三十話「第二回公式大会《3》」
前回あらすじ
突如として現れたエクストラタイプの天使族、紅月はこれを《最高出力形成破壊剣》によって切り伏せる。
『くらえぇ!!《最高出力形成破壊剣》ーーーッ!!!!』
振り下ろされる光の大剣、敵を容易に飲み込み。画面が光一色に染まる。
観客たちは唖然としている。ふふんすごいだろうっと心底思う妾。
(にしても、こやつちょうど良いタイミングだのぉ。)
妾は人数が表記されている場所を確認する。数は500、つまり。
[ビー!ビー!!]
会場内がアラームで鳴り響く,画面に囚われていた観客全員が現実へ引き戻される。もちろん妾も半分くらい引き戻された。音と共にステージを映していたスクリーンが【準備中】の文字が出ているホワイトスクリーンに切り替わる。
500人と250人、100人、50人と減っていく度に休憩時間が設けられる。つまり今から休憩時間、観客たちは映画を見終わったような感情に浸りながら、次の画面に映る光景を考える。『〜〜〜!〜』
それか,妾みたいに研究に使うやつも、、。なくないように見える。『〜!!!』少なくないだろうな。
そして妾は思うんじゃ『〜!〜!!〜〜〜〜!!!』
「お主ら静かにせんか。」
「これが静かにしていられる!?お兄様の武器から特大な剣が出たんだよ!?お兄様は大丈夫なの?!?」
「あの、オールラウンダーと聞いたのですがあれはなんですか??(怒り)」
「エズ、、。注文があるんだけどいいかしら。」
ルルカは兄大事さに必死、ウミ殿はぁ〜紅月が心配だからか、、?笑っているが全く目が笑っていない、正直言って怖すぎえるぞ。レナに関しては、そんなに紅月に勝ちたいかと言わんばかりに『私にもあの超火力を!!』っていう目をしている、お主が超火力好きだとは前々から知っていたんじゃが、なんだろう、ウミ殿と違った意味で目が怖い。
「まぁ、待たんか。紅月に関しては大丈夫じゃ、そもそも使用者が死ぬように作ったら妾の沽券に関わる、だから大丈夫とは行かんがエネルギー貯蔵的に紅月は大丈夫じゃ、だから落ち着かんか!。」
いくらオートマタがエネルギー使いすぎでも死ぬ種族だからと言って焦りすぎにも程がある。そんなにやわではないわ普通。
「正直言うけど私見だけで無事かどうか判断するのはどうかと思います。」
ウミさんのダイレクトメッセージが妾の心に刺さる。「専門家の正しい確認のもと判断した結果です。」でも通りなさそうな雰囲気。
「お兄様に何かあったらタダじゃおかないからね。」
わ、妾もしかしてSSランクプレイヤーに殺されちゃう、、?。
「ねぇ,エズ。さっそくだけど商談を。」
お主は一旦落ち着けレナ。この大会が終わったら話だけは聞こうと思う。
「まぁまぁ,とにかく。安全じゃ、ほ、ほら!妾の計測器にもエネルギーが大幅減っているが、問題はないと、、。」
『…。』
あ、あれ。もしかして妾、地雷踏んだ??。
ていうか、妾のこの計測器を元に言えば問題なかったのでは…待てよ。なぜその考えに至らなかった…?、あ!。これ渡したら終わりだからだ。
「それをよこしなさぁい!」
「いただきますっ!!」
ギャァァァーー!!!
──第二回公式大会・控室──
「ハァ〜、あぶなかったぁ〜。」
ズルズルっと壁に寄りかかりそのまま脱力し座り込む。人数が500人切ってなかったら今頃スラスターとエネルギー切れで荒野に叩き置かれるところだった。残しておいたエネルギーがみるみる回復するのがわかる。
「にしてもつい熱くなりすぎた。」
目の前のことに熱心になるのはとてもいいことだがそれゆえに周りが見えないのはいけないことだ。ハァ〜こういう管理は大雑把だからなぁ〜俺。部屋の整理整頓も基本的には厳しい方だし、って今は関係ない、関係ない。
「次の弾を装填しないと,」
これが全部メカニックとかがやってくれたら一番楽だが贅沢は禁止だ。この部屋の中では俺だけが自分の管理ができる、詰まるところ弾も自分で装填しないといけない、あらかじめ装填方法はエズに習っておいたというかコレ知らなかったら設計者としてエズとかに怒られてしまう。
装填するのはマジックミサイル、くらいか?
