三十二話「第二回公式大会《5》」
前回のあらすじ
武闘家が現れた!紅月はどうする?。
「ハァッーア!!!」
豪快な『右突き』いや、『右フック』がシールドに当たりギィィイン!っという金属音と火花を散らしながら切り抜ける。
そして次に『左突き』、軽く来るイメージからは想定できないような重心が乗る。
その後はラッシュ、合間合間に蹴りを入れて、総乱舞という名称が似合うほどに早い。
「オンドリヤァ!」
両手『突き』の思わぬ威力によって俺はズザーっと、後ろへ飛ばされる。
(シールド耐久、残り72%。)
全て盾受けできたのは奇跡といえるだろう。いや、相手は盾を直接的に狙ってきた、おそらく盾を壊す気できているのだろう。
して、どうするべきか、近接戦では相手に分があることに違いない。だが生半可な攻撃では倒れないだろう。
「いっひぃ〜!どうなってんのその盾!!硬すぎにも程があるでしょ!」
いや本当に。設計した本人が言うのも何だが確かに硬い、硬すぎる。
俺はそんな相手に同情しながらマイクロミサイルを展開、その隙にマウントされたヒートブレイドを取る。さらにこの地帯を抜けるべく、撤退行動をする。スラスターを後ろに吹かし、武闘家から距離を取る。
「なっ!こ、こら待ちなっっさい!!」
武闘家は、マイクロミサイルを避け、流し、叩きしながらこちらを追撃する。
それに対して俺はまた盾を展開、防御を実行する。
「硬いけど!アッマァーーイ!!」
武闘家は『突き』をしながら突撃、またもやゴォンッと音がなり,ラッシュが始まる…訳には行かせない!!
俺はビームネイルを盾から展開、相手の『突き』に合わして拳に刺し込もうとする。
「いっ!!」
すると相手はギリギリのところで反応し、体制を立て直す為か、流れるように左後ろにあった足で回し蹴りをし、牽制する。それを俺はヒートブレイドで受け止め,一瞬ギィンの音と火花が散るが相手が損傷しているのが確かにわかった。
「っっ、くうぅ。」
相手は一瞬のうちにステップを踏み、下がるそして左足を抑えながらピョンピョンっと片足立ちをして痛そうにする。
普通なら足が切り離されているところをなぜこの武闘家は大丈夫なのか,とても問いたいところだが今は逃げるが勝ちだ。
武闘家を警戒しながら逃げに徹する。ダメ撃ちかのようにマイクロミサイルをばら撒きながら。
「に!逃げるなぁ卑怯者ぉ〜〜!!!」
マイクロミサイルを避け、流しながら聞こえてくる武闘家の声を聞いて、、
足がやられている以上無闇に追っては来れない。そう考えた俺はやっと安心できた。
隙に俺は灼熱地獄の地帯から抜け出すことにも成功した。
そして灼熱とくればなのか、超えた先に待っていたのは山岳地帯。先ほどよりかは総合的に地層適性はいい方だが、、やはり目立つ。
こういう場所は細身の方が身を隠しやすく、奇襲にもってこいなのだが如何せんこの装甲の分厚さゆえに、奇襲は難しい。逆に奇襲が来る方が多いと見られる。それにしてもさっきの武闘家から敵に遭遇していない、人が減ってきたということなんだろう。
あらかじめレーダーをちょくちょく見て索敵はしている。幻術使いの件もある、二人いたっておかしく無いのが常だ。
あまりに敵がいないのでその辺の岩に座る。
(それにしても)
っと俺は先ほどの戦いを振り返る、先ほどの武闘家はかなり相性が悪く、思った以上に素早く撤退できたことを幸運に思う。
近接戦闘になった際に不利になるのはこちら、もちろん相手にもよるが一番厄介なのが、あーゆう武闘家だ。武器持ちの奴に対してはビームサーベル、ビームダガー、ヒートブレイド、と3兵装分あるが、残念ながらマニュピレーターで殴るなんていうのは論外中の論外。もしあのまま、レディゴーーー!!!!!なんてしていたなら今頃マニュピレーターはガッタガタになっており、武器を持てるかどうかすら危うかっただろう。銃手が引き金を引けなくてどうする、って感じだ。
よってあの場合は誰かに倒してもらうか、逃げ続けるかのに二択しか許されないのだ。
ちなみにビスト神拳なんてものは使えない。なぜ銃と剣があるのに拳を使うのだろうか、知っているのは一角獣とそのパイロットくらいだろう。
それにしても良く自分は逃げ切れたと思う。
あの武闘家のワンコンボをモロに受けてしまっては今頃ボロボロ状態、盾で本当に受け切れてよかった。まぁ、その盾もかなり傷ついてしまったが、こっちは全身装甲と違い物理にも魔法にも耐性がある一級品。硬さも申し分なく、ビームサーベルを持ってしても切り切れるかは難しいくらいだ。
(さて、そろそろ移動するか。)
ここに居ても別によかったのだが、長居するとなんかの拍子で痕跡を残しかねない。例であげるなら、装甲が岩にあってその削れ具合でバレたりとか…現実的では無いと考えるか、あるかもしれない可能性と取るかは自由だが、俺は基本後者を選ぶ。
──第二回公式大会・メサステージ──
山岳地帯を乗り越え、地風は変わっていく。
赤い大地、メサだ。
多少の高低差と独特の色をした地色はまさに目立つ。無論俺も同じだ。
敵を探して歩き続ける、しかし一向に敵は見つからず、後半戦になってくると、ほとんどのプレイヤーが温存体制に入ることくらいは頭に入れていたが、
(まさか,あの武闘家以降全くと言っていいほど見ないとは。)
しかし他にすることもない、いつ戦闘になるかわからない以上考えなしの休憩は控えた方がいいだろう。
[ピピーーー!!]
