二十一話「製作開始。と、説明。」
前回のあらすじ
交渉成立
(う〜ん、怖いなぁ。)
スマホ片手に俺は『SAMONN』のニュースを見ていた。ニュースの内容は“オートマタ狩り“についてだ。どうやら前より悪化しているらしい。どう悪化しているかというと、街の中にいるオートマタにまで被害が及ぶほどだ。これがどう言ったことかというと、基本的に俺たちプレイヤーは街の中では不可侵条約で戦うことができない。しかしそれはプレイヤーだけに課せられたルールであり、NPCは基本的に関係ない。
(オートマタがレア素材を落とすとなればNPCですら血眼になって狩ることに違いはないだろうに。)
ここで少しで説明しようと思うが、このゲームのNPCは従来のNPCたちとは明らかに格が違う。もはや生物が違う並だ、それもそのはず、このNPCたち、実は全ての個体がAIを積んでいる、しかも機械によってランダムで性格、体、声など何千にも及ぶデータを設定していると、きた。正直俺もいまだにプレイヤーとの違いがわからない、そしてそんな、プレイヤーの皮を被ったAIたちが弱いプレイヤーを狩るなんて珍しいことじゃないらしい、最も俺は最初聞いた時信じられなかったが、、。
話を戻そう、そのNPCたちはほとんど人間に近い、ていうかこの世界限定の人間だ。ほとんど人間というか人間だ、プレイヤーとの違いはいいとこ、ログイン、ログアウトができるかできないかだろう。ていうかほんとそれくらいしか違いがない、深掘りしたらもう少し出てくるだろうが俺はこのくらいの説明で十分だと思う。情もないのにややこしいのは嫌いだ。
そしてそのNPCたち、もちろんゲーム(世界)側のルールが変更となればそれに従う。つまるところ、プレイヤーなんかが行なっている“オートマタ狩り“という考え方にももちろん行き着く、そしてなんとも不思議な自然ルールが誕生する。街の外にいるオートマタはプレイヤーが狩り、街の中にいるオートマタはNPCが狩る。という、なんとも効率的なシステムが誕生している。いやね、俺たちからしたら一方的に狩られる側なんでたまったもんじゃないんだが………
そしてこれを要約すると、NPCが街中のオートマタを狩る。プレイヤーは街の外のオートマタを狩る。双方win-win、こっちはストレス。って感じだ。まぁそんなことが起こっているせいで今、オートマタ側のプレイヤーは結構不満が溜まっているらしい。なんか現実でもある人権問題に近い気がしてくる。
(一応ゲームなのに、、)
それといらない補足だが、街中でも互いに了承し合えば"決闘"という形で戦闘できる。
HPが一定の基準に減少した方が敗北になるシステムだ。(なんかどっかの学園もので見たことあるような、、。)まぁ今回の事例はキルであって、『決闘システム』とは直接関係ないからな。
[ガチャッ!!]
「もーどったぞー。」
エズが勢いよく扉を開け、くつろいでいた俺たちに大きな声で言った。
「おかんな(おかんえりな)、で。どう?通った?。」
「うぅむ!ばっちりだぞ!、これで正式にこの案件はこちら側の仕事になった。安心しておくがよい!。」
エズはムフーっとドヤ顔をかまし、俺たちに自信満々に言う。この時エズが言った、安心しておくがよい!は、おそらくどんな妨害すら受け付けずに確実に完成へ持っていくという意味を含んでいると俺は感じた。
「。となると今日俺たちがすることはないのか?」
俺は少し考え、そう言葉を漏らす、製作はエズ達のチームに任せているのだから俺たちがやることはほとんどないのだろうか。っと。、、やると言っても俺とレナが製作班とちょっと相談するぐらいだろう。ルルカとウミさんは基本護衛の名目(お供)としてきているので、あまりここに時間をかけてほしくない。ウミさんは仕事もあるだろうし、ルルカはぁ〜…確かテストが近いだろうし。うん?俺は特に何もないぞ。