他は大体ビーム兵装だし,焼けていても、(オーバーヒート)
休憩時間内には元に戻ってるし、あ!そうだ『AMAM』、これはもう使えないな。2回目から外していくとして、、代わりにといってはなんだがシールドの増加パーツを。
「面積は広くなったから、多少は盾受けしやすくなったか、まっ全部俺次第なんだけど。」
休憩室にある画面を見る、マップはさっきと同一のものだがエリアが格段に狭くなっている。さっき俺が戦っていたところも行動禁止エリアになっている。あいつは倒せただろうか、、?。
戦略をこの場で考えていても仕方がない、またランダムワープだ、しっかり休ませてもらおう。
「、、これから先あんなインチキバリアを張った奴みたいなのが出てくるとなると、、思いやられるなぁ〜」
エズからはそれなりの物資はもらっている、が次もこの被害で抑えられるとは限らない。消費した最終局面で大物に当たるのだけは避けたいと思って、さっきは突っ込んだが、『AMAM』を犠牲にしたのは正直痛い、。さっきの戦いも自分のプレイヤースキルのなさが効いてきた気がする。…にしてもかなりチートだったなぁあの敵。
「さて,武装に関してはほとんど問題なし。」
次は、、《各種メンテナンス開始》。
体全体に水が浸かった時のようなひんやりとした感じが走る。よくわからないが気持ちが良い。
《結果:外骨格、スラスター部位、メインフレームに損傷軽微、戦闘続行に問題なし。》
よし,これくらいならチョチョイといじれば治る。
確か、リペアトーチがあった筈。…正直リペアトーチを少しだけで治る簡単設計ではない筈だが…まぁゲレームで開発された回復手段が無いオートマタ唯一の回復手段だから仕方ないのだろうか。
「、、よしっ。これで大丈夫〜、かな。」
ステータス画面に映っている情報によればほとんど問題はない。まぁ装甲値が減ったままだがそれは当然HPととの関連性がないからだろう。
「さて、もうすぐ時間か。」
装備全体をメンテナスしていたらもうすぐ休憩時間が終わりだ。早い気がする、正直気分の問題でしかないが、、
にしても、今度も生き残ることができるか、。
少し気弱な自分が思う。だが思ったってどうしようもない、生き残るも生き残らないも全て俺次第なのだから,
[ビー!ビー!!!]
電子時計がゼロで埋まる。音と共に俺はまた戦場へ赴いた。
──第二回公式大会・平原ステージ──
「、今度は、。」
平原か,となると考えられるのは白兵戦。まさにPSが勝る世界というわけだ。
にしても不思議だこんなのどかな風が吹く草原で今から殺し合いが始まるのだから…
「だからと言って、、」
その時自分が見ていた地面が影で覆われる。
レーダーによって既に感知していた身、コレからの展開は見えるだろう。
そして心底思う。
、、どうしてこう自分は奇襲に合うのだろう。
「はァァァァ!!!!!!」
「負けるつもりは、、」
ハァ、この大会の難点は出場者は同じ出場者を見れない点だろう,ゆえに相手がどういうやつか,というかどういう敵かすらわからない。
ま、それが普通なんだが…。
まぁだけど。
「ないッ!!」
そう言い切り、俺は振り向き様にヒートブレイドで後ろから奇襲してくる敵を捩じ伏せた。
敵であった者が地面に叩きつけられ,電子音を出しながら消えていった。
それにしてもどうしてこう、、奇襲するときは何も言わないって習わなかったのか,,。いや普通習ってないのか、。
「毒されてるなぁ俺も。」
そう言い、俺はホバーで移動し始める。このだだっ広い草原、そしてこの黒く光る装甲は言わずもがな相性最悪、迷彩度0だろう。
光学迷彩を次から取り入れたいと言ったらエズは怒るだろうか,、、。いや逆に喜ぶな、。
草原を進んでいくうちにだんだんと石?鉄?の突起物がいくつか見られてくる。今さっきの話ではないことが苔でわかる。
「にしても奇襲が少ないな。」
いや、さっきが多すぎたのか?。にしても静かすぎる。まるで嵐の前の静けさというか、、
シーンとする雰囲気に違和感を覚え、レーダーを巡らす。
《周囲に反応なし》
「!!」
そう報告を聞いた瞬間身構える、反応がない?冗談じゃない!!なら今周りにある岩はなんだ?、いくら敵性反応がないとしても全く反応がないのはおかしすぎる。
…つまりどこか別の空間にいて、何かを見せられている?、幻覚を見せる魔法か?、、電子レンズ越しに見ても幻覚は見せられるもんなのか??。
「ケッ!ケケケ。もう分かったのか、つまらんねぇ。」
背後からの声に気付き、俺は振り向く、不適な笑い顔を見せながら女性が現れた。
見た目はザッ魔女、しかし喋り風からもう少し高齢と想像していたが、見た感じロリよりの普通。いやどっちだ?。
「自分から正体を明かすところを見ると,勝ち筋があると言うことか、」
相手がそのまま出てきている。俺のレーダーに引っ掛からなかった時点で俺を奇襲できる準備はできたはず、なのに現れた。不快すぎる、俺が身構えたのは正面、しかし後ろにいたということは、俺が身構えた時点では自分はバレてないということに気づいている。
ただ身構えただけで出てくるところを見ると可能性は二つ、一つアホみたいに臆病、二つ目出てきても必ず勝てるという絶対的な自信の元か,、、。なので俺は相手に問う。
「ケケ。どうとでも。」
ムゥ、後者っぽいな。心理戦と口では割れない気がする、だからといってこのまま突っ込んで勝てるか勝てないか天秤にかけてみても微妙。
……いや、なぜ俺はこいつを本体だと思っているんだ?!
「!!」
俺は相手の声がする方向とは真逆即ち自分が背を向けていた方向にビームマグナムを放つ。独特な発射音から来る高火力は何かを掠めた音が聞こえた。
(…次からはしっかりレーダーを見ないとな。敵性反応。)
目の前の光景で気を取られていたがこういう時のレーダーだった、まさか目の前の光景で欺いている隙に後ろから殺すつもりだったとは、用意周到さもここまでくれば未来予知だ。
さて,幻術相手にどう戦うか。




