後ろにさがる、それを見たスタッフはあっ!という顔をした。


 「す、すみません。さっきの戦いを見ていた者で、その装置私がテストで使ってた奴なんですよ。」


 「あ、は、はぁ。」

俺は言葉にならない言葉で返事をした。

なんと、目の前のスタッフも使っていた奴らしい、ということは俺以前にも何回かテストされているのか?、と考える。


 「私の時、いえ。私達の時は貴方みたいに分けて使えなかったので、どうやったらあんなに上手く使えるのかなぁ〜って!、」


スタッフさんは目に炎をと輝きを密かに灯しながら俺に質問する。


 「どうやって、。」


考えたこともなかった、ただ敵を倒すことを意識し続け、方法としてかなり所を取っているだけ。

戦闘時に考えていることの大半はそれだ。


 「あ!べっ!!別に!無理して教えてもらうくらいでしたら──、」


女性スタッフが次の言葉を発そうとした時。


 「お主ぃ〜遅いゾォ〜っと、何しとるんじゃ??」


エズが大きなあくびと共に現れる。


 「エ、エズ様!!」


女性スタッフは体を急にピシッとさせ、固まる。その様はさっきの感じからは想定もできないような緊張感が走る。


 「む?、アンジュか??紅月に何か用かの?」


エズが流れるように言葉を言う。どうやらこの眼鏡をかけた女性スタッフさん、アンジュさんというらしい。


 「そ、その!先ほどの訓練場でのテストの全貌に感化され、アドバイスをもらおうとっ!!。」


アンジュさんは場の状況を伝えようと、焦りながら話す。


 「ふむ。なるほどのぉ〜、、っとすまん紅月こやつはアンジュ、この施設の中のテストプレイヤーの一人、っと言ってもお主ら達と違うがな。」


 「っ。」


アンジュはその言葉を聞くと少し顔を俯ける。


テストプレイヤー、恐らく《プレイヤー》と勘違いしてしまうことを察して、「お主ら達と違う」という言葉をチョイスしたのだろう、詰まる所このアンジュさんはNPC。

だから俺たちと違うっか…

だがアンジュさんはこの言葉を悲観的に取り、「お主ら達とは技量が違うがな。」っという風に捉えたのだろう。


これはエズの言葉選びか悪いかもな、いや間違いなく悪いか。


 「なるほどね、それでアンジュさんは俺のデモンストレーションに感化され、アドバイスをっと…」


言うてなんだかそんなに感化されるほどの物じゃないと思う。うん、だがここは黙っておこう。

この人からはどことなく職人魂的な何かが感じてくる。こういうのに何か言うのはかえってアウェーだと俺の勘が告げてくる。


 「は、はい。そ、その私少しでも良いデータを残せるようにみんなの役に立てるように。っと思った次第で、、」


なるほど、結構ネガティブ思考な子だ、悪い虫がついたら振り払えないような気が弱い。

でも勇気というか原動力は素晴らしい。で、それを踏まえて自分の感覚的な発想をどう伝えようか、、俺は悩む。

昔からと言ったら、、ってまぁほとんど薄れた記憶だが、、確か人にコツを教えるのって本当に苦手だった記憶がある。

ルカにも「お兄様ちょっと何言ってるか、わからない」っと真顔で反論されるレベルの教え不上手だからなぁ〜。

本当にどうしようかと腕を組んで悩んでいると、隣にいたエズは少し不敵に笑いながらこちらに近づいてきて、



 「まぁまぁ、アンジュ。こやつはな、戦闘中考えていることは一つだけじゃ。」


エズは俺の肩に手をポンっと置き、アンジュさんに向かって人差し指を立てる。

勝手に手を置かないでくれと言いたくなりましたな、俺。


 「そ、それは?。」


エズの言葉に吸われるようにアンジュさんは食いつく、そして俺はなんだか嫌な予感がすっごいする。


 「それはのぅ、いかにして相手を倒すか。それだけじゃ、」


……悔しいがあっている。とても悔しいが理にかなった答えにぐうの音も出ない。

そしてアンジュさんは俺の方を見る、「それは本当ですかって?」って目で。


 「、少し癪に触るけど…本当。確かに冷静に分析することもあるけど、良いとこそれは感覚頼り、頭を使うとなると敵をいかにして倒すか、それだけ。」


俺はハァ〜、っと手を横に出しそう言う。

相手に無駄に緊張してもらってもだし、本当に癪だけどエズの言う通りなんだよなぁ〜。


 「そ…そうなん、ですか。」


アンジュさんは冷静に動揺しているような顔になりこちらを見ている。次の話を聞きたい?、であっているのかなここは?、とりあえずコホンっと一回仕切り直して俺は話し直す。