ほら来た。
っと思いつつ俺は戦闘体制を取り,盾とビームマルチアサルトを両手に構える。どこからくるかはレーダーが知らせてくる。正面、しかも飛行タイプこちらに真っ直ぐ飛んできている。わざわざご足労いただきどうも、っと挨拶がわりにビームマグナムを撃つ。
独特な発射音が鳴り、熱がシューっと出る。
こちらに一直線上だったからか,相手は回避、しかしギリギリの回避だったせいかバランスを崩しているのが見えるので,もう一撃。と思い構えると相手から見慣れた光線が飛んでくる。
ドンッ!と音を立てて近くの地面を抉る、赤い砂煙が自分の装甲に降りかかる。この攻撃は前にも見たことがある。エクストラタイプの、あの天使族だ!!!
目を凝らして見ると大きな天使の羽が見える。
(間違いない、奴だ。)
先ほどより警戒する。あの天使族は確かにこの手で葬ったはず、しかし死体確認をしなかったのは俺の落ち度だ。正確には[できなかった]が正しいが、アレで倒していたと思い込んでいた自分が情けない!。
今度は確実に狙い撃つ。
照準をグッと構え、真正面からくる敵を狙う。
しかしなんとタイミングが悪いことか,相手も攻撃を仕掛けてくる。光線がまたもや俺の手前に当たり、大きく砂煙を起こす。
知覚に頼れない以上、レーダーに頼るしかと思い込んだ時にはすでに敵は真ん前まで来ている。後ろに大きく下がり大剣を抜き、振りかざす。しかしこれを読んでいたのか相手は回避、。
そしてその瞬間、砂煙が晴れ、天使の姿が露わになる。ところどころ傷だらけになっており、俺はチャンスと捉えた。
だがそれを問屋が卸さないようで、相手はゼロ距離で光線を飛ばそうとする、それを警戒して盾を相手の方向に合わせて、後方へ回避。
相手が発射した光線は拡散され、辺りの砂に落ちていく、。
「まて!、俺は戦いに来たんじゃない!」
次の瞬間相手の声と思われるものが、その場に響く。基本的にこういうのは喋らない俺だが、少し気になったので口を開く。
「じゃあ、何をしに来たんだ?。」
しかし依然として戦闘体制を解かない。相手は両手を上げ、降伏状態しかし。こういう時こそ慎重に、だ。
「お前に手伝ってもらいたいんだよ。、」
「何?。」
このバトルロイヤルの世界で一体何を協力的にしろと,互いに殺し合い勝った者が全ての世界で…。
チーミングをするにしても、相手が格上でなければいけない。この場合、相手が俺より優れている。簡単な摂理、命が惜しくなかったら加われが正解か?。
「…そうだな。ちょっとここからは勘になるが、、紅月。よく話を聞け。」
「なっ。」
こいつ、今俺の名前を呼んだ。この大会出場者は基本、外部との連絡を取る方法がない。取れるとしたら違反行為か、、。はたまた俺を知っている人物か,。
体全身の警戒とが上がる。武器の引き金にそっと指を添える。
「勘違いするなよ!お前は元から知ってるやつなんだって、ちょっと待て今顔を見せる。」
カチャっと音が鳴り、仮面を外す。その素顔は、
「!!なんでお前がここに?!」
そこにあったのは鷹橋の素顔だった。すぐにメインカメラを捉え始めたが、間違いなく鷹橋の素顔だった。
これには本当に驚くしかない。
「はっ、驚いたか?俺だってゲーム上手いんだぜ。」
圧感。鷹橋がゲームうまかったこと、そして鷹橋が大会に出場していたこと、二重の意味でのショックに俺は,しばらく頭が働かなくなった。
「幻じゃないよな。」
さっきの幻術使いの一件もあるのでもしかしたらぁ〜、、っと思い口に出す。
「、お前らしくない、そういうの一番嫌いだろ。」
、、鷹橋だ、普通のプレイヤーが、魔法を使える世界でゲームを遊んでいるくせに、魔法が嫌いとか誰がわかる。俺は生まれてこのかた、物理法則と、SFしか信じてこなかった。
それを知っているのは俺の知人くらいだ。
「本当にお前か、、。」
本当に信じられない、どんな星の巡り合わせかと疑いたくなるレベルでだ。
「しつこいな、あ。このゲームでは《フライ》って名前だからよろしくな。」
この変なネーミングセンス、やはり鷹橋だ。
