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三十四話「表と裏」

前回のあらすじ


突如現れたゲテモノに悪戦苦闘しつつも、決死の覚悟で紅月を含むプレイヤー達は撃破に成功した。

完全なる勝利とはいかなかった戦いだったが、最後は紅月だけが残っていた。




 ──???──




 「───。」


暁は気がついたら真っ白の何もない空間に一人寂しく歩き続けていた。ここは何処だ?っと思い足を止めようとする、しかし足は止まらない自分の意志では止まらないとわかると自然と割り切ってしまった。


 「──」


真っ白の空間を見回す。


 (真っ白だ。)


何も書いていないキャンバスのような真っ白な空間、そこをなんの理由もなく歩いていた。


 少し経って暁の足は急に止まった。


まるでここから先は動けないことを足が知っているかのような感覚がし、暁は自分の止まった足を見た。するといつのまにか足には何かがくくりつけられていた、


 (鎖?)


その鎖は後ろへ続いているようで暁は気になりそのまま目で追う。すると後ろには真っ白な世界と真逆の真っ暗な世界が広がっていた。

後ろを確認しなかったわけではない。たった今真っ暗になったと、不思議と分かった。


そして真っ暗な世界の中に何かが見える。ボヤけていてとても見れるものではないと暁は思った。しかしそこにある光景を自分は知っていた。


 「─お兄ちゃん」


 (何処からともなく聞こえる声、何処か懐かしい感じがする。)


暁がそう感じた時


 「オニィちゃん」


 (ちがう、ちがう!)


違和感に気づいた、優しくくる声は次第に恐怖を感じるまでにつぶれた声に変わっていった。


 (オニイチャン!──オニイチャン─!!!)


 目がなく、口が底なしのように暗い少女が暁の元へと走ってくる。


 (っ!!)


逃げようとする暁。しかし足に括り付けられている鎖がそれを邪魔する。足をなん度も引っ張り必死に逃げようとするも、次の瞬間には少女が目の前に来ていた。


覚悟を決め、目を閉じた暁。




 ──ゲレームMk ~Ⅱ・工場こうば──




 「お兄様!!!!!!」


聞き覚えのある声に目を開けた、そこにはルルカが居た。俺は自分が台へ寝かされるとわかったのは数秒後だ。


 頭を抱えながら上半身を起こす。


 「お兄様大丈夫?!」


 「っ、今のは一体。」


そう言葉を漏らした次の瞬間。


 「全く、いきなり唸りを上げたからびっくりしたぞ。」


俺の背後からエズが現れる。スパナとレンチをそれぞれ片手に、カンカンと打ち合わせながら手暇を収めている。


 「エズ?。」


俺はエズの方を振り向き、しばらくボーッとする。


 (今のは夢か?。)