 「うん、まぁこんなつまらないアドバイスを頼りにしないほうがいい。結局のところ経験か天命なんだよ。後者は個人的に全く信じてないけどね。」


天命だとかふざけた理屈並べているくらいなら努力あるのみ。

、、自分で言ったことに対して何言ってんだ俺。っと冷静に考える、ほら、アンジュさんもポカンっとなっている。

やっぱり俺の即決力はあだとなってるなぁ〜、


 「ま、本能のままに動くバーサーカっと言ったところだな、ってイテテテテテ!!」


俺はエズの口の軽さを再起不能とするべく頰を引っ張る。無言と暴力の圧力がエズに襲いかかる、紛れもなく俺の仕業だが。


 「なんで、一言余計なのかなぁ──。」


また一回ため息、ちょっと最近疲れている気がするのは気のせいだろうか…できればそうで合って欲しいと願う俺。


 「──ほ!、ほんとのことじゃろイテテテテェッ!!!」


ぐうの根も出ないので行動に表す、これ大事だと俺思う。


 「、まぁ俺の技術っというかやり方は全部経験あってのものだし、努力し続けて、経験を積めばきっと報われるよ。」


少し真面目っぽいことを俺は言う、アニメじゃあるまいし、こんなセリフ。っと言ったことを少し後悔した。


 「っ!…はい!!ありがとうございます。」


そう元気一杯の言葉で良い少し困った顔をしていたアンジュさんは最後は笑顔で走っていった。


 (少しあしらった感じになってしまったが、、頑張ってほしいなぁ〜。)


俺は走って行く彼女の背中を見ながら、そう思った。

やっぱり柄じゃない、人に何かいいこと言ったり教えたりするのは…


 「いっつッ!離されるんじゃっ!!妾〜!!」


エズの叫び声があの後ろ姿の応援に見える、が本人には全くその気はなく単純に離してほしいだけ。




 ──ゲレームMk ~Ⅱ・工場こうば──




工場こうばに戻った俺はエズによって装備の最終確認を行なっている。

装備の内容自体はさっきの訓練場とほぼ同じに見えた。


 「結構よくできてるな。」


俺は装備全体を見ながら上から目線でエズに言う、昨日今日の話にも関わらずコイツは本当に仕事をする。

そして本当にいつ休んでんだか気になって仕方ない。


 「当たり前じゃ!妾の技術力を甘く見るなー!」


エズはさっきのことが気に食わなかったからか怒りを露わにして俺に言う。

それでもしっかり仕事をしてくれるのは嬉しい、


 「この後ろについてる装置、キャノンとして使えないのか?。さっきのじゃわざわざ射出しなきゃならんし、」


戦闘時に感じた不自由さはこれが原因だったと改めて考える。この武装の取り回しの悪さはそこそこ致命的なはず、一見超技術とロマンの塊のように見えるが実際は威力は十分だが、取り回しの悪さが全てを台無しにしている逸品っと言ったところか。