「まぁ、そう考えることじゃろうな、そう考えるじゃろう、な!!。だが、やることはある、、主に紅月。」
「えっ?俺?。」
「そうじゃ!。」
「なんかこいつがやることあったっけ?」
「おい。」
レナが呆けた顔で自然に俺を煽った。
「あるともあるとも、一番大事な役なんだなぁこれがぁ〜。」
エズが見事な顔芸を披露しながらズンズンと言った。なんか存在が騒がしい。「撃っちゃうんだなぁこれがぁ」みたいなふうに言わないでくれ。
「で、その役ってのは?」
「簡単なことじゃよ、誰が主が作った装備を使うんじゃ?」
「それはもちろん、紅月様がぁ〜…」
あ!そういうことか。結局は、
「紅月が使うことになるじゃろ。つまりこいつには少しでも、戦闘経験を積んでもらう必要がある。ということじゃ、」
「あぁ〜、、。」
俺は納得したような、めんどくさそうな声で、今の意思表示をした。やっぱり訓練しといたほうがいいよなぁ〜。
「そこで妾の出番。お主のため、、でもないのじゃが戦闘訓練場を開けておいた。思う存分大会まで訓練するといい。いや、するんじゃ(強要)。」
強要すんな。、、〜
「ぁ〜、やらないと、、?」
『だめ(よ)(だよ)(ですね)(じゃな)」
「ですよねぇ。」
さっきまで口を開かずゲームをやっていた、ルルカさえ口を開いて俺に言ってきた。悲しいのぉ。
「まぁ、結構いきなり感、、はないが。なんならその覚悟ができていると思っていたがな、まぁ、まぁ。最悪、今日じゃなくても良い。」
エズがなんとなく歯切れが悪いように言う。あっこれ絶対今すぐ戦闘して欲しいやつだなっと俺は密かに思った。
「そうか…なら、また明日にしてもいいか?。」
「うぅむ。いつでもくるが良い。」
エズは軽く笑い、俺にそう言った。
「それじゃ、今日のところはこれでおしまいって感じかしら?」
「なんか色々疲れた。」
お前は何もやっていないやろがい。、でもまぁ、結構疲れたな。正門でナズナと別れて、そっからすんごい汚いところ通って、疲れて、エズと出会って、コロニーみたいなところに来て、、工場見学して。
「なんやかんやで結構な1日でありましたからね、お嬢様。」
ウミさんがルルカに補助を入れるかのように言った。
「正直、あんなところは2度とゴメンだよぉ〜。」
ルルカがへにゃ〜っとしながらそう言う。確かに通路は最悪だった。
「そうじゃ、紅月。連絡先を交換しても良いか?ゲーム内でのやり取りだけでは色々と不便だし、。」
エズがそっと俺に言いかける。確かにゲーム内だけのやり取りだけでは至らない点が多くあるだろう。
「あぁ。別にいいが、、俺あまり反応できないことが多いぞ、それに俺自身このゲームに詳しいわけじゃない。あの設計図だって、適当にイメージしながら作った物だし…。」
「ふぅむ、しかしながら。お主は作者であり契約者だ、こればっかりは承諾して貰わないとこっちのプライド的にもよぉ。」
…エズが少し残念げみに交渉を続ける。確かにさっきの言葉はエズにとってはあまりいい気分はしなかっただろう。そういう点を考えればこっちが全面的に悪い。
「わかった。だが、あまり期待はしないでくれ、。」
「承知、、。」
俺はエズにフレンド及び、連絡先を登録、交換した。 なんか仕事仲間って感じだ。
「それじゃ、俺たちはログアウトするけど、、」
「妾は、まだ仕事があるゆえな、特に国政。」
そっか、今更感すごいがエズは女王様だった。国のこともやらなきゃだし、俺たちの方にも、そしておそらくリアルの方にも、、。
「過労死しない程度に頑張ってくれ、。それじゃ、」
「妾は過労死なぞするものかよぉ。特にこんな面白いものを見せられたらな、。」
そうエズが言ったところで俺はゲームをやめた。次開くときは戦闘訓練。、、まるで嫌なバイトが明日あるかのような心情の俺だが、。明日もまぁ、なんとかやっていこうと思う。帰ってプラモでも作ろう。
『topic』
紅月は実は【SAMONN】にあまり興味を持っていない。