だんだんと脳の処理が追いついてきた時、俺にエズが言う。


 「それよりも一番びっくりしたのは、うなされた程度で大声でヌシの声を呼ぶルルカだったが。先に言ったじゃろう、再起動には変な事は基本起こらないと。」


俺の視点はルルカの方を向く、ルルカは少しムキになり


 「だって!お兄様がなんだか、苦しそうだった、、から、、。」


怒られるんじゃないかとシュンとした態度へと変わっていくルルカ。


 「だとしても、少し落ち着きが足りないと思いますよ。」


ウミさんがルルカに注意を促す。


 ウミさんのことを認識すると同時に周りを見渡す。そこは装備を作っていた格納庫、自分はそこの台に乗っていると俺は瞬時に理解した。


 「ウミだって!お兄様が心配だった癖に。」


 「っ!そんなことはありませんや、全くといわけではありませんが、」


ウミは顔を背け少し頰を赤くしながら慌てる。


 「──、何があったんだ?。」


状況が把握できない俺はその場で問いを漏らす。頭に手を抱えて記憶の整理をしながら、、。


 「?。なにって、、」


 「何って優勝したんでしょアンタは。」


話を遮るように別の場所から足音を鳴らしながらレナが歩いきた。白衣と頭にゴーグルを身につけながら


 「…大会に?。」


 「それ以外なんの優勝があるのよ?、プラモはこの世界にないわよ。」


レナの鋭いツッコミが俺に飛ぶ。1〜2秒して俺はその優勝の意味が第二大会優勝だと言うことが今の一言でわかった。


 「お主ら当然の如く言うが、こやつはその間ほとんど脳ミソが使えない状態じゃったんじゃぞ。はぁ〜、修理が…。」


エズは俺をフォローした、が後ろを向き大量にあるボロボロとなった装備を見て思わずため息を吐いてしまった。俺はそんなエズを見て一周回って申し訳ない気持ちになる。


 「それで、優勝賞品は?。」


 「妾が保管しておる。、お主のことだ、どうせ新しい装備に使うつもりじゃろうからな。」


エズが管理しているというのは一見不思議に見えるかもしれないが、エズからしたら今後装備を作るのは自分なのだから別に保管してても何も問題なしという結論。紅月は働かないの頭脳でその事をひっそり理解した。


 「お兄様は悪夢…?、を見ていたの?。」


ルルカが寄り添いながら俺へ聞いてくる、俺は先ほど夢のことを思い出そうとするが、何も思い出すことはできなかった。夢の内容は起きたら忘れる、よくあることなので俺は


 「──、いや忘れた。」


っとルルカに言いはぐらかした。


 「それより優勝したこと以外の情報が全く出てこないんだがー。」


 「妾が説明しよう、すっごく簡単にな。まずお主はエネルギー量をオーバーする攻撃をあの時放った、正直言って完全かっんぜんに予想外だ。」


オートマタはエネルギー量に上限がある。コアの強化や外付けの貯蔵タンクなどで量を上げることは可能だ。しかしそれを鑑みても無限という形には行き着かない。

いくら紅月がエネルギーをコアからの出し続けたとしても引き出せる量には限界があるということだ。

それをオーバーすることはなくはない。しかしエズは元からオーバーしないように色々工夫を凝らしていたため、今回のことはエズにとっては《予想外》に当たるほどということだ。


 「あー。」


俺は自分の行動を思い出す、恐らく最後に放った

裁定破壊剣ジャッチメント・ブレイカー》が原因だと考える。


 「あの一撃は妾が組んだシステムではない。それが今回の引き金となったことは間違いない。正直お主が寝ている間に色々調べたが特に変わったデータはなかった。一つを除けば、な。」


 「?、一つ??」


俺はエズが言った意味深な言葉に反応し、勢いのまま質問した。ただ俺の勘はこれがまた新たな波紋を呼ぶことを静かに感じ取っていた。


 「、、お主の攻撃データから魔法反応が出た。」


 『!!』


一同が驚きの声をあげ、固まる。

おかしいそれはおかしいと俺は思う。

オートマタは結晶石を通しての魔法の使用を除き、魔法は使えない。今回エズは結晶石を使って装備は製作していない、ならつまり通常では俺は魔法が使えないはず、はずなのだが。


 「な、何かの間違いだろ?。」


俺は疑問と戸惑いを混じらせた声を出し言った。それに対してエズは首を横に振る、


 「妾が作った計測器は正確だ。シュミレーターを正直何百とお主の形を擬似再現したが…お主の結果にはどうしても行き着かなかった。」


 「、、。」


レナは真面目な顔をして話を聞く。そこには戸惑いの心はあるものの、冗談や皮肉をいえるほどの雰囲気では無いことを彼女自身が感じていた。


 (、、俺はどうなる?。)


ふと紅月のは思う。このゲームにおいてイレギュラーのことが自分に起きた。となると次に考えられるのはそのイレギュラーを《どうするか》ということ、正直実感が湧かない。


 「ま、そんな深刻な顔をしなくても良い。別にお主を煮たり焼いたりするわけでもあるまいし、、」


エズが俺の顔をじっと見たまま答える。興味がない、というよりかは「興味がないように振る舞わないと」という意思を感じた。


 「そうねぇ〜、逆にそんなことしようものなら今、この杖を出して殴ってきそうな少女にどんなことされるか、たまったもんじゃないわ〜。」


レナは相変わらずの投げやり態度でその場を解説する。


(杖を出して殴ってきそうな少女…。恐らくルルカだろうな)