 「できなくないが間に合わんだろ、。」


エズは明後日の方向を見ながら言う、その視線を俺は目で追いエズと同じ方向を見る。

そこには走ってきたかのように息切れをしていたルルカとウミさんがいた。


 『はぁ、ハァ〜。』


そういえばと思い俺は画面に小さく映る時刻を確認する、ログインしてからざっと30分くらいが経過してきた。

いつも俺より先にログインしていたルルカ達が今ログインしてきたということは何かあったのだろうか、、


 「二人ともどうした?。」


俺はそう言いながら息切れしている二人に近づき様子を見る。


 「お、お嬢様、が、やらかしました。」


…これは寝坊とかそういう理由じゃなく、たぶんご当主の説教で時間を食ったってことか、。


 「──今度は何をやらかしたんですか?。」


俺はまた大きくため息を吐きウミさんに問う。

悩みの種がまた一つ増えそうだと、そんな予感を感じながら。


 「学校のテストを隠して、それが見つかりました。」


小学生かっ!!!っと大声で言いたくなるくらいの気持ちを抑えつつ、俺はとりあえず次の質問に切り替える。


 「、、聞きたくないが何点だったんだ?。」


そこではないだろうっと、思うかもしれないがここは大事だ、これによってルルカをフォローするかどうかが決まってくる。


 「99点。」


ルルカは少し頰を赤くして恥ずかしい横顔を見せながらそう言った。

…、


 「えぇ〜。」


俺は思わず言葉に出る、99点で何故隠す?。もしかして初歩的な間違いで恥ずかしすぎて誰にも見せられないとか?、やばいますます気になってくる。


 「だ、だって!お兄様に教えてもらったところなんだよ!!それなのに、100点取れなかったから。」


…さっきのことがフラッシュバックして俺は思った。あ、たぶんルルカ俺が教えたから99点になったのでは?っと、俺の教え方はかえってルルカの点数を下げる要因になってしまったか、、。


 「──なんかごめんな、教えるのが下手で。」


俺はすんごく申し訳ない気持ちになりながら言った。


 「いやいや、まず隠したことで怒られているんじゃ、お主関係ないじゃろ。」


エズが斬新すぎるツッコミを放つ、確かに、確かにその通りなんだが、、何故だか罪悪感が、、


 「そ、そうだよお兄様は何も悪くない!わ、私が悪いんだから!!」


ルルカは俺に優しい言葉をかける。やっさしいなぁ愛妹は。


感情に浸りながら俺は立ち直った。

そして本来の目的である遺跡探索の話に乗り出す。


 「コホンっ、さて今回お主らには遺跡探索に乗り出てもらう。ちなみに難易度はレベル8初手からぶっちぎりの上級だが、、お主らなら大丈夫じゃろ。」


エズが真面目な顔して俺たちを見ながらそう言う。ちなみにダンジョンの難易度について、

10が最大で1が最小、なので俺たちはダンジョンデビューという名の高難易度ダンジョン攻略をしなくちゃいけない。もっと適任がいたのではっと一瞬思ったが、いないから俺たちなんだろう、っと思った。


 「8はまだ攻略したことなかったけど、お兄様がいるなら私、通常の3倍強くなれるんだよ!」


ハッタリなのかはたまた本当なのかルルカは元気一杯の声で言う。兄は嬉しさと不安さでどうにかなりそうだよルルカ、もちろん今のは二重の意味で。それととにかく3倍にするのはやめなさい、せめて赤く塗ってから言いなさい。


 「私は一応ギリギリでしたが8を攻略したことありますよ、二度とやりたくなかったですが…。」


ウミさんが言葉を落とし、言う。

たまに垣間見るウミさんの実力は一体なんなのだろうか、といかルルカが攻略していないってことはウミさんは単独で潜り込んだのか?、

あれ?、イメージではダンジョンって仲間と挑むタイプのやつじゃなかったっけ?。

、、ダンジョンって何?。


 「まぁ、この機会に慣れてくれ。」


 ((この機会って、。初めての人に8を挑ませるものじゃないと思う。))


心の中で俺はそう思った、めっちゃ思った。(多分二人も思った。)エズは鬼教官だったらしい、、気をつけなくては、そしていつか隙を見てエズを教育してやる。(怒り)←少しエズにストレス溜まってる人


 「それともう一人、お主らの助っ人として入る奴が来るぞ!!」


エズがそういうと、俺たちは顔を見合わせて期待した、どうやらエズにもスズメの涙程度の優しさはあったらしい。


 「おぉ、誰だ?。」


俺は間髪入れず聞いてみる、それに対してエズはフッフッフーっと不敵に笑いながらこう言う。


 「レナじゃー!」


エズがそう言うといつのまにかかけてあった幕が開き中から武装したレナが出てきた。


 「おぉっカッコいい!」


ルルカは俺とまた違った構造をしている装備に興奮し、目を輝かせながら言う。

確かにモデリングは良い、さすがエズだ。だがしかし!


 「紅月様とはまた違った構造ですね。」


そうだねウミさん、確かにそうなんだけど、しかし!