俺は暁→紅月という形になっているがこいつに関しては鷹橋→フライ、、うん。、どう考えたって原型がない、いやそっちの方が安全なのかもしれないが、、。
そう考えながら俺は銃口を下げる、しかし武器をしまうわけにはいかない。
「、さてさっきまで殺し合っていた間柄。信用してもらえないと思うが、、付き合ってほしい。」
真剣な眼差しでこちらを見る鷹橋、無駄に真剣な顔できたので、こっちは少し覚悟してしまう。
「実はこの大会、やべー奴がいる。はじめに言っとくが、超反応とか、大魔術使いなんて者と比較対象にならないくらいだ。現に俺も中々手ひどくやられた。」
…鷹橋の傷ついた装備や、焦りのように感じ取れる言葉から嘘は言っていないように見える。
先ほどの動きも初めて戦った時と比べて、かなり出力が落ちている感じはしていた。
回避の甘さや反撃、いや対話が目的なら反撃に関しては見ない方がいいか。
「で、そのヤバい奴って誰なんだ?」
俺は単刀直入に聞く。そうすると鷹橋は苦笑しながらこう言う。
「いゃ〜、、誰って言われても、説明しようが無い。一言で言えば【ゲテモノ】だが、、細かく説明するのはちょっと難しすぎる。とにかく、俺とお前二人の力を合わせてどうかって感じだ。」
「、、なるほどゲテモノね。よし協力しようってなるか?」
普通はならないだろう、情報が少なすぎる故に相手にしたくない。それに今この場の鷹橋が嘘をついている可能性がなくもない。疑いたくなるだろう、殺し合っていた間柄の提案なんてものは。
「なるだろ。紅月(お前)なら」
鷹橋は俺の問いに関してなんの曇りもなく言い放った。
声の大きさは通常で、誰にでも聞こえるような声量でなければ誰かの心に響くいい言葉でも無い。
しかし俺の心には何故だか笑ってしまうような言葉に受け取れた、まるでそれが全てを考えていない、ただただ目の前に居る顔も見せない親友を思ってのことだと。
俺の勘の良さはそこまで捉えていた。
十分だ、
「な、なんかおかしかったか?!、」
鷹橋がムキになって反論してくる、それに対して俺はただ大声で笑うのみ、しかしこれでは失礼だなっと思い、なんとか笑いを堪える。
「いいや、悪い。そうだな、お前の知ってる紅月なら賛同するだろうな、。…だからお前の知ってる紅月がお前の考えに乗ってやる。」
俺は笑いを残した声で鷹橋の意見に賛同した。それを聞いた鷹橋は一瞬不穏な顔をするも,最後にはいつもの能天気な顔になり手を差し出してくる。握手だ。
「、。」
俺は鷹橋が出してきた手をしっかりと握る。体温は一向に感じないが確かにそこには鷹橋の一途な思いが込められていたと思う。
合意を確認した俺たちはそっと相手を伺いながら手を離す。俺は警戒を解除し、武器をしまう、鷹橋、いやフライもそれを見て、槍をしまう。
「で、勝気は?。」
「無いに等しい。」
おいっ、と反論したくなるがふざけて言っている感じじゃ無いことはすでに伝わっている。ここからは仕事の話だ。
「、、弱点、、もしくは呼べるものは?。」
敵を知るにおいては鉄則。しかし回答はなんと無く想像できる。
「無いに等しい。」
知ってたというか,わかったてた。そう考えるとフライはマジで逃げてきたってことになる。
牽制とそこらで、苦戦したからでは無く。
本当に敗走、そう考えると、あの程度の損傷は奇跡的なのかもしれない。
「とりあえず、俺も同志を集めて見る。もっとも奴に[やられていない]が限定になったりするが、」
俺や鷹橋はゲーム内において知人が少ないそれゆえに、このような同盟関係を結び得るためには相手の強大さを知ってもらう、知るだけでも命の危険性があるということ、それを今こいつは言ったということ。
それだけでも相手の底知れなさが見えてくる。
「そうだな、。」
[ビビー!!]
俺が言葉を発しようと同タイミングで休憩のアラートが鳴る。
本当にタイミングが悪い。
「それじゃあ、またな。」
「あぁ、頑張れよ親友。」
俺たちは拳を合わせ互いに、次の準備を始め出した。