見ると本当にそんな感じが出ていた。それをウミさんがギリギリのところで抑えている。

この話題を変えなければルルカの態度は変わらないと思い俺はとりあえず台を降りることにした。


 「そういえば、た…、フライは?。」


一瞬言い間違えそうになったが、質問してみる。


 「ぬ?、あのエクストラタイプか?、あやつなら知らぬ合間に消えていたぞ。」


 (知らぬ合間に…か、アイツらしくない)っと思いながら適当に流す。


 「(大会が終わってから)何時間経った?。」


 「ム〜、大体1時間半じゃな。」


そんなに経ってない、、のか?。いや結構経っているか、、そう考えるとオートマタは再起動に時間がかなりかかるらしい。

、、デスした方が早いのでは?。っと思ったがしたくないので「やっぱりいいや」と思う。


 「にしても、これからお主らどうするつもりじゃ?。」


 「?、どうするって?。」


エズの問いにルルカが答える。。


 「いやほらの、第二回公式大会が終わったとなると第三回までかなり時間に間があるはずならその感動するつもりか聞きいておきたくてな。」


 「特にこっちは決めていなかったけど、、。」


目先のことしか考えないのは俺の悪い癖だ、まぁそれでなんとかなっているんなら話は別だが、、しかし今後の予定を考えるとゲレームで少し観光、その後またサイモンに戻る。…


 「もし決まってないなら少し冒険せんか?。」

エズがスパナとレンチを適当な作業机に置き、顔の汚れを拭きながらそう言った。


 「冒険!!?。」

ルルカがすごい食いつきでエズに聞く。俺はびっくりしながらも話を聞く。


 「おうとも、最近ゲレームの地下からまた新しい遺跡が出てきたと報告があがってな、もちろんダンジョン化も、もちろんしているようだ。」


 「要するに俺たちにテストプレイヤーをやらせたいっと」


 「うぅむ!、対人戦の練習ばっかをしている紅月にもいい練習となるのではないか?。」


確かに大会に向けてやっていたのはあくまで対人戦、普通のモンスターとエンカウントはまだしていない。

対モンスター対策もここで入れておくべきかもしれない。


 「一石二鳥ですね。」

ウミさんも同意気味、となるとあとは俺だということ。


 「まぁ、確かにいい機会だし行ってみるのも悪くないか。」


 「やったー!」

ルルカが両手をあげ喜ぶ。


 「ところで俺の装備は?。」


 「簡易的なやつでいいならカタ落ちした装備ならあるが、。」


・カタ落ち:装甲素材を選ぶ際に幾つか候補を決める、しかしさまざまな理由から結局選ばれることなく終えた物指す。


簡単にいえば予選まで行ったが決勝までいかなかったやつということか、まぁ今回は個人戦じゃないしルルカやウミさんがいるから恐らく問題はないだろう。


 「差し支えなければそれで良い。」


 「OK明日までには作っておく。お主は手伝わんでもええぞ今回は疲れたじゃろう、しっかり休むが良い。」


エズの言葉で引っかかり時計を見てみる。針は6時を回っていた、普段ならやめている時間だ。

大会に夢中になっていたことは認めるがこんなに経っていたとは、っと改めて驚かされる。

そしてエズはまた『明日』っと言っているあたり本当にいつ休んでいるのか怪しんでいる自分がいる、本当にこいつ(現実では)人間なのか?