 「じゃろじゃろ、今回のは紅月の装備と差別化を図るために結構工夫したんじゃよ、わし頑張ったえっへん!!。」


エズは絶壁を突き出しながらドヤ顔をかます。つまり俺のは前座だったってことか?っとエズに対する殺意と評価が反転した。…、


 「イヤイヤ!!なんでレナなんだよ!!」


この中で一番否定的な俺、それは異質であり浮いていることに変わりはない。

しかしだからこそこの場にいる奴らは理解した、そういえばレナと紅月はコンビが最悪だったということを。

そしてレナも紅月の一言で怒りが0→100に一気に上がった。


 「あら?、私が加われば百人力間違いなしだと思うんだけど。そしてあんたみたいな頼りなく、経験がないヤツに出る幕が一番少ないと個人的に理解してくれてると思ったんだけど。」


 「ほぉ〜(怒)言ってくれるじゃないか、散々無理無駄無意味と叫んでくれた難攻不落な大会に優勝したのはどちら様でしたかぁ〜、あっとすまない俺だったなぁ〜。」


 「はんっ、敗北者がいて初めて勝者がいるものよ。大体あそこの全員と戦っていない、なおかつただ生き残った奴が何をほざいているのやら。」


レナは上から目線で鼻で笑いながら俺の評価を無理やり落とすが如く言葉を放つ。しかし俺はまだ負けていない。


 「おっもしろい冗談だなぁ〜戦いにおいて死んだ奴は敗者、生き残った奴が勝者これ基本なんだぞ?そんな初歩的なルールも理解できないやつに、同じ土俵に立つ権利はないと思うがなぁ〜、」


俺も負けじと相手を見下し倒すように言う、ルールをわかっていない奴が大会に出場できないのと同じように、そんな初歩的なことも理解できない奴は今この場から辞退してくれても構わない。ということだ、そして堅物女レナもそれを理解しているようで、さっきより殺気が高まった表情へと変わっていく。


 「ふふっ。別に私は降りたって良いのよ、アンタたちをフォローするようにエズからはお達しだし、そしてその決定権は私にある。


 (、、ま!それは建前で本当はデータ収集が目的なんだけどね!妾!!)


とかいう声が聞こえた気がする。そしてそれに騙されたレナは変なところでポンコツだ。

ここは少しカワイソウ(怒)なので黙っておこう。




 ──ゲレームMk ~Ⅱ・工場こうば──




視点は変わって炎上を見るルルカ班


 「あわわどうしようウミ〜。」


ルルカはあたふたしながら燃え上がる現状の鎮火方法をウミさんに訊ねる。そのテンパリ具合といったら頭が真っ白になるほど、、。


 (流石に間に入れる気がしませんね。紅月様に私の攻撃が届いたことはありませんし、レナ様を狙ったところで装備の恩恵で弾き返されるのは目に見えてわかること。)


ウミさんは考えた、紅月の超反応を突破する兆しは、以前やった模擬戦練習時に見つかることはなかった。それだけ紅月の素が強いということで違いはないが、それが今回、防ぐことができない要因にもなっている。

エズの装備を冷静に評価しているウミさんはわかっていたアレは化け物の装備だと。

下手すればこうむるのはこっち、ならば手を出さないのが吉。しかしながら、この止まることを知らない燃え盛る炎を一体誰が収めるのか。

ルルカの問いに対してウミさんは答えることができなかった。

ただ今はただただお嬢様を守ることに専念する、もし火の粉がこちらに来る時は私を盾に逃げてもらおうとまで考える。


 あまりに苛烈なレスバに互いの我慢は限界値に達するところにまできていた。


そのせいか紅月の背中には青紫虹色が混ざった蝶の羽が、

レナには深緑黄虹色が混ざった蝶の羽が、


その二つを見るやその場に居合わせた者たちは全員理解する


 (この光はまずい!っ)


それはあたかも世界が崩壊する兆しを指すような絶大なオーラ、一般人二人がなぜこのようなオーラを放つことができるのか、そしてどんだけアンタら仲悪いんだ、っと突っ込みたくなるような惨状。


しかし一刻の猶予もないこの状況を止めたのは


 「お主らー!!ストーップじゃ!!」


 『!?ッ』


エズだった。


しかしその行動は迂闊、二人のヘイトをダブルで受ける未来になることは誰もが予想できた。しかしエズは動いた、ここで動かなければ堪忍袋という破壊装置が爆発し、工場こうばどころかここら一帯が火の山になることを予測できる、そしてそれがエズにとってどれだけまずいことか、知り得るのは本人のみ。


 「お主ら!!そんなに白黒つけたいならダンジョンで勝負するがいいじゃろう!!」


そうここでエズは、敵役から審判役へと切り替わることによって自身にこれからくるであろう被害を逃れたのだ。

今回エズはダンジョンを勧める側、詰まるところ敵となるはずはないのだ。なら二人のヘイトは自然と互いへと戻っていく。


 『具体的に?(怒)』


二人はエズの思惑通り、敵対心はなかった。しかしながら両者共に溢れた怒りはエズに容赦なく降りかかる、体全身がビリビリと震えるそれをグッと堪えエズは言葉を発する。


 「ダンジョンでどちらが多く敵を仕留めるとか?。」


今にも喉が口ちぎられそうな覇気を浴び続けてエズの心はどんどん余裕を無くしてくる。


 「なるほど、だが俺の方が少しばかり不利じゃないか?。こっちは武装がそんなにないんだが?」


 「あらっ?怖気付いた紅月、さっきの優勝者の気迫がまるで子猫のように弱々しく見えるわ。」


 「はっ、そんなわけないだろうそれはきっとお前の勘が悪いだけだ、もう一回頭を作り直した方がいいんじゃないか?。」


 「私は(怒)一回も作り直された覚えはないんですけど、、。」


 「ほぉ〜、そのバカさ加減から、一度くらいは頭のネジを取り替えてもらったと、、勘違いした失礼なことを言ったなレナ。」


 「さんをつけなさいよ紅月ぃ!」


火蓋はさっきの状態へと逆戻り、導火線は後1㌢もない、なんなら1㍉もないかもしれない。

今火蓋は切られる、、ところだった。


 「──っ!!お主らァー!!!!!!」


ドッカーーンっとまるで火山が噴火したような声がその場に響き渡る、さっきまでいがみ合っていた恐竜(紅月とレナ)はすぐ真横で起きた大噴火に目を奪われ、唖然とする。

怒りは消え、頭は真っ白になり、エズは赤いオーラを放つ。


 「いい加減にせぇぇぇぇぇい!!!!さっきからつまらぬことで喧嘩しよってからに!!!もう妾は疲れた!!疲れ切った!!おぬしらのせいじゃ!!!」


エズは今まで見たことのないような鬼顔をし、俺とレナを指差し、激怒する。ここでやっとエズの怒りが心の芯に届いてくる、俺たちは逆鱗に触れてしまった。

とにかく、やばいとわかった俺は対話をしようとドウドウっと手で宥めようとするが、、途中から「あっ、これ逆効果だ」とバカを出してしまった、そしてその言葉が届いたのかエズは怒りがーー…治るどころか悪化した。

もはやここまでくるとバーサーカー、人の話は受け付けない。



 「とっ!にっ!かっ!くっ!じゃ!!お主らァァァァァァァァ!!!戦うならダンジョンで行ってこい!!ルールは簡単、ボスは10点雑魚は1点のルール方式!!最後にポイントが高かった方が勝ち!!それで入ってこいバカ共!!」


エズの逆ギレによってその場は退散、スタッフたちはエズを抑えつつ、俺たちと誘導してくれたスタッフはとりあえず、一呼吸おく、、




 『、、エズってあんなやばかったっけ?。』


俺とレナは奇しくもシンクロしてしまうが、今は啀み合う気にもなれない、エズの一瞬触発の言動は気持ちすら無にしてしまうほど高威力だった、おかげでこっちは放心状態が今溶けたところ。


 「えーと、僭越ながら申し上げますと、エズ様は怒られるととても跳ね上がるタイプでして、自然放置以外に解決策がないくらいでして。前に怒った時は雨嵐の大嵐状態で、仕事効率は20%落ちました。は、はは。」


 ((とんでもなく申し訳なくなってきた。))


戻ったらエズに謝ろう。それと二次被害を受けてしまったスタッフさんが他にも…あなたたちの犠牲は無駄にはしない。

心の中で敬礼をし、二度とエズを怒らせてはならないと心に深く刻んだ。





『topic』


"SAMONNニュース"の記事目次


【第二公式大会は特に不祥事も起きず、終了。】


【優勝者は!紅月というオートマタプレイヤー!!】


【SAMONN攻略班が予測する国同士の戦力具合。】




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