そう思いながら俺達はログアウトする、レナは〜知らん。




 ──ゲレームMk ~Ⅱ・工場こうば──



 

 「…。行ったか、」


妾は優勝者一行のログアウトを見て、周りの人員をかき集め紅月の装備を作り始める。


 「…紅月、一体何者なのだろうか。」


小声でそう漏らし手を動かしながら考える、あやつならこの世界の常識を壊せる。一般的に考えれば敵は多いが…、妾は味方してやる。

妾自身の目標を叶えるために精々役に立ってもらいたいものだ。


 「おっと、そろそろ本職の時間じゃな。」


妾は周りのスタッフに一声かけ、白衣を脱ぎ適当に置く。全くもってやれやれだ、女王とトップを併用してやるのは。

『topic』


・紅月のコアがなぜ《エネルギー無限生成型》なのか?。


オートマタには《貯蔵型》と《エネルギー無限生成型》という二つの種類があり、紅月は無限生成型になっている。

《貯蔵型》はある程度決まった分しか使えないが、その分リソースは多い


《エネルギー無限生成型》無限にエネルギーを使えるが上、時間が経つにつれ回復していく。しかしリソースは少ない。


《貯蔵型》が短距離走、《エネルギー無限生成型》が長距離走みたいな見方で問題ない。


大半のオートマタは《貯蔵型》を使っている。何故か?、理由は簡単、《貯蔵型》は技術発展によって今の時期では《エネルギー無限生成型》に遅れを取らない量のエネルギーを補完できるようになっているためである。

無限にあるエネルギーは確かに有効ではあるが、無限に等しいエネルギーがあればそれで代行できるという考えだろう。


さらに追い打ちをかけるように言えば《エネルギー無限生成型》は時間経過のみでないとエネルギーが生み出され続けない。


《貯蔵型》は宿屋などでエネルギー補給が可能であり、一回休んでしまえば良い話になってしまう。(《エネルギー無限生成型》は宿屋で休んでも回復しない。)


《貯蔵型》はリソースつまり使用可能量は多い、高速戦闘における発揮力は十分に高く、技術発展により容量が大きくなっているため、長期戦にも向いている。

対して《エネルギー無限生成型》はリソースが少なく、高速戦闘における発揮力は不手であり、長期戦を想定されている戦いも《貯蔵型》に軍配が上がっている。


その影響か《貯蔵型》は多くのオートマタプレイヤーがコアとして使っている。



しかしそんな中で紅月は《エネルギー無限生成型》をコアとして選択している。

理由は主力となるビーム兵装の存在だ、

ビーム兵装は新たに開拓された技術であり、高い攻撃性と汎用性により従来の武器と一線を隠す活躍が見受けられる、しかしながら稼働に必要な膨大なエネルギー量はたとえ最大強化された《貯蔵型》だとしても短期戦でエネルギー切れになるレベル。


そのため紅月は《エネルギー無限生成型》という制限なく、エネルギー供給が可能なコアを選んでいる。

これによりバカスカビーム兵装を撃ったとしても、《エネルギー無限生成型》なため時間が経てば回復できる。

エズの協力によって使えるリソースやエネルギー生成量を追加オプションによって強化しているので、滅多にエネルギー切れを起こすことは理論上なくなっている。



例 


従来の武器 100Eエネルギー消費 《毎分》


ビーム兵装 10000(エネルギー)消費 《毎分》


 ・《貯蔵型》100000Eエネルギー


従来の武器 《1000分》


ビーム兵装 《10分》


 ・《エネルギー無限生成型》∞E (エネルギー)

【リソース100000Eエネルギー

毎分5000回復


従来の武器 

・《1000分(通常)》

・《1000分×5000(回復量)=5000000分÷100=50000分(追加分)》

・《50000分+1000分=51000分(結果)》


ビーム兵装 

・《10分(通常)》

・《10分×5000(回復量)=50000分÷10000=5分》

・《10分+5分=15分(結果)》


このように、回復量とリソースをしっかり強化していれば事実上《貯蔵型》より《エネルギー無限生成型》の方が長持ちする。


攻撃が仮に命中しなかったことを鑑みると、数発撃って終わりの《貯蔵型》よりかは《エネルギー無限生成型》の方がまだ何発か撃てるチャンスがある。



